エリカ、転生。   作:gab

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4年-10 エリカ・レストレンジの肖像画

 

 

1995年 3月

 

 『第二の課題』の次の週のある夜。

 

 スリザリン寮の私室のベッドの上に開けたトランク。

 このトランクには私が招いた者しか入れないし外に音が漏れる心配もない。毎晩ピアノやヴァイオリンの練習をすることを知っている友人達は、トランクに居る私を邪魔することはない。

 隠し事をするのに相応しい場所だ。

 

 トランク内の居間のソファーに座り、テーブルの上に両面鏡をふたつ設置。それから『忍びの地図』を広げてクラウチ・ジュニアの名がどこにあるかや、私の部屋に誰も近づいていないかなどの確認もしながらふたつの鏡に同時に呼びかけた。

 

「シリウス、ルシウス叔父様」

 

「聞こえたぞエリカ」

 

 ひとつめの鏡にシリウスが映り、返事が返ってくる。

 

「私だエリカ。……次は私がシリウスを呼べばいいんだな。シリウス、いるか?」

 

 ふたつめの鏡はルシウス叔父様が映った。それから叔父様は別の鏡を使ってシリウスを呼び出す。

 

「聞こえた、ルシウス。これで三者繋がったな」

 

「面白い。三ヶ所で同時に話せるのはいいな」

 

「ええ。私が叔父様方と何度も会っていることをクラウチ・ジュニアに気付かれるのは困りますもの」

 

 私がシリウスとルシウス叔父様にそれぞれ鏡を繋げ、ルシウス叔父様が別の鏡でシリウスに鏡を繋げる。そうすると三ヶ所にいる者達が同時に繋がる。

 シリウスの傍にはリーマスさんが、ルシウス叔父様の傍にはシシー叔母様がいるはず。

 

 私は寮から出ていないし、シリウス達はグリモールド・プレイス、叔父様方はマルフォイ・マナーにいる。

 誰にも気付かれることなく、5人で打ち合わせができる。思いついた私、超ぐっじょぶじゃない? フクロウでこの案を送った時、みんなにも絶賛されました。

 

 ちょっとした報告程度なら今後はこうやって話すことにしたのだ。目立ちすぎるのはよくないものね。

 今はシリウスやルシウス叔父様が会ってても別段問題はないんだけど、今後誰かに監視されるようなこともあるかもしれないから、今のうちに複数の離れた場所にいながら一斉に話し合えるシステムを考えておこうと思ったってわけ。

 

 両面鏡は決して安価な魔法具じゃないけど、この面子は全員持っているし、互いに片方を渡しているから、四人ならみっつずつ、五人ならよっつずつ鏡を繋げればもっとたくさんのメンバーで同時に話し合いができるとわかって有意義なテストだった。

 

 

「ハリーの魂から奴の魂を引き剥がす方法は、まだ見つかっていない」

 

 シリウスが苦い口調で話し出す。ブラック家の蔵書が多すぎることと、闇の本は読むだけで気力が削られてしまうため、そう続けて読み続けるわけにいかないからだ。

 

 書庫から本を取り出すのはブラック当主のシリウスしかできないし、ブラック家の資産ゆえに本を読む資格があるのがシリウスとシシー叔母様だけ。時間がかかる。

 

 リーマスさんはシリウスの補助としてブラック家の仕事を頑張ってくれてるらしい。当然そちらもおろそかにできない大切な仕事だ。金銭的余裕ができてちゃんと食事も摂り、仕立ての良いローブを身に纏うようになったリーマスさんはイケメンぶりに磨きがかかってきてて、原作を知っている私としてはとても嬉しい限りだ。

 

「焦るなシリウス。まだ時間はある」

 

「そうです。焦りは禁物ですよシリウス」

 

「だが『第三の課題』はもうあと三ヶ月しかない」

 

「いえ、シリウス。分霊箱はあといくつあるかわかりません。ゴーント家の捜索もまだです。あそこに分霊箱があるかもまだ未確認ですし、他にもある可能性があります。帝王を課題当日に殺してしまうわけにはいかないんですからリミットはむしろもっと先です」

 

 私の言葉に、シリウスは押し黙った。

 ルシウス叔父様が話し出す。

 

「奴らの企みが復活の儀式だとして、だ。儀式を執り行う場所がわかれば我々が先回りして奴らを捕まえられる。

 帝王は殺してしまえばまた霞のような状態になって飛んでいってしまうゆえ、殺さずに意識を刈り取り、あとは『生ける屍の水薬』でも飲ませて眠らせ続ける。奴の身柄さえ押さえておけば、あとはじっくり調べればいい。だからシリウス。落ち着いてくれ。

