Kiss you   作:賀楽多屋

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ちょっと遅めの賀楽多屋からのクリスマスプレゼントです。


DQI 主人公×ローラ姫

 

 

 ドラゴンを破って、(わたくし)の目前に貴方が現れてから、この心は貴方を求めて止まないのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事態はいつも急展開だ。

 

 遠くに住んでいると噂の魔王の手先であるドラゴンに、身を攫われたかと思えば、洞窟の奥深くに閉じ込められた。

 

 ドラゴンは、私に無体を働く訳でもなく、ただただこの場に私を留めおくことだけに専念しているようで、私には何の手出しもなかった。

 

 洞窟の奥と言っても、そこは最低限の生活ができる空間であった。

 

 私室にあるベッドよりも、質素で小さなベッドに腰掛けて、何日、何週間、何ヶ月、私は項垂れていたのだろうか。

 

 救われると信じて疑わない時もあったが、時が経つにつれ、そんな希望は忽ちにして砕け散った。

 

 一体、どうすれば自分は救われるのだろうと途方に暮れ続けたが、結局解決策など見つかるはずもなく、無駄に時を浪費して過ごす日々を繰り返す。

 

 そんなどうしようもない自身を呪ったこともあった。

 

 だが、そんな自身を呪うことにも疲れて、ベッドに横たわることも段々と増えてくる。

 

 

 

 そんな中、昔見た童話を不意に思い出して、窮地を王子様が救いに来てくれないだろうかと思ったりもした。

 

 なんて幼くて、夢見がちな話。

 一国の姫がこんな能天気で良いのだろうか。

 

 

 

 

 ───だけど、私のその願いは、僅かの変更点があったものの、叶えられることになった。

 

 

 

 

 松明を手にして、ドラゴンの向こう側からやって来た勇者様。

 

 頬にドラゴンの返り血を付けて、私を見るや不器用に微笑んだ勇者様に、私の心がことりと動いた音が聞こえた。

 

 

「ああ! 私を助けてくださる方が本当に居るなんて!」

 

 

 目尻に、熱が灯ったようだ。

 じわりと浮かんだ涙が頬を伝って零れ落ちていくのを見て、あの人は大層慌てていたのを覚えている。

 

「な、泣かないでください。姫様」

 

 

 そう言って、酷く落ち着かない様子で私のすぐ側までやって来た勇者様は、私の眦に浮かぶ涙を掬って、オロオロと目を泳がせていた。

 

 それがなんだか、とても可笑しくて。

 

 あの屈強なドラゴンを破って来た方が、こんなことで取り乱すだなんて思わないでしょう?

 

 だから、それがとても私には可笑しかったの。

 

「そんなに、困らないでください。私、とても嬉しいんですの・・・・・・誰も、私など助けに来てくださらないとばかり思っていたのだから」

 

 

「申し訳ございません。姫様をお救いに来るのに、随分と時間を掛けてしまいました」

 

 

 私の言葉の意味を、湾曲して理解してしまったらしい勇者様は、眉根を下げて酷く悲しそうな表情を浮かべた。

 

 嗚呼、言葉が足りなかったのね。

 

 

 私は、貴方にそんな顔をして欲しくないの。

 

 

 彼につられて、私までもが情けない顔をしてしまいそうだ。

 

 

「謝らないでちょうだい。貴方が謝る必要は無いの。寧ろ、私がお礼を言わなければならないわ」

 

 

 いつの間にか俯いていた勇者様の顔を両手で包んで、私へと向ける。

 

 私の方へと向いた勇者様の顔は驚愕に満ちていて、切れ長の目に嵌った瞳が収縮を繰り返していた。

 

 

「ありがとう。私の元に来てくれて」

 

 

 こんな言葉じゃ足りない程の感謝をしているわ。

 

 だけども、今の私では、これ以上勇者様に感謝を伝える術がないの。

 

 勇者様の物静かな凪いだ瞳をもっと見たくて、覗き込む。

 夜空のように澄んだその瞳に映る私は、何処か浮き足立っているように見えた。

 

 

「私を、お城まで連れて行ってくださいますね?」

 

 ちょっと不安げな声音になってしまった。

 

 もしかしたら、勇者様は私をこの場に置いて行ってしまうかもしれない。

 

 

 ───勇者様に置いていかれたら、私、どうすればいいのかしら。

 

 段々と大きくなっていく不安を胸に抱えているせいか、それがどうやら顔にまで出てしまっていたらしい。

 

 

 勇者様は、私を安心させるように微笑んだ。

 

 その微笑みは、最初に見た不器用な笑みと違って、慈しむような穏やかな笑みで、私はそんな彼につい見惚れてしまったのだ。

 

 

「はい」

 

 

 だから、彼の返事に反応するのが遅れてしまった。

 

 しかも、勇者様は「姫様」と呼んだかと思えば、私の手を取って、私を横に抱える。

 

 その一連の動作には一切の無駄が無く、私は彼のされるがままに身を任せていた。

 

「ゆ、勇者様?」

 

「さぁ、戻りましょう。ラダトーム城まで、お守り致します」

 

 この状況に困惑しているのけども、勇者様は既に私よりも数歩先に居るらしく、私の意見は汲み取ってもらえない。

 

