喫茶鉄血   作:いろいろ

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今日は代理人はお休み。
スペック的には同等のDが、店を取り仕切る!


ドルフロのコンサート行きたいけどお金が・・・


第六十六話:店長代理

「では、お願いしますよ。」

 

「うん! 任せてOちゃん!」

 

 

そう言って荷物を持って歩いていく代理人と、それを見送るD。

今日から数日間、代理人はいない。どれほど高性能なハイエンドモデルといえど、日々自分たちでできるメンテナンスには限度がある。特に彼女の場合は鉄血工造製の中でも割と初期に製造されたモデルであり、技術的にも完成しきっていなかった部分の含めてメンテナンスは欠かせない。

そして今日は、これまでの定期メンテナンスではなく数日間に渡る徹底的なメンテナンス、むしろオーバーホールとか言われてもおかしくないようなレベルだ。

 

そんなわけで代理人が店を離れる間、代理人と同等のAIを持つDが店長代理として取り仕切ることとなったのだ。

 

 

「さて、じゃあ早速いってみよー!」

 

『おー!』

 

 

こうして、店長代理Dの数日間が始まった。

 

 

 

 

 

 

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「こんにちは代理n・・・あ、今日からいないのよね。」

 

「あ、45さん。 えぇ、今日から私が店長代理です。」

 

「店長代理・・・代理人の『代理人』、ってことかな?」

 

「なんかややこしくなりそうですね。」

 

 

代理初日の最初に訪れた人形は、ここ最近一人で訪れるようになったUMP45・・・・・なのだがなんだか落ち着かない様子で店内を、そしてメニューを見渡す。特にドリンクメニューや期間限定の欄を凝視し、そして解決したのかホッと息をつく。

 

 

「ん? どうしたの45さん?」

 

「え゛っ!? いや、なんでもないわよ。」

 

「?」

 

 

挙動不審な45に首をかしげるD。するとそこへ元気よく扉を開く人物が。

 

 

「あっ! ここにいたのね45! お姉ちゃんも誘ってよ!」

 

「ギャー! いちいちくっつかないでよ40!」

 

「そんなこと言って、あたいがいなくて寂しかったのをごまかしてるんじゃないの?」

 

 

入店早々45に抱きつき、ごく自然流れで隣の席に座る40。というか普通向かい合う丸テーブルで隣に座るあたり、寂しかったのは40の方なのかもしれない。

そんな40はメニューを眺めつつ、ポツリと一言。

 

 

「・・・ここ、タピオカないんだね。」

 

「ブフゥ!? な、なんでタピオカなのよ!」

 

「え、一回やってみたくない? 『タピオカチャレンジ』・・・・・あ、ごめん。」

 

「謝らないでよ悲しくなるから!」

 

 

タピオカチャレンジってなんだろう・・・そう思いつつ45が探していたのがタピオカドリンクであったことを理解したDはすぐさま厨房に戻り、あちこち探し回って何時ぞやに買ってみたタピオカを発見する。

善意100%、一切の邪念も何もない純粋な気持ちで用意したタピオカドリンクを、今なおワイワイ騒ぐ二人の元に持っていく。

 

 

「お待たせしました! ご注文・・・じゃないけどタピオカミルクティーです。」

 

「ってなんで持ってくるのよ!?」

 

「あ、ありがとー! ・・・・・うん、美味しい!」

 

「普通に飲むな!」

 

 

さてそこで45はハッとDを見る。その目は何かを期待したようなキラキラを放っており、逆に45はこめかみをひくつかせる。

 

 

「あの、よろしければ『タピオカチャレンジ』なるものを見せていただけませんか!」

 

「・・・だって、45。」

 

「なんで私なのよ!?」

 

 

45は決して冒険家ではない、むしろ堅実に生きるタイプだ。作戦においても成功するかどうかを第一とし、失敗のリスクを負ってまで全員生存を狙いはしない(404結成時の場合)。

そんな彼女が、果たして『アレ』をやるか・・・・・まぁ失敗する未来が見えているのが悲しい現実だが、やれば確実に何かを失うのだ。

 

 

「・・・・・・」キラキラ

 

「うっ・・・・・・・あんたがやりなさいよ40。」

 

「え? 別にいいけど・・・」

 

 

