喫茶鉄血   作:いろいろ

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(俺の)嫁回。
そういえばこの作品って9と416は三人ずついることになるんですよね・・・・・まぁだからどうしたというわけでもないですが。

話題があっちこっちに行くのは女の子の会話っぽくていいと思います!


第六十九話:9!9!!9!!!

久しぶりの大雨となったS09地区、外出客が減る中で雨が降ってもそこそこ賑わう喫茶 鉄血。

その2階にある個室では、ちょっと奇妙な集会が行われていた。まずこの個室に入って行ったメンバーを見た他の客は皆、『同じ顔が三人も入っていった』と語り、ついでに中から聞こえてくる声もほぼ同じ声。同型の人形が一箇所に固まることはほとんどないため、物珍しさから周りの興味を引いていた。

 

さて、そんな注目を浴びているなど知らずに集まったのは、栗色の髪を揺らした快活そうな人形の『UMP9』。

・・・・・正確にいえばそれをモデルとされた人形と人間である。

 

 

「というわけで、『第一回UMP9の会』をはじめまーす!」

 

「いぇーい!」パチパチパチ

 

「い、いぇーい・・・」

 

 

皆同じ顔なので区別がつかないため、胸元に名札を張っている・・・その中の『9』と書かれた人形(UMP9)が高らかに開会を宣言する。それに続いて『F』と書かれた人形(F9)が盛り上げる。そして一拍遅れて『ノイン』と書かれた少女がやや恥ずかしそうにしながら乗っかる。

 

 

「あ、今更だけど416と付き合ってるんだよね? おめでと9!」

 

「お、おめでとう・・・ございます?」

 

「二人ともありがとう! あとノインはもとフランクでいいんだよ!」

 

 

さてこの会の目的だが・・・ぶっちゃけ大した目的なんてない。たまたま見かけた姉の参加する集会(例のシスコン会)を目撃した9が、自分たちも何かやってみたいと言い出したのがきっかけだ。

そんなわけで以前から交流のあったUMP9タイプだけの会を作った結果がこれである。

 

 

「・・・で? 毎晩416に鳴されてるって本当なの?」

 

「ふぇ!? い、いやそれは・・・・・」

 

「ほらほら、情報共有は大事だよ9。」

 

「・・・・・・・・。」

 

 

開幕早々とんでもない話題を振られてキョドる9。Fとて一人形として気になる話であるし、ノインも恥ずかしそうにしながらもしっかり聞こうとしている。

 

 

「そ、その話は後! 後でちゃんと話すから! ・・・まずはみんなの悩みとか、共有したい話とかからだよ!」

 

 

こいつら絶対後で恥かかせてやる!

そんなことを誓いながら話題を強引に変える9。釈然としないがまぁ仕方ないとばかりに従う二人だが、正直困ってることは特にない。

Fの方は強いて言うなら暇すぎるくらいで(配属先がそもそも出撃する機会もほとんどないほど平和な場所)、ノインに至っては先日レイラと話して解決したも同然である。

 

 

「・・・・・あれ、本当にないの?」

 

「ないんじゃ・・・・ないかな?」

 

「・・・じゃあ、近況報告とか?」

 

 

流石にわざわざ集まっておいて話すことがないんじゃ仕方がない、そんなわけで話題はそれぞれの司令部や街、仲間に起こった面白いことを話す流れになる。

 

 

「こっちはいつも通りかな。 45姉が40姉に追いかけられてるくらいだよ。」

 

「そのUMP40?って、なんで追いかけてるの?」

 

「会わないうちに45姉に可愛げがなくなったって言ってた。 昔の45姉は可愛かったらしいよ。」

 

「「へぇ〜」」

 

 

それがいまやあの残念っぷりである。人形も変わるんだなぁとしみじみ思うノインだが、なんだかんだで自分も変わったなと改めて思う。

 

 

「そっちは? F45とか何かあった?」

 

「お、よくわかったね。 間違ってお酒飲んで指揮官にチューしてたよ。」

 

 

危うく指揮官がしょっぴかれるところだったよ〜と明るく話すFだが、完全に被害者であろうベルリッジ指揮官に同情する・・・というか誰だ飲ませたのは。

 

 