 横抱きに抱えられ、勇者様の胸元にすっぽりと収まった私の視線の先には、既に洞窟の外へと向かって歩く勇者様の凛々しい顔があったのだ。

 

 

 ドラゴンの血が付いていたことも忘れて、勇者様の顔に魅入っていたことに今頃気付いて、私は漸くその汚れを拭おうと彼の頬に手を伸ばす。

 

 グイグイと勇者様の頬を拭っていると、勇者様が呆気に取られたような顔をして私を見下ろすものだから、そんな彼が可笑しくて、また笑ってしまった。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

「アルフ様」

 

「どうかしたか? ローラ」

 

 あれから、どれ程の時間が経ったのでしょう。

 

 

 竜王を無事退治することが出来たアルフ様と、自分達の国を興すための旅に出て、もう幾月になったのでしょうか。

 

 野営の仕方にも戸惑いを覚えなくなって、焚き火を熾せるようになった私に、アルフ様は未だに引目を覚えているみたいだわ。

 

 一緒に旅をするのだから、私もこれぐらいのことは出来るようになって当然だと思っているのに、アルフ様ったら私にこの様な些末事はさせたくないと言うのだ。

 

 けれども、そんなお固い彼が私のことを『ローラ』と呼び捨てするようになり、敬語も抜け切った。

 

 

 それ程、長い時間を共に過ごしたのだなと思うと感慨深くなる。

 

 

「ローラ?」

 

 

 嗚呼、いけない。

 

 アルフ様を呼んだのに、私が一向に喋らないものだから、段々とアルフ様が疑いの目を私に向け始めてるわ。

 

 

「私、アルフ様と一緒に居られてとっても幸せだわ。あの時、私を助けに来てくれたのが貴方で本当に良かった」

 

 

 まさか、私からこんなことを言われるとは思っていなかったらしいアルフ様は、不意打ちを食らったように目を瞬いている。

 

 ある程度のトラブルは、旅には付き物だからと冷静に対応するアルフ様のこの戸惑いようはとても珍しいものだ。

 

 私は、良い物が見たと笑みを深めていると、アルフ様が怒りと困りを混ぜたような顔をした。

 

「藪から棒にどうしたんだ?」

 

「少し、昔を思い出しただけですわ」

 

 私の言葉を反芻するように、アルフ様は私から視線を離して、空に掛かっている月を見上げる。

 

 これは、照れた時のアルフ様の癖なのだけども、お礼を言った私ではなく、月を見上げて過去を思い出すアルフ様のその姿は少し面白くない。

 

 私は焚き火の前から立ち上がるや、対面にいるアルフ様の隣へと移動した。

 

 私のこの急な行動には、アルフ様もついていけないようで、また目を白黒させながら、私の動向を伺っている。

 

 ・・・・・・まるで、珍獣を見るような目をしているような気がするが、見なかったことにした方が私のためだわ。

 

 

 立ち上がった私が向かう先はアルフ様の隣だ。

 

 物言わず、アルフ様の隣に腰掛けると、アルフ様が困ったような顔で此方を見てくる。

 

 此方は本当に、いつも困ってばかりのような気がするわ。

 

 きっと、アルフ様を困らせているのは私なのでしょうけども。でも、私はそんな彼の困り顔も好きなのよ。

 

 座り込むと、今度は彼の肩に凭れかかる。

 すると、アルフ様が緊張で肩を強張らせたのが伝わってきた。

 

 もう何度も肌を重ねあわせてきたのに、この勇者様は未だに初な所がある。

 

 けれども、そういう所もアルフ様の良い所なの。

 

 話す前に、気持ちを整えようと息を吐く。

 

 彼の視線が私に向いていることを確認して、私は思いの丈を紡ぎ出す。

 

「アルフ様、私はいつまでも貴方をお慕い申し上げますわ」

 

 いつもいつも、そう思っているのだけども、こういう事を改めて口にする機会はかなり減った。

 

 言わなくても分かるだろうと彼が思っていることは、分かってる。

 

 だけど、女は時に、愛を口にしてほしい時があるみたいなの。

 

 そういう時があることを、私はアルフ様に教えて貰った。

 

 

 

 だから、次の彼の行動に驚いてしまった。

 

 だって、そう言った瞬間に隣から顎を掬われたのだから。

 

 見知っている大きなその手は、ゴツゴツとしていてとても人の手とは思えない程に固いが、まるで壊れ物を扱うように優しく私に触れてくるので、気になったことなどない。

 

 私の顎を優しく掬って、自分の方へと向ける彼の行動に身を任せる。

 

 そして、その次の彼の行動が読めているので、私はそっと瞼を下ろした。

 

 読み通り、唇に感じたのは、いつもの柔らかな熱。

 

 彼は口づけでさえ優しい。

 

 確認するように何度も角度を変えて当てられる彼の唇に酔いしれて、私は艶めいた吐息を吐く。

 

 下ろしていた瞼をそっと上げると、彼の熱に浮かされた目と合った。

 

「俺も愛しているよ。貴女を見つけたその時から」

 

 

 







これは公式CPだからセフセフですね。

あー、DQIもう1回やりたいなぁ。
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