エリカ、転生。   作:gab

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4年-7 クリスマスパーティ

1994年 11月

 

 『第一の課題』のあと、ハリーの環境は劇的に改善された。

 今やハリーは英雄だった。新聞や親の話で聞いた『“例のあの人”を斃した英雄』なんてものじゃない。たった14歳でドラゴンとやりあったその雄姿を、まざまざとその目で見たんだもの、その熱狂は凄まじかった。

 

 ゴブレットに名前を入れたのが誰であろうと、ハリーはセドリック達と同様に、代表選手のひとりとみんなが認めたのだ。

 

 ズルだと陰口を叩いていた子も、今はハリーを褒め称えている。

 そりゃあ人気者が気に入らないタイプの人はどこにだっている。ハリーアンチも根強く残ってはいるけど、そんな悪意ある相手なんて気にしなければいいのだ。

 

 ハロウィン以来、やっと明るい笑顔を浮かべるようになったハリーの姿に、私達もホッとする思いだった。

 

 

 

 

 

 

1994年 12月

 

「ダンスパーティのパートナーなんだけど、エリカはどうするの? できれば先に決めてくれると嬉しいんだけど」

 

 寮の部屋にやってきたパンジーの言葉に、あ、それ決めなきゃなんだ、と気が重くなる。

 

 

 うちの学年の女子ナンバーワンはレストレンジ家の私で、その下にダフネとパンジー、ミリセントと続く。

 こういった大きな催しで、誰がどの家の者とパートナーとなるかは社交界から注目されているため、パートナーを誰にするかは親の意向も関わってくる。

 

 今まではパートナーが必要な催しに出ることがなかったけど、年齢的にこれからはそうもいかない。

 本来はもう少し先の予定だったのだけど、ホグワーツでこのクリスマスに行われるパーティーではパートナーが必須なのだ。三校対抗戦のアトラクションの意味合いもあるから新聞社からも記者やカメラマンも来ている。

 つまり、今回のパーティは私達の、第二の社交界デビューのような位置づけになる。

 

 お目当ての相手がいる場合を除くと、序列に従ってパートナーを決めた方が対外的にも問題がないってわけね。

 

 私の家格に釣り合う相手といえば、ドラコ、セオ、ブレーズあたりになる。他の学年にもそこそこの者はいるのだけど、やはり主人公の同年代は当たり年なんだろう、上位貴族の子が揃っている。

 ドラコはきっとダフネを誘う。いい感じだし家柄も問題ない。とても安定したカップルだ。

 なので、セオかブレーズにお目当ての相手がいなければ彼らのどちらかに頼むことになるかな、と考えている。あるいはヴィンス、グレッグか。

 

「セオかブレーズに頼んでみるわ。誰か問題あるって子いるかしら?」

 

 私が彼に目をつけているのよ、って子がいるなら変な諍いにならないように候補から外すんだけど。

 

「今のところ誰からも聞いてないわよ。早めに決めておいてね」

 

「わかったわ、ありがとう、パンジー」

 

 パンジーと一緒に部屋をでる。他の子が調整しやすいよう、早く決めなきゃだもの。

 

 スリザリン仲良し9人はみな家格が高いし、成績も上位。みんなとても人気がある。私がパートナーを頼もうと思っているセオとブレーズも、女生徒達から熱い視線を送られている。

 でもふたりとも今まで特定の彼女がいるような感じがなかった。どちらか先に会えたほうに頼もう、と決めた。

 

 女子寮を出て談話室に行くと、ちょうどセオがいた。

 

「あ、セオ。ちょっといいかしら?」

 

 課題をやっているセオに近付いて声をかける。

 

「エリカ? もちろんかまわないよ。どうしたの?」

 

「クリスマスパーティのことなんだけど、私が早めに決めないと他の子が選べないのよ」

 

「ああ、そうか。僕もだ。ドラコはもう決まったようなもんだし」

 

