よろしくお願いします。
「...なあ、灰原。あの人のことどう思う?」
博士と話が進んでいる聖(ひじり)さんを横目に、俺は灰原 哀(はいばら あい)に尋ねた。
こいつは俺を小さくした組織の科学者で、組織の人間に敏感だ。聖さんに怯えていないところを見ると、組織の関係者ではないのだろうが、彼が灰原に反応を示したことが気になる。
「どうって?」
「いや、組織の人間じゃねーだろうけど、お前から見て何か感じるところはねーのかよ。」
「さぁ...?銀色の髪をしているから、ジンと関係があるのかと疑ったけれど、顔も雰囲気も似ても似つかないわ。貴方が心配するようなことはないんじゃない?」
...確かにそうかもしれない。
だが、疑いの気持ちだけで彼を連れてきたわけじゃない。
「あの人、死にたい、っていってたんだよ。」
「え?」
「今は博士と楽しそうに話してるけど、俺が最初に会ったときは.....以前のお前みたいだった。」
灰原の姉、宮野 明美(みやの あけみ)が組織に殺され、また、組織に追われる恐怖から、生きる意味を見出だせていなかった時にそっくりだった。
「そう.....。なら、貴方が助けてあげればいいんじゃない?」
「は?」
「貴方が私を助けてくれたように、彼を助けてあげなさい。」
「お前なー、助けるって言ったって.....。」
灰原の場合は、敵がはっきりしていた。
けれど、彼については何故死にたいと言ったのかも、何故あんなにも暗い顔をしていたのかも分からない。
「らしくないんじゃない?分からないなら、推理するのが貴方の特技でしょう。小さな探偵さん?」
...確かに、そうだ。
今まで何故及び腰になっていたのか...。
分からないのなら調べて推理すれば良い。
「お前にそんなこと言われるなんてな...分かったよ。」
彼を死なせたりなんかしない。
「今日はありがとうございました。」
今日は運の良い日だった。
色々話を聞いていたが、博士さんは今度、仮想体感ゲーム機をつくるらしい。それに、僕の発想が面白いからと、一緒にアメリカへ行こうと言ってきてくれた。基本的に暇な僕としては、たくさん経験のできる場をくれることは有難い。まだ、少し先のことらしいので、今世の両親に相談して行かせてもらおうと思う。
「ああ、君との話は面白かったよ。また、よろしく頼むのぅ。」
「はい。」
頭を下げて、お礼を言うとちょうど、眼鏡の少年と僕の母親に似た少女が目に入った。
「せっかく連れてきてもらったのに、博士さんとばかり話していてごめんね。」
「気にしてないわ。」
「お兄さん、とても博士と話が弾んでいたね。お兄さんも研究者を目指しているの?」
難しい質問だな。研究者は真理を“きわめる”人のことを言うから、あながち間違ってはいないが、彼のいう研究者と僕の考えは違うだろう。
「...違うよ。僕はそんなに頭が良くないしね。普段は、芸術系統のこと全般を仕事にしているよ。」
「仕事に?」
「これでも、それなりにその道では成功できていてね...えっと君は女の子だから知っているかも。ちょっと耳を貸して?」
そう言って、彼女に僕の仕事用の名前を教えた。
ありがとうございました。