「遊びに来てたAR小隊・・・のM16。 M4にめちゃくちゃ怒られてたよ。」

 

「自業自得すぎる・・・。」

 

 

ちなみにだが彼女らはそこそこ飲める。人間であり未だ未成年のノインは全面禁酒だが、9とFは普通に飲める。アルコール除去機能もあるので、作戦ギリギリまで飲んでられるのが人形の強みっちゃ強みだ・・・そのためロシア勢はギリギリまで酒ビン片手である。

 

 

「で、ノインは・・・もうすぐ旅に出るんだっけ。」

 

「うん・・・・・この世界を、もっと歩いて見たいからね。」

 

「応援してるよ。 そうだ、何かあったらここに連絡して!」

 

「あ、じゃあこっちも。 これが私宛で、こっちが私たちの基地の。」

 

「・・・二人とも、ありがとう。」

 

 

自分は間違いなく幸せ者だ・・・・・見ていますかおじさん、45姉、G11、416・・・私は、この世界にきてよかったです。

 

さて若干しんみりしてしまったが、もともとそんな空気に長時間耐えられる人形ではない9とF、無理やり話題を変えようとすると、必然的にあの話題に戻る。

 

 

「じゃ、じゃあ9! そろそろ夜の話を聞かせてよ!」

 

「え!? て、ていうか二人はどうなの!? 気になってる相手とか理想の相手とか!」

 

「う〜〜〜〜〜〜ん・・・・・いない、かな?」

 

「私も・・・それに、片腕義手の女なんてね。」

 

 

みんな遠巻きに珍しがって見てるだけだよ、とノインは言うが、実際は全く別の部分を見ているだけ。

ノインは人間だ。過度な訓練やら薬の使用やら手術やらを受けたせいで成長が若干遅れていたが、こっちにきてからは順調に大きくなっている・・・・・主に胸が。

快活なイメージのUMP9と同じ姿で、深窓の令嬢のような落ち着きを持つ彼女はいわば高嶺の花、問題はそれに気がつかない本人の鈍さだけだ。

 

 

「・・・・そういえばその義手、前に使ってたのとちょっと変わってるよね?」

 

「え? えぇ、ペルシカが・・・・・護身用に色々作ってくれたから。」

 

 

そう言って微妙に暗い表情を出しながらノインはカバンを漁り・・・・・カラーバリエーション豊富な義手を取り出す。今つけているものは赤色のものだが、出てきたのは黄色に薄銀色、そしてなんかおもちゃっぽい水色。

 

 

「え? これ全部?」

 

「ペルシカも色々頑張ったんだね・・・・・ノイン?」

 

 

ペルシカの善意と疑わない二人だったが、ノインのどこか遠い目でなんか色々察する。

ちなみにこの義手一号(赤色)は善意100%の代物だ。もともと彼女がつけていたらしい(こっちに来るときには無くなっていた)はかなり無理してつけていたものであると推測され、ペルシカが久しぶりにガチで作ったらしい。

 

・・・・・ここまでならよかったが、本人の開発魂に火がついてしまったこと、制作の合間にやっていた「あるゲーム」の影響を強く受けたこと、そして数日徹夜したこと。

この結果出来上がったのが、

 

 

「え〜〜〜っと・・・『推進器をつけた遠隔操作可能な義手』?」

 

「『発射するときは「ロケットパァーーーンチ!!!」と叫ぶように』・・・だって。」

 

「こっちは放電機能、こっちは・・・なにこれフック?」

 

「・・・・ペルシカの血走った目が怖かったよ。」

 

 

気がついたらモニター役にされていた彼女だが、これがまた普通に使えてしまうところがあの天災らしいところである。

まぁ善意の代物なので無碍にするわけにもいかないし、旅するにあたって役に立つこともあるだろうと一応前向きには考えている。

 

 

「・・・・そうだ! ちょっとこれ借りるね!」

 

「え? うん、いいけど・・・」

 

 

そう言って彼女は義手の一つ、銀色のやつを持って部屋を飛び出す。残されたFとノインは首をかしげるが、まぁ悪いことはないだろうと放っておくことにした。

 

 

「ねぇノイン、他からも言われてるかもしれないけど、うちに来てもいいんだよ?」

 

