ちなみにこの旅行は2泊3日で、まだ一日目だよ!
ところで公式さん、UMP9の水着スキンまだですか?
突然だが人形は機械である。どれだけ人間に似せようとも中身は一昔前の精密機器ですらひっくり返るほどのハイテクちゃんだ。そのくせ食事もできるし涙も出せるし夜の・・・・・もできる。開発陣が何を思って作ったのかは甚だ疑問である。
ところで彼女らは人間によく似ている。外見もそうだが、前述の通り人間の生活に溶け込めるようになっているので尚更人間っぽい。そしてその皮膚だが、限りなく人間に近づけた人工皮膚を使っている。これもまた人間にそっくりだ。
・・・・・結果、日にやける人形が続出した。
「痛っ!? し、しみるぅ〜〜〜!」
「日焼け止め塗ったのにぃ。」
「45姉真っ黒だよ!? ていうかどんな水着着てたのそれ!?」
「アタイが着せたんだよ、あのマイクロb」
「ドウシタノ40ハヤクハイリマショウ」
「待って45心の準備が(ジャポン)ぎゃああああああああ!!!!」
悲鳴と笑い声とくつろぐため息が響き渡る大浴場。流石に以前の温泉には劣るが、これはこれでいいものだ。
「MG5さん、その・・・お隣いいでしょうか?」
「ん? PKか、いいぞ。」
(頑張れ姉さん!)
「9、湯船に髪をつけてると痛むわよ。」
「ふぇ?」
「こんがり焼けたねスプリング。」
「それはあなたもでしょうモシン・ナガン。」
「あれ? ユノちゃんとミーシャちゃんは?」
「疲れて寝ちゃったそうです。」
MG5とPKの進展を祈るPKPに9の髪をまとめる416、お互い軽口を言い合いながらしみるのを我慢しつつ湯船に浸かるスプリングとモシン・ナガン、そして肩を並べてくつろぐDと代理人。
それぞれがそれぞれの時間を使っているなかで、ススっと代理人の隣に来るのは司令部の頼れる後方幕僚、カリーナだ。
「楽しんでますか代理人さん。」
「えぇ、とっても。 誘っていただきありがとうございます。」
「お礼を言うのはこちらの方です。 美味しい料理も作ってくれましたし。」
「ふふっ、ではそのお礼はDに言ってあげてくださ・・・・あら?」
気がつけば代理人の方にもたれかかるように寝息を立てているD。模擬といえどはじめての店長に緊張していたのかもしれない。
見ればあちこちでウトウトする人形たちもおり、皆初日から羽目を外していたようだ。
「・・・・上がりましょうか。」
「そうですね。 あ、手を貸していただいても?」
「はい、お任せください!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「すぅ・・・すぅ・・・・」
「むにゃむにゃ・・・・・お母・・さん・・・・」
「やれやれ、これは起きる気配もなさそうじゃの。」
「そうねぇ・・・このまま寝かせときましょうかってヴァニラ、あんた何枚目よその写真?」
「さぁ、もう数え切れないくらいね。」
そう言ってまたシャッターを押すヴァニラ。すっかり親バカになったと言うか、母親の顔になったと言うか、まぁ喜ばしいことである。ヴァニラにとってもミーシャにとっても。
「でも、たまに思うのよね。 この寝顔を本当に見たかったのは、
「ヴァニラ・・・」
「・・・・・大丈夫よ。 過去はともかく今は私がこの子の母親なんだから。」
そう言って優しく撫でると、ミーシャはくすぐったそうに身じろぎする。そして何か夢でも見てるのか、何かを掴むように手を上げてヴァニラの腕にしがみつく。
レイラとヴァニラは顔を見合わせ、クスリと笑った。
「先にお風呂はいってきなさい。 二人は見とくから。」
「そうね、お願いするわ。 行きましょナガン。」
「うむ。 ではなヴァニラ、ユノを頼むぞ。」
「りょ〜かい。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「夏といえば肝試しですね。」
「ええぃまたかカリーナ!」
「もう懲りたんじゃありませんの!?」
「あ、あれはきっと旅館のせいだったんですよ!」
風呂上がり、すぐ横の談話室に集まった人形たちを震え上がらせたのは、カリーナが発したこの一言。
いつぞやの温泉旅行に参加した人形からすれば恐怖でしかなく、みんな揃って代理人の方を見る。