「セオに気になる子がいないなら、パートナーに」

 

「待って、僕から言うから」

 

 パートナーになって、と言おうとする私の言葉を制して、彼は立ち上がると私の前まで来て、そっと跪いた。そして私の手を取って。

 

「エリカ嬢。僕に、パーティで君をエスコートする栄誉をお与えください」

 

 きゅん。

 なんなのこのイケメンムーブ。

 

「ありがとうセオ。とても嬉しいわ」

 

 気取って言葉を交わし、見つめあう。

 そして、同時に笑った。

 

 うん。お互い、恋愛感情は皆無だけどいい友情は築けていて、家格的に問題なく、お互い変に勘違いをしない、理想的なパートナーが見つかった。

 

 私達がパートナーになったことで、他も動き出した。

 ドラコは大本命のダフネを誘い、無事オーケーを貰った。

 パンジーはブレーズと、ミリセントはスリザリンの純血家の先輩と、グレッグとヴィンスはそれぞれ同級生のスリザリン女子とパートナーになった。

 

 そういえば原作でドラコの妻になったのはダフネの妹アストリアだけど、この世界でその線は消えてしまったんじゃないかな。いくらなんでも学生時代の彼女からその妹に乗り換えるなんて、ないよね、たぶん。

 アストリアの病気について何もできないのが少し申し訳ない気がしないでもない。でも、ドラコの最愛ならこっそり『大天使の息吹』を使うこともありえるけど、妻の妹にまで手を伸ばすつもりはないのだ。私の手は二本しかないんだもの。

 

 

 

 

 ハリー達はどうなったのかとハンナに聞いてみた。

 ハリーは代表選手は必ず踊らなくちゃいけないと言われてから茫然自失で、パートナーを選ぶなんて余裕もなさそう。特に今まで散々冷たい視線を浴びせてきた女生徒が一斉にパートナーになってと群がってきて、その手のひら返しの酷さにまいっている模様。

 

 ロンのほうはといえば、パートナー云々よりもまずドレスローブの酷さをなんとかしたいって感じだろうか。

 

 そしてふたりして、かわいい子を物色して何やら言い合っているのだとか。

 

「あいつら、私達がレディだって気付いてないのよ」

 

 ハンナが肩をすくめて言う。あまり嫉妬らしい感情はみられない。ハンナはハリーが好きなんだと思うけど、彼女自身も恋愛感情に疎いのかも。これも子供時代3回めの弊害か。

 

 私達が介入していない部分はほぼ原作通り進んでいるから、おそらくハリーとロンはバチル姉妹と、ハーマイオニーはビクトール・クラムとパートナーになるのかな。

 ハンナはどうするんだろう。

 当日を楽しみにしておこう。

 

 

 

 

 

 

1994年 12月 クリスマスパーティ

 

 貴族家は家庭教師からダンスレッスンも受けているから、ダンスパーティと言われてもみんなそれなりに基本的なものは踊れる。

 ダンスができないマグル生まれや半純血の生徒のために、パーティの2週間前から少しずつ空き教室を借りてダンスレッスンをした。その時にみんなもパートナーと練習できたからより息が合うようになって親密になれたのはいいことだったかな。

 

 パーティ当日は女性陣は朝から大変だった。

 それぞれの髪をセットしあったり、裕福ではない家の子に、私達が持っているリボンやレースを提供してドレスローブや髪飾りを多少豪華にしてみたり。

 パートナーの服の色や髪や目の色を取り入れる工夫を凝らしたり。

 女子寮は熱気に包まれていた。

 

 私のドレスローブはシシー叔母様が気合いをいれて決めてくださったもので、鮮やかな水色にたくさんのパールを使った、上品で美しく華やかなドレスだった。

 シルクの上に光沢のあるオーガンジーが重なっていて、身体の動きに合わせてふんわりと流れる様は『まるで人魚のようね』とみんなに絶賛された。

 

