喫茶鉄血   作:いろいろ

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本作品における元祖ポンコツ。

何気にこの人もスキン多いですよね。


第五十九話:頑張れMG5隊長!

カランカラン

「いらっしゃいませ・・・あら、MG5さん。 お久しぶりですね。」

 

「ああ、久しぶりだな代理人。 二階の個室は空いているか?」

 

 

六月に入りいよいよ夏のような暑さが本格的に顔を出し始めた今日、額の汗を拭いながら入ってきたのはMG5、それと彼女が率いるMG部隊の隊員たちだ。

MG部隊の隊長、といってもそれは一部隊の隊長というわけではない。MGのみの編成やSGとの混成など、様々な場合において指揮官を持つ、いわばMGたちの作戦指揮官といった立場なのである。

そんなわけで彼女が連れてきたのはPKやPKP、M1918に62式にFF M249SAWなどなどのMG人形たちである。

 

 

「えぇ、空いていますのでご自由に。 一応、使用目的を伺っても?」

 

「ただの反省会、というか振り返りだ。機密に関わるものはないから気にしなくていい。」

 

 

それだけ言うと部下を引き連れて上に上がる。初対面でのインパクトとかが強かったが、どうやらちゃんと隊長としてやっていけているらしい。

幸い、部下にも本性(ポンコツ)はバレていないようだ。

 

 

「・・・さて、何かお菓子でも持っていきましょうか。」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

喫茶 鉄血には個室がある。金曜夜のバーのためにやや力を入れた一階部分とより広々とした二階で構成されているが、その二階の一角に設置されているのが個室である。壁と扉に囲まれているが小物などもあって割とオシャレなのだ。

その個室に集まったMG人形一同は、先日行われた強化訓練期間の反省会兼振り返り会を始めていた。

 

 

「さて、みんなご苦労だった。 慣れないことも多かっただろう。」

 

 

隊長であるMG5の言葉に、緊張した面持ちで聞いていた隊員はホッと息をつく。PKやPKPなどの割と古参なメンツはともかく、作戦や関連以外での関わりがあまりない他の隊員からすれば、MG5のイメージは物静かで厳格な人物なのである。現にこの会が始まる前からピクリとも笑らっていない。

 

・・・というのが他から見た彼女である。

 

 

(よ、よし。 なんとか緊張を和らげることはできたな。)

 

 

製造され、MG部隊の隊長に就任してそこそこ経つはたずなのだが、未だに慣れていないのである。

そもそも製造当初は人前で話すことすら稀であったのだから、むしろここまで来れたことの方が驚きといえば驚きだ。よほどMG34の教導はキツかったらしい。

 

 

(次は、一人一人の問題点の指摘か・・・うぅ、胃が痛くなってきた。)

 

「・・・まずM1918。 動きは良くなったがリロードの時にもう少し周りに気を配れ。」

 

「うっ、はい・・・。」

 

(ああもうせっかく落ち着いたのになんでもっと優しく言えないんだ私は!)

 

 

これが部屋で一人だったら頭を抱えて転げ回っているだろう。一応言うとM1918もその指摘は自覚していたので、そこまで落ち込んでいると言うこというわけではない。

・・・まぁそれがわかれば苦労しないが。

 

 

「・・・・・次は、PKだな。 技術面で言うことはないが、お前の言葉は小隊長としての言葉だという自覚を持つように。」

 

「は、はい!」

 

 

(や、やっと二人目・・・後何人続くんだ・・・・・。)

 

 

今すぐ泣いて逃げ出したい気持ちを抑え(そもそもそんな度胸もない)、他の部下の指摘を続けていった。

そんな様子を壁越しに見守るのは、飲み物と茶菓子を持ってきた代理人だった。

 

 

(ふふ・・・なんとかなりそうですね。)

 

 

MG34から連絡があり、もし空気が悪くなったらちょっと助けてほしいと言われた代理人。あまり心配はしていなかったものの、念のためにと気にかけてはいたが・・・

 

 

(どうやら杞憂だったようですね。)

 

『・・・まぁこんなところか。 ともかくご苦労だった、明日は休みだから各自しっかりと休むように。』

 