 ハリーの魂のことはそれからでもじゅうぶん間に合うのだから」

 

 叔父様の言葉に私も頷く。

 ハリーの事が解決していない。分霊箱の残りがどれだけあるかもわからない。ゴーント家の分霊箱も手付かずのまま。

 まず帝王自身の身柄をなんとしても捕らえて、何もできないように眠らせておく。分霊箱はその後でいいのだ。

 

 だから私達の動き方としては、彼らの計画をそのまま利用してヴォルデモートを捕まえること。

 ただし。

 

「ハリーの身に危険が及ばないかぎりは、だぞ。ハリーの命とはかえられない」

 

 不承不承としたシリウスの言葉に私達が一斉に答えた。

 

「もちろんです」

「無論だシリウス」

「大切な親友の忘れ形見を危険に曝すつもりなんかないよ」

 

 それまでは、私達は目立った動きは控えるべき。

 

 クラウチ・ジュニアは今マッドアイ-ムーディになっている。ムーディは闇祓いを引退した今でも顔が利くのだ。魔法省や闇祓いからの情報が彼の耳に届く可能性だってある。善意の誰かがムーディに手紙を送るかもしれない。ムーディが死喰い人だなんて誰も思わないもの。

 だから大っぴらに情報を集めることはさけたい。

 

 特にゴーント家にまつわる事件のことや、分霊箱のこと、トム・リドルの過去についてなど、彼の周囲を嗅ぎまわっているなんて情報が少しでも漏れたら、何か対応されてしまうかもしれない。

 ゴーント家に隠している指輪を回収されてしまったらマジで困るもんね。

 

 だから、今年はできるだけ動かないで、ブラック陣営の地固めと手持ちの書籍や文書を探って分霊箱や霞状態の悪霊の処理などについて調べる方を優先させたいのだ。

 

 

 その後話はクラウチ・シニアの事に移った。

 ちょうど日刊予言者新聞に『バーテミウス・クラウチの不可解な病気』という記事が載ったところだった。

 

「『第二の課題』、やはりクラウチ・シニアは来ませんでしたね」

 

「ああ、彼は11月の『第一の課題』の日以来、公の席に一度もでていない。魔法省にも来ていないと聞いている。新聞の記事の通りだな」

 

「彼、心配だね。ちゃんと生きているのかな」

 

「部下に指示の手紙がフクロウで届くらしい。生きてはいるだろう」

 

「フクロウはクラウチ邸から届けているんでしょうか?」

 

「どういうことだねエリカ」

 

「いえ、クラウチ氏が監禁されている場所はクラウチ邸なのかなと」

 

 私の言葉に、鏡の中の大人達がこちらを注目する。

 

「クラウチさんは意志の強い方です。恐らく服従の呪文にも抵抗を続けていらっしゃると思うんです。だから、何度もかけ直しているとしたら、彼のそばに死喰い人が潜んでいる」

 

 私の言葉に賛同の頷きが返ってくる。

 魔法省に仕事の指示の手紙が届くなら、彼はまだ生きていて、そして助けを呼ばないことから彼が服従の呪文で縛られていることがわかる。

 

「なるほどね。今の帝王のために動こうと思うような狂信者はみなアズカバンだ。手下がいると言ってもそう多くはないな」

 

 ルシウス叔父様は私の考えがわかったみたい。それにしても元死喰い人の彼が言うと説得力があるね。

 

「1年の時、帝王はクィレル先生の後頭部に憑りついていました。そうしなくては生きられないほど弱かったわけです。その頃よりも今のほうが彼の力は増しています。今の状態がどの程度なのかわかりませんが、身の回りの世話は必要なんじゃないでしょうか」

 

「ふむ。手下の数が少なく、ヴォルデモートは世話が必要。なら、奴もクラウチ邸にいるかもしれんということか」

 

「そうですシリウス」

 

「でもクラウチ邸を襲うのは難しいよね?」

 

 リーマスさんの言葉に皆が頷く。

 魔法族の屋敷は特殊な守りを張り巡らしている。血族しか入れないような結界を敷いたり、指定した人以外は締め出せたりね。こっそり忍び込むのは難しい。

 

 私達は犯罪者じゃないから、その守りを無理やり壊して押し入るわけにはいかない。たとえ中に犯罪者がいるとしても、クラウチさんから直接救援要請を貰ったわけじゃない。

 勝手に乗り込むわけにはいかないのだ。

 

「そこにヴォルデモートがいるかもしれないうえ、監禁された人がいるとわかっているのに……」

 

 悔しげにリーマスさんが呟く。

 

「クラウチ・シニアが奴らの会話を聞いていれば、復活の儀式についてもわかるんだがな」

 

