喫茶鉄血   作:いろいろ

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過激派がボッコボコにされるのはよくあるけど、穏健派とかただいるだけの人たちはどうしているのか。
まぁ穏健派でも人権団体なので人間>人形でしょうけどね。


第六十四話:人類人権団体

「失礼・・・・私、こういうものでして。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 

とある日の喫茶 鉄血。ごくごく平穏な一日は、突如として現れた団体客によって終わりを告げる。全員がスーツ姿という妙に身なりのいい団体のリーダーと思しき人物が出した名刺、そこには、代理人ら人形にとって天敵とも言える名前が記されていた。

 

 

「人類人権団体・・・『マイスターの会』・・・・・会長。」

 

「えぇ、初めましてですな、代理人さん。」

 

 

代理人が名刺を読み上げた瞬間、同じくカウンター内にいたイェーガーは服の内側の拳銃に手を当て、接客中だったリッパーも意識を集団に向ける。また本体の反応を受け取ったDはダミーたちを次々と起こし、マヌスクリプトとゲッコーを店の奥に引っ込める。

 

 

「・・・・・ご用件は?」

 

「ここでは人が多すぎます・・・・・場所を変えたいのですが?」

 

「・・・二階に個室があります。 こちらも護衛をつけさせていただきますがよろしいですね?」

 

「えぇ、構いません。」

 

 

代理人はイェーガーとリッパーに指示を出し、共に二階に上がる。Dには本体命令で指示を出し、残りの業務を引き継がせた。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「起きなさい11、緊急任務よ。」

 

「えぇ・・・またアーキテクトの失敗作ぅ?」

 

「それの方がまだマシ・・・いや、それもそれで嫌だけど。」

 

「もうないかと思って油断してたわね・・・・・人権団体が代理人に接触したわ。」

 

 

それを聞くと、G11もすぐさま支度を始める。404小隊、かつてはNot Found(存在しない)小隊と呼ばれていた頃に、代理人と人権団体とは因縁関係にあった。

人形の待遇改善直前、彼女たちが最も多く()()してきたのは、他ならぬ人権団体の過激派である。

 

あれから随分経ったが、まさかこのタイミングで再び仕掛けてくるとは。

 

 

「被害は?」

 

「まだよ。 Dからの報告では、連中は六人ほど。 代理人は部下二人を連れて個室に入ったそうよ。」

 

「冗談でしょ? いくら人形だからって分が悪すぎる。」

 

「起こっちゃったものはしょうがないよ。 それよりどうするの45姉?」

 

 

聞いた9だったが、今の状況ではどうすることもできないというのが現状だ。連中が武器を所持しているのか、悪意を持って接触したのかさえわからない以上、こちらから仕掛けることもできない。

 

 

「悩んでいても仕方ないわ・・・・404小隊、出るわよ。」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・いい店、ですな。 品揃えもそうですが、雰囲気もいい。」

 

「それはどうも。」

 

「ふふっ、人形が経営する世界で初めての飲食店。 いずれは当たり前になるであろう、第一歩でしょうか。」

 

「・・・・・・・。」

 

 

個室に入ること数分、代理人はこの男の考えが読めないでいた。人目を避けたいというからには、世間話などではないのだろう。しかし一方で、人権団体と言う割には人形に対しての敵意というか、蔑みがあまり感じられない。先ほどもこの店を、『いずれ当たり前になる』といったことから、むしろ人形の社会進出を肯定しているようにも思える。

 

 

「それで・・・・・本題はなんでしょうか?」

 

 

わからないなら聞き出す。今代理人にできるのは、それくらいだった。この男はこの店に、代理人に何を求めてくるのか・・・・・代理人は静かにその答えを待った。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

『それで・・・・・本題はなんでしょうか?』

 

「ついに聞き出すつもりね・・・416?」

 

『配置についたわ。 結構微妙な角度だけど、いけるわよ。』

 

『こちらG11、こっちも問題ないよ。』

 

『あれ? ゲパードはついてこなかったの?』

 

『ついてくる前に眠らせたよ・・・・・・「人殺し」は私たちだけでいい、そうでしょ45?』

 

「そうね、それが私たちだもの。」

 

 

Not Foundでなくなって(存在するようになって)、45たちは多くのことを手に入れた。皆笑うようになり、それぞれが自由でいられるようにもなった。その要因の一端である代理人には、皆感謝している。

だから今だけは、あの頃の空っぽな『人形』に戻るのだ。

 

 

『お願いしたいことは、他でもないあなたにしかできないことであると考えています。』

 

(さぁ・・・それが遺言にならないように気をつけなさいよ『人間』。)

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・聞きましょう。」

 

 

人権団体からのお願い、そんな日がくるなど思っても見なかったが、現に目の前にそれがある。人間五人相手なら、全力で抵抗すればねじ伏せることもできるだろう。だがそれは、全く関係のない多くの客を巻き込むことになりかねない。

あの頃とは違う、『ただの人形』ではなくなった代理人には、そんな選択肢はなかった。

そして、人権団体会長が口を開き・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グリフィン、IoPとの和解・・・その仲介役となって欲しいのです。」

 

「・・・・・・・・・・・仲介、役?」

 

「・・・あなたは、我々人権団体についてどうお考えですか? 正直に言ってくださって構いません。」

 

 

人権団体。

それはAIというものが人類から仕事を奪うと囁かれ始めた頃から存在し、今日では人形たちを迫害することが目的となっている集団。

例外こそあれどそういうものであると、代理人は包み隠さずに答えた。それを聞いた会長は納得するように頷く。

 

