ドラゴン狩りをする為、人間界のいろんな場所に赴いたがなかなか見つからない。見つけたとしても下級、良くて中級クラスのドラゴンばかりで、あの時のクラスのドラゴンは見つけられないでいた。
そこで俺は息抜きも兼ねて人間の街に来ていた。最近分かったことだが、人間の中にはドラゴンに匹敵する力を有する人間もいるらしい。そいつらは時には聖人や聖女。または魔女なんかと言われている。たまたま喰らうことができたが、質としては確かにドラゴンに匹敵する。だが、ドラゴン以上に数が少ないのが残念だ。
それと俺には関係ないが、悪魔、天使、堕天使の陣営が小競り合いから、大規模な戦闘を行い始めたそうだ。昔悪魔が言っていた戦争が始まったらしい。その戦争に他種族の者も参加しているという話を聞いた。そんな風に思考していたためか、前から歩いてきていた人間にぶつかってしまった。
今は悪魔として活動しているわけではないので、取り敢えずは転倒させてしまった人間へ謝罪の言葉を言おうと視線を向け、俺は停止した。
「イタタタ・・・・・・すいません、考え事をしていたもので。貴方は大丈夫ですか?」
その人物は長い金髪に黄金の瞳をし、法衣の上からでも分かる女性らしいスタイル、その顔は大人でありながら幼い少女などが持つ純粋さを持っていた。俺はそんな彼女に見蕩れてしまっていた。前世も含めてこのような女性に会ったことも見たこともなかった。
「あの、大丈夫ですか?」
女性は、今だに見蕩れていた俺に心配そうに声をかけてきた。
「あ、ああ、すまない。大丈夫だ。それとこちらこそ考え事をしていたもので前を見ていなかったよ」
「よかった、怪我がなくて」
彼女は安堵したように笑を浮かべる。しかし彼女の格好から察するに教会上層部の関係者だろう。そんな彼女が考え事をしながら一人で歩くものだろうか?
「そう言えば、貴女のような女性が何を考え込んでいたんですか?」
俺がそう聞くと、彼女は顔を伏せ、少し思案したあと顔を上げた。
「このことはあまり話さない方が良いのですが・・・・少しあちらのお店で話しませんか?」
「ああ、構わないよ」
そうして俺と彼女は、彼女が指し示した酒場へと入っていった。
適当な席へ向かい合うように座る。
「自己紹介がまだでしたね。私の名はエルといいます。エルとお呼びください。格好からわかるとうり教会の者です」
「俺はケストラー。一応旅人かな。俺もケストラーで構わない」
俺達は軽く自己紹介をしたあと話に入った。
「それではケストラーとお呼びします。それでケストラーはこの街より離れた森にドラゴンがいたという話を聞いたことはありませんか?」
この街から離れた森のドラゴンといえば、俺が喰らった地竜のことか。
「知っている。確か教会のが戦士を派遣して討伐に行ったという話のことですか?」
「はい・・・・・ですが、派遣された戦士達が見たのはドラゴンではなく、そのドラゴンを喰らっていた悪魔だったのです」
間違いなく俺だな。
「悪魔・・・・・・」
「ええ。そこで戦士達は急遽討伐の対象をドラゴンからその悪魔にしました」
彼女はそこで一拍置き再び口を開く。
「しかし、悪魔から放たれた凶悪なまでの魔力に戦士達は気絶してしまいました。幸い、戦士達は悪魔に殺されることはありませんでしたが、その悪魔のことを思い出すだけで恐怖し、ひどく怯えていました・・・・・・」
あの時は極上の獲物が見つけて気分が高揚していたからな。まぁ、すぐに逃げられたが。
「それは大変だったな。しかしそれがエルと何の関係があるんだ?」
「その話を聞いた教会上層部は私も含めて、その悪魔を調査することにしたのです。私は微弱ながら悪魔の気配があったこの街の調査に来たのですが、なかなか手掛かりが見当たらず考えことをしていたらケストラーにぶつかったというわけです」
それで今に至ると。
「だが、エル一人でその悪魔をなんとかできるのか?」
「フフッ、こう見えても私は強いですよ」
そう言われ、少し探ってみると莫大な聖なる力を感じ取れた。凄まじいな・・・・・・・
「強くても、さっきみたいに考え事してたらやられてしまうぞ」
少しからかってやると、エルはムッとした顔になった。
