やっぱり3000字くらいが読みやすいですよね。
というわけで今回は番外編!
・サマーバトル!
・もう一度、あなたと
番外18-1:サマーバトル!
海、一日目。
あっつい日差しの中、簡単なネットを張って砂に線を引いたコートで、二つのチームが向かい合っていた。
片方にはM4をリーダーとするAR小隊・・・残念ながらAR-15とD-15とSOPは不在なため、代理で入るのはWA2000とカリーナだ。
反対側は45たち404小隊・・・G11は身長的に不利だが拒否権はなかった。
「ふふふ・・・・今日こそどちらがエリート部隊にふさわしいか、はっきりさせてやるわ!」
「あの・・・404小隊って特殊部隊ってだけでは?」
「シャラーーーーップ!!! あなたにはわからないでしょう、裏の主人公だとか言われても結局表の主人公には勝てないという屈辱が! というか大人しくて気弱なキャラ被ってんじゃないわよこの微(妙な)乳(の)人形が!!!」
カチンッ「頭にきました・・・徹底的に叩き潰します!!!」
『いや、勝手にやってろよ。』
完全に巻き込まれただけの他メンバーだが、一応参加する理由はある。これに勝てば、喫茶 鉄血で使える食事券千円分が十枚綴りでもらえるのだ。
特にほぼ毎日のように入り浸るG11あたりは喉から手が出るほどほしい。
「しゃーないか。 ま、勝たせてもらうぜ!」
M16が勢いよくサーブを放つ。それを416が難なく受け流し、G11が打ち上げてゲパードが振りかぶり。
「・・・・よっと。」
ちょっとだけ浮かせてブロックを躱す。完全に裏をつかれたブロックの後ろにポトリと落ちる・・・・・わけにもいかず、いち早く反応したWAがスライディングでなんとか持ちこたえる。
「ちっ!」
「ふんっ! 残念だったわね!」
WAが負けず嫌いなのはわかっていたが、これで火がついたのかゲパードの目つきも変わる。と言うか気がつけばほとんどの人形が戦場に立つ時の目だった。
(あれぇ〜・・・私間違えたかなぁ・・・・。)
この中で唯一の人間であるカリーナは冷や汗を流しながら構える。ぶっちゃけ本気で打たれたらカリーナが耐えきれるとは到底思えない、というか最近運動不足気味なのでそれ以前の問題だ。
「これで・・・どうですか!」
「はい残念! 45姉、お願い!」
「くたばりなさい後半見せ場のない主人公!」
「くたばるのはそっちですよイベント限定さん!」
もはや罵倒の嵐である、がさすがは戦術人形、それも指揮モジュールを積んだ人形が両陣営にいるのだ。お陰で互いに一点も入らない膠着状態が続く。
そんな様子を遠くで見つめるのは、警備役の軍人やドローン越しに警備する基地の軍人だ。
もっとも、彼らが見ている場所など一点しかないが。
「うぉおおおおまた揺れたぁああ!!!!」
「見ろよ! ビーチボールが山のようだ!」
「いけぇ! そこでポロリ・・・・あ〜ダメかぁ〜。」
警備そっちのけで揺れる双丘たちを見守る野郎ども。ビキニタイプだったり競泳水着だったりとよりどりみどりだが、あれだけ激しく動いても全くこぼれ落ちる気配がない。だが布地では抑えきれないほど揺れているため、溢れそうで溢れないそれを息を荒げながら追いかけるのだ。
その一方で・・・・・
「見たか今のジャンプ! 足先から頭のてっぺんまで
「やはり貧乳はステータスだ! 希少価値だ!!」
「貧乳マイクロビキニとか分かってるじゃないか45姉!!!」
「G11ちゃんに白スク水を着せたい・・・・」
「もちろん旧タイプだろ同志よ。」
「当たり前だぜ同志。」
こんな手遅れ組もいる。いつのまにかドローン管制室にはポップコーンとドリンクが持ち込まれ、誰が最初にポロリするか、誰が得点を入れるかなどの賭けが始まる。
・・・・・軍人としてはいささか問題だが、悲しきかなこれを咎める者などいない。
結局この勝負の決着は付かず、だれのハプニングも起きなかった。だが男たちは今日の光景を糧に明日からの訓練に精を出すだろう。
ちなみに喫茶 鉄血のクーポンは、全員に一枚ずつ配られた。
end
番外18-3:もう一度、あなたと
「・・・・・・・アウスト・・・。」
「・・・・・・・・・え?」
