喫茶鉄血   作:いろいろ

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気がついたら救済したい旨のメッセージを送り、気がついたら書き始めていた・・・・・うちの作品が救わなくて誰が救う!?

というわけで今回は焔薙 様のとこから、ミーシャちゃんです!


子供は、大人が思っているよりも強いんです。


第七十話:世界は違えど

「異世界かぁ・・・なんだか夢があるね、おばあちゃん!」

 

「ん? お、おぉ、そうじゃな。」

 

 

牧草地隊の広がる一本道を、ただひたすら走る車が一台。ハンドルを握る女性は後ろで楽しげに話す可愛い娘と頼れる副官の会話に耳を傾けながら車を走らせる。

この一家・・・レイラとユノとナガンの三人は、とある人物たちとの待ち合わせのためにS09地区へと向かっていた。

 

 

「ねぇねぇお母さん! 異世界ってどんなとこなんだろ!」

 

「そ〜ねぇ・・・もしかしたら悪い魔女がいるかも。」

 

「ひぃ!?」

 

「娘を脅す親がどこにおる。」

 

 

だってねぇ〜、と返すレイラだが、ナガン共々異世界の実情を聞いているからこその対応だった。サクヤに始まりS08の二人、ノイン、そして先日保護されたカラビーナ。

彼女らは皆、地獄というのも生温い世界からやってきたのだ。立場上そういった情報を知る必要のあったレイラとナガンは、それをよく知っている。

 

 

「・・・・・あ、見えてきたわよ。」

 

「お、ほんとじゃな。」

 

「もう着いてるかな・・・ヴァニラさんとFMG-9。」

 

 

後部座席から身を乗り出し、街の入り口を見つめるユノ。

ちょっとの間離れ離れだった二人との再会を心待ちにしながら彼女は・・・・・一瞬跳ねた車のせいで頭を打った。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

S09地区にはいくつか入り口がある。車が入れるほどの道幅があるところもあれば、散歩道と呼べるほど狭いところもある。レイラたちが入った道はちょうど教会の裏手から出てくる形になり、今日はミサをやっていないのか静かな教会が一望できる。

何の気なしに通り過ぎようとしたその時、頭を抑えて悶絶していたユノがヒョコッと顔を上げる。

 

 

「・・・・・? 誰?」

 

「え? 何?」

 

「誰かいる。・・・・・・あ! あそこ!」

 

「っ! 指揮官! 車を止めよっ!」

 

「え!? ちょっ、こら勝手に降りるな!」

 

 

車が止まりきる前に扉を開け、ユノは教会の方に走り出す。ナガンも後に続き、遅れてレイラも走り出す。

立ち入り自由な教会とはいえ勝手に裏手の方に進んでは何を言われるかわかったものではないが、そんなことはお構いなくユノは進んだ。

 

 

「ま、待ちなさい! ユノっ!!!」

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・あっ。」

 

「いきなり走り出すでn・・・うおっ!?」

 

「やべぇ最近運動不足かも・・・ってえ? 誰?」

 

 

ユノに追いついた二人が見たもの。

それは教会の裏手に蹲るようにして倒れていた女の子だった。見かけは綺麗そうだが靴は履いておらず、まるで死んだように・・・・・

 

 

「っ! ナガン、近くの医者に連絡とって! ユノは車に戻ってなさい!」

 

「了解じゃ!」

 

「う、うん・・・」

 

 

ナガンが端末を開いて最寄りの・・・最も近いのはあの歯医者モドキだ。そこに電話をかける。その間にレイラは少女を抱きかかえ、車へと走る。

車に乗り込み、捕まるかどうかギリギリの速度で車を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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一時間後、S09地区の『例の』歯医者。

 

 

「・・・・・はい、OKだよ〜。 それにしてもレイラちゃん、私は医者は医者でも歯医者だよ〜。」

 

「あなたなら簡単な処置くらいできるでしょ。 ていうか人形まで診れる人間が歯医者なものですか。」

 

「ほれほれ、そこまでじゃ・・・・この子も怖がっておる。」

 

 

三人が視線を向けると、その先ではやや怯えた表情の少女。銀髪の整った顔立ちで、どことなく知り合いに似ている気がしなくもないその少女は、名を『ミーシャ』というらしい。気を失っていたようだが特に体に異常は見られず、健康そのものだという。

現在、ユノには席を外してもらっている。その理由は、彼女が目覚めた後に聞いた、「なぜあそこにいたのか」という質問の答えだ。

 

 

「わからない・・・・・死んだと思ったら、ここにいた。」

 

