喫茶鉄血   作:いろいろ

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代理人に癒しを、とか聞こえた気がするので。
ガルムにすると大きすぎて店を圧迫するのでダイナゲートに変更。


第五十六話:アニマル?セラピー

カランカランッ

喫茶 鉄血の入り口のベルが鳴り、その日は実に珍しい客が訪れた。

店のカウンターから出迎えの声をかけようとした代理人は、しかしその声を中断せざるを得なくなる。

 

 

(あら? いたずらでしょうか?)

 

 

扉は開き、今まさに閉じようとしているのだが、その扉の周りには誰もいない。近所の子供か、はたまた稀に訪れる反人形思想の者か、しかしいつまでたってもそれらしい人影も見えず、代理人は首をかしげる。

そんな時、ふと足元に何かが擦り寄ってくるのが見えた。視線を下ろすと、そこにいたのは一体のダイナゲート。だがここのマスコットとは違い背中のアーム等がなく、完全に『箱に足がついている』だけのダイナゲートだった。

 

 

「? 珍しいお客様ですね。」

 

『っ! っ!!』

 

 

代理人に気づいてもらえたのが嬉しいのか、顔を見上げてぴょんぴょん跳ねるダイナゲート。とはいえダイナゲートに言語機能は存在せず、ごく一部(喫茶 鉄血のダイナゲートなど)に搭載されている人形間通信システムも、このダイナゲートには載せられていないようだ。

 

 

「すみません、流石に言葉はわかりませんが、とりあえず奥に行きましょうか。 ・・・D、少し店を任せましたよ。」

 

 

そう指示を出し、代理人ははぐれダイナゲートを抱えて奥へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

同じ頃、S09地区にて。

 

 

「・・・・・なに? デストロイヤーが?」

 

「えぇ、まだこっちの家に帰ってきてないらしいの。 一昨日向こうを出たはずだから、どれだけ遅れても今日の夜明け前には着いてるはずなのに。」

 

 

そう話すのはアルケミストとドリーマーの二人。仕事がひと段落したデストロイヤーがこちらに帰ってくるということで、簡単な出迎えパーティーを開こうと思っていた矢先に、その情報が伝わったのだ。

 

 

「まさか・・・誘拐か?」

 

「それこそまさかよ。 非武装でもあの子の力は相当なもんだし、まして帰ってくるときには護身用に武器を持ってる。」

 

「とにかく足取りをつかむことが先決だな。 お前はグリフィンの方に連絡を取ってみてくれ。 私はアイツが降りた空港周辺の情報を集める。」

 

 

二人にとって妹分のようなデストロイヤーだ。彼女を探すために、二人は端末を片手に走り出した。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「・・・通じませんか?」

 

『ーーーーー。』

 

「わかりました。 店の方に戻っておいてください。」

 

 

場所は戻って喫茶 鉄血。増築された三階の代理人の部屋では、ダイナゲート同士のコミュニケーションが図られていた。が、なぜか互いに通じることはなく、このダイナゲートにはそもそも通信能力がないことがわかったくらいだ。

仕方なく店のダイナゲートを下に帰し、じっとこのダイナゲートを見つめる。ごく少数販売された民間ペット用かとも考えたが、あちらはむしろコミュニケーション能力が高めに付けられているし、またアーキテクトに試作品かとも思ったがそれにしては何の特徴もない。

ただ、どことなくしょんぼりしたりする仕草はあるのでちゃんとしたAIは使っているようだ。

 

 

「・・・仕方ありませんね、持ち主が現れるまでは保護しましょう。 ・・・・・ん?」

 

 

とりあえず部屋に置いて自分も店の戻ろうとするが、ふと見るとこのダイナゲート、ところどころ汚れているのがわかる。

あっちこっちを走り回ったのか知らないが、流石に返すときに汚れたままでは可哀想だろう。そう思った代理人は、タオルと汚れ落としを持ってダイナゲートを持ち上げる。

 

 

「結構汚れてますね。では掃除しますのでじっとしておいてくださいね。」

 

 

そう言ってダイナゲートのボディを拭いていく。足回りはもちろんだが意外と全体的に汚れており、それらを隅々まで拭いていく。

ダイナゲートはそれを、どことなくくすぐったそうにしながら受けていた。・・・というかそんな感覚があるのだろうか。

 