 

 

 談話室で待ち合わせたセオは、私を見た瞬間、感嘆の笑みを浮かべた。

 セオのドレスローブは黒にアクセントの青が利いてて騎士っぽいデザインだった。線の細い彼が着ると、まるで宝塚の男役のように様になっていてかっこよかったのだ。

 

「美しき湖の妖精よ。どうかこの手をお取りください」

 

「エスコートを許しますわ、私の騎士様」

 

 お互い気取ったポーズを取って芝居がかったセリフを言い、互いに手を取ってからおかしくて笑った。周囲もすてきね、といいながらも笑いが漏れる。パートナーの男子に同じようなセリフを催促して笑いあっているカップルもいた。

 周りを見ると、みなそれぞれに美しく、カッコよく着飾っていて、その中にはこのパーティをきっかけに告白したカップルもいて、初々しく寄り添う姿が可愛らしくて素敵だ。

 

 ドラコとダフネのカップルと語らいながら大広間へと向かう。

 ぞろぞろと歩いていると他の寮の生徒も一斉に集まってきていて、大広間近くの廊下は大渋滞だった。

 みんなそれぞれ精一杯おしゃれしていて、華やかで、そわそわうきうきと騒がしい。

 

 代表選手とそのパートナーは生徒全員が席についてから入場するらしく、扉の脇で待っていた。

 

 フラー・デラクールとロジャー・デイビース、セドリックとチョウ・チャン、クラムとハーマイオニー、ハリーとパーバティ。原作通りだ。

 フラーも美しかったけど、ハーマイオニーもとても可愛らしかった。艶々と滑らかな髪を優雅に結い上げていて、薄青色のローブも彼女にとても似合っている。あ、前歯、自力で小さくしたみたいだ。魔法SUGEE。

 

「まあグレンジャー、とても可愛らしいわ」

 

 ハーマイオニーは満面の笑みを浮かべた。

 

「ありがとう。貴女もとても綺麗ね、レストレンジ」

 

 ハリーにも声をかける。

 

「素敵よハリー。しっかりパートナーをエスコートしてね。ダンスは覚えた?」

 

「あ、うん。なんとか」

 

 ハリーはドラゴン対戦の時より緊張していて、しかもさっきからパートナーには目もくれず、憧れのチョウ・チャンのエキゾチックな美しさや、いきなり美人になった親友ハーマイオニーの事ばかりチラチラ見ている。パーバティ・パチルもエキゾチック美女なのに。

 

 他の選手達にも声をかけたり会釈して通り過ぎ、私達は大広間に入った。

 

 大広間はキラキラと輝く霜で覆われ、星の瞬く天井の下には何百というヤドリギや蔦の花綱が絡んでいた。

 各寮のテーブルはなくなっていて、10人ほどが座れるテーブルが百余り置かれている。

 私達は私、ドラコ、ヴィンス、グレッグ、パンジーの5カップルでひとテーブルを囲んで座った。

 

 そう言えばハンナは誰とパートナーになったのかとグリフィンドール寮の生徒達がいるあたりを探してみると、ハンナがいない。“円”で気配を辿ると、彼女はレイブンクローの集団の中にいた。パートナーはアンソニー・ゴールドスタインだ。え? レイブンクローの生徒とパートナーになったのか。ちょっと意外な組み合わせだ。でもブロンド同士の美男美女カップルはとてもお似合いに見えた。

 

 

 それぞれのテーブルが埋まってしばらくすると、代表選手とそのパートナーが入場してきた。

 

 デラクールは女王みたいに堂々としていて、魅了されたしもべのようなデイビースを引き連れて悠々と歩いてきた。

 

 セドリックとチョウのカップルは仲良さげに見つめ合っては微笑みあい、ラブラブカップルぶりを見せつけている。美男美女でとてもお似合いに見える。チョウ・チャンのチャイナ風ドレスローブがとても美しい。これ、小雪にも絶対似合う。同じようなイメージでぜひメリーさんに頼んでみよう。