 

その言葉でおおよそ察した二人はユノを下がらせ、彼女から話を聞き始めた。覚えている限りで、ということだが、思いのほか彼女の話は複雑怪奇で、さらにはまだ子供であるせいか伝え方もままならず、とりあえず聞き出したことをまとめるくらいしかできていない。

 

 

「・・・・え〜っと、まず君はミーシャちゃんで、お母さんは『レナード』さん。お母さんはどこかで働いてて・・・・・・今は人形さんと暮らしてる?」

 

「・・・うん。」

 

「えっと・・・・・その間あなたは?」

 

「痛いのを我慢してたら、人形さんの中にいたの。」

 

「んんん???」

 

 

さっぱり意味がわからない。人形の中にいた・・・という言葉に何か闇を感じるが、それ以外はさっぱりだ。あと父親はわからないらしい。

 

 

「えっとね、死んじゃったと思ったら人形さんの中にいて、もう一回死んだの。」

 

「???????」

 

「・・・・・レイラちゃんあとはパ〜ス。」

 

 

歯医者は匙を投げたようだ。

レイラは相変わらず混乱していたようだが、彼女の言葉をそのまま受け取れば・・・・・

 

 

(子供の頃に死んで・・・人形として蘇った? そして再び死んだってこと?)

 

 

あまりにも無茶苦茶な、しかし彼女の言葉を信じるならこれしかないという答えに、レイラははらわたが煮えくりかえりそうになる。子供が容易く死ぬ世界もそうだが、その死すら大人に振り回される世界などあってはならない。

無意識に相当怖い顔をしていたのだろうか、怯えた表情のミーシャが視界に入りパッと表情を崩す。

 

とはいえ、これは相当重い案件だ・・・・・と思っていると、何やら入口が騒がしい。続いて部屋の扉がやや乱暴に開かれ、入ってきたのは連絡を受けて飛んできた代理人、それと途中で合流したらしいFMG-9とヴァニラだった。

 

 

「・・・レイラ? その子が?」

 

「えぇ・・・・・どうしようかしr「お、お母さん?」・・・え?」

 

「「「「・・・・・は?」」」」

 

 

この時、ヴァニラはひどく混乱していた。いうまでもないが彼女はいろいろ手遅れな人間である。人間人形問わず可愛いものは愛でたいというある種の無差別テロみたいなことをやらかすくらいには。

そんなヴァニラだが、目の前の可愛らしい幼女から『お母さん』などと言われるとは思っても見なかったのだ。

いや別に呼ばれたくないわけではなくむしろバッチコイなのだがいざ呼ばれてみると理性と疑問と欲望でがんじがらめになるというかあぁでも可愛いから襲ってもいいんじゃないか(ここまで約0.1秒)

 

 

「え・・・・・っと、ミーシャちゃん、だっけ?」

 

「お母さ〜〜〜〜ん!!!」

 

「うおっ!?」

 

 

いよいよ堪え切れなくなったのか、ミーシャは泣きながらヴァニラに抱きつく。

・・・というかお母さん?

 

 

「・・・・・今なら間に合います、自首しましょう相棒。」

 

「え?ひどくないFMG?」

 

「ヴァニラ・・・ついにこの日が来てしまったのね。」

 

「待って、いつかくると思ってたみたいに言わないで。」

 

「まぁ当分はムショ暮らしじゃろうが・・・面会くらいは来てやろう。」

 

「あれ?なんで味方がいないの?」

 

 

残念ながらここには味方などいない。哀れヴァニラは警察のお世話になってしまうのだった・・・・・とは流石にならず、この場で唯一冷静に見ていられた代理人が口を開く。

 

 

「・・・ミーシャちゃん、ヴァニラさん、少しいいでしょうか?」

 

「え? いいけど・・・」

 

「うぅ・・ぐすっ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

場所は移して喫茶 鉄血、その三階にあるマヌスクリプトの自室。

ここは本人の希望で完全防音であり、中の声が漏れることは決してない。

 

 

(さて、彼女の話と容姿からヴァニラさんの子であることは確実・・・ですが、それはおそらく()()()()ヴァニラさんの話。 それをどうやって伝えるか・・・)

 

「あのぉ・・・そろそろ何か話してくれないかしら。」

 

 

代理人が静かに考えをまとめる間、ヴァニラは膝の上にミーシャを乗せてじっと待っていた。

代理人も確証があるわけではない。以前の結婚式(第二十七話)の時にチラッとよく似た人物を見かけたというだけだ。

 

 

