人間界、冥界、天界の間に存在する次元の狭間。
そこには大昔の文明の遺産、または兵器が漂流している。そして、そこを支配する
そんな空間に一つの天を貫かんばかりに尖ったような形状の城が存在していた。その城の玉座に足を組み、目の前に映し出されている三陣営の戦争の映像を見ている人物がいた。この城の主、大魔王ケストラーであった。
映像には悪魔、天使、堕天使の戦争が映し出されている。俺はあの会談のあと、とりあえずの住居として昔冥界から人間界に渡った時に通った次元の狭間に自分の城を建てた。それからは、偶に人間界に赴き未開の土地に罠を仕掛けて、そこに入った者の命を、俺の杯に注がれるようにした。だが人間は俺からしたら質も低く、量も少ないので微妙だ。
暇つぶしとして三陣営の戦争を眺めているが、拮抗したままこれといった進展はなく退屈だった。ただ、その戦争で俺がモノにしたいと思ったあの時の女、エルが聖書の神だったのには驚いた。手に入れるのは難しいが、諦める気は毛頭ない。
そんな風に思考していると映像に変化があった。突如、戦場に赤と白のドラゴンが争いながら現れた。二体のドラゴンは三陣営の戦争などお構いなしに争い合う。二体の攻撃はどれもが強力な一撃であり、三陣営はなすすべなく巻き込まれる。
これでは戦争どころではないと判断したのか、三陣営は兵を引かせ始める。そして各トップ陣は二体のドラゴンに抗議していた。
それに対しドラゴンの返答は『ドラゴンの決闘に神ごときが、魔王ごときが口出しするな』と言った、子どもじみたものであった。
「クッ、ハハハハハハッ!」
それを聞いていた俺はあまりの返答に笑ってしまった。真面目に世界の覇権をかけて戦っている三陣営に対しての返答がそんなのは関係ない、自分達の決闘の方が重要だと言ってのけたのだ。トップ陣はその返答に怒り心頭といった様子だが、一先ずはそこでことを起こさずに引いていった。
その後もドラゴンは争い合っているが、三陣営は離れたところでトップ陣が会談を開いていた。内容は要約するとあの二天龍をどうにかしないと戦争どころではない。ここは一先ず手を組み、協力して二天龍を倒そう、と言ったものだった。
まさか、戦争していた者同士が二天龍を倒すために停戦し、協力しあうとはな。
「----ん?」
そんな風に思考しているところ、ルシファーに渡した連絡用の術式が込められた栞から連絡が入った。
『ケストラー、聞こえるか?ルシファーだ』
「聞こえてる。それで何のようだ?」
『貴方に頼みたいことがある』
ほぉ、頼み事か。まだ先だと思ったが、まぁいい。
「要件を言え」
『二天龍討伐に協力を願いたい』
◆
二天龍討伐のため、この場に三陣営のトップ陣が揃っていた。
悪魔からは四大魔王、天使は聖書の神と天使長のミカエル。そして俺達
「それじゃぁ、あの二天龍を始末するとしますか」
「ええ、ですがあの二天龍の魂は私に預けてくれませんか」
「どういう事だ、神よ?」
「あの二体の魂を
神器----聖書の神が人間に超常の力を与えるために作り出したシステム。
それに二天龍を組み込むのか。俺も自分で作ってみたいもんだぜ。
神は一同を見回すが反対の奴はいないようだ。それじゃ早速始めますかね。
「ちょっと待ってくれ」
これから二天龍討伐に動こうとしたら、ルシファーから制止の声がかけられた。
「何だぁ、急に」
「もう少しで助っ人が来る。それまで待ってくれ」
「助っ人?おいおい、切り札でもあるのかよ?」
そう聞くと、ルシファーは黙ってしまう。大丈夫か?
そんなやり取りをしていると、件の助っ人が来たようだ。
そいつは左右に頭から長い角を生やした男だった。だが、問題はそこじゃない。自然体でいるはずのそいつからは凶悪なまでの魔力が感じられた。
「来てくれたか、ケストラー」
ルシファーがそいつに声をかける。さっきとは別の意味で大丈夫なのか心配になってきた。他の奴らを見ても同じようだが、ただ一人違う反応をしてる奴がいた。聖書の神だ。ケストラーだったか?奴を知っているのか。
「久しいな、エル。いや、聖書の神よ」
「! ケストラー。貴方は悪魔だったのですか・・・・・・」
ケストラーは皆が神と呼ぶ存在の名を気軽に呼んでいる。ホントに何者だ?
