喫茶鉄血   作:いろいろ

74 / 279
暑すぎて寝れない日々が続き、眠くなるまで書いて翌日昼まで起きれない・・・いかん、生活リズムが崩れる。


というわけで今回は番外編!
・激オコ代理人
・普段は頼れる姉なんです
・夜のお誘い
・グリズリー乙女化計画
の四本をお届けします!


番外編13

番外13-1:激オコ代理人

 

 

とある日のこと。

いつものように喫茶 鉄血を訪れていた客たちは、かつてないほどの居辛さに身を縮こませていた。

その原因は店の中央、正座でうなだれるゲッコーと客がいることすら完全に忘れて額に青筋を浮かべる代理人だ。

 

 

「・・・ゲッコー、あなた先日あんなトラブルを起こしたばっかりでしたね?」

 

「はい。」

 

「SOPも9も悲しんでいましたしみなさん怒っていましたよね?」

 

「・・・はい。」

 

「その上で・・・・・なんでまた口説こうとしたんですか? しかもお相手がお手洗いに行っている間に。」

 

 

代理人は基本的に叫ばないし怒鳴らない。ただただ単調に怒り続けるだけなのだが、いつもであればため息とともに終わっている頃である。

だが今日はどうやら終わりそうにない。

 

 

「いや、口説いたわけではなくただちょっと話を・・・」

 

「もしそうなのであればもう少し言葉を選びなさい。 事あるごとに『美しい』とか『心奪われる』とか言えばあらぬ誤解を受けますよ。」

 

「それはそうだが・・・・・」

 

 

美しい人には美しいとはっきり言うのが信条のゲッコーにはやや納得のいかないようだが、代理人がここまで怒るのは何も客とのトラブルを避けたいと言うだけではない。

 

 

「ゲッコー、あなたはあなたが思っている以上に微妙な立場なんですよ。 正規の手続きを踏んでいない以上、何があった時に助けを呼ぶこともできないかもしれないんです。」

 

「代理人・・・」

 

「私たちはこの街で受け入れて頂いてますが、全てが全てそうだとは限りません。 我々のことを快く思わない方からすれば、あなたは格好の的なんですよ?」

 

 

ここまで言われて何も感じないほど薄情なゲッコーではない。代理人がここまで怒る理由、それは間違いなくゲッコーの身を案じてのことだった。

 

 

「・・・すまない。」

 

「わかればいいんです。」

 

 

それだけ言うとポンっと頭に手を置き、優しく撫でて奥に戻る代理人。

やっぱりこの人には敵わないなと思いつつ、ゲッコーもまた後に続いて戻っていった。

ちなみにゲッコーのナンパ癖は治らなかったものの、見境なく口説くことはなくなったのでトラブルも減ったようだ・・・もっとも、減っただけで無くなってはいないのだが。

 

 

end

 

 

 

番外13-2:普段は頼れる姉なんです

 

 

「うふっ、うふふふ・・・・・」

 

「・・・あの、姉さん?」

 

「あら? 何でしょうかガーランド?」

 

「楽しみなのはわかりますがまだ海は当分先ですよ。」

 

 

ここはS09地区、グリフィンの指令部。

いくつもある宿舎の一つであるRF棟の一室では、スプリングフィールドが買ってきた水着に着替えてはニヤついている。それを側から見ながらも脱ぎ捨てられた水着を畳んでいるのは、同室のM1ガーランドだ。

指令部の誰もが知るお姉さん人形、明るく親切で包容力のある頼れる人形、料理や掃除など家事全般もこなす万能人形、そんなイメージを持たれているスプリングフィールド()の非常に残念な側面を知る、数少ない人物だ。

 

 

(指揮官が絡まなかったらまともなのになぁ。)

 

「ふふふっ、見てくださいガーランド。 これなら指揮官の視線を釘付けにできます!」

 

「はいはい、今度はどんな・・・・・ってなんですかそれ!? ほとんど紐じゃないですか!!!」

 

 

ガーランドのツッコミなどどこ吹く風でほぼ紐な水着を披露するスプリングフィールド。ちなみに指揮官が絡むと残念になるのは周知の事実だが、恥じらいや貞操観念すら放り投げることを知るのはごくわずかである。

 

さっきまでもやや面積の小さいビキニやうっすらと透けそうな生地のものなどのキワドイ水着が多かったが、これは流石にいただけないと頭を抱えるガーランド。

姉の行動もそうだが、これでも指揮官が動じる光景を思い浮かべることができないという点が大きい。

 