「・・・・・ミーシャちゃん、落ち着いて聞いてくださいね。 その・・・あなたは「お母さんは、本当のお母さんじゃないの?」・・・・・え?」

 

 

言葉を遮るように聞こえたつぶやきに、代理人もヴァニラも目を丸くする。そんなヴァニラを見上げながら、ミーシャは続けた。

 

 

「お母さんは、お母さんだけどお母さんじゃない・・・・・うまく言えないけど、違うの。」

 

「ミー・・・シャ・・・・・」

 

「ここは・・・どこなの?」

 

 

そう言ったミーシャの顔には、悲壮感などなかった。まだ親が必要なはずの年頃なのに、現実に向き合おうとしている。

代理人は後悔した。少しでも不安を和らげようと、嘘を交えて話すつもりだったからだ。だがミーシャは、代理人が思っている以上に強かった。

 

代理人は全てを話した。

ここが違う世界であること、おそらくもう帰ることはできないこと、ヴァニラが本当の母親ではないこと。

だが、話し終えて最初に口を開いたのは、ミーシャではなくヴァニラだった。

 

 

「・・・・・代理人、少し、席を外してくれるかしら。」

 

 

理由を聞こうとした代理人だが、ヴァニラの瞳に映った決意の色に、何も言わず部屋から出る。

残された二人はしばらく何も言わなかったが、やがてヴァニラが話し始めた。

 

 

「ミーシャちゃん・・・・・いえ、ミーシャ。」

 

「っ!」

 

 

その呼び方にピクリと反応する。違うとわかっていても、声も顔も同じなのだ。それを割り切ることなど、大人でもできやしない。

 

 

「・・・・・ごめんね・・・私はあなたの母親じゃないけど、一緒にいられなくて、ごめんなさい。」

 

「・・・・・。」

 

「・・・寂しかったね・・・辛かったね・・・・・」

 

「あ・・・あぁ・・・・」

 

「ねぇミーシャ・・・こんな私でも・・・・・・あなたのお母さんに、なっていいかな?」

 

「お母・・・さん・・・・」

 

「うん、ミーシャ。」

 

「うぁああ・・・お母さぁあああん!!!」

 

 

それまで堰き止めていたものが一気にあふれたかのように、ミーシャは泣いた。一度溢れたものは止まらず、それをヴァニラは優しく受け止める。優しく、しかし力強く包み込み、ミーシャが泣き止むまで抱きしめ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

 

「お母さん! 私これがいい!」

 

「う〜ん? どれどれ・・・・うっ!? す、スペシャルケーキ・・・」

 

「あ、じゃあ私もそれがいい!」

 

「ま、待ってユノ・・・今月ちょっと厳しいから・・・・・」

 

「お主今度は何を買ったんじゃ?」

 

 

喫茶 鉄血のテーブルで、メニューを囲みながら喜怒哀楽をコロコロ変える二組の家族。どちらの母親も娘の要望をつき返すことが出来ず、乾いた笑みを浮かべながら項垂れた。

そしてヴァニラの・・・母親の膝に座っているミーシャは、そんな母の顔を見上げながら笑顔で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう! お母さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

end




お前がママになるんだよぉ!!!

というわけでやっちまいましたコラボ救済回!
・・・まぁ本音を言えばこっちに来なくていいくらい幸せであって欲しかったんですが。
そんなわけで許可をくださった焔薙 様、ありがとうございます!


ではキャラ紹介

ミーシャ
『それいけポンコツ指揮官〜』のとこのヴァニラさんの一人娘。
こっちに来るまでの経緯は元作品で・・・・・めっちゃヘヴィーだけど。
肉体的に死んでからも長らくFMG-9の中で生きていたという点をやや大げさに解釈し、見た目以上に賢い子に。
人を気遣える優しい子。
この後ちゃんとヴァニラは母子関係を届け出た。

ヴァニラ
こっちの世界のヴァニラさん(独身)
男に全く縁がなく、また本人の性癖も若干歪んでいるので当然と言えば当然。
この一件で完全に母性本能が目覚め、親バカに堕ちることになるがそれはまた別のお話。

レイラ・ユノ・ナガン
こちらの世界の指揮官一家。ユノちゃんはミーシャちゃんとはいい友達になってくれるだろう。
気がつけばいつも金欠気味になっているが、深い理由はない。

歯医者
もう医者でいいんじゃないかなと思うがいまでも歯医者。
オリキャラの中で最も出番が多い。

代理人
だってこの人出さないと喫茶 鉄血じゃなくなるし。
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