喫茶鉄血   作:いろいろ

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課題が、卒論が・・・。

はい、言い訳してすみません。
ちょっと間が空きましたが、私は元気です!



結構難産だったけど。



第七話:口は災いの元

「はぁ〜、優雅ですわ〜」

 

「何言ってんだコイツ・・・」

 

 

そんなやりとりが繰り広げられるいつもの喫茶 鉄血。

 

珍しいことに今日は16labでの定期メンテナンスのため代理人がおらず、イェーガーが主に接客を行なっている。

こういった代理人のいない日は基本的に客が少なく(それだけ代理人目当てで来る客が多い)、面倒ごとが持ち込まれることもないため少人数でも回すことができるのである。

 

が、この日に限って面倒が舞い降りる。

グリフィンが誇るロリお嬢様、服装のせいでやたらスペースを取りしかも異様に長く居座る人形、Kar98kである。

この人形、身長に見合わない服や帽子をかぶり、お嬢様のような話し方をするなど大人の女性として見られたい願望が溢れ出ているのである。本人は隠しているつもりのようだが、現にかなり無理をしてカウンター席に座り(当然ながら床から足がかなり離れている)、頬を引きつらせながらコーヒーをブラックで飲んでいる。

当初は客に無理をさせるわけにはと甘いミルクティーやココアを出したのだが、

 

 

「ああもう、そんなに苦そうに飲むなら砂糖なりミルクなり入れればいいだろ!」

 

「な!? わ、私にそんなものは必要ありませんわ!」

 

「・・・あのな、別に無理するもんでもないし、私らとしては美味しく飲んでもらう方がいいんだよ。」

 

「・・・・・・・・・・グスッ」

 

「あ。」

 

この人形はそういった子供扱いされると泣くのである。

しかも泣きわめくと言うよりは、「なんでそんなこと言うの?」みたいな泣き方なので、まるでこちらが悪いかのような空気になりかねない。

代理人がいてくれればものの数分で機嫌が直せるのだが、いないものは仕方がない。

 

 

「ていうか姐さん(代理人)はなんであんなに慣れてるんだろうな。」

 

「ん〜〜〜・・・・・あ」

 

「「駄々っ子(デストロイヤー)か。」」

 

 

そんな結論に至るイェーガーとリッパー。

付け加えると駄々っ子だったのは昔のことであり、今は鉄血組で数少ない常識人である。

そんなことを話している間も98kはグズグズと泣き続け、客の痛い視線が集まる。

いよいよもって打つ手なしかと思われたその時、

 

 

「代理人! 代理人はおるか!? 少しの間匿ってくれ!!」

 

 

顔は青ざめ、目には涙を浮かべたウロボロスが入り込んできた。

 

 

「あ〜えっと・・・代理人は今所用で出かけておりまして。 多分帰ってくるのは夜になるかと。」

 

「くっ! まあ良いわ、とにかく少し邪魔するぞ!」

 

 

そう言って店の奥に行くウロボロス。

それとほぼ同時に店に入ってきたのは、怒るのボルテージが吹っ切れたのかいつもの笑みではなく完全無表情のドリーマー。

入ってくるなり得物のバカでかい銃を突きつけてくる。

 

 

「死にたくなければ答えなさい。 あのバカ蛇はどこ?」

 

「「奥にいまーす。」」

 

「お、お主ら!?」

 

 

店の奥で暴れまわる鉄血二名、いつの間にか泣き止み再びコーヒーを啜る98k、ため息をついたあと何事もなかったかのように仕事に戻るイェーガーとリッパー。

 

いつも通り平和だなと思う客たちであった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「全く、加減というものを知らんのか・・・。」

 

「人のものを勝手に食うなって教わらなかったのか、ああ!?」

 

「ふふ、仲がよろしいんですね。」

 

「「いつまでいるんだよ。」」

 

 

結局その後ウロボロスがドリーマーにこってり絞られ、現在は98kと同様にカウンターに座ってくつろいでいる。

その相手をしている二人のストレスはマッハで加速しているわけで、代理人の偉大さを改めて感じていた。

しかも今目の前にいるのはめんどくさい人形といらんことしいの元上司二名。面倒が起きるのはすでに確定しており、

 

 

「のぉ98kよ。 そんなに苦いなら砂糖やミルクを入れたらどうじゃ?」

 

「な!? あなたも子供扱いしますの!?」

 

「はぁ? 子供に子供って言って何が悪いのよ?」

 

((もう黙ってろよこのポンコツ上司!!!))

