喫茶鉄血   作:いろいろ

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ネタバレ) notシリアス

なんか前話の勢いのまま描き始めたらひどい内容になった。
この世界はいよいよダメだと思う。



第六話:忍び寄る影

ここはS09地区のとある倉庫。

日付も変わろうかという時間であるにもかかわらず、そこには男女数名の姿があった。

 

 

「た、頼む! もうやめてくれ!」

 

「それは私が決めることだ。 さて次は・・・ふむ、これにしよう。」

 

「やめろ! それは、それだけはぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「・・・ほどほどにして下さいよ、アルケミスト。」

 

「「「「うわぁ・・・」」」」

 

 

残虐な笑みを浮かべるアルケミストと一応注意はする代理人。

ドン引きしながら見守る404小隊。

そして柱に縛られ恐怖の表情を浮かべる男たち。

 

アルケミストの笑い声が響き渡った。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「・・・何ですか、これは・・・」

 

 

それはとある日の喫茶 鉄血。

午前中まではいつも通り営業していたのだが、今は臨時休業となっている。

その店内には代理人含め全ての鉄血員、たまたま客として来ていた404小隊、地元の警察官数名、そしてS09地区の指揮官がおり、一つのテーブルを囲んでいる。

この騒動の原因は、そのテーブルに置いている一通の封筒であった。

 

この封筒が届いたのは正午を少し回った頃。

差出人不明かつ宛名も『鉄血の不良人形様へ』というものであった。

気にはなったが店の対応もあって読むことができなかった代理人だがそれでも放っておくにはあまりにも物騒であったため、店にいた404小隊に代わりに読んでくれと依頼する。彼女らもそれを快諾し、UMP9が手紙を開くと同時に表情を険しくする。

 

そこからの流れは早かった。まず9が小隊全員に内容を共有し416が警察に、45が司令部に連絡した後に代理人に店を閉めるように指示を出す。ただならぬ気配に代理人はすぐに指示を出し、閉店の準備を進める。

その後やってきた警察と指揮官の前で手紙を開いたというところが現在の状況である。

 

 

「何故、デストロイヤーの写真ばかりがあるのですか!」

 

 

封筒の中身は一枚のカードと数十枚の写真。そこに写っていたのは全てデストロイヤーであった。

しかもその内容は彼女の私生活や仕事姿、さらには寝ているところを撮ったものまであり、どう見ても盗撮の類だった。

 

 

「すでに彼女の職場には連絡を取っています。 今のところ彼女は特に変わったこともなく、普段通りだそうです。」

 

「それとこのカードに書かれているマーク。 こっちは我々が知っている相手のものだったよ。」

 

「バラバラにされた血まみれのマリオネット・・・こんな悪趣味なロゴを使う連中なんて一つしかないわ。」

 

「・・・・・『過激派』、ですね。」

 

 

『過激派』

正式名称は『人類の未来を願う会』という組織であり、鉄血のクーデターを機に人形反対運動を激化させた要注意組織。

過去には人形や人形を擁護する人々への暴行もあったため、代理人も警戒はしていたのだが、まさか同僚が狙われているとは思わなかったようである。

 

 

「ともかく、我々はこの写真を元に捜査を進めます。 何か変わったことがあれば、すぐに連絡して下さい。」

 

「わかりました。 よろしくお願いします。」

 

 

そう言って警察官は封筒を持って店を出る。

一方、残った人形たちは独自に捜査を進めようと言い始める。が、デストロイヤーが暮らす町はここから遠く、こと地区の司令部では管轄外となる。何か手はないかと唸る人形たちに、指揮官は言った。

 

 

「・・・さっきの写真、彼女がこの街に来た時のものもあったようだが。」

 

「ええ、ありましたね。 年末にパーティーを開いた時のです。」

 

「うへぇ・・・年末までストーカーか。 相当暇人だね。」

 

「ん? てことはそいつはずっとデストロイヤーを追いかけてるってこと?」

 

「いや、構成員はあちこちにいるんだ。 移動先にいてもおかしくはない。」

 

「・・・いえ、それだけで十分です。」

 

 

そう言うと代理人は閉じていた目をゆっくり開き、まっすぐ指揮官を見た。

 

 

「指揮官さん。 一つお願いがあります。」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

数日後、S09地区

司令部のヘリポート。

 