 

「・・・姉さん、お願いですからそれだけはやめてください。 上手くいくいかない以前の問題です。」

 

「・・・・・チッ」

 

「舌打ちもダメです。」

 

 

指揮官さえ、指揮官さえ絡まなければまともなのに。

別に指揮官が悪いというわけではないし、誰にでも等しく優しい姉がここまでのめり込むのも喜ばしいのだが、スプリングフィールドに淡い幻想を抱く人形のためにもほどほどにしてもらわねばならないのだ。

ガーランドの苦悩は続く。

 

 

「い、いっそ丈の長いパーカーだけで中に何も着ないというのも・・・」

 

「姉さんっ!?」

 

 

end

 

 

 

番外13-3:夜のお誘い

 

 

「指揮官・・・今夜、お待ちしておりますね。」

 

「うむ。」

 

 

S09地区の指令部、そのカフェで行われたDSRと指揮官によるこの短い会話に、多くの人形が衝撃を受けた。特に指揮官ラブ勢の受けたダメージは計り知れない。現に、カフェのカウンターに立っているスプリングフィールドなんかは笑顔のまま凍りつき、傾けられたポットからコーヒーが延々と注がれている・・・というか溢れている。

 

 

「今夜・・・ですって・・・?」

 

「嘘よ・・・嘘よね指揮官?」

 

「す、スプリング?」

 

「」チーン

 

「メディーーーーック!!!」

 

 

阿鼻叫喚。ラブ勢でなくとも指揮官を慕う人形には少なからずショックだったようで、祝っていいのか悲しんでいいのかといったところだ。

しかし当の指揮官は

 

 

(うむ、今日も仲がいいな。)

 

 

とか思ってたりするのだった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

その夜。

DSRの部屋に招かれた指揮官の後を追ってやってきたラブ勢の人形たち。ちなみにスプリングは完全に落ち込んでおり、今はそっとしておくほうがいいと判断された。

 

 

「指揮官、私というものがありながら・・・」

 

「油断したわ・・・まさかDSRがここまで手が早かったなんて。」

 

「いえ、まだ間に合います。 今は機を待ちましょう。」

 

「しっ! 静かに・・・始まったで。」

 

 

四人は会話をやめ、ジッと聞き耳を立て始めた。

 

 

 

 

 

 

『ーーーーーー。』

 

『ーー、ーーーーーー。』

 

『ーーーー! ーーー?』

 

『ーーー。』

 

 

 

((((全っ然聞こえねぇ!!!))))

 

 

思いのほか声のトーンが低く、会話の内容が全く聞こえない。おまけに茶でも飲みながら話してるのか、食器の音が邪魔でわずかな声もかき消えてしまう。

ただ、雰囲気からは割といい感じで話しているようには聞こえた。

 

 

「あかん! これは想定外や!」

 

「ど、どうしましょう?」

 

「扉か壁に穴を開ければ・・・」

 

「いやバレるでしょ。」

 

 

カチャンッ

ヒソヒソと話していると、突然食器が重なるような音が聞こえる。どうやら二人ともコップを置いたらしい。

これはチャンスとばかりに再び耳をくっつけると・・・・・

 

 

『ふふっ、じゃあお願いね。』

 

『あぁ。』

 

『・・・・んっ・・・はぁ・・・』

 

『む、痛かったか?』

 

『いえ・・・大丈夫よ・・・・・続けて。』

 

『そうか・・・では次だ。』

 

『んんっ! あぁ・・・気持ちいいわ・・・』

 

『それは、何よりだ。』

 

 

 

 

「「「「させるかぁ!!!!!」」」」

 

 

二人の会話にもうここでいくしかないと感じだ四人は、扉をブチ抜く勢いで開けはなつ。正直修羅場確定な案件だが、既成事実を作られるよりは何万倍もマシだ。

・・・・・と思っていたが。

 

 

「な、なんだお前たち。 緊急事態か?」

 

「・・・えっと・・・これは?」

 

「ふふっ、見てわからないかしら? マッサージよ。」

 

「ま、マッサージ・・・・・。」

 

 

ベッドの上でうつ伏せになるDSRと、その背中に手を添えている指揮官。指揮官のぽかんとした顔に、DSRのからかうような表情・・・・・

 

 

((((は、嵌められた・・・))))

 