 

 

少し前と同じ流れが生まれつつあった。

あれ?これ閉店まで続くんじゃね?とか思い始め頭を抱える二人。

再び泣き始める98kと何かおかしなことを言ったか?と首をかしげるウロボロス。

 

 

「というか何故大人ぶりたいのじゃ?」

 

「・・・指揮官は胸の大きな女性のほうがいいと・・・。」

 

「? それと大人ぶることになんの関係がある?」

 

「だって、大人になれば胸が大きくなるって・・・どうしました?」

 

 

本気でそう思っている98kにウロボロスは頭を抱え、ドリーマーは今にも笑そうなるのを必死に我慢し、鉄血員の二人は私ら知ーらねーとばかりに黙々と仕事をする。

 

 

「・・・98kよ。 お主本当にそれで胸が大きくなると思うか?」

 

「で、でも大人の女性の方って皆胸が大きいではありませんか!」

 

「では聞くが、代理人は大人の女性か?」

 

「もちろんですわ! 佇まいや身のこなし、まさに完璧ですわね。」

 

「・・・あやつ、そんなに胸があったかのう?」

 

「・・・・・あっ!」

 

「じゃろう! あやつは確かに大人じゃがそこだけは子供じゃぞ!」

 

「た、確かに・・・!」

 

「ブフッ!!」

 

いよいよ笑いを堪えられなくなったドリーマーがゲラゲラと笑い出す。

そこから体に対する比率ならデストロイヤーの方があるとか、処刑人はふつうにでかいとか、その度に代理人を引き合いに出しては笑い続けるウロボロスと98k。

 

 

「あぁ面白い。 普段いじれんから最高じゃったな! ・・・ん? どうした98k。 もっと笑っていいんじゃぞ?」

 

「・・・ずいぶんと楽しそうですねウロボロス?」

 

 

暖房のついているばずの店の室温が一気に下がった気がした。

彼女の方を向いている98kはすでに半泣きになり帽子を落とし、背を向けていたウロボロスはもともと白い肌をさらに白くし、ドリーマーは関係ないとばかりにコーヒーを飲んでいるがその手は震え冷や汗がテーブルまで垂れている。

いつも以上に、その目にすら感情を表していない代理人がそこにいた。

 

 

「・・・Kar98kさん。」

 

「ひっ!?」

 

 

代理人は怯えきった彼女のもとに歩み寄ると、落とした帽子を拾い、頭を撫で始める。

 

 

「以前似たような方とお話ししました。 その人はある人に好かれたいがために、自分を偽ろうとしました。 ですがそれは本当に幸せなのでしょうか? そう考えた彼女は、何も偽らない自分自身を見てもらおうとしました。」

 

「・・・?」

 

「無理に背伸びをする必要などありません。 残念ながら私たち人形は成長することはありませんから、無いものをねだるより、自分に合った強みを活かすほうが良いと思いますよ。」

 

 

そういうとニコリと微笑み帽子をかぶせる代理人。

98kは少し恥ずかしそうにしながらも「あ、ありがとう」と言いお辞儀をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一応悩み事は吹っ切れたと思った代理人はすぐさま先ほどの無表情に戻り、問題児二人(ウロボロスとドリーマー)に向き直る。

 

 

「・・・さてでは二人とも、覚悟はよろしいですね?」

 

 

そういうと、代理人はスカートの裾をつまみたくし上げる。

店内の男どもはおおっ!と歓声をあげてあわよくばチラ見ができればと注視するが、そこから出てきたものにギョッとする。

 

代理人の足の付け根から生えるように付けられているサブアーム。

その先には用途に応じて様々な武器や道具を取り付けることができ、一見武装を持たない彼女が持つ唯一の武器でもある。

ちなみにだがそのオプション装備類は全てスカートの中から現れるため、4次元スカートと呼ばれることもある。

 

