喫茶鉄血   作:いろいろ

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モンハンの新作、ティガレックスが出るということで買おうと思います。
ところでPS4のゴジラVS、新作とかでないですかね?

今回はこの四つ。
・利害一致
・416の逆襲
・トレーニング
・根掘り葉掘り


番外編16

番外16-1:利害一致

 

 

某月某日、人類人権団体『マイスターの会』の事務所。

普段は過激派やロボット協会からの抗議の電話しかかかってこないのだが、その日は珍しい相手からの電話だった。

 

 

prrrrrrrrrrr

「・・・・・はい、人権団体『マイスターの会』です。」

 

「おや、会長さんですか?」

 

「ん? どちら様ですかな?」

 

 

電話の相手は若い女性のようだが、初めて聞く声だ。

警戒心をあげる会長だったが、続く言葉で一気にそれを解く。

 

 

「私はマヌスクリプト、喫茶 鉄血のマヌスクリプトです。」

 

「おぉ! あなたがあの・・・お電話いただき光栄ですよ。」

 

 

まるでロボットのごとくクルクル回る手のひら。まぁこのゆるさが会長らしさではあるが。

 

 

「して、本日はどういったご用件で?」

 

「その前に・・・『写本先生』って、聞いたことある?」

 

「えぇ、存じております・・・あなたのことでしょう?」

 

「お、そこまで知ってるなら話は早いね。」

 

 

ちなみに写本先生=マヌスクリプトというのはあまり知られていない。知っているとすれば鉄血工造関係者か一部の人形、人間、あとはかなり熱心なファンかストーカーである。そして会長はどっぷりファンだった。

 

 

「私は今好きに本を出せないんだよ。 まぁ身内を売ってるようなものだからね・・・・・でも抜け道が一個だけある。」

 

「ほぉ、それは?」

 

「禁止されてるのは、『私が直接出す』こと。 だから書くことはできるけどそこまで。 だから・・・・・私の販売担当になってよ!」

 

「わかりました、受けましょう。」

 

 

即答である。

もちろん会長とてバカではない、というか頭の回る方でもある。それがなぜ即答かというと、理由はいくつかある。

根底には人権団体というイメージの悪さを払拭したいというものがある。写本先生は鉄血、少なくとも人形関係の者であるということが一般的な認識であり、手を組むことで人形と友好的な立場であるという証明にもなる。加えて即売会などで売る場合、より直接的に、より多くの人間にそのイメージを与えられる。

 

・・・・・というのが約四割で、残り六割が私欲である。

 

 

「一つ確認ですが・・・・・代理人モノは?」

 

「あるよ。」

 

「いいでしょう。 詳しい話はまた後日に。」

 

「OK! じゃあね会長!」

 

 

こうして両者の思惑が絡み合った結果、マヌスクリプトは販路拡大を、マイスターの会はそのイメージ改善を成し遂げることとなる。

なお、見事に抜け道を使われたアルケミストはかなり苦い表情だったという。

 

 

end

 

 

 

番外16-2:416の逆襲

 

 

9‘が416’に押し倒された翌朝のこと。

ツヤッツヤな416‘を恨めしそうに見る9’の表情は、迎えに来たペルシカによって一気に晴れやかな、そして意地の悪い表情へと変わる。

 

 

「おはよう二人とも・・・・・うん、その表情でナニがあったかはわかるよ。」

 

「なら早く戻してほしいわ。 任務どころか日常生活にすら支障をきたすのよ。」

 

「あと45姉にバレると大変だからね。」

 

 

というわけで早速車に乗り込んで16lab・・・ではなく最も近いメンテナンス施設の鉄血工造へと向かう。

そこではすでに事態を把握しているサクヤが待機しており、装置の準備も終えていた。

 

 

「まぁやることは簡単よ。 今の二人は単純にAIが入れ替わってるのと同じ。 だから元に戻すだけで治るわよ。」

 

「はぁ良かった〜、いつまでもこれじゃあ疲れちゃうよ。」

 

「その体で散々遊んだのは誰かしら?」

 