まるで時間が止まったかのように、私はそこから動くことができなかった。髪も少し伸びているしヒゲも同じ、だがその顔を、一度たりとも忘れたことなどない。
そして、彼の言葉で確信が持てた。
「どうして・・・・その名前を?」
「っ!」
「うわっ!? ちょっと!」
気がつけば私は、彼を引っ張って店の奥へと走っていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「・・・・・で、お客様を連れてここまで来たと?」
さて冷静に考えれば問題しかないこの行動、当然のごとく代理人に捕まり、ひどく冷たい目で睨まれている。
・・・うん、短略的だったのは認めよう。だが私にとっては最優先事項だったんだ。
「・・・はぁ。 もう起こってしまったことは仕方ありません。 それに・・・・・私から見ても間違いないようですから。」
「! じゃ、じゃあ!!」
「えっと・・・・説明を聞いても?」
彼が・・・アウストが困り顔でそう尋ねる。なぜわからないんだ、と言いかけるがよくよく考えれば私はもうリッパーではない。わからなくて当然だ。
「そうですね・・・ではまず、あなたは
「っ!? ・・・なぜかな?」
「何をバカな、と言わないだけでも怪しいのですが、彼女が何よりの証人ですよ『アウスト=ヴィノ=スコヴィッチ』さん。」
「なっ!? どうしてそれを!?」
「・・・・・・あとはあなた次第です、アベンジャー。」
それだけ言って代理人は表に戻る。残されたのは驚愕の表情を浮かべるアウストと、私だけだ。
もう間違いない、ならばあとは伝えるだけだ。
「・・・・アウスト。」
「・・・君は、誰だ? すまないが君に見覚えは」
「あぁそうだ、私は変わってしまった・・・・・・あの時のちっぽけな、非力なリッパーから。」
「リッパー・・・・・・・・まさか!」
彼の瞳が、
「そうだ、私だ・・・・・会いたかったよ、アウスト!」
「リッパー・・・お前なのか?」
「あぁ・・・そうだよ・・・・・・アウスト、本物なんだね?」
そのまま私は抱きついた。最後にこうしたのはあの逃亡生活の中でだったが、彼の匂いは変わらなかった・・・・・・もちろん泥臭いというわけではないぞ。
「お前、なんで・・・それにその姿は・・・・」
「アウストこそ・・・・・どうして・・・・・・」
お互い聞きたいことが山のようにあった。が、流石に店でそれをやられるのはまずかったのか、ここの従業員のリッパーとイェーガーに三階の部屋に連行された。というか私の部屋に放り込まれた・・・・・・・ごゆっくり?やかましいわ!
「・・・・・そうか・・・それが今のお前なのか。」
「・・・・・うん。」
あのあと、気まずくなりながらも互いのことを話した。まずアウストだが、彼も気がついたらこっちの世界にいたらしい。拾ってくれたのは近くの住人で、自分のことを記憶喪失か何かだと思われていたらしい。
で、いつまでもそうしていられないので思い切ってグリフィンに突入、案の定『アウスト』なんて名前はなかったけど、社長が出てきて新しい戸籍やらを用意してくれたらしい。
それがおおよそ、1ヶ月前だ。
私も全て話した。
自分で命を絶とうとしたこと、ハイエンドモデルとして蘇ったこと、多くの人形を殺したこと・・・・・ここに流れ着いた時のこと。
「・・・・・すまん!」
「・・・え?」
彼が頭を下げた。彼が謝ることなんて何もないはずなのに。
「俺がお前を巻き込んだようなもんだ・・・お前がそんな姿になったのも。」
「違う・・・違うよアウスト・・・・・」
たしかに私は、彼への気持ちを利用されていた、それを復讐心に変換していたのは事実だ。
でもそれは、彼の責任なんかじゃない。
「私は、アウストに出会えてよかった。 初めてあった時は殺されると思ったのに殺さなかったし、食べ物までくれた。」
「リッパー・・・・」
「服を選んでくれた時は、すごく嬉しかった。 あなたといれば、何も辛くなかった。」
「・・・・・・・・。」
涙が落ちる。一度溢れ出したそれは、もう自分では止められなかった。
あの時話せていれば、どれだけ楽しかっただろう。どれだけ笑えたのだろう。そう思うと同時に、全て遅すぎたのだと感じた。
会いたかったはずのアウストに、さっきまで抱きついていたアウストに、手を伸ばせない。私は、殺しすぎた。