そう言うと40はタピオカを手に取り、ストローを口にくわえて椅子にもたれかかる。そしてゆっくりとコップを自身の胸部に置き、安定したところで手を離し・・・・・・

 

 

「・・・・・・ん。」

 

「チクショーーーーー!!!!! みんな大っ嫌いだぁああああああ!!!!!」

 

 

45が泣きながら机に突っ伏した。結果が見えていた40と周りの客は同情の目を、ようやく意味を理解したDはちょっと申し訳なさそうな目を45に向け、お詫びにケーキを置いていった。

 

 

「・・・・・その、45・・・あたいは気にしないよ!」

 

「グスッ・・・ふぇええええん・・・・・」

 

「あぁほら泣かないで・・・よしよし大丈夫だよ。」

 

 

まぁ結果的に45と40の溝が埋まったので結果オーライではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

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翌日。

前日の反省から自分の興味本位での行動は慎むと決めたD。そんな心機一転気分の中、訪れたのは喫茶 鉄血メンドクサイ客リスト上位に乗っかりつつある人形、スプリングフィールドである。

容姿端麗、頭脳明晰、面倒見がよく料理上手で若手人形たちのお姉さん・・・・・それが()()()()彼女のイメージだ。

 

 

「指揮官・・・どうして私に振り向いてくれないんですかぁ・・・・」

 

「ほんっっっっっっっとうにごめんなさい! すぐにこの飲んだくれを引きずり出しますから!」

 

 

指揮官が絡まなければ、であるが。

昨夜何があったかは知らないが、相当量を飲んでいるせいか完全に潰れているスプリングフィールドを、同室であり妹のM1ガーランドが起こそうとする。だがスプリングはまるで机が愛しの指揮官であるかのようにしがみつき、全く離れようとしない。・・・・・ガーランドの額にはすでに青筋が浮かんでいる。

 

 

「・・・あー、大丈夫ですよガーランドさん。 いまはそっとしときましょう。」

 

「・・・・・わかりました代r・・じゃなかったDさん。 コーヒーをもらっても?」

 

「かしこまりました!」

 

 

飲んだくれの残姉(スプリングフィールド)は放っておき、運ばれてきたコーヒーをすするガーランド。だがチラチラと後ろで寝息を立てるスプリングを気にするところを見ると、決して嫌っているわけでもなさそうだ。

 

 

「はぁ・・・・・あの非常識さがなければ全力で応援しているんですよ、あの非常識さがなければ。」

 

「私、その、()()()()彼女を見たことがあまりないんですが。」

 

「この地区に来る前は・・・まぁイメージ通りのちゃんとした姉でしたね。 自分よりも他人に気を遣う・・・遣いすぎるくらいに。」

 

 

ここで指揮官と会えて、ようやく自分のやりたいことを見つけたんです、と嬉しそうに語るガーランド。妹としては、やはり姉の恋路は応援したいんだろうとDは思う。実際、自分ももしOちゃん(オリジナル)が何かやってみたいことを見つければ、全力で応援するだろう。

だから、ガーランドの気持ちはよくわかる・・・・・ついでに青筋が浮かぶ理由も。

 

 

「えへへ〜・・・・・大丈夫ですよ指揮官・・・今ならガーランドも付きますから・・・・・」

 

「やっぱり叩き起こして連れ帰ります。 コーヒーありがとうございました、お代はここに置いておきますね。」

 

 

寝ながらにやける姉にげんこつをかまし、ズルズルと引きずって帰るガーランド。

Dはそれを見送りながら、そんな姉妹がちょっと羨ましいなと思うのであった。

 

 

 

 

 

 

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さらに翌日。

その日訪れたのは結構珍しい組み合わせの三人、別地区の指揮官であるレイラとその娘のユノ、そしてどこで知り合ったのかS08地区にいるはずの『UMP9』である。

 

 

「あ、ユノちゃん! こんにちは〜!」

 

「こんにちはDさん! オレンジジュースとケーキ!」

 

「あの・・・いいんですかレイラさん?」

 

「いいのよ、好きなもの頼みなさい()()()。」

 

 

三人でテーブルを囲み、ケーキをつついたり紅茶を飲んだり。さっきレイラがUMP9を『ノイン』と呼んでいたが、どうやら名前をもらったらしい。

そういえばいつもの副官さんがいない気がするが。

 

 

「あの・・・ナガンさんは今日は?」

 