「散々遊ばれたのは誰だろうね416?」

 

「はいはい、惚気はいいからポッドに入って。」

 

 

二人を押し込んで、ペルシカは装置を起動する。といってもやっていることは予備素体に移すのと何も変わらないので、あとはゆっくり茶でも飲みながらサクヤと話すだけ。

そうしておよそ十分後、ポッドから出てきた9はぐいっと背伸びし、416は体を動かしてはホッと安心したように息をついた。

 

 

「その様子じゃ上手くいったみたいね。」

 

「えぇ、助かったわペルシカ、サクヤさん。」

 

「ありがと!」

 

 

この後二人はS09地区まで送ったもらい、ペルシカとはそこで別れる。

・・・・・あとは司令部に帰るだけなのだが、もちろんそんなことは416が許さなかった。

 

 

「んむっ!? よ、416?」

 

「あら、昨日は随分と積極的だったじゃない。」

 

「ま、待って、せめて部屋に戻ってから・・・・・ここじゃ人が・・・」

 

「ダ〜メ、いったでしょ? あとが怖いわよって。」

 

 

悪魔のような笑みを浮かべながら、416は唇を重ねるのだった。

 

 

end

 

 

 

番外16-3:トレーニング

 

 

Dの、二号店進出宣言のあと。

代理人以下全従業員との話し合いで無事賛成されたDは、翌日からいつもとは違った姿を見せるようになった。

 

 

「・・・・・これ、全部お店の運営関係、なの?」

 

「えぇそうです。 一日に書く量はさほどでもありませんが、開店後しばらくは書類との戦いです。 普段の業務と並行してこれも覚えてもらいます。」

 

 

今、Dの目の前に積まれているのは様々な形式の書類。それは代理人がこの喫茶 鉄血をオープンしてから、今日まで書いてきた書類の山である。収支はもちろん税金やその他の出費、客数の推移やそれに合わせた入荷量などなど、普通の人間や戦術人形なら目を回すほどの量である。

 

 

「期限は設けません。 それに接客面や部下の動かし方も覚えることが多いですから・・・・・無理はしないように。」

 

「・・・・・うん、ありがとうOちゃん!」

 

 

こうして、Dの店長になるためのトレーニングが始まった。まぁ実際のところは面倒な手続きなんかは鉄血工造の財政部やグリフィンなんかが手伝ってくれるが、それに甘えない心構えが大切なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「D、自分の接客も大切ですが視野は広く持ちなさい。」

 

「店長代理、今日はケーキどれくらい用意しましょうか?」

 

「Dちゃん、そろそろ休憩入っていい?」

 

「D、この茶葉がなくなりそうだがどこかに置いてるのか?」

 

「明日から数日間、アルバイトの子が来ます。 お願いしますよ。」

 

 

 

 

 

 

「だぁ〜〜〜〜〜〜疲れた〜〜〜〜〜〜〜」

 

 

店長って大変だ、そう思うDだった。そして改めて代理人(オリジナル)の凄さがわかる。

Dは代理人のダミーだが、それはDが生まれる以前の代理人をモデルにしているに過ぎない。今ではほぼ別個体といってもいいくらいに違うが、だからこそ代理人の実力というか経験が大きいことがよくわかった。

接客しているのにちゃんと店全体を見ながら部下に指示を出し、きっちり仕事が回るように休憩に入らせる。店のどこに何が置いてあるかを完璧に把握し、しかもわかりやすく説明できる。

 

そして最も重要なこととして、おそらく自分が運営する二号店の従業員の多くは、人間だ。人形以上に気難しく、そして人形ほどタフじゃない。

 

 

(・・・ううん、言い訳はなし! 絶対認めてもらうんだ!)

 

 

顔をパンパンと叩いて気合いを入れるD。

彼女の挑戦は、始まったばかりだ。

 

 

end

 

 

 

番外16-4:根掘り葉掘り

 

 

とある日の夜。

S09地区司令部の一室に集まった人形たちは、珍しく真面目な表情で一点を見る。

集まったのはスプリングフィールド、モシン・ナガン、Kar98k、ガリル、ウェルロッド、そしてG36。その彼女らの視線の先にいるのは・・・・・

 

 

(・・・え、何この状況?)