『『『『『はい!』』』』』

 

 

元気のいい返事とともに会が終わったことを確認すると、代理人はドアを開けて入る。

人数分のコーヒー又は紅茶を配る中、ふと見るとMG5の足がわずかに震えている。というよりポーカーフェイスを保っているがガッチガチに固まった表情は代理人にバレバレである。

その様子に代理人はふふっと笑うと、茶菓子を置きながら近くの人形に話しかける。

 

 

「怖い隊長さんですね。」

 

「っ!?」

 

「え? いえ、厳しいですけどいい人ですよ。」

 

「指導も丁寧だし、危ないときはしっかり止めてくれるし。」

 

「どんな時でもヘラヘラせずに真面目に話を聞いてくれますから!」

 

 

おおよそ代理人が予想していた通りだが、皆MG5には好意的な様子。ちょっと身構えていたMG5もそれを聞いていくうちに少しだけ安心したようで、足の震えは無くなっていた。

 

 

「・・・みんな、ありがとう。 好きなものを頼んでくれ、私の奢りだ。」

 

『ありがとうございます! 隊長!』

 

 

次々とくる注文を聞き取りながら、代理人は相変わらず真顔な、しかしどことなく嬉しそうなMG5を見て、少し微笑んだ。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なぁ代理人、彼女たちの言葉は本心なんだろうか?」

 

「あら? 部下を疑うのですか?」

 

「えっ!? いや、そ、そういうわけではないが・・・」

 

 

部下たちを解散させ、一人店に残ったMG5はコーヒーを飲みながら呟く。あの時は素直に嬉しかったが、元々の過小評価気質なせいかやや疑心暗鬼になっているようだった。

代理人の前ではこんなにも表情豊かでおどおどした彼女が、部下の前では厳格な隊長として振舞っている、そう思うと少し可笑しく思うのだった。

 

 

「まぁもう少し笑ってみるといいと思いますが、彼女たちはあなたを嫌っているわけではありませんよ?」

 

「・・・多分、そうなのだろうが・・・・・私といても楽しくなさそうというか、むしろ余計なプレッシャーをかけているんじゃないかと。」

 

「考えすぎですよ。 あなたのことはMG34も私もわかっていますから・・・まさか、私たちも疑われているんですか?」

 

「なっ!? 違うぞ! 私はただ・・・」

 

「ふふっ、わかっていますよ。」

 

 

クスクスと笑う代理人に、MG5は大きくため息をつきながら机に伏す。その頭を、代理人は優しく撫でる。

 

 

「・・・すぐには変わらないものです。 人も、人形も。 ご自分のペースでは進めばいいですよ。」

 

「・・・そう、だな・・・・・ありがとう、代理人。」

 

「えぇ、どういたしまして。」

 

 

今度は、自分から歩み寄ってみよう。そう心に誓ったMG5は、残ったコーヒーを飲み干した。

 

 

 

この後彼女は部下との交流を積極的にしていくのだが、それがまた新たな騒動を呼んでしまう。

それはまた、別のお話。

 

 

end




最近いろんな作品で代理人が出てきますね、嬉しい限りです!
これは是非一度、全作品の代理人を集めたコラボ回とかやってみたいところですが・・・収集つかなさそうなのでやめときましょうか。


ではではキャラ紹介を。


MG5
MG部隊の隊長。MG人形最古参のMG34から直々に指導を受けた優秀な人形・・・なのだが中身はかなりヘタレなポンコツ。
真面目で努力を怠らないが、部下との距離感を掴めないでいる。
代理人の前では素でいることが多い。

MG部隊
MG人形のみで構成されている部隊・・・というのもSG人形配属以前はARやSMGと組ませにくく、いっそMGだけで固めて運用しようという流れでこうなった。
現在はSG人形の普及によりMGのみでの作戦は減ったが、状況によりけりなのでMGのみでの対処法も続けている。

強化訓練期間
MGそれぞれや欠点の洗い出しや成長確認を目的とした訓練期間。
性能的な欠点としてはリロードの遅さや弾のばらつき、個別の場合は視野の狭さや移動速度など。
隊長格やMG34などはAR並みに動くことができる(MGとは一体・・・)

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