「こ、今度は本物だよな代理人?」
「い、一応触ってもいい?」
「もしかして・・・海に来てからずっと入れ替わってるとか」
「やめて416!? 45姉が泣きそうだよ!」
まさに阿鼻叫喚、というかまだか始まってもいない。それでも逃げないあたり、彼女たちもちょっと気になっているのだろう。
この光景にずっと首を傾げているのは前回いなかった組。40は泣きかけの45に抱きつき、カラビーナは涙目で震えるKarを慰める。マヌスクリプトはむしろネタ調達として前向きで、ゲッコーに至っては合法的に抱き寄せられるとかなり前向き。
「・・・で、具体的にはどうするおつもりですか?」
「よくぞ聞いてくれました代理人! 実はこの近くに洞窟がありまして、昼間そこにカメラを置いておいたんですよ!」
ルールはいたってシンプル。一人、もしくは複数名で洞窟まで歩いて行き、用意されたお札(一〇〇式が本気で書いたかなり禍々しいヤツ)を設置された台の上に置く。そしてそこに置いてある紙を開き、書いてある通りのことをしてから戻ってくる、というもの。
企画、カリーナ。協賛、マヌスクリプトというある意味地獄のようなメンツである。
「ここにカメラ付きのヘルメットもあります。 これを被っていただいて、皆さんはここのモニターで見守りましょう。」
「というわけですので、よろしくお願いしますね。」
『了解した、任せておけ。』
再集合の時間を伝えて一度解散した後、カリーナとマヌスクリプトは屋上で誰かと通信していた。相手は野太い声の持ち主で、しかし割と乗り気なのがうかがえる。
「わかっているとは思いますがおさわり厳禁です。 それ以外でしたらまぁ何やっても大丈夫かと。」
『ノータッチは紳士の鉄則だ、任せておけ。』
『日頃の訓練によるチームワーク、存分に発揮しよう。』
電話越しの相手・・・ビーチ近くの基地の軍人は電話越しに敬礼を返す。
後方幕僚であるカリーナは意外とグリフィン以外との繋がりが多い。鉄血は言わずもがな軍とのコネクションもあり、この時代でも男率の高い軍ではアイドルのように扱われている。
そんな彼女が目に
「では確認します。 A隊は光学迷彩で後ろから近づき、ターゲットが逃げたらB隊が装置を起動、洞窟へ誘導してください。 ターゲットがお札を置いたら、C隊が行動開始、あとは流れに応じて脅かしてください。」
『対象が動かなくなったら?』
「近くで待機している別働隊が救助に向かいます。 適当に争うふりをして戻ってください。」
『了解した。』
コネと戦力の無駄遣いとも言える肝試しが、今始まった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
*ここからはダイジェストでお楽しみください*
(404小隊・スタート〜森の中)
宿舎をスタートし、ちょっとした森を抜けて浜辺を進み、洞窟に入って戻ってくる。そんな子供でもできるほどの簡単なルートだが、夜のそれは全くの別物だ。
先陣を切ることとなった404小隊(ゲパード、40含む)は、常日頃の人工的な明かりの大切さをよく思い知らされた。月明かりしかない森は常に何かが潜んでいそうな気配がし、この手のホラーに弱い45と9はそれぞれG11と416にくっつきながら進む。
「ゲ、ゲパード・・・怖くないの?」
「お姉様といれば怖いものなんてありません!」
「いつまでお姉様呼びなんだろう・・・」
そんなよくわからない理屈で恐怖心を抑えているゲパードだが、その程度の化けの皮など容易く剥がれ落ちる運命にある。
風に揺れる草木の音、六人分の足音・・・・・・に混じって、
「・・・ねぇ、今一番後ろにいるのって誰?」
「っ!? な、9と416じゃないの?」
「・・・・・・・二人の後ろには、誰もいないのよね?」
『・・・・・・・・・。』
一斉に振り返る。六人分の足音が止まり、何もない空間を注視する。
・・・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・
「いやぁあああああ!!!!!」
「きゃああああああああ!!!!」
「っっっっっ!!!!!!」
「ま、待ってみんな! 置いてかないで!」
「お姉様ぁ!!!!!」