「他の者は初めてだったな。俺の名は大魔王ケストラーだ。大魔王といっても形式上だがな」
大魔王って。いくら形式上でも普通だったらルシファー達四大魔王がその名を許可するはずはないが、奴らからはそれに対する反論がない。嫌々だが認めてるってことか。周りの奴らも大魔王と名乗ったケストラーに対して驚きを隠せないようだな。
「それで、あの赤と白を始末すればいいのだな」
「ああ。これから三陣営共同で討伐に当たるのでケストラーにもそれに協「必要ない」!?」
今なんて言ったこいつ。
「ケストラーよ。それはどういう事だ?」
「そのままの意味だ。いるだけ邪魔だ」
随分な自信だな。
「じゃぁ、お前一人でやってみろ」
「アザゼル!何を言う!?」
「本人が一人でやるつってんだ。お手並み拝見と行こうぜ」
俺の言葉に奴は大した反応を示さない。相当自信があるってことか。
そのままケストラーは二天龍の方に行こうとするが、聖書の神が静止した。
「待ちなさいケストラー。本当に一人でやるつもりですか?」
「ああ。そのつもりだ」
「! ならば、もし貴方が二天龍を倒したならば、その魂を私に譲ってください」
「?本来なら断るが、まぁいいだろう。エルに譲ってやる」
また聖書の神の名を呼んだ。その事にミカエルが突っかかる。
「貴様!主の名を軽々しく呼ぶな!」
「本人が何も言わないのならば構わんだろう?」
「クッ!」
ケストラーは話すことはないと、二天龍の元へ向かって行った。
程なくして二体の元まで行き、話し始める。
「何のようだ、悪魔よ」
「貴様の我とドライグの決闘の邪魔をするか!」
「何、お前達が邪魔なので始末しに来ただけだ」
おいおい、いきなりそれか・・・・・・。
「貴様!悪魔風情が大きく出たものだな!!」
「決闘の決着をつける前に貴様から殺してくれる!」
案の定二天龍は激昂し、ケストラーに攻撃を仕掛ける。だが奴は、避けるでもましてや防ぐでもなく、二天龍の攻撃をそのまま受けた。
奴が立っていた場所は大きなクレーターができており、ケストラーは死んだと思った。煙が晴れるとケストラーは爆心地の中心で倒れていた。あれで消し飛んでないのかアイツは。
「クッ、ハハハハハハハハハ」
ケストラーは倒れたまま笑い出した。どうした?気でも触れたのか。
「これほどの存在は初めてだ!これはかなり期待できそうだ」
そしてケストラーは魔力を開放しだした。
!?何だこの魔力は!ミカエルや魔王達を見ても驚いている。確かに魔力は桁違いだ。だがそれだけじゃない。ケストラーは二天龍の攻撃を受けて無傷だった。
「今度はこちらからいくぞ」
ケストラーは魔力による砲撃を放ち、二天龍をまとめて吹き飛ばした。
もはや、言葉も出ない。
「自己紹介がまだだったな。我が名は大魔王ケストラー!さっさと掛かってこい、トカゲども」
「「!!」」
2体はその言葉に先ほどより激昂し、ケストラーを全力で殺すため攻撃し始める。攻撃の余波はこちらまで来るが、それに気にしている暇はなかった。
攻撃を受けていても、そのままケストラーは二天龍の懐に入りすり抜けざま、奴は赤龍帝の片腕を、白龍皇の片翼を引きちぎった。
「「ギ、アアアアアアァァァァァ」」
その激痛から二天龍は悲鳴を上げるが、ケストラーはそれを見て笑っていた。
「ク、ハハハハハハハハハハッ!どうした!二天龍と呼ばれた存在がこの程度で悲鳴とは!情けないぞ!!」
そこからは地獄絵図だった。ケストラーから放たれる魔力放は二天龍をたやすく貫き、それを刃物のように使い、切り刻んでいく。神や魔王より強いと言われた二天龍がケストラーに抵抗する事もできずに殺されてゆく。
そしてケストラーは二天龍の魂を抜き取ると、その骸に手を向ける。すると、二天龍の骸はみるみる内に塵となっていった。生命力を喰らうのか奴は!!
俺は恐怖に震えながらルシファーに問う。
「おい、ルシファー。アイツは本当にお前達の味方なのか?」
「ッ!・・・・・・実は私からお前たちに提案がある」
俺達はそれを聞き、驚愕するが反対する奴はいなかった。
「ほら、お望みのものだ」
ケストラーは二天龍の魂を神に渡した。
「確かに受け取りました」
そこへ、ルシファーがケストラーに声をかける。
「ケストラーよ。このあと、戦争を再開するがお前も参加しないか?何なら報酬の出そう」
「?報酬か・・・・・・」
ケストラーは訝しながらも報酬を考える。そうして神を見ると口を開く。
「ならば、戦争に勝ったならば、エルを、聖書の神をいただく」
「「「「!?」」」」
ケストラーはこともあろうに、聖書の神を望んできた。
「・・・・・・どうして神を望む?」
「何。あの時合った時から俺のモノにしたいと思っていたのでな」
まぁ、当然のごとくミカエルがケストラーにくってかかる。
「悪魔が神を欲するだと・・・・・・そんなこと許されると思っているのか!!」
「許す許さないは俺が決める」
「!?貴方はッ「そこまでですミカエル」」
熱くなってきたミカエルを神が静止する。
「勝てば良いのです。それと大魔王ケストラー。私は貴方のモノになる気はありません」
「簡単にモノにできるとは思ってはいない。だが、次の戦いが楽しみだ!」
それだけを言うと、ケストラーは帰っていった。次の戦い、俺たちにとって死を覚悟することになりそうだ。