「・・・・リッパー。」
「っ! い、いや・・・・」
「大丈夫だ・・・おれはここにいる。」
「だめ・・・・・私にそんな資格なんて・・・・・」
「そんなもんクソくらえだ。 ・・・・・お帰り、リッパー。」
「あ、あぁあ・・・・・・」
無意識に、彼に腕を回していた。血に濡れた腕だ、彼に触れたら汚してしまう。なのに、離したくない。
「アウスト・・・・好き・・・・・」
「・・・・俺もだ、リッパー。」
唇を重ねる。それだけで、今までの不安や恐怖が消え去る。もっと彼を感じたくて、より体を寄せると、彼は一瞬驚いたような顔をした後で私をベッドに押し倒した。
「・・・・お前、どこまでわざとなんだ?」
「え? 何が・・・・?」
「いっつもいっつも押し当てやがって・・・・・勘違いしちまうだろうが。」
すると彼は小さく、嫌なら押しのけてくれ、と言って再び唇を重ねる。それで全てを察したが、押しのけるつもりなんてなかった。
鼓動が早まる。期待で胸がいっぱいになる。
「・・・・・・・きて。」
ベッドが、軽く軋んだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
数日後、私は代理人にある場所に呼び出された。S09地区の高台にある、小さな公園だ。夜ということもあって人はおらず、代理人も連れてきただけですぐに帰ってしまった。
「・・・・なんなんだ。」
「・・・リッパー。」
「ひゃいっ!?」
突然声をかけられ、慌てて振り向く。そこにいるのはきちっとしたグリフィンの制服を着た彼・・・・先日名前を元に戻したアウストだった。
「今日は、その・・・・大事な話があってな。 ・・・・・・・グリフィンの指揮官になったんだ。」
「・・・・そう・・おめでとう。」
まぁたしかに見ればわかることだが、そのために呼び出したのだろうか。・・・・私に祝ってほしいと思ってのことならそれはそれで嬉しいが。
「それで、そのな・・・・・遠くの地区に行ってしまうわけなんだが・・・・・・・。」
そう言うと彼はポケットに手を入れ、何かを取り出そうとする。
・・・・引っかかってなかなか出てこないが。
「このっ・・・よし。 リッパー、こっちに来てくれ。」
「う、うん・・・・。」
なんだろう? 別れの品かとも思ったが別に今世の別れでもあるまい。
目の前まで来たところで、彼は突然その場で片膝をつき、両手で小さな箱を・・・・・・・・・・え?
「好きだ・・・・・・・一緒に来てくれ。」
「・・・・・・・・・。」
私は無言で箱を受け取り、そっと開ける。中に入っていたのは銀色に輝く指輪・・・・・それと彼の顔を見比べ、次第に視界がぼやけ始める。
「アウスト・・・これ・・・・・・え、本当に・・・・?」
「あぁ・・・・・もう一度言うぞ、好きだ・・・・・・返事を、くれないか?」
何度も目をこすった。何度も頬をつねった。
夢じゃないのか?白昼夢とかシステムトラブルとかじゃないのか?
だが帰ってくる答えは一つ・・・・・・現実だ。
「・・・・・はい!」
「っ! リッパー!」
「アウスト!」
思わず抱きついて、そのまま泣いた。嬉しすぎて、頭が可笑しそうになる。だがこのまま壊れてしまうなら、それでもいいと思えるくらい、私は幸せだった。
願わくば、いつまでも、続きますように。
end
三部構成だった海回と救済回だったので番外編は二つだけ。
でもまぁたまにはこんなのでもいいよね。
というわけで早速解説!
番外18-1
七十二話の一場面。せっかく海に来たんだからビーチバレーだろ!
惜しむらくは、これが全年齢向けのKENZEN小説だということ・・・・・お陰で全員ポロリの場面はボツになった(流石に怒られそう)
番外18-2
七十五話の最後から。
実はもともと出すつもりじゃなかったアウスト君、でもせっかくだしこっちでは結ばれて欲しかったしね!
これを本編に書かなかった理由は、ただでさえ長いのにさらに長くなることと、本編最後のサプライズ的な意味合いがあったから。
これで一応アベンジャーちゃんは本編から下がります。番外編とか他の話でちょいちょい出るかも。
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