さぁ、ドルフロ界のトラブル発生アイテム、『指輪』の登場だ!
「お待たせしました、ホットコーヒーが二つとロールケーキです。」
「ありがとう。 これもここで作ってるの?」
「すごいな・・・あとで店の中を見せてくれないかな?」
「えぇ、構いませんよ。 ではごゆっくり。」
気温は高いが実にいい天気のここS09地区、その一角に店を構える喫茶 鉄血では、ちょっと珍しい客が来ていた。
一人は車椅子に座った男性、優しげな笑顔を浮かべながらコーヒーをすすっている。もう一人は水色の髪をポニーテールにした女性、服装こそ違うが十字の髪飾りと目元のタトゥーが特徴の彼女の名はHK416。
そして二人の左手の薬指に光るのは、銀色の指輪だ。彼女たちはS08地区の街でカフェを営む、かつては別の世界で指揮官とその人形という関係だった二人だ。
さて、実はグリフィンやIoP、鉄血工造など戦術人形を扱う企業や組織ではこの二人を知らぬ者などいないほどの有名人である。
別世界云々を除いても、人形と人間が『結婚』したというほぼ唯一の実例だ。人形の社会進出、および人間との共存関係を強く望む企業や組織にとっては最高のモデルであり、また人形たちにとっては夢を与えてくれる理想のカップルなのだ。
「人間と人形の愛の結果か・・・素晴らしいな。」
「手を出さないでよゲッコー、私でもあの二人をネタにはしないんだから。」
そんな二人は、行く先々で注目の的だ。夫の方こそ半身不随というペナルティを抱えているもののそれを苦にするようなそぶりは一切ないし、嫁である416は甲斐甲斐しく世話をする姿から本当の愛を感じる。
で、当然そんな姿を見た人形たちはこう思う・・・・・結婚したいなぁ、と。
「あれが姉さんの理想、ですね。」
「そうね・・・でもライバルが多いわ。」
「スプリングフィールドさんにガリルさん、ウェルロッドさんとモシン・ナガンさんとKar98kさん・・・・・前途多難ですね。」
幸せムードの二人を眺めるのはG36と36Cの姉妹。姉であるG36が指揮官に好意を抱いているのはすでに周知のことであり、ラブ勢同士のにらみ合いにも参加している。
そして今日は、なんと別の席にウェルロッドとKarも座っているのだった。
(指揮官と・・・結婚・・・・・)
(この薬指に・・・・・指揮官が・・・・・・・)
妄想ではすでに行くとこまで行ってしまっている二人だが、二人とてライバルが多いということはわかっている。ついでに言えば『指揮官が』選ぶためそもそもラブ勢であるという保証もない。ついでに言えばその前段階にすら至っていないのだが、そんなことは誰も気にしていない。
その後も店内のいたるところ、人間人形問わず話題は指輪や結婚でもちきりだった。
さてそんな会話が繰り広げられる店内、その窓際の席にもまた別の人形が座っていた。
(指輪、ねぇ・・・・・随分とタイミングのいい話題だよ。)
相変わらず頬づえをつきながら窓の外を眺め、しかし周りの会話をきっちり聞き取っているのはこの店の常連にして愉悦部筆頭のG11。
そんな彼女の顔は、いかにも『いいこと』思いつきましたと言った表情を浮かべている。それもそうだろう、何せ彼女は・・・・・
(人形用の指輪があるって知ったら・・・・・どうなるかな?)
そう、そんなある意味爆弾に等しい情報を持っているのだ。理由は単純で、その指輪型アクセサリーを開発したのがペルシカであること、この地区の指揮官に支給されるものを運んだのが404小隊であるためだった。
この指輪型アクセサリーは『誓約指輪』と呼ばれており、IoPが人形のリミッター解除装置として開発したものである・・・・・のだが別にリミッターを外さなければならない場面など皆無であり、そういう意味では『おまけ』機能である。これの最も重要な点は、指輪を与えられた人形の所有権が指揮官に移る、というもの。
もちろん、誰に渡すかなどは指揮官に委ねられる。あえて誰にも渡さず返還するということもできるため、『指揮官が指輪を持っている』という情報は完全極秘だ。
・・・・・逆に言えばそれ以外のことは言ってもいいのだ(曲解)。
(ふふふ・・・・・さて、どうなるかな?)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
先に気がついたのは、視界の隅に彼女を写していた36C。フラッと立ち上がったG11が出口ではなくこちらに向かってくることに違和感を感じ、一応警戒する。何せプライベートでは他の人形といるところなどほとんど見ない彼女が自らこっちに来るのだ。
「やぁ36姉妹、何かお悩みかな?」
「あらG11。 珍しいわね、あなたが人の悩み聞くなんて。」
「同郷のよしみじゃないか・・・で、どうしたの?」
姉が事の顛末をペラペラと話す間、36CはジッとG11を見ていた。正直、彼女のことは苦手だ。何を考えてるかよくわからないし、何よりあの腑抜けた顔の内側に何かが潜んでいる気がしてならない。
そんな36Cの予感は当たっており、G11はG36の話を聞き終えるとこう言った。
「う〜ん、もしかしたらチャンスがあるかもね。」
「え、どういうこと?」
「・・・いや、ちょっとした噂を聞いてね。 IoPが
「ほ、本当ですか!?」
目を見開いて食いつく姉の姿に、36Cはようやくその魂胆に気がついた。こいつは初めからこの話をするつもりだったと。彼女は噂だと言ったが、かつては存在しない部隊とさえ言われたあの404の隊員だ、当然何処かから仕入れた情報だろう。
彼女はその
「あらあら、随分と楽しそうな話ですわね。」
「情報は、共有すべきですよ。」
「っ!? な、なんのことでしょうか?」
あっという間に引火、というか誘爆した。どうやらG11の声が聞こえていたようで、黒い笑顔を浮かべたKarとウェルロッドがやってくる。なんとか隠したいG36だが、どう見ても旗色が悪そうだ。
(・・・何が目的ですかG11!)