そこに一機のヘリが止まっていた。

出迎えは指揮官、数名の護衛と代理人である。

扉が開き、中から出てきたのは、

 

 

「やぁ、代理人。 一月も経たずにまた会えるとは思わなかったよ。」

 

「ええ、こちらこそ。」

 

 

鉄血のハイエンド、そして現在はメンテナンスのためにグリフィン本部に()()()()()()()()()()アルケミストであった。

 

 

「で、早速なんだが・・・どこまで()()()いいんだ?」

 

「殺さなければなんでも。 誰に喧嘩を売ったのか、思い知らせてやりなさい。」

 

「了解だ・・・ククッ、まさかお前をそこまで怒らせるとはな。」

 

 

今回の作戦は至ってシンプル。

デストロイヤーにS09地区の司令部に出張(という形)で来てもらい、その周辺で怪しい者がいれば町中に配備された人形たちが確保、アルケミストが尋問して過激派を一掃するというものである。

 

・・・この時点で対象はトラウマ確定である。

 

この翌日にデストロイヤーが街に到着。

最低限の警備を司令部に残して全人形を動員した結果、過激派の隠れ家と構成員数名を確保するに至った。

 

そしてその日の夜、街の外れの倉庫で尋問が行われた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「・・・・・つまり、ただ謝りたかっただけだと?」

 

「は、はいっ! そうですっ! 迷惑をかけるつもりなんて何もっ!」

 

 

いざ尋問を始めてみればあっさりと口を割った、だけでなく思いもよらぬ展開になっていた。

 

なんと『人類の未来を願う会』そのものは、以前の暴行騒ぎがきっかけで内部分裂を起こし、今年の頭に主要メンバーが脱退。なんとなくで集まっただけの人々が残り、ただなんとなく鉄血の資料を集めるだけの集まりになったという。

あの写真そのものは脅迫目的で使われる予定だったのだそうだが、そういった犯罪行為からは手を引くべく、謝罪の手紙とともに鉄血のリーダー(だと思われている)の代理人に送られることになった。

が、ここに来て問題が起きる。なんと肝心の手紙と間違えて会のロゴが入った白紙の名刺を入れてしまい、気づかずに送ってしまったのだという。その結果がここ数日の騒動である。

 

なんとも締まらない結果となったが、一応この件については片付いたとして警察と司令部には報告すると伝え、彼らを解放しようとする代理人。しかしその手をアルケミストが止まる。

 

 

「? まだ何かありますか?」

 

「あぁ、一つだけな。 あの中身についてだが。」

 

 

そう言って指差した先には隠れ家から押収したものの山。

別に犯罪に関わるものは何もないのだが、アルケミストにとっては見過ごせないものでもあった。

 

 

「さて、これは一体なんなのかな?」

 

「そ、それは!?」

 

 

箱の中から取り出された一冊の本、というにはやや薄い漫画。

その表紙にはデストロイヤーのあられもない姿が描かれていた。他にも似たようなサイズの本が山ほどあり、そのいずれにも鉄血のハイエンドたちが描かれていた。

アルケミストの額にはすでに青筋が浮かんでいる。

 

 

「キサマら・・・私の家族に対し随分と好き勝手してくれているじゃないか・・・!」

 

「「「いや、それはフィクションであって・・・」」」

 

「黙れ。 たとえフィクションであったとしても、身内が汚されていることに変わりはない!」

 

「一応全て目を通しましたが、まぁ、その・・・随分と過激なシチュエーションのようでしたが。」

 

 

怒り心頭のアルケミストと、まぁ皆さんの性癖については何も言いませんがと冷たい目で見る代理人。

恐怖とショックと羞恥心で彼らのメンタルはすでに限界であった。

が、鉄血が誇るドS人形のアルケミストがこれで終わるわけがなく、般若のような様相からニヤリと笑みを浮かべると、

 

 

「本当はキサマら一人ずつ拷問にかけて二度とペンを握らなくしてやりたいところだが、今回は大目に見て、ここにあるすべての本を燃やし尽くすことで手を打ってやろう。」

 

「「「!?!?!?」」」

 

 

そういうとライターを取り出し、火がついたまま押収物の山に投げ入れるアルケミスト。

燃え盛る押収物(男の必需品)を見ながら泣き叫ぶ男たち。

それを見たアルケミストは再び笑みを浮かべ、

 

 