「うふふ、何もやましいことはしてないのだけれど・・・何を勘違いしたのかしら? ねぇ指揮官。」

 

「ん? そうだな。」

 

 

事態を飲み込むにつれてだんだん顔が赤くなっていく四人に、DSRはただただ面白そうに笑うだけ。

この日、四人の中でDSRは要注意人物に位置付けられた。

 

なお、後日復活したスプリングがこのことを知ると、指揮官にマッサージ(という名のナニか)を敢行しようとして取り押さえられた。

 

 

end

 

 

 

番外13-4:グリズリー乙女化計画

 

 

S08地区、とある広場。

休日ということもあって人通り、特にカップルや親子が多いこの広場に、あの人形がいた。

 

 

(うぅ・・・早くきすぎちゃった・・・・・この服落ち着かないのよ57!)

 

 

広場の一角にある時計の下でやや顔を赤らめながら立っているのは、いつもの服ではなくワンピース姿のグリズリーだった。

彼女がここにいるのには、それなりに深いわけがある。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ねぇグリズリー。」

 

「なによ57。」

 

「あんた今度の日曜暇でしょ? ここに映画のペアチケットがあるんだけど・・・」

 

「行かないわよ。 しかもそれラブストーリーじゃない、あなたと見に行く理由なんてないわ。」

 

「私とじゃないわよ・・・・・愛しの彼と、よ。」

 

「ブフゥ!? ななななに言ってんのよ!?」

 

「まぁまぁ・・・彼も同じ日に非番よね? せっかくなんだから誘いなさい、というかあなたの名前で誘ったわ、OKだそうよ。」

 

「ちょっ!? ええっ!?」

 

「そんなわけで、今から服を買いに行くわよ!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

そんな感じでほぼ強引に服を買わされ(57持ち)、チケット(後で聞いたがこの地区の416が手配)を片手に想い人を待っているのだ。

夏を感じさせる薄手の服、慣れない肩や足の露出に戸惑いながらも、一方で期待感も膨らんでいった。

 

 

「・・・グリズリー?」

 

「へ? あ! こ、こんにちは。」

 

 

不意に声をかけられ、飛び上がりそうになるのをなんとか堪える。いつのまにかそこそこ時間が経っていたようで、彼も無事に合流できたようだ。

 

 

「その服・・・」

 

「こ、これは違うんです! 変な友人に無理やり押し付けられたというか気がついたら着させられていたというか似合わないのになんでこんな」

 

「・・・・いや、似合ってるよ。」

 

「っ!?!?!? ほ、ほんとですか?」

 

「あぁ。 可愛いと思うよ。」

 

「か、かわっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あれ、無意識で言ってると思う?」

 

「いや、映画の誘いの時も即答だったし、これはもしかすると・・・」

 

「いやぁあんたに相談して正解だったわよ、G11。」

 

「お褒めに預かり光栄だね。 あ、もう行くみたいだよ。」

 

「じゃ、私たちも行きますか。」

 

 

件の二人から少し離れた物陰で見守る変装済みの57とG11。堪え切れないニヤケ顔を必死に隠しつつ、二人もペアチケット・・・あの二人の真後ろの席の分を持って入っていった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「・・・・・。」

 

「・・・・・。」

 

(あらぁ〜、二人とも可愛い反応ね。)

 

 

映画が終わり、出てくる客の中にその姿はあった。他の客が涙を浮かべたり映画の感想を言い合っている中で、二人は顔を真っ赤にしたまま一言も話さずに歩いてくる。

 

 

「・・・・い、いい映画でしたね。」

 

「そ、そうだね。」

 

(いやいや、二人とも映画どころじゃなかったくせに。)

 

 

映画はとある男女の恋愛を描いたものだが、このうち男の方が某国のスパイであったという設定だ。そのためアクション要素もあったりするのだが、その時ついついグリズリーが彼の腕にしがみついてしまう。そこからはもう二人とも意識しっぱなしで、映画の内容なんか頭に入っていなかったのだ。

 

 

「・・・あ、あの!」

「・・・な、なぁ!」

 

「「・・・・・・。」」

 

(あ、ヤバイ、めっちゃにやけてるわ私。)

 

 

同時に話し始め、同時に黙り込む。初々しいとかを通り越してもどかしい空気だが、まだ介入すべき時期ではない。

とはいえ流石にこのままでは微妙な空気のまま解散しそうなので、57とG11は次の手を打った。

 

 

「うわっ!?」

 

