喫茶鉄血   作:いろいろ

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アーキテクトはよく出るのにこの娘の出番があんまりないのはね・・・。


第六十話:感謝と感情

「・・・なぁ代理人。」

 

「なんでしょうかゲッコー?」

 

「あそこでカタログを眺める見目麗しい女性は誰だろうか?」

 

「鉄血工造のゲーガーですよ。 あと口説こうとする前に仕事してください。」

 

 

今日も平常運転な喫茶 鉄血。店内では代理人やそのダミーたち、マヌスクリプトにゲッコーに下級人形たちがせっせと働いている。

・・・気がつけば鉄血工造以上のハイエンド保有数となっているが、気にするものは誰もいない。

そんな店内の、四人席の大きいテーブルの上いっぱいにカタログを広げているゲーガーは、人形機能をフルに使って読み進めてはため息をついて閉じるを繰り返している。

またアーキテクト絡みかとも思ったが、苛立っている様子はないので違うと推測する。では何事だと代理人が近づけば・・・

 

 

「・・・『ギフト選び』、ですか?」

 

「ん? あぁ代理人か。 まぁそんなところだ。」

 

 

広げられているのはどれもギフトや贈り物の特集が組まれたもの。内容は花束や食べ物、アクセサリー類に旅行券など様々で、よくよく見れば発刊年数もバラバラだった。

おそらく今書店に並んでいるものや倉庫で眠っていたものをかたっぱしから集めてきたのだろう。

 

 

「それで、どなたにあげるつもりですか? ・・・・・まさかアーキテクトに?」

 

「ははは・・・代理人も冗談がきついな。」

 

 

私が奴にあげるはずないだろうと笑うゲーガー。まぁ常日頃の行いのせいなので何も言えないが、これでも別に嫌っているわけではないのだ・・・・・好きでもないが。

さてそうなると、あと一人くらいしか思い浮かばなくなる。

 

 

「サクヤさん、ですね?」

 

「そうだ。 サクヤさんには世話になってばかりだから、何かお返しをと思ってな。」

 

「ふふっ、サクヤさんのカウンセリングを受けてから、顔色も良くなりましたしね。」

 

 

サクヤがやって来る前のゲーガーはそれはもうひどい状態だった。年中暴走特急なアーキテクトを監視し、指揮能力に欠けるアーキテクトに代わって会社を運営し、アーキテクトがやらかせば自分が頭を下げる。

その結果、人工皮膚は荒れに荒れて目元にはクマが現れて元々白い顔もまるで歌舞伎役者のごとく真っ白。一度見かけた街の歯医者が素で心配するくらいには酷かった。

 

だからこそ、サクヤを迎え入れた後の変化は劇的なものだったという。サクヤとて生まれた世界が違うとはいえペルシカ並みの天才だし、人形開発主任としてのノウハウもあった。アーキテクトも完全に懐き、ゲーガーも話しているだけで楽になれたりもした。

そのため、一部の下級人形からは『天使』とか『救世主』とか呼ばれている。

 

 

「・・・今あの頃に戻ったら間違いなく過労で倒れてるよ。」

 

「迷惑をかけますね・・・。」

 

「いや、代理人が謝ることじゃないさ。」

 

 

そんな何度もやったやり取りに笑い合うと、再びカタログに目を落とす。どれも良さそうだがいまいちピンとこない物ばかりで、しかしそこそこいいものばかりなのでバッサリ切り捨てるわけにもいかない。

しかも・・・

 

 

「あの人のことだ、何をあげても喜んでくれるんだろうが・・・」

 

「だからこそ『一番』がわからないんですよね。」

 

 

思えば自分たちの要望やわがままは聞いてもらっているが、サクヤがわがままを言ったところをあまり見たことがない。言ったとしてもそれは人形のためだったりするので参考にもならない。

なにより、サクヤのことを知らなさすぎる。

 

 

「生まれも育ちも別の世界だから故郷のものもないし、今までの好みとか思い出の品とかもほとんど向こうにあるものだろう。 それにあまり踏み込んでいきたくない。」

 

「そう、ですね・・・・」

 

 

考えれば考えるほど泥沼にはまっている気がする。チラッと奥を見るが、ゲッコーはそもそもほぼ面識がないしマヌスクリプトの場合は自分で絵を描くとか言いそうだ。あいにくとゲーガーにそんな技術はない。

 

やっぱりシンプルに花束だろうか・・・いや、そのうち枯れてしまうか。

食べ物に関しても、サクヤ含めて鉄血工造三人組は料理が上手というわけでもない。

アクセサリーならどうだ・・・ありかもしれないがあまり興味がないようにも見える。

旅行券は・・・それなら全員でと言われそう、というか言われる

 

 