「・・・あぁそうだ、流石に全て燃やすのはかわいそうだからな。 ()()()()残しておいてやったぞ。」

 

 

そう言うと男たちの瞳に光が戻る。その目の前に出されたのは、開封厳禁と書かれ厳重にテープで閉じられた段ボール箱。

男たちの表情が凍りつく。

 

 

「そういえばこれだけ開いていなかったな。 一応目を通しておくか。」

 

「「「や、やめろ〜〜〜!!!」」」

 

男たちの声も虚しく、段ボールから出てきたのはどこにでもある普通のノート。が、その中身は『暗黒』とか『終末の』と言うワードで埋め尽くされており、開いた途端にアルケミストにSの炎がついてしまう。

 

 

「『閃光の守護者』。」

 

「グハァ!?」

 

「『魔眼の淑女』。」

 

「グフッ!?」

 

「『終末の鎮魂歌(エターナル・ダークネス・レクイエム)』。」

 

「ガハッ!?」

 

「クククッ、どうした? 私はただノートを読み上げているだけだぞ?」

 

「た、頼む! もうやめてくれ!」

 

「それは私が決めることだ。 さて次は・・・ふむ、これにしよう。(黒い表紙のノート)」

 

「やめろ! それは、それだけはぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「・・・ほどほどにして下さいよ、アルケミスト。」

 

「「「「うわぁ・・・」」」」

 

 

アルケミストの笑い声が響き渡った。

なお、翌朝警察に引き渡された彼らは口々に「いっそ殺してくれっ!」と訴えたらしい。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「・・・とまぁ、そんな面白いことになっていてな。 私も久し振りに楽しめたよ。」

 

「自業自得、かな? って45姉どうしたの!? なんか冷や汗かいてるよ!?」

 

「っていうか被害者の前で面白いことって言わないでよ!」

 

 

あの事件の翌日、喫茶 鉄血に集まりお茶していたアルケミスト、デストロイヤー、404小隊の面々は、終わってみれば実にくだらない騒動をネタに楽しんでいた。

 

 

「にしても男の人ってよくわかんないよね。 なんであんなのがいいんだろ?」

 

「知らないわよ。・・・もしかして指揮官も?」

 

「ちょっと! ()()指揮官をあんなのと一緒にするつもり!?」

 

「私のって・・・、そこまで言うならもっと積極的になろうよ416。」

 

「あっ、そういえば押収してた本の中に、本部で見たことがあるやつが混じってたよ。」

 

「グリフィンもいよいよ終わりね・・・で、9? どこで見たの?」

 

「ちょっと待って。 う〜〜〜〜〜ん・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、ヘリアンの部屋だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「・・・・・・・・・え?」」」」」




アルケミストのSっぷりを表現しようとしたら書いている自分にダメージがきた回。
皆さんももしかしたら、身に覚えがあるかも?



というわけでキャラ紹介です。

アルケミスト・・・鉄血のハイエンドモデル。今現在何をしているのか全くわからない人形。連絡先も代理人含め数名しか知らず、フラッと現れてはどこかへ消える神出鬼没な存在。究極のドSというコンセプトで作られただけあってその性能は折り紙つき。恐らく鉄血中最も家族意識の強い人形で、彼女の前で他の人形を貶すと社会的に死ぬ。

指揮官・・・S09地区の司令部に勤める男性。究極の朴念仁。やたらとモテるが全く気づかない。人形達のことを人形ではなく友人としてみており、それは鉄血であっても変わらない。実は代理人が店を開く際に全面協力した人。朴念仁であること以外はまともな人間。

警察官たち・・・名もない警察官。グリフィンの人形がいるのでぶっちゃけ出番のない人たち。税金泥棒とか言われているが、警察はいることに意味があるのである。グリフィン絡みの事件では一番被害を被る人たち。

人類の未来を願う会の会員・・・こういう組織にいれば人形たちの資料が手に入るはず、という理由で入会した同人作家たち。実際資料は手に入ったので本人たちは満足している。
後日釈放され、鉄血たちの家族愛を描いた全年齢版の同人誌を出し、アルケミストに許可をもらえたので同人活動を再開している。あの事件以来、何故かアルケミストと交流がある。
「YESロリータ、NOタッチ」







おまけ
45「私と9の濃厚なやつを描いてくれないかしら?(100万ドル)」

会員「描きましょう!」

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