喫茶鉄血   作:いろいろ

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こんなタイトルを書いておきながら私はあの映画を見たことがありません。
貞子とかゴジラは見にいくんですけどね・・・。


第六十五話:「私たち」「入れ替わってる!?」

人形は機械で動いている。それはどれだけ外観が人間と似ていて、どれだけ表情豊かであっても変わらない事実である。電子脳から全身へ信号を流し、いくつものパーツが一つの(人形)を動かしているのである。

 

ところで人形の場合、予備の素体に意識を移すのも全て電気信号である。人の目には見えないそれらが一瞬で駆け巡り、さっきまでとは全く違う姿になっても問題なく動けるのだ。

・・・・・・つまり、わずかな電気信号のズレで、大惨事にもなるということである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、416と9は隣町のスーパーに訪れていた。基本的に暇だが給料は出るという、それはそれは羨ましい立場にいる404小隊、そんな彼女らは暇な時間を思い思いの過ごし方をする。

例えばG11は喫茶 鉄血やその他の喫茶店でひたすら窓の外を眺め、45は料理をしたり妹の動向を伺ったりやたらとひっついてくる40から逃げ回ったり、40は45を追いかけたり散歩に行ったり他の人形と喋ったり・・・そんな感じである。

そして416と9は、こうして二人でどこかに出かけるのがほとんどだった。

 

 

「ねぇ416、あと何買ってくの?」

 

「これで全部・・・・・あ、新しいアルバム買おうかしら。」

 

「アルバム?」

 

「えぇ、もう今のアルバムも写真を入れておけるスペースがなくなってきたから整理のついでにね・・・・・9の寝顔の写真だけのとか。」

 

「もうっ、416!」

 

「ふふっ、冗談よ。」

 

 

なんとも甘ったるい空気を撒き散らしながら並んで歩く姿は、S09地区を中心にその周辺の街では今や名物だ。社交的な9と面倒見のいい416はどこでも人気者であり、そんな二人が付き合っていることはすでに誰もが知っている。

 

 

「でも帰るには少し早いのよね・・・・・9?」

 

「え? あ、なんか美味しそうな匂いがして。」

 

 

9の言うとおり、どこかから香ばしい匂いが漂ってくる。匂いを辿ると、どうやら地下の飲食店コーナーからのようだ。

 

 

「ねぇ見にいかない? 何か面白いのがあるかも!」

 

「あ、こら走ると危ないわよ!・・・・・全く。」

 

 

こういう妙に子供っぽいところが9らしいといえばらしいので、416も呆れつつ苦笑する。まぁ実際食欲をそそられる匂いなのだから、無理もないだろう。

すでに階段の下にまで行っている9を追い、416も階段を降りようとしたその時、不意に足が沈むような感覚に襲われる。いや、正確には足に異常はない、原因はその足元だった。清掃後だったのかそこは水に濡れたままで、おそらく日の当たりにくい角度だったのかまだ乾ききっていなかった。そこに踏み込んだ416の足がズッと滑り、階段を踏み外したのだった。

 

 

「なっ!?」

 

「416危ない!!!」

 

 

落ちる416と、それを受け止めようとする9。それらがまるでスローモーションのように感じ・・・・・・・・次の瞬間には星が舞った。

 

 

「ガッ!?」

 

「ぎゃっ!?」

 

9はちゃんと受け止めた、受け止めたのだが勢いそのままに416の頭と9の頭が衝突。そのまま9を押し倒す形で地面に転がる。

ほんの一瞬だけ意識が飛び、しかし遅れてやってきた激痛に頭を抱える二人。そのままゴロゴロと転がり続け、数分経ってようやく起き上がる。

 

 

「いててて・・・・4()1()6()大丈夫?」

 

「え、えぇ・・・・・9()のほうは?」

 

 

互いに安否を確認し合う。

『416』が416を、『9』が9を呼んで・・・・。

 

 

「「・・・ん?」」

 

 

二人が同時に顔を上げる。そこには見慣れた()()()()・・・・・いや待て、鏡もないのになぜ自分の顔が?