「え? きゃっ!?」

 

 

突然角から現れた女性とグリズリーが衝突、女性の持っていた飲み物がかかってしまう。女性は慌てているのか急いで謝り、そのまま走り去ってしまった。

 

 

「う〜、びしゃびしゃだよ・・・。」

 

「だ、大丈b・・・!?」

 

「え? どうしましたか・・・ってきゃあ!?」

 

 

今日のグリズリーの服は()()()ワンピース。当然濡れれば・・・まぁそうなる。

 

 

 

 

「ご苦労。 いい仕事だったよU()M()P()9()。」

 

「思いっきり悪役なんだけど・・・あれで良かったの?」

 

「えぇ、脈ありな彼なら濡れたままの彼女を放ってはおかないわ。」

 

 

路地に駆け込んだ女性・・・()()()UMP9は57、G11と合流する。ちなみに彼女がかけたのは文字通りただの水。

UMP9は服はもちろん髪型も変えているのでごく普通の一般人にしか見えない。というか義手以外人間なので人形センサーにも引っかからない。

 

 

「・・・で? ここで濡れさせると何があるの?」

 

「ふふふ、よくぞ聞いてくれたわ。 ここはさっきの商業地帯から少し入ったところで、通称ラブロード・・・そういう店やホテルが多い場所なのよ。」

 

 

 

 

「・・・すみません、私から誘ったのに迷惑かけちゃって。」

 

「いや、気にすることはない。」

 

「「・・・・・・・・・・。」」

 

 

濡れたままの服で外にいるわけにもいかないので、とりあえず手頃な避難場所・・・『休憩』と書かれたホテルに入った二人。

入った時はとにかく乾かさないと、と思っていたのだが、落ち着いた途端とんでもないところに連れてきて(入って)しまったと気づき気まずくなる。

腕時計の小さな針の音だけが響き、それがますます気まずさを増長させる。

 

 

「あ、あーその・・・濡れたままなのもアレだし、シャワー、浴びておいで。」

(ああああ何いってんだ俺は!!! この状況でシャワーとか誤解されんだろ!!!)

 

「え!? あ、そ、そうですね!」

(しゃ、シャワー!? って違う違う! 親切心で言ってくれてるんだからそんな・・・・・うぅ、変に解釈しちゃって恥ずかしい・・・)

 

 

 

 

「・・・あれ、どう思う?」

 

「う〜〜〜〜〜ん・・・・いけそうだけどヘタレそう・・・」

 

「ん? でも替えの服って無いよね?」

 

「「・・・バスタオル一枚・・・・・」」

 

 

あれ?これ心配しなくても襲うんじゃね?

現にさっきから意識しまくりな二人、特に彼の方はシャワーの音にも過剰に反応している。これでタオル一枚で出てきた日には・・・・・。

 

 

「・・・・念のため、ドアだけ外から閉じときましょうか。」

 

「「そだね。」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、結局二人が出てきたのは明け方であり、ドア封鎖が無駄になったのは言うまでも無い。

 

 

end




やっちまったZE☆
実は恋愛絡みでまとまった番外編ってこれが始めてなんだよね。

あ、そう言えばとある作品にイラストがつきましたね! 417ちゃんめっちゃ可愛かった!
うちのとこも書いてくれないかなぁ〜(チラッ)


そんな冗談はさておき、各話解説。

番外13−1
五十二話の後日談。
M16にもハンターにもペルシカにもみっちり怒られましたが、こう言う怒り方の方が精神的にくるかな。
ゲッコーは喰っちゃ捨てるというわけでは無いのでご安心を。

番外13−2
五十三話の後。
この番外編が初登場となるガーランドさん、開幕早々苦労人ポジ入り。
春田さんが一際目立ってますが、ガーランドもなかなかなボディをお持ちですね。実は当初は春田さんではなくガーランドが残念になる予定でした。

番外13−3
五十四話の数日後。
何気に連続登板の春田さん。
コミュニケーションボイス3から思いついた話で、よくある「止めに入ったらマッサージだった」というアレ。
指揮官の得意項目にマッサージが追加されました。

番外13−4
五十五話の数日後。
コラボ回(救済回)の416は「人間と人形がくっつくなら応援する」という理由で、UMP9はたまたま捕まえました。
指揮官よりマシな鈍感男にするつもりだった『彼』ですが、こんな感じの話もありかなということで割と普通な性格に。
寿退社まったなし・・・かな?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。