 

 

よくわからずに拉致られてきた、S08地区の416だった。

 

 

 

 

 

 

 

事の発端は昼間の喫茶 鉄血。指輪の話から始まった指揮官ラブ勢の暴走は、あわや司令室突撃一歩手前という事態にまで進んでしまう。しかし彼女らにとっては幸運なことに、その日予備宿舎の一室に泊まることになっていたのが、S08地区からやってきた二人である。

 

ラブ勢は考えた、経験者から情報をもらおうと。あとついでにリアルな『夜』についても聞いてみようと。

そんなわけでほかのラブ勢も捕まえて予備宿舎にやってきて、まくし立てるように416と元指揮官に説明してから416を拉致り(夫の方はよくわらないが優しい笑顔で送り出してくれた)、そして今に至る。

 

 

「416さん、あなたはあの男性と結婚されてますよね?」

 

「え、えぇ、そうだけど。」

 

「彼との出会いは、どんな感じでしたか?」

 

 

一番に切り出したの最近「春田さん」と呼ばれるようになったスプリング。流石に彼女も順を追って聞くことにしたらしい。

 

 

「私が彼の司令部に配属された最初の人形だっただけよ。 その頃にはまさかこうなるとは思わなかったわね。」

 

「いつから今の関係に?」

 

「ど、どっちからこ、告白したんですか!?」

 

 

続いてG36とKarが質問する。そろそろ突っ込んだ話題にシフトし始めたようだ。

 

 

「いくつも作戦を成功させて、私も彼のことを信頼するようになってからね。 告白は・・・・・か、彼からよ。」

 

(乙女の顔だ・・・)

 

 

もともと凛とした、あまり喜怒哀楽のはっきりしない部類の人形である416の貴重な照れ笑いに、彼女たちも思わずドキッとする。

さてそろそろかというところで、いよいよガリルがぶっ込んできた。

 

 

「は、初めてってどんな感じなんや!?」

 

「なっ!? そそそそれは聞かなくても」

 

「い、いえ話してください!」

 

「そうです、というかぶっちゃけそのために連れてきたんですから!」

 

 

顔を真っ赤にして狼狽える416に、ウェルロッドとモシン・ナガンも畳み掛ける。ジリジリと下がる416だが、ついに壁際に追い込まれて六人に囲まれる形となる。

 

 

「大丈夫です! 私たちの間以外では話しませんから!」

 

「私たちにとっては死活問題なんです!」

 

「・・・・・わ、わかったわよ! だから・・・もう少しこっちによって・・・・・」

 

 

七人の少女が顔を真っ赤にしながらのガールズトーク。416の赤裸々な体験に茹で蛸のように顔を赤くしつつも、416が語り終えるまで一切無駄口を挟まずに聞き入るのだった。

ちなみに話し手の416は、誰よりも真っ赤になっていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あ、お帰り416。 みんなとは仲良くなrうわぁ!?」

 

「・・・・・あなた、今夜は寝かさないから。」

 

「・・・・わかった、おいで416。 愛してるよ。」

 

「えぇ・・・私もよ。」

 

 

 

end




朝チュンとか「おたのしみですね」な話が多い気がするけどまぁいいよね?
というわけで各話の解説!

番外16-1
六十四話の後日談。
平和なキャラや集団はギャグ堕ちするのだ。
なお写本先生には直接お金が入ってこないが、団体からのお礼としてお金が振り込まれる。

番外16-2
六十五話のすぐ後から。
なんやかんやで416は受けより攻めだね!
あと狼狽える9が可愛い。

番外16-3
六十六話の翌日から。
Dの夢のために協力する喫茶 鉄血の仲間たち。
こういうハートフルを描きたいがためのこの作品なので、個人的にはお気に入りの話。

番外16-4
六十七話の夜。
この世界では唯一の『人間と人形の夫婦』ということで捕まった416がいろいろ聞かれる話。
ちなみに416ちゃんは鳴される側らしい。

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