(ん〜? なんのことかな?)
しれっと言い放つG11だが36Cは一瞬見た、G11がニヤッと笑うのを。
完全に愉快犯である。
「わかりました! 指揮官に直接問いただしましょう!」
「そうですわね、なら今すぐ行きますわよ!」
「指揮官なら何か知っているはずです!」
気がつけば3人組はさらに炎上し、真偽を確かめるという結論に至る。もう完全にG11の掌の上で踊らされてる感があるが、残念ながらそれに気がつくのは36Cだけである。
だが・・・・・
「・・・で、誰が行きますの?」
「「・・・・・・・・・・。」」
「・・・・・・え?」
Karの疑問に、燃え上がっていた二人が一気に鎮火する。これには流石のG11も面食らったようで、誰も見た事のないような間抜け面を晒している。
指揮官をデートどころか食事や買い物に誘うのですら一大決心が必要な彼女らが、指輪の有無や誰に渡すかなど聞くことができるか。否である。
そんなヘタレっぷりを考慮していなかったのか、G11は呆然突した様子で固まり、36Cは逆にニマニマと笑みを浮かべる。
「当てが外れましたね、G11?」
「うぐっ・・・・・こ、今回は引いておくよ。」
心底悔しそうな顔で退散するG11をなぜか勝ち誇った顔で見送る36C。だが満足げな顔で振り返った彼女は、なぜか再び炎上している三人に言葉を失う。
「き、既成事実さえ作ってしまえば!」
「この際お酒でもウイルスでも構いませんわ! 素面でダメなら素面でなければいいだけ!」
「ヤってしまえばあとは流れです!」
公共の場、それも飲食店でソコソコの音量で話す三人は、周りの客から無駄に注目を浴びている。完全にヒートアップしているせいか周りも見えておらず、野次馬たちがニヤニヤしながら話を聞いている。
「・・・・・・・はぁ〜〜〜〜〜・・・・」
今日何度目かわからないが、36Cは盛大にため息をついた。
「・・・まぁ、襲ってしまった方が早いかもね。」
「え? 416?」
「ふふっ、冗談よ『あなた』。」
「あぁもう・・・・・君には敵わないな・・・・」
「えぇ、なにせ私は完璧だもの。」
end
指揮官の元に送られた指輪は一つ、それを狙うは6人の人形・・・指揮官の運命やいかに!?
なんて冗談は置いといてキャラ紹介です
HK416&元指揮官
以前のコラボ回でこっちにきた『別世界の指揮官と人形』。
現在はS08地区でカフェを営んでおり、今日は休みついでに遊びにきた。
カカオの錬金術師さん、見てるかい? こっちの二人は平和に過ごしてるよ!
G36&36C
ダメ姉と苦労人妹。こんな感じの姉妹がわりといる。
こんなんでも表向き優秀な人形という認識になっているので、そのギャップが嘆かわしいとは36C談。
Kar&ウェルロッド
ラブ勢の中でも直接衝突が少ない二人、そのためたまに二人でいる時がある。
度胸でいえばウェルロッドが一番あるのだが、総じてヘタレなので進展なし。
G11
愉悦部。
404という立場とペルシカに近いこと、普段は暇であることを生かした情報収集によりあらゆる人形を焚きつけることができる。
指揮官と彼女らのドタバタを期待したが、今回は失敗に終わった。
G11「まだだ、まだ終わらんよ・・・」
代理人
普通なら出禁にされてもおかしくない客でもちゃんと迎える聖母のような人形。
今日も、騒がしくも平和な喫茶店でコーヒーを淹れる。