「もう!それを言わないでください」
「ハハッ、悪かったよ」
その後、俺達は他愛のない会話をする。
「っと、もう行かないと・・・・」
暫くするとエルはそう言い、席から立ち上がる。
「どうしたんだ?」
「もう、教会に戻る時間で・・・・今日は少しでしたけどケストラーと話せて楽しかったわ」
「俺もだ。こんな気持ちになったのは、すごい久しぶりだ」
「また機会があったら話しましょう」
「ああ、そうだな」
エルはそう言い残して店を出ていき、俺は座ったままそれを見送る。彼女が去ったあとも俺はそこに座ったままだった。
本当に久しぶりだった。悪魔として生まれ変わり、気の向くままに魔獣や悪魔を喰らうばかりで、エルと会話したようなことは転生してからは一度もなかった。
何か満たされるような感じがした。それと同時にエルを、彼女を俺のものにしたい。そんな思いが心を占めた。このように思ってしまうのは、自分が完全にケストラーになっていることなのだろう。だが、そんなことは些細なことだ。俺は何としてもエルを手に入れる。俺は知らず知らずのうちに、笑を浮かべていた。
取り敢えずそれは置いておこう。後ろの奴と話すのが先か-----
「それで俺に何のようだ」
俺はエルがいなくなってから背後に立っていた悪魔に座ったまま問いかける。
「お初にお目にかかりますケストラー様。私は代々四大魔王ルシファー家に使えるルキフグス家の者、グレイフィア・ルキフグストと申します」
彼女、グレイフィアは丁寧に挨拶をしてくるが、そんなことより四大魔王が俺に何の用かが気になる。
「今更魔王が俺に何のようだ?」
「この度、ルシファー様を含めた四大魔王様全員が貴方と会談したいと申しました。そこでご足労ですがルシファードにある王城まで着ていただけますか?」
会談?今まで俺を殺そうとしてきた奴らが今更話し合いか。
「普段なら断るとこだが、今は気分がいい。いいだろう。四大魔王に会ってやる」
俺が答えると、店の路地へ移動し、グレイフィアは転移魔法陣を展開し、俺とグレイフィアは冥界悪魔領の首都・ルシファードへ転移した。
◆
教会本部の最奥に一人の女性、エルが歩いていた。
華美な装飾はなく、いっそ質素と言ってもいいものだが、この場所には普通では感じられない神聖さがあった。
そんな場所を歩いている彼女の前に光が照らし出された。金色の光に照らされながら一人の美青年が降りてきた。彼は金色の長髪に優しさを感じさせる顔立ちに装飾の施された衣服を纏い、背中から十二枚の金色の翼を生やしていた。
「ミカエル。どうかしましたか?」
「主よ、どうしたのではありません。悪魔や堕天使との戦争がある時に、急にいなくなられては困ります」
主と呼ばれた彼女、全ての天使の主である聖書の神・エル=シャダイは苦笑と共に返した。
「すいません、ミカエル。どうしても気になることがあったもので・・・・・・」
「気になることとは・・・・・・一体?」
エルは一拍おき、答える。
「今回、悪魔と堕天使と戦争をする理由はわかりますね?」
「はい。近年、人間界で活動が活発になってきた悪魔と堕天使に対する抑止のためですね」
その答えに満足するようにエルは頷く。
「ええ、その通りです。しかし、それだけではありません」
「それ以外にも理由が?」
「百数十年ほど前、冥界にとてつもない邪悪な気配を感じたのです」
「邪悪な気配?」
「冥界でしたので詳しくは知ることはできなかったのですが、その邪悪な気配は一人の悪魔だったのです」
そのことにミカエルは驚きつつも疑問を覚えた。
「主よ、それは貴女が気にするほどの悪魔なのですか?」
「最初は気のせいだと思っていました。ですが最近人間界で同じ気配を感じたのです」
「!?」
ミカエルは驚愕するがエルは構わず続ける。
「そこで今回、私が直接近くにあった人間の街に調査に行ったのですが、手がかりは掴めませんでた」
そこまで聞き、ミカエルは目を見開き主であるエルを見た。
「もしや、今回の戦争のもう一つの目的とは・・・・・・」
「そうです。その悪魔を滅ぼす、もしくは封印が目的です」
エルはまだ見ぬ悪魔に対して言うように断言した。