そうして今度は視線を下に向ける。こちらも見慣れた服装と体型だ・・・ただし、想い人のものだが。

そしてゆっくりと自分の顔を触る。何もないはずの右目には傷跡の感触が、何もつけていないはずの前髪には十字の髪留めが・・・・・。

同時に察し、そして叫んだ。

 

 

「「い、入れ替わってるぅうううううう!?!?!?」」

 

「え、え!? ど、どどどうしよう416!?」

 

 

あたふたしながら涙目で慌てる『416』。

 

 

「お、落ち着いて9。 まずは落ち着きましょう!」

 

 

手先が震えているがなんとか冷静さを保とうとする『9』。

見るものが見れば目を疑う光景だが、残念なことに事実である。頬をつねってみたり一度スリープモードに入ってみたり胸を揉んでみたり(『9』に止められた)してみたが、やはりこれは現実である。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

一時間後、スーパーの屋上。

一応子供の遊び場のようになっているが、一つ下の階にゲームコーナーが出来てからは誰も来なくなった場所である。

そこのブランコに、なんともいえない表情で黄昏る二人の姿があった。

 

 

「・・・どうしよう・・・・・。」

 

「・・・・・ペルシカに診てもらうのが確実よね。」

 

 

見るからにシュンとなる416‘*1と、冷静ではあるがやはり落ち着かない9’*2。あれからもう一時間も経つというのに、なんの兆しも異常も見られない。

そう、なにも異常がないのだ。その事実が、もう元に戻れないかもしれないという恐怖を煽る。

 

 

「・・・・・そう・・・わかったわ・・・・・・えぇ、ありがとう。 それじゃあ。」

 

「・・・? 416?」

 

「ペルシカは今、出張で国外にいるそうよ。 事情を話してすぐに戻ってきてくれるらしいけど、早くても明日になるわね。」

 

「・・・・・・・。」

 

 

再び俯く416‘、そこの9’はポツリとこぼす。

 

 

「・・・ごめんなさい、私の不注意のせいよ。」

 

「そんな! 416は悪くないよ!」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、私が9を巻き込んでしまったのは事実よ。」

 

 

そう、ただ巻き込まれただけ。それがわかっているからこそ、互いにそれ以上なにも言わなかった。

 

 

「・・・・・帰りましょう、9。」

 

「・・・うん。」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

S09地区、喫茶 鉄血。

なんとかここまで帰ってこられた二人は、こういう自体にも冷静に対処できる協力者として代理人に相談する。代理人も事情を察し、客はおろか店員にも一切事情を話さずに奥の部屋に案内する。

 

 

「それはまぁ・・・災難、でしたね。」

 

「もう一周回って冷静よ。 きっとペルシカなら直せるでしょうしね。」

 

「今は純粋に楽しいかな、こんな経験そうないし!」

 

 

ここまでの間でなんとか折り合いをつけ、むしろ状況を楽しみだした416’。だがここまではなんとかなっても、ここから先が問題だった。

まずこのままでは司令部は大混乱だ、とくに45あたりは大変なことになるだろう。

カミングアウトした場合、その被害は抑えられるが気を使われ続けるというなんとも居心地の悪いことになる。逆に隠し通す場合、416は9を、9は416をというほぼ真逆な人形を演じることになる。

 

 

「まぁそれはそれで面白そうだけどね!」

 

「あなたのポジティブさが羨ましいわよ9・・・。」

 

「ふふっ、まぁそうですね・・・混乱は起こるでしょうがそれだけですので、お好きなように過ごされては?」

 

 

そう言って9‘の頭を撫でる代理人。いつもは撫でる側であるせいか、9’はどうにも恥ずかしそうだった。

 

 

「困ったことがあれば、すぐに言ってください。 先日のお礼もありますし、協力しますよ。」

 

 

代理人の助言・・・というか後押しをもらって、二人はこのまま『416と9』で行くことに決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、想像以上に難易度が高いことを思い知らされる。人によって仏頂面とも言われる416を演じるのは、いつも笑顔の9だ。逆に416は普段まずないほど笑顔を維持しなければならず、もうすでに口角がヒクついている。

 

 

((めっちゃシンドイ・・・!))