「じゃあみんなで旅行に行って、美味しいもの食べて、お土産プレゼントして帰ってきたらいいんじゃない?」

 

「ん〜〜〜そんなに詰め込んで大丈b・・・ってアーキテクト!?」

 

 

いつの間に現れたのか、目をキラキラさせたアーキテクトがそこにいた。

 

 

「やっほーゲーガーちゃん! ちなみに私は南国に行きたいぞ!」

 

「それはお前の要望だろ! しかもサクヤさんならそれでいいって言いそうだからダメだ!」

 

「こんにちはーって私がどうしたの?」

 

「わああああなんでもない!」

 

 

アーキテクトが連れてきたのか、今だけは会いたくなかったサクヤまでやってきた。どうにか隠そうとするがテーブル一杯の冊子を細身のゲーガーが隠し通せるはずもない。

 

 

「ん? 旅行に行きたいのゲーガーちゃん?」

 

「い、いや、そういうわけではなく・・・・」

 

「じゃあ今度みんなでいこうよ! そして南国でバカンス!」

 

「お前は黙ってろ! ・・・・その、サクヤさんはどこか行きたいところとかないか?」

 

 

もうサプライズは諦めて大人しく意見を聞くことにするゲーガー。アーキテクトがブーブー言っているが務めて無視する。

 

 

「行きたいところ・・・・・・・海、かな?」

 

「ほら! じゃあ南国で決まりだね!」

 

「頼むから黙っててくれ・・・・・なぜ海なんですか? いや、別にダメだというわけではありませんが。」

 

 

正直に言えばサクヤと海に全くの接点が思い浮かばない。このS09地区は内陸にあるし、もしかしたらサクヤもあっちにいた頃から海を見たことがないのかもしれないが・・・・・。

まぁ何であれサクヤの要望は聞き出せたので、それをもとに計画を練ることにする。

 

 

「・・・本当はサプライズが良かったんだが、私からのせめてものお返しだ。 受け取ってくれるか?」

 

「ふふふっ、お返しなんていいのに。・・・・でもありがとね、ゲーガーちゃん!」

 

「っ! あ、あぁ。」

 

 

サクヤの笑顔に不意にドキッとしてしまうゲーガーと、それを面白そうに見つめるアーキテクト。

いぢりネタが見つかった悪ガキのような表情を浮かべ、そっと耳元で囁く。

 

 

「・・・それはもしかしたら、恋かも。」

 

 

この後ゲーガーが顔を真っ赤にして慌てふためき、それをさらにアーキテクトがいじって追いかけっこが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

という予定だったのだが・・・・・。

 

 

「恋・・・・・そうか・・・これが恋か・・・・・。」

 

「え? あれ? ゲ、ゲーガーちゃん?」

 

 

アーキテクトの言葉など全く聞こえていないようで、楽しげにカタログを眺めるサクヤを見つめているゲーガー。想定外すぎる展開にアーキテクトの方が慌て始めるが、いまさら嘘だとか冗談だとか言える雰囲気でもなくなり一人微妙な表情で固まる。

 

 

「・・・・そうか・・・・・私はサクヤさんが好きなんだ・・・・。」

 

「うん? 何か言った?」

 

「・・・いや、なんでもない。 それよりどこに行こうか?」

 

「うーーーん、仕事もあるからあんまり遠出はしたくないんだよね。」

 

「なら一番近い場所は・・・ここだな。」

 

 

地図を広げ、二人で行き先を決め始める。今回ばかりは完全に蚊帳の外なアーキテクトだが、頭を整理すると再びニヤリと笑みを浮かべ、この旅行で二人をくっつけるべく策を練り始める。

 

この数日後、荷物をまとめた三人は車で海に向かう。

そしてそこで、忘れられない思い出を作るのだった。

 

 

end




ゲーガー、恋に芽生える。
でもサクヤさんって一応恋人がいるんですよね・・・もう会えないけど。
ところでその恋人、今は『海上にある』基地にいるんですよね。そして彼女たちが向かう先は海・・・・・・。


うん、言ってみただけで深い意味はないです。



ではキャラ紹介!

ゲーガー
鉄血工造の苦労人。アーキテクトの暴走に過労死寸前までいったが、サクヤのおかげでなんとか持ち直せた。
アーキテクトの何気ない一言で恋を抱いていると自覚する。
割と積極的になる予定。

サクヤ
完全に馴染んでいるが元は別作者様の作品の人物。
過去を振り切って前に進む強い人物で、ゲーガーもそこに惹かれた。

アーキテクト
我らがトラブルメーカー筆頭人形。
引かぬ、媚びぬ、顧みぬ、アーキテクトに逃走はないのだ!
ただし素の戦闘力はハイエンド最低クラスなので捕まったら終わる。



この話の続きは番外編で!
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