そのスカートから飛び出してきたのは四本のサブアームと四種類の武器。

殺意丸出しでブンブンと振り回される両刃のブレード。

逃走即捕縛というオチが透けて見えるウィンチのついたフックショット。

殺傷目的のほかに衣服を壁に縫い付けることもできるニードルガン。

恐怖心を煽る回転音が響く小型のガトリングがついたチェーンソー。

 

 

「「ちょっ!?」」

 

「トイレは済ませましたか? 神様(創造主)へのお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震える心の準備はよろしいですね?」

 

 

 

その日、街全体に二人の少女の悲鳴が響き渡った。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「指揮官さん! あ〜〜〜ん」

 

「ここ最近やたらと甘えてくるな98k。 まあいいか、はい、あーん。」

 

「ん〜〜、美味しいですわ!」

 

 

あの惨劇の翌日、早速素直(というか自分の欲に忠実に)なった98kが指揮官を連れてやってきた。

指揮官は戸惑っているようだが、まぁ彼女が楽しそうだから放っておきましょう、と考えた代理人は店内で働くウロボロスとドリーマーに指示を出す。

 

 

「ウロボロス、これをあちらのテーブルに。 ドリーマーはそこのテーブルを片付け終えたらその隣もお願いします。」

 

「ええいなぜ私が働かなくてはならんのだ!」

 

「諦めなさいウロボロス。 また地獄を見たいなら止めはしないけど。」

 

「返事。」

 

「「はい! わかりました!!」」

 

 

現在二人には昨日の失言の謝罪という形で働いてもらっている。

1日だけではあるが接客業、というよりも他人に頭を下げたり丁寧に接したりすることが苦手な二人からすれば拷問のような時間である。

自業自得ではあるが。

 

 

「くっ・・・お、お待たせしました。 ホットコーヒーとサンドウィッチだ・・・です。」

 

「次、あちらのテーブルのオーダーを聞いて、これをあのテーブルに運んで、その奥のテーブルを片付けてください。」

 

「鬼! 悪魔!! 露出癖!!!」

 

「威勢がいいですね。 これなら休憩も必要ないでしょう。」

 

「嫌じゃ! もうこんなのたくさんじゃああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「「ご愁傷様でーす。」」

 




代理人以外の従業員が目立たないから出番を増やしてみたけどやっぱりハイエンドたちに喰われてしまった回。

実は今回の騒動は指揮官の「胸は大きいほうが〜」発言が発端です。
皆さん、言葉には気をつけましょう。


ではキャラ紹介です。

イェーガー&リッパー
代理人のいない店を任されるくらいには優秀な二人。ちなみにちゃんとしたウェイトレススキン。将来は二号店や三号店をオープンしてその店長になることを目指している。
実はそれぞれの一号機でもある。

ウロボロス
なぜ私が働かねばならん!?とか言いながらノリノリで働くツンデレ。偉くなれば働かなくていいはずと考え今は真面目に働くことにしているが、彼女に任せたほうが効率がいいため、偉くなっても働かされるということに気がついていない。
なんだかんだで困っている人を放っておかない、根の優しいギャルのような人形。

ドリーマー
ニート。 ウロボロスと同棲しており、生活のほぼ全てをウロボロスに依存している。このことには代理人も悩んでおり、その解決策の一つが今回の短期バイトである。家主はウロボロスだがヒエラルキー的にはドリーマーが上なので、冷蔵庫にあるものを割と勝手に食っている。
悩んでいる人を奮起させるのが得意なのだが、その方法はやたらと嫌味を言って焚きつけるというもの。
欲しいものがたくさんあるがウロボロスの稼ぎだけでは全てを買えないことが悩み。

代理人のメンテナンス
鉄血を離れて以降はグリフィンで検査やメンテを受けている。はじめの頃は罠が仕掛けてあったりと大変だったが、ペルシカやヘリアン、クルーガーが睨みを効かせて以降は無くなった。

4次元スカート
なぜか色々なものが出てくる代理人のスカート。何の変哲も無いはずだが、小さいものは米粒から大きいものはロケットランチャーまで様々なものが取り出せる。


以上です。

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