「やめてゲパードくっつかないでぇ!!!」
全員が、あのG11ですら悲鳴をあげて走り出す。その後ろを
『ぎゃああああああああ!!!!!』
「悪霊退散悪霊退散悪霊退散・・・・・」
「ごめんなさいごめんなさい明日からちゃんと働きますから許してください」
「」
UMP姉妹らは完全にすくみ上がり、416は帽子を深く被って蹲る。G11とゲパードは抱き合いながらヘタリ込む。
その後数分間、気がつけば足音も火の玉も消えていた頃になってようやく、彼女らは泣きながら先に進むのだった。
(AR小隊+ハンター+ペルシカ・浜辺)
404小隊同様に最新技術を駆使したドッキリの洗礼を浴びたAR小隊。ようやく森を抜けて浜辺に着くと同時にドッと息を吐く。見通しの悪い森とは違い浜辺は月明かりでも十分明るい。ハンターとAR-15はこれがデートならば最高だったのだが、今ではさっさとここから立ち去りたい一心だ。
「ぺ、ペルシカ・・・大丈夫?」
「だ、大丈夫よSOP、ただちょっと・・・・・腰が・・・」
意外だったのは、この手のことは平気だと思われていたペルシカがいきなり腰を抜かしたことだろう。科学者の一員として非科学など信じない、というわけでもなく(一応科学によるものだが)ビビりきってしまった。
404ほどではないがこちらも阿鼻叫喚な道中だったが、もちろんこの浜辺で何も起こらないはずはない。
最後尾を歩いていたM16がこけた。周りにいた者は皆そう思ったが、M16の青ざめた顔と先頭のM4の悲鳴でようやく理解する。
「きゃあああああ!!!!」
「足に、足に何かが・・・・!」
「な、なんだ!? うわぁああああ!!!」
M16とM4の足元、その足首をがっちり掴んでいたのは青白いを通り越して真っ白に近い腕だった。しかも現在進行形でニョキニョキと生え続け、それぞれが足をつかもうと伸びてくる。地面に倒れるM16は両足どころか両腕や服まで掴まれており、いよいよ泣きながら暴れ始める。
「うわあああああ!!!! やめろ! 離せ!!!」
「ひぃいい!? た、助けてハンター!!」
「やぁああ・・・いやぁあああああ!!!」
「待ってろふたりとも! 今行く!!」
「ペルシカ!? 起きて!!!」
「ブクブクブク」
白い手たちは思いのほか力が強く、全く離れる気配がない。
その時、倒れるM16の目の前の砂がポコっと膨らみ、徐々に大きくなっていく。恐怖でこちらも真っ青な顔のM16は、震えながらそれを観続ける。さながら呪いのビ◯オから出てくる貞◯に怯えるように。
そして唐突にそれは崩れ、中から現れたのは顔が大きくえぐれた人間の顔だった。
「 」チーン
「え、M1ろk・・・キャアアアアアア!!!!」
「来ないで・・・来ないでぇ!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
その間もゆっくりと地面から這い出るソレ。まるで人形たちの体を這い上るように迫り来るソレにいよいよ堪え切れなくなり、結局全員気を失ってしまった。
目がさめるとそこにはまるで何もなかったかのように綺麗な砂浜が広がり、AR小隊は我先にと洞窟に向かって走り出した。
(MG部隊・洞窟)
ビビり筆頭、今回のカリーナの予想では誰よりも早くリタイアすると予想していたMG5だったが、なんとここまで一度も気を失わずにたどり着いたのだ。これには色々と理由があるが、一番はやはり・・・
(か、彼女たちにはバレるわけには・・・・・)
という強がりである。森では恐怖で顔が引きつり立ったまま固まってしまうもソレがまるで動じないように受け取られ、浜辺では腕を蹴ったり気絶した仲間を背負って逃げたり(本人は早く逃げたかっただけ)、とにかくここまではなんとか耐えていた。
「あ、あとはこのお札を置いて・・・・・指示書はこれ?」
「な、なんて書いてるの?」
「・・・・・『生贄を置いていけ』・・・と。」
揃って顔を見合わせる。要するに誰か一人ここに残れ、と言いたいらしいが、問題は誰が残るか。
「こ、これって、全員で帰っちゃダメなのか?」
「で、でも指示書には・・・・」
「ど、どうするの隊長・・・・・隊長?」
隊長であるMG5に注目が集まる。はっきり言えばさっさと帰りたいが、誰か一人残すのは彼女の良心というか責任感が許さなかった。