 

(ペットというのも・・・悪くないかもしれませんね。)

 

 

そう思う代理人は、無意識に笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

さて再びS09地区の一角。

二人の懸命な情報収集の結果、デストロイヤーはここに向かう途中に簡易メンテナンスのために鉄血工造に向かったことを知る。ところが出迎えるはずのゲーガーもサクヤも彼女の姿を見ておらず、研究室から出ていないアーキテクトはもちろん知らない。

 

 

「ど、どうしようアルケミスト。 デストロイヤーに何かあったら・・・」

 

「落ち着け、まだそうと決まったわけじゃない。 とにかく今から向かうぞ。」

 

 

二人は急ぎ鉄血工造へと向かう。

そこに、驚きの事実が待っていることも知らずに。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

『っ!? っ!!!』

 

「ふふっ、こうしてみるとちょっと可愛いですね。」

 

 

さらに戻って喫茶 鉄血の代理人の私室。

そこでは非常に珍しいことに、代理人が見たことのないほど頬を緩ませてダイナゲートを撫でている。ダイナゲート的にもちょっと予想外なのか、足をばたつかせているが全く意に介さない。

やがてダイナゲートが抵抗を諦めると、代理人は膝の上にちょこんと乗せて猫のように撫でる。

 

 

「〜♪ 〜〜〜♪」

 

 

いよいよ鼻歌まで歌い出す代理人。というか意外と音程が外れている気がする。心なしかダイナゲートも微妙そうな顔に見えなくもない。

 

 

「ふふふっ♪」

 

 

まぁ代理人が楽しそうなので、じっとしておくことにした。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

同刻、鉄血工造。

その研究室の一室で、アーキテクトが壁際に追い詰められている。その前には鬼のような表情の四人組・・・アルケミストとドリーマー、ゲーガーにサクヤだ。

 

 

「・・・これはどういうことだアーキテクト?」

 

「待って待って!? 今度は本当に知らないよ!?」

 

「まだシラを切る気か貴様? あの場にこれがある時点で言い逃れはできんだろ!」

 

 

そう言って指差す先に転がっているのは、探し回っていたデストロイヤー、より正確に言えばその体だ。AIが完全に抜け落ち、抜け殻のようになっているが。

 

 

「私だってびっくりしたんだよ!? あんなとこに入れた覚えなんてないし、第一身内を実験台にするわけないじゃない!」

 

「はいダウト! 貴様に前科がある以上信用できるか!」

 

「アーキテクトちゃん、自首しよ?」

 

「待ってサクヤさん!? その笑顔はちょっと見せちゃいけないやつだよ!?」

 

 

ギャーギャーと揉める五人だが、そこにある下級人形がやってくる。

 

 

「アーキテクト様、持ってきました。」

 

「でかした! これで私の無実が証明されるよ!」

 

 

彼女の部下が持ってきたのは監視カメラの映像。パァッと明るくなったアーキテクトは急いでそれを再生する。

自分の無実が証明されると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・あれ? こっちにも入り口あったんだ。』

 

 

「おい、開放厳禁の扉がなぜ開いている?」

 

「ちょ、ちょっと閉め忘れただけだよ。」

 

 

『暗いわね・・・誰かいる?』

 

『んあ? 寝ちゃってたか・・・どこまで進んだっけ・・・・・』

 

『おーい。 誰かいないの?』

 

『え〜っと・・・あ、これを押して起動チェックと。』ポチッ

 

ゴウンゴウン

『え!? 何!? 何なの!?』

 

『AI転送システム起動・対象ヲ ロック シマス』

 

『ちょっ!? 何これ出れない! あ! アーキテクト! 助けて!!!』

 

『これで・・・よし・・・・・Zzzz』防音ガラス越し

 

『アーキテクトぉおおおおおお!!!!』

 

 

 

 

ピーーー

『転送ガ完了シマシタ』

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

「・・・何か申し開きは?」

 

「申し訳ございませんでしたぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・ん・・・ふあぁ・・・あら、寝てしまいましたか。」

 

 

窓から差し込む西日で目が覚めた代理人。腕の中ではすっかり大人しくなってしまったダイナゲートが心配そうに見上げている。

本来睡眠を必要としない人形(鉄血製は特に)だが、つい眠ってしまうくらいに疲れていたのだろうか。

 