 

「そう、今や人権団体は破壊者、あるいは異端者と同義です。 それもこれも、ごく一部の過激派と呼ばれる者どもが行う活動のせいです。」

 

 

会長・・・以前は人権団体の理事長を務めていたというこの男は、数年前に理事長の座を追われて以降、増大する過激派に手を焼いていたという。

当初の目的は人間の生活の基盤たる職、それを守りたいがための活動が、今ではただのアンチ人形集団となったという。

 

 

「しかしここ最近、その活動も減ってきました・・・・・大人しくなったわけではなく、単純に数が減っているそうですが。 ですが私は、これがチャンスであると考えました。 今や過激派よりもわずかに多くなった我々はグリフィンやIoPと和解し、過激派を根絶やしにするためです。」

 

「・・・・理由はわかりました。 ですがなぜ私に?」

 

「あなたは鉄血工造・・・いえ、元鉄血ではありますが、グリフィンともIoPとも現鉄血工造とも交流がある。それでいて中立であり、人間社会にも密接に関わっていらっしゃる。 そんなあなただからこそ、我々と人形をつなぐ架け橋になっていただけると考えております。」

 

 

勝手なことではありますが、お願いします。そう言って頭を下げる会長に、代理人は戸惑っていた。

過激派が一部であることは知っている。その陰で穏健派がいることだって知ってはいたが、あまりにも急な展開についていけていないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・わかりました、私でよければお受けします。」

 

「! 本当ですか! ありがとうございます。」

 

 

悩んだ末、代理人が出した答えはYES。

人形のためとかではなく、人間人形双方にとってこの方がいいはずだと思ったからだ。

それと同時に窓の外からの射抜くような視線がふっと消える・・・・・おそらくは404小隊だろうが、彼女たちも敵ではないと判断したようだ。

 

 

「詳細は追って連絡させていただきます。 本当にありがとう。」

 

「こちらこそ、その言葉が嘘偽りでないことを信じています。」

 

「えぇ、あなたの信頼に背くことのないよう、頑張りましょう。」

 

 

そこでようやくフゥッと一息ついた代理人。つられて控えていたイェーガーとリッパーも額の汗を拭い、警戒を解く。

今ここでは小さな一歩、だがそれは、歴史的瞬間への確かな一歩だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話は変わりますが、実は個人的にお願いしたいことがもう一つございまして。」

 

「? なんでしょうか?」

 

 

お願い・・・のところで苦笑していたので、これ以上の話ではなさそうな雰囲気。そこで会長が取り出したのは、六枚の真っさらな色紙だった・・・・・・・色紙?

 

 

「大変勝手なお願いではありますが、こちらにサインをいただけないでしょうか?」

 

「・・・・これは?」

 

「あぁ、申し遅れました。 実は私、こういったこともしておりまして。」

 

 

そして再び差し出される名刺。黒地に白で書かれたそれは・・・・・

 

 

「人形ファンクラブ・・・カテゴリー『鉄血工造』・・・・・種別『代理人』・・・・・・会員No.00・・・」

 

「お恥ずかしながら、私はあなたの個人的なファンでもあるんですよ! あ、あと今日の護衛の皆さんもそうですよ。」

 

 

そういうとビシッと名刺を差し出す五人の護衛。その名刺の番号は、それぞれ01から05だった。

 

 

「わ、私のファンクラブ・・・・ですか? なんでそんなものが・・・」

 

「美しい人形がそこにいる、それだけで十分では?」

 

「で、ですがなぜ私が・・・・・」

 

「あなたがお美しいから、他にも理由はありますが、語れば日が変わってしまいます。」

 

「いや、その・・・正直恥ずかしいというか・・・・・」

 

「そこをなんとか、お願いいたします!!!」

 

「「「「「お願いいたします!!!」」」」」

 

「え、えぇ〜〜〜〜・・・・・」

 

 

その後、困り果てる代理人にいよいよ404小隊が介入、懇願する会長以下ファンクラブ員を全員店から追い出すことで解決した。

後日、あまりにも不憫だったので色紙を書いて送ったところ、やたらと達筆な感謝状と最高級のワイン、見るからにいいものを使っていると分かるメイド服(サイズぴったり)が送られてきたため、代理人は別の意味で警戒度を上げるのだった。

 

 

 

end




いつから人権団体が悪者だと錯覚していた?
こういうめっちゃ有能なポンコツを描くのって楽しいんですよねぇ。


てな訳で解説。

人類人権団体『マイスターの会』
人権団体最大の穏健派。名前の由来は、マイスターは自身の作品に命を吹き込む→命の宿った人形を祝福するという意味合い。
人権団体と名乗ってはいるが、ようは人形のような無休で働く環境に人間を働かせるべきではないという感じの団体。
ファンクラブ会員者が最も多い。

会長
代理人に一目惚れしたが、年齢を理由に断念。しかしその熱意だけは消えず、ファンクラブを設立した。
実は喫茶 鉄血に行く大義名分が欲しかっただけでもある。

護衛たち
代理人ファンクラブの最初の五人。
そんなわけで当然武器など持っているはずもなく、何かあっても手を出すことはない。
たとえ会長が殴られようとも代理人>>>>>>>会長である以上止めもしない。

404
久しぶりに仕事モードで行ったらこんなオチ・・・・・最近こんなのばっかだね。
なお、彼女らの中で最もファンクラブが多いのは416だが、最も濃いのは45のところである。



あ、この人権団体(笑)はフリー素材だよ☆
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