真剣な顔(単純に泣きそうなのをこらえてるだけ)で考えること数分、ようやく口を開いた。
「・・・・・私が残る。 PK、みんなを連れて戻ってくれ。」
「え? そんな・・・・・」
「・・・・・命令だ。」
震える声をなんとか抑えて命じる。PK以下隊員はどうすべきかと迷っていたが、再度命じると大人しく戻っていった。
「・・・・・・・・うぅ。」
誰もいなくなると、一人うずくまって泣き始める。指示書にはいつまでとか書かれていないために、逆にいつになったら出て行っていいのかすらわからない。
そんな時、一際強い風が吹き込んだ。
そして次の瞬間、火の元も何もないはずのロウソクに火がつき、ソレは次第に他のロウソクにも移り始める。
「っ!!??」
ロウソクの明かりで明るくなった洞窟・・・・・そして始めて、その全貌が見えた。
洞窟の奥は、朽ちかけた木造の格子がかけられ、さながら牢獄のようになっていた。そして鍵が崩れ落ちていた牢の扉がひとりでに開き、中のロウソクに火が灯る。
「・・・・・・・・。」
入ってこい、とでもいうかのようなソレに、MG5は恐る恐る近く。やがてゆっくりと牢に入り、完全に潜りきったその時。
ガシャンッ
「ひぃっ!?」
風もないのに突然扉が閉まり、同時にロウソクも全て消える。相変わらず鍵は地面に転がっているようだが、MG5がどれだけ押しても開く気配がない。
「う、うそ・・・・・誰か! 誰か助けてぇ!!!!」
もう恥も外聞も気にしていられずに牢を叩きながら叫ぶ。が、当然
そんな時だった。MG5の背後、牢の奥でなにかが立ち上がるような気配がした。先程見たときは何も、誰もいなかったはずにもかかわらずだ。MG5は固まったまま、振り返ることなく気配だけを感じる。
その気配が、ゆっくりと近づいてくるのがわかった。そしてひどく冷たい手が首に触れると同時に、MG5は気を失った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「というわけでドッキリ大成功! 皆さんいい笑顔でしたわ!」
「というわけで、じゃないわよ! 本っっっっ気で怖かったんだから!」
「ほらRO、もう大丈夫よ。」
「ってうか軍人て暇なの?」
「・・・・・・あ、隊長! おかえりなさい!!」
「あ、あぁ・・・ただいま。」
MG5が洞窟に残ったあとでカメラが止まるというアクシデントはあったが、全員無事に帰ってこられたようだ。参加した人形たちは皆緊張が解けたせいか次々に泣き出してしまい、代理人ら居残り組がソレをなだめる。
「でもMG5さん、いつの間に洞窟から出たんですか?」
「え? いや、気がついたら外に・・・ってどうしたPK?」
「た、隊長・・・そんなネックレスつけてましたか?」
「・・・・・え?」
言われてみればMG5の首には水色の水晶がついたネックレスが光っている。しかも・・・・・
「それ・・・手形、ですよね?」
「ね、ねぇハンター・・・どうして私の足にだけ手形がついてるの?」
「9・・・・・その痣、どうしたの・・・?」
MG5の首を筆頭に人形たちの手足に残る痣や手形。カリーナが指示したドッキリではあくまで軽く掴むだけで、しかも首などは触らないようにと伝えていたはずなのだが。
「・・・・・・もしもし、カリーナです。 ちょっと伺いたいことが。」
『あぁ、君か。 ちょうどこっちも聞きたいことがあってな。』
「? はい、なんでしょうか?」
『いや、その、映像を見させてもらったんだがな・・・・・・』
「あ、浜辺のやつですね。 あんなにたくさん出るとは思ってませんでしたよ!」
『・・・・・・・・・あそこには四人ぐらいしかいないはずなんだが・・・・。』
「・・・・・・・・え?」
そんな不思議な出来事とともに、夏の小旅行一日目が終了したのだった。
続く
夏といえば海やプールですが、夏の夜といえば肝試し。旅館の時と同様、『本物』の方に出ていただきました。
ちなみに私の実話としては、十人くらいで手を重ねて(エイ、エイ、オー!みたいな感じ)で写真を撮った時、何度数えても十一人分だったという思い出があります。
さぁて次回はついに後編!
沖での釣りとダイビング、そしてポロr(銃声)