 

 クラムとハーマイオニーの登場は、どよめきの声に迎えられた。蛹から蝶になったようにいきなり美しくなったハーマイオニーは自信満々でクラムのエスコートを受けている。パートナーのクラムに称賛と恋慕の目で見つめられていることが彼女の心を引き立たせ、より一層輝いてみえた。

 

 ハリーは原作よりも子供っぽさが減っているから、ちゃんとハンナを誘えるかと思っていたんだけど。チョウ・チャンに片思いのまま、おざなりにパーバティ・パチルをパートナーに選んだらしい。緊張の面持ちでぎこちなく、パチルに手を取られて引っ張られるように歩いている。パチルは嬉しそうに生徒達みんなに笑いかけながら通り過ぎた。

 レイブンクローの席の傍を通ったとき、ハンナを見つけてギョッとしている。ハンナの美しさに気付いたか?

 

 

 私達のテーブルの間を練り歩いた選手達はそのまま奥の審査員と教授、来賓のための大きな丸テーブルに着席した。

 審査員の席にはクラウチ氏はおらず、かわりにパーシー・ウィーズリーが座っている。そういえば彼はこのあと魔法省にも出仕しなくなるんだっけ。

 

 

 

 目の前に置かれた金色に輝く皿には、小さなメニューが置かれている。どうやらメニューから欲しいものを選んで頼むシステムのようだ。

 メニューにはボーバトンやダームストラングの生徒達の国の料理も書かれていて、私達は珍しい料理を頼んでみたり、自分の好物を頼んだりして楽しんだ。料理もデザートもとても美味しかった。

 

 やがてみんながじゅうぶん料理を楽しんだあと、私達はダンブルドアの指示で席を立つ。ダンブルドアが杖を一振りするとテーブルは壁際に退き、広いスペースができた。

 次の一振りでステージができ、そこにドラムやチェロ、バグパイプ、ギター数本が設置される。

 

 熱狂的な拍手に迎えられ、「妖女シスターズ」がステージに現れた。

 彼らがそれぞれの楽器を取り上げると、テーブルのランタンが一斉に消えて準備が整う。代表選手とそのパートナーがダンスフロアに出てきた。

 

 スローテンポな曲を彼らだけで踊り、その後他の観客達もそれぞれのパートナーを伴ってダンスフロアへと歩み出た。

 

「行こうか、エリカ」

 

「ええ」

 

 セオの差し出した手を取って私もフロアへ出る。曲はワルツになった。向かい合って彼のホールドに身を任せる。曲に合わせて踊り出すと、練習の成果で息の合ったダンスになった。

 

「あのさエリカ」

 

「ん?」

 

「君は自分の価値をちゃんとわかっている?」

 

 価値、と言われれば、そりゃあ数少ない歴史ある純血貴族家の一人娘だ。資産もたんまりある。私の婿は贅沢ができるだろう。

 それにレストレンジ家は今やブラック陣営の中核にいる。表面上、アズカバンの両親のマイナスを大きく補って、今の私は価値が高い。表面上はね。

 

 だけど、私はたぶんレストレンジの血は引いていないし、父親はおそらく半純血の闇の帝王だ。知られればイギリス魔法界では生きていけない。

 

「うちの父親は計算高いからね、君のパートナーになったと知って小躍りして喜んださ。現に『そのまま口説き落とせ』と手紙がきた」

 

「ノットさんらしいというか何というか」

 

「僕としてはお互いいい相手が見つかるまではこのままパートナーを頼みたいんだけど」

 

「私も同じよ。家格の釣り合うパートナーは貴重だわ」

 

「共犯者ができてうれしいよ。うちの父親は勝手に期待させておくさ」

 

「よろしく相棒」

 

「ああ、よろしく相棒」

 

 

 

 

 

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