グレイフィアに俺の食事集めを命じたあと、俺はどの種を下僕にするか選別していた。妖怪、吸血鬼等の理性を持つ魔に属する種族に目をつけていた。吸血姫は今だに所在を詳しく把握できておらず、所在のわかる妖怪の方をあたってみることにする。
妖怪は日本にある別空間に住んでおり、九尾の狐を統領とする京都の妖怪達が名を連ねている。多種多様な妖怪がおり、個々の能力も大きく変わるが妖怪は妖気か氣の力をもちどの個体もどちらかの力を持つ。
俺は早速行動を開始し、京都へと転移した。
京都へと転移した俺は違和感をもたれないように認識阻害の術をかけ街を練り歩く。この都独特の雰囲気を楽しんでいるところに無粋な輩が現れた。服に五芒星の印を付けた集団で全員が栞サイズの紙を手に持って構えていた。
「闇の住人よ、何故都へ現れた?」
それらの集団を率いている初老の男性が先頭に立ち俺へと問いかけてくる。
(ふむ、警戒はしているが事を荒立てる気はあまりないようだな)
「何、この国にいる妖怪に興味があってな。この都にいるのはそれまでの観光といったところだ」
「ならば事が済めば都から立ち去れ。ここはお前のような闇の住人がいていい場所ではない」
そう言い終わると後ろに控えている者達を連れ立ち去っていった。何人か若いものが俺を見ているが、何もせずに去っていく。
人外は滅すべしという考えはあるが、上役の言いつけは守るよう教育されているのか。まぁいい、目的を果たすとするか。
俺は都を後にし、妖怪の気配がする方へと向かっていく。
◆
先ほどケストラーと対峙していた退魔師の初老の男性・姫島玄冬は内心冷や汗をかいていた。都に張ってある探知用の結界に邪悪な気配を感じてその気配の元へと駆けつけた。
そこにいた存在を目にした時震えが来た。九尾の狐等の大妖怪と退治したことはあるがあれほどの存在は見たことがなかった。あちらに敵対の意思がなかったのは幸いであった。
玄冬はケストラーから逃げるようにその場から離れていった。そしてあれに目をつけられた九尾の狐を不憫に思った。
◆
妖怪達の気配をたどり、都より離れた場所へと赴くと、多数の妖怪に囲まれていた。見ると結界が張ってあり人間には知覚できないようになっていた。
妖怪たちのほうへ視線を向けると、それらの妖怪を率いるように立っている巫女装束の狐の耳と九本の尾を生やした女性がいた。
「冥界の者よ。我らに何の用だ」
彼女達は皆ピリピリとした空気を発しており、何かあればすぐにでも戦闘ができるようになっている。俺には意味はないがな。
「お前たちを俺の配下にしようと思ってね」
俺の言葉に反応し敵意を顕にしていくが九尾の狐が手でそれを制する。
「それを素直に聞き入れると思いますか?それにあなたは何者ですか?」
統領と言われるだけあり、九尾の狐は冷静に俺が何者か問うてくる。
「大魔王ケストラー。それが俺の名だ」
「大魔王? 悪魔たちの王は四大魔王と聞いています。大魔王などという名は知りません」
「それもそうだろう。俺のことは一部の者しか知らんからな。それで俺の配下になるか聞かせてもらおう?」
「断る。貴方のような得体の知れない存在に組みすることはありません。何かするのであればこちらは武力も辞さない!」
「クッ、ハハハハハハハハハ!」
強く言い切る彼女に対して笑いが出てくる。
「何が可笑しい!!」
「いや、貴様ら程度が俺に敵うと思っているのか?」
「貴様!言わせておけば!!」
俺の言葉に反応して一部の妖怪が武器を構えて襲ってくるが、手で払うように吹き飛ばす。俺に触れることもできずに妖怪達は吹き飛ばされていく。
さらに、九尾の狐以外の妖怪を圧縮していく。
「「「「「ギ、ギャアアアアァァァ」」」」」
杯を出し、そこに命の水を満たしていき飲み干す。
「ふむ、悪魔と違った味がするな」
「・・・・・・貴様、よくも!!」
妖怪どもの味を楽しんでいると九尾の狐は怒りを顕にし、その姿を変えていく。その姿は巨大な九尾の狐となっていた。おそらくはこれが彼女の本来の姿なのだろう。
巨大になったその身から繰り出される爪と牙、そして炎による攻撃が俺に襲い掛かる。攻撃を受けて分かるが単純な力ならグレイフィアを超え、天龍ほどじゃないが並のドラゴンを超える力を有している。
九尾の攻撃を防いだり、逸らしたりしているが力が完全でないのと巨体であるため攻撃の何個かは強い痛みを感じる。流石にやられていてばかりでは癪なのでこちらも魔力弾で応戦する。九尾は俺の魔力弾を尻尾により弾いていく。無理なものは避けている。
俺と九尾の戦いは周りの地形を大きく変えるほどの被害を出していく。俺はそろそろ本気をだし、魔力を解放する。点の攻撃は避けられるため頭上からの面の攻撃を仕掛ける。
九尾はそれに気づきその場から離れようとするが、それに合わせて俺は範囲を広げそのまま九尾を潰す。
「ク、アアアアアアァァァァ!!」
土煙を上げ、九尾は地面に押し付けられるように潰される。ダメージが大きかったためかその身を人間の姿へと変えていた。
「さて、これから俺のペットになるにあたって少し調教せんとな!」
魔力により鞭を作り出しそれを九尾に振るう。
「ッアア!!」
鞭が体に打たれるたびに九尾は悲鳴を上げ、打たれた箇所はアザとなり体に刻まれていく。
暫くそうしていると悲鳴を上げる力もなくし、グッタリと九尾が動かなくなると鞭を消して近づく。
「獣には服はいらんだろう」
俺は魔力により彼女の服を焼き払う。鞭で打たれ所々赤く腫れている彼女の裸体が俺の前に晒される。九尾は手で隠そうとするが俺は彼女に首輪を付けそれから伸びる鎖をひき、無理矢理持ち上げる。
「・・・・・!!」
首が絞まり何とか逃れようと体をよじるがそれを手で抑え耳元で囁く。
「さて、このまま畜生として俺に飼われるか、それとも配下となりそれなりの扱いを受けるのとどちらがいい?」
そう言うと鎖を離す。九尾は再び地面に倒れふす。彼女はなんとか顔を上げ俺に視線を向ける。
「な、なります。配下にしてください・・・・・・・・お願いします」
それを聞き俺は笑を浮かべ頷く
「クックッ、いいだろう。配下になった記念だ。受け取れ!」
グレイフィアにしたように彼女の胸元へと魔力を送り刻印を刻んでいく。
「アアアアアァァァァ!?」
刻印が刻み終わると九尾は体をぐったりと横たえ息を荒くしていた。
「そういえばお前の名を聞いてなかったな。九尾、お前の名は何という?」
「・・・や、八坂です。ご主人様」
「八坂か」
それを聞き、八坂を抱き上げて居城へと転移する。
結界が解かれたその場所は災害が起きたような傷跡だけが残っていた。