 

 

しかも二人が付き合っているのは公然の事実、いつもは甘える側の9が演じる416‘は毅然としていなければならず、甘えなれない9’は顔を真っ赤にして腕にしがみついている。

そして(9‘にとっては)運の悪いことに、416‘はそんな9’の姿にSっ気が首をもたげる。

 

 

「あら9、今日は随分と甘えん坊さんね?」

 

「っ!? う、うん・・・今日はそんな気分・・だから。」

 

 

そう言うとますます顔を赤くする9‘。こうなってしまえばもう416’は止まらない。普段は澄ました表情の416に仕返しできる唯一のチャンスだ。

わざとらしく肩に手を回して歩いてみたり、路地裏に引っぱっていってキスしたり・・・その度に顔を赤くして睨んでくるが、まぁまんざらでもなさそうだ。

そのおかげか、今日の416はちょっと積極的なんだなという認識で済んでおり、それは司令部についてからもなんとか通せた。

 

 

「あら45、ただいま。」

 

「た、ただいま45・・・・姉。」

 

「? なんかいま変な間が・・・」

 

「気のせいよ。」

 

「・・・・・なんか怪s「見つけたよ45! どうして逃げるの!?」うげぇ! 40!? くらえ閃光弾!」カッ!!!

 

「甘いよ! 特注サングラス!」スチャッ

 

「ええいこのシスコンストーカー(ブーメラン)め!」

 

 

猛ダッシュで逃げる45と、それを追う40。誰も止めないあたりよくあることなのだ。ともかく一番の難関を脱した二人は、冷や汗をかきつつもなんとか自室に転がり込んだ。

 

 

「あ゛〜〜〜〜疲れたぁ〜〜〜・・・・」

 

「まったく・・・悪ふざけが過ぎるわよ9。」

 

 

ムスッとする9‘に、416’はニヤリと笑みを浮かべる。自分の姿に欲情するわけではないが、あの416が今や自分の好きにできるとなると・・・・・そこまで考えたらあとは体が動いていた。

怪訝な表情の9‘の腕を引き、ベッドに押し倒す。目を白黒させている間に両手をひとまとめにして片手で抑え、動きを封じる・・・・・うん、やっぱりAR人形はパワーが違う。

さてそんなパワー差に抑えられた哀れな9’(SMG)は、ようやく416‘の魂胆に気がついた。

 

 

「・・・あとで怖いわよ9・・・・・」

 

「んふふ・・・・そう言ってられるのも今のうちだよ416?」

 

 

ギシッと軋む音が鳴り、二人の夜が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、ペルシカに『迎えに行くから喫茶 鉄血で待ってて。』という電話をもらい、開店前から待たせてもらう二人。

いつになくツヤッツヤな416‘と、ぐったりしながら机に伏せる9’。時々顔を赤くして首をブンブン振るあたり、昨夜のことはまんざらでもなかったのかもしれない。

 

 

「ふふふ、これは戻った時が怖いですよナイ・・・416さん。」

 

「そうね、だから今のうちに楽しませてもらうわ。」

 

「・・・まだ何かする気?」

 

「はい、アーン。」

 

 

ケーキを一口、フォークに刺して近づける。何故だろう、普段からやってることなのに今日ほど恥ずかしいと思ったことはない。

口を一にして拒み続けると、諦めたのか416‘はフォークを置いてジュースを飲む・・・・・そしていきなり唇を重ねてきた。

 

 

「んむっ!?」

 

「・・・・・はい! これとアーンとどっちがいい?」

 

「・・・・・・・・・・アーン、で。」

 

「はいっ、アーーーーン!」

 

 

こいつ、戻ったら絶対泣かす!

そう誓った9’は、ペルシカが迎えにくるまで羞恥と幸福感に包まれながら待つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この日の夜、ようやく元に戻ると同時に今までにないほど416は攻勢に出たことは言うまでもない。

 

 

 

end

*1
9が入っている416

*2
416が入った9




無邪気っ子な416が描きたかった、それだけ。
ぶっちゃけ喫茶 鉄血に行く意味ないとか言ってはいけない、それを言われちゃおしまいだぜ?(焦り)


というわけでいろんな紹介

入れ替わりについて
なんかごちゃごちゃ書いたけど深い意味はない。
お姉さんしてる9と困り顔の416が書きたい。そう思っただけ。

416‘
9からすれば笑わないことがどれほどしんどいかがよくわかった一日。
やっぱり笑顔は一番だよ!

9’
9・・・あなたすごいわ・・・
翌日、9‘の時に笑顔でいすぎていつもの表情に違和感が出た様子。

ペルシカ
なるほど・・・入れ替わりというのもありなのか・・・・・

代理人
いろいろと察してくれるお姉さん。
困ったら警察より先にこっちを頼ろう。



M16とROに合いそうなカップリングを探してます。
いい意見があったら是非教えてください!

45姉?独身コース真っしぐらだよ!
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