 

「ふふっ、なぜかゆっくり眠れた気がします。 これもあなたのおかげでしょうか?」

 

 

そう言ってニコリと微笑みかける代理人。

だがその平穏(?)は階下から聞こえてくる喧騒で四散した。しかも声の主たちはドカドカと上に上がってくる。

 

 

バァーーーーン

「代理人! 居るか!?」

 

「見つけた! この子だよ!」

 

「え? あの? 皆さん???」

 

 

代理人の疑問の声など完全に無視して闖入者・・・アルケミストやアーキテクトたちはぞろぞろと部屋に入る。

そして代理人が抱えるダイナゲートを一瞬で捕獲すると、アーキテクトは強引に機械に接続し始める。

 

 

「ちょ、ちょっとアーキテクト?」

 

「代理人、疑問はもっともだが今は我慢してくれ。」

 

「事態は一刻を争うんだよ代理人ちゃん!」

 

 

アルケミストもサクヤも真面目な顔でそういうので大人しく待つことにする。しばらくジタバタ暴れていたダイナゲートだが、やがて大人しくなると同時に機械のモニターが点灯する。

そこに写っていたのは、なぜか二頭身くらいにデフォルメされたデストロイヤーだった。

 

 

「で、デストロイヤー?」

 

『ちょっとアーキテクト! 何なのよこれは!?』

 

「仮想空間の新型スキンだよ! ・・・てのは置いといて、これで無事確保できたね。」

 

「あの・・・これは一体?」

 

「あぁ、実はな・・・・・」

 

 

 

 

 

アルケミスト説明中・・・

 

*仮想空間スキンとは、AIを仮想空間に移すことで体型や服装などを自由にエディットできる、人形にとっては夢のような装置なのだ(発売日未定・外部操作可)

 

・・・中明説トスミケルア

 

 

 

「・・・というわけだ。 迷惑をかけたな代理・・・人?」

 

「・・・・・・。」

 

 

アルケミストからとてもわかりやすい説明を受けた代理人だが、正直途中から全く頭に入ってこなかった。

・・・つまり、今まで散々撫で回したり抱きしめたりしていたのはデストロイヤーだった?あのニヤケ顔も鼻歌も寝顔も見られた?

そこまで考えると同時に体温が急上昇、熱処理もできぬままにパタリと倒れてしまった。

 

 

「ちょっ!? 代理人!? 代理人!!!」

 

「オーバーヒートしてる! とりあえず冷まさないと!」

 

『代理人!? どうしちゃったの!?』

 

「また何かやったのか貴様!」

 

「やってない! 今度こそ何もやってない!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の晩、目を覚ました代理人は顔を真っ赤にしながら部屋に閉じこもり、枕に顔を埋めていたという。

 

 

end




可愛い代理人が描きたくなった。
ところでイベントのUMP装備が全然落ちないんですがどうすればいいでしょうか?


さてではキャラ紹介

代理人
書くまでもないが本作の主人公。
最近個性あふれる人形やトラブルに見舞われたのでちょっとお疲れ。
皆の前では凛とした姿でいたいため、今回デストロイヤーに見られたのは相当恥ずかしかった様子。
後日、ペット機能満載のダイナゲートが贈られた。

デストロイヤー
多分原作でも有数のスキンを持つ人形(ノーマル・ガルム・ガイア)
原作よりかははるかにまともだがそれでもポンコツなのでこんな事に巻き込まれる。
代理人と一緒にいられたので結果オーライ。

アーキテクト
みんなのトラブルメーカー。
人形でも疲労が溜まるくらいに研究に没頭した結果、今回の事件が発生。
なお実験自体は成功しているので満足している。

アルケミスト・ドリーマー・サクヤ・ゲーガー
みんなの保護者たち。
やたら暴走しがちなアーキテクトを四人がかりで見張っては取り押さえる。
一人当たりの負担は減ったがアーキテクトのレベルも上がった。

仮想空間スキン
スキンとついているが要するにキャラエディット装置。
人形たちの夢を叶える・・・というのが建前で、外部から人形をあんなことやこんなことするために作られた。
有料コンテンツにRー18MODもある。




いつものことだけどとんでもなく頭の悪い作品だな(開き直り)
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