「・・・・・・。」

 

「? お母さんが、『今日はお仕事があるから来れないって』って言ってたよ。」

 

「・・・レイラさん、娘に嘘つくのはどうかと。」ボソッ

 

「しょ、しょうがないでしょ! あのままじゃ書類終わらなかったんだから。」ボソボソ

 

 

なるほど、ようは黙って出てきたということらしい・・・・・あとが怖いなこれは。

 

 

「そういえばノインさん、今もまだあのお店で働いてるんですか?」

 

「ん? うん、でももうそろそろやめるつもり。」

 

「え? なんでよ。」

 

「お金も溜まってきたから・・・・・本格的に旅に出ようかなって。」

 

「え! ノインお姉ちゃん旅するの!?」

 

 

子供らしく目をキラキラさせながら聞くユノに、ノインは苦笑しながら話す。

そういえばもともと彼女は旅に出たいと言っていたし、そのことを先方にも伝えているのだろう。Dは直接会ったことはなかったが、彼女は異世界の人間だ。だから、この世界での自分を見つけるために旅に出るらしい。

 

 

「そう・・・・・じゃあはい、これ。」

 

「え・・・・・番号?」

 

「そう、私の端末のね。 隣のは私の司令部のやつだから、困った時は遠慮しないで連絡ちょうだい。」

 

 

そう言ってニカッと笑うレイラ。

ノインは、思う。本当にここの人たちは明るくて親切だ。人間も人形も、グリフィンも鉄血も関係なく、気がつけば()()()では手に入らなかったものが、身の回りにあふれている。

 

 

「あ、じゃあここの番号も教えておくね! それとこっちがOちゃんのやつ、こっちが鉄血工造のやつだよ。」

 

「・・・・・みんな、ありがとう。」

 

 

幸せって、こういうことを言うのかな・・・・・今はもう会えないかつての仲間たちに、そう呟く。

願わくば、いつまでもこの日々が続きますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と楽しそうにしておるのぉ指揮官?」

 

「げっ!? ナガン!?」

 

「あ、おばあちゃん!」

 

「いらっしゃいませ、ご注文は?」

 

「うむ、ではアイスコーヒーを頼もうか。 ・・・・で? 司令室にあった山のような紙は一体なんじゃろうな指揮官?」

 

(・・・そっか、これがOちゃんがお店を開いた理由なんだ。)

 

 

小柄な人形に締められる大の大人という構図を笑いながら見守るDは、その日一つの決心を固めたのだった。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「ただ今戻りました・・・・・・D?」

 

「Oちゃん。 私、自分のお店を開きたい! Oちゃんみたいに、いろんな人に笑顔になってもらいたい!」

 

 

代理人がメンテナンスを終えて帰ってきた日、Dはその想いを伝えた。

これが、後の喫茶 鉄血2号店誕生のきっかけとなるのだが、それはまた別のお話。




本作には独自設定が多々あり、原作と異なる場合がございます(今更)
今回はDが見た喫茶 鉄血、という感じのお話です。ここまで書いてきましたが、コラボ回含めて多くのお客さんが訪れました!
改めまして、今後ともよろしくお願いします!


というわけでキャラ紹介

D
代理人の高性能ダミー。
ダミーと言う名の別機体のような感じになっているが、代理人の命令にはしっかりし違うので一応ダミー。
彼女を主役にしたスピンオフもありかな・・・・・誰か書いてもええんやで?

45
いつもの彼女。
タピオカチャレンジなるものを知った時、同時に出てきたのが彼女でした。・・・・・悪気はないよ?

40
シスコンではないが妹が大好き。
なんか微妙に避けられている気はしていたが、今回でちょっと近づけた。

春田さん
45姉とは別ベクトルで残念な人形。
聖母の皮を被ったサキュバスみたいな感じ。

ガーランド
そんな春田さんの最後のストッパー。最近実力行使に出ることが増えた。
おっぱいが大きい。

レイラ&ユノ
別の地区の指揮官とその娘、コラボ回から登場。
本作品では衝撃の事実が明らかにされたが、ここでは一切関係ない。

ノイン
コラボ回で流れ着いたUMP9(人間)。
さすがにいつまでもUMP9ではアレなので9のドイツ語読みでノインに。
人間なのでちょっとずつ成長している・・・・・主に胸部が。

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