「・・・ううん、いいの。 旅に出たいのは本心だけど、出なきゃいけないっていう気がするからってのもあるからね。」

 

「? どういうこと?」

 

「私は、ずっと人形として生きてきたの。 もちろん今は人間として暮らしてるし、周りもそう扱ってくれてる。・・・でも、今でも人間か人形かあやふやなところもあるんだ。」

 

 

だから、自分探しのためでもあるの。

そう言った彼女は、初めて会った時よりもずっと生き生きとしているように感じた。もちろんFには彼女の境遇も、ましてや異世界から来たなんてことも理解できないし、できるはずもない。でも、それでも前向きでいようとする彼女を応援したくなるのだ。

 

 

「・・・そっか。 ごめんね、困らせること言って。」

 

「ううん、ありがとう。 うちに来るって言われた時、すごく嬉しかったから。」

 

「えへへ。」

 

「おっ待たせぇ! ・・・ってあれ? どしたの二人とも、何かいいことあった?」

 

「「なんでもないよぉ!」」

 

「? まぁいっか。 それよりもはい! みんなに頼んで書いてきてもらったよ!」

 

 

9が差し出したのは持っていった銀色の義手・・・・・なのだが綺麗だったその表面には、統一性も一貫性もない色や字体で文字が書かれていた。

長いものも短いものも様々だったが、どれも最後には書いたであろう人の名前、喫茶 鉄血の従業員たちの名前が書いてあった。

 

 

「これって・・・・・」

 

「そう、寄せ書き! 手紙とかだとかさばりそうだけど、これなら大丈夫だよ!」

 

「いいね! 私も書こっと!」

 

 

Fがペンをとって書き始める中、義手に書かれた文字を読んでいくノイン。

 

ー いつでも寄っていってくれ・リッパー

ー おみやげ話、待ってるぞ・イェーガー

ー 素敵な出会いがありますように、なければ私がもらう・ゲッコー

ー 百聞は一見にしかず! 良い旅を!・マヌスクリプト

ー 怪我と病気には気をつけてね! いつでも待ってるよ!・D

ー 美味しいコーヒーを淹れて待っています、どうかお元気で・代理人

ー 離れ離れでも家族だよ!・UMP9

 

「これで・・・よし!」

ー いつでも頼りにしていいからね! また一緒にお茶しよ!・F9

 

 

「・・・・・・・。」

 

 

ポロポロと涙が溢れる。そういえばこっちにきてからずっと、泣きっぱなしな気がする。

読むんじゃなかった・・・・・・読んじゃったら、別れたくなくなっちゃうから・・・。

 

 

「みんな・・・ありがとう・・・・・」

 

「えへへ・・・当然だよ、家族なんだから!」

 

「そうだよノイン、私たちみんな家族だよ!」

 

「そうだね・・・・・みんな、家族だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

「・・・・・・ほ、本当に言うの?」

 

「だってそう書いてるし。」

 

「女は度胸だよノイン!」

 

「うぅ〜〜〜〜〜〜〜・・・もうどうにでもなれ! ロケットパァアアアア「あら? 何事ですか?」あああああ代理人危なあああい!!!???」

 

「え?」ゴツンっ

▽STN▽

 

「「「だ、代理人〜〜〜〜!!!!」」」

 

 

end




なんだこれ?
というわけで9好きの9好きによる9好きのための9回。
これもコラボしていただいた作者の皆様のおかげですね、本当にありがとうございます!


というわけでキャラ紹介

UMP9
本作のUMP9。
HK416と交際中で、それ以外は普通の人形。
UMP9の会を作ったものの、特に集まる理由もないのであってないようなもの。

F9
第十九話のコラボ回が初出。
厳密にはあちらのF9とは別物だが、まぁ気にしなくていいと思う。
基本的にUMP9とあまり変わらないが、若干口が軽い。

ノイン
バッドエンド救済回でこっちにきた人間。
人間なので成長する・・・胸が(重要)
義手に関しては済まなかったと思っているがどうしても書きたくなった。別に復讐に燃える鬼になったわけではないので安心してほしい。


義手
わかる人にはわかるアノ義手。気になる人は『ボス ハイダラー』などで検索。
水色っぽいやつの掛け声はもちろん「はいだらー!」
空港の手荷物検査で引っかかりそう。

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