「とは言っても今はどうしようもないだろう」

 

 それぞれまた意見を出し合っていたのだけど、今は静観するしかないという結論にしかならない。

 

 そして彼らは、クラウチ・シニアの生死について気に病まないようにと私に言ってきた。

 

 クラウチ・シニアは息子の脱獄を手助けしている。その息子がこれだけの事件を起こしているのだから、監禁されている彼を助けられたとしても事件が明るみになればアズカバンに収監される未来しかない。

 監禁されていることを知りながら何もしないことは忍びないが、助けても緩慢な死の場所へ送りつけるだけだ。だからクラウチ・シニアがもし殺されても罪悪感に囚われることはないよ、と口々に言われてしまった。

 

 クラウチ・シニアの生死より、復活の儀式を阻止することのほうが大切だとみんなわかっていて、つまり、それは彼を見殺しにしていることも同じだってこと。

 

 彼らはいろんな経験をしてきていて、いろんなことを飲み込んできている大人達で。

 

 そこまで言われてやっと、みんなまだ14歳の私が傷付くことを心配してくださっているんだってわかった。

 こうやって子供の心を守ろうとしてくれる大人達がいることに、心がほんのり温かくなる。

 

 私は前世の記憶があってそこでは人殺しもしている。クラウチ・シニアを見殺しにすることは確かに心苦しいけど、だからといってそれで私は傷つかない。

 私の手はそんなに長くない。それをちゃんとわかっている。

 だけど。気にならないと言えばウソになるわけで。

 でもこうやって気遣ってくれる人がいることが乾いた心に染みるように嬉しく、素直に礼を言った。

 

 

 

 

1995年 4月

 

 勉強や友人達と過ごす日々はあっという間に過ぎていく。

 

 もう4月だ。ヴォルデモート復活の儀式が近づいている。

 いつ死んでもいいための準備は必要だと思うんだ。

 

 アイテムや食料品、魔法具などはどんどん買い足している。注文書を送れば学校に居ても購入できるってありがたいね。

 書籍も買えるものは買い、手に入れられない禁書類は書き写した。魔法薬やその素材などもどんどん揃えている。温室トランクの薬草は、ハナハッカ以外にもニガヨモギやイラクサなど世話をしやすいものから徐々に増やしていて、今は7種類に増えている。

 

 

 

 

 

 でもそれだけじゃ足りない。

 

 今日、私は素晴らしいものを手に入れた。

 私の肖像画だ。

 

 5歳の頃からヴァルブルガおばあ様の肖像画と話していて、ドゥルーエラおばあ様の肖像画は手元にないからあんまり話していないけど、12歳からはシグナスおじい様の肖像画を頂いて、今でもおじい様の助言をもらっている。

 つまりさ。幼い頃から肖像画がどれほど素晴らしいものか実感してきたのだ。

 

 貴族家の当主や当主夫人、学者や癒者、職人など何某かの技術の権威、大臣など、知識を継承していきたい者は、必ず元気なうちに肖像画を残していく。

 

 私も肖像画が欲しい。

 だって究極の記録媒体じゃん。

 

 私って死んで次の世界に生まれ変わるんだもん。

 この世界で肖像画を描いてもらうでしょう? そして私が死んで転生したら、絵画が正式に動き出す。

 柳原英里佳とエリカ・サロウフィールドとエリカ・アレクシア・レストレンジの記憶を持って自律行動して、私が忘れたこともずっとずっとしっかり覚えていて、何かあればその記憶に従って助言してくれる記憶媒体として。

 

 素晴らしい。次の生に絶対持っていきたい代物だよ、うん。

 

 長く生きていると前の経験とか忘れていきそうだもの。それを教えてくれるのってすごく便利だよね。

 きな臭い世界だ。そろそろ一枚目の肖像画を描いておくべきだよ。

 

 

 肖像画の作成方法はしっかり調べた。

 

1.魔法使いの絵師が、魔法界の絵の具とキャンバスを使って、魔力を籠めながら描く

2.肖像画のモデル本人が、その絵に想いや記憶、知恵、知識などを注ぎ込んでいく

だそうだ。

 

 記憶を注ぎ込むのは“憂いの篩”に記憶を入れる時と同じようなやり方らしい。死ぬ直前まで定期的に知識や記憶を肖像画に注ぎ込んでおく。

 そして、本人と同じような反応を示せるよう、時間をかけて本人が話しかけ、何度も絵と対話し、訓練していく。

 時間と労力をかければかけるほど、より本人らしいしぐさや言動、反応を取れるようになっていく。

 

 2の行程は、1枚の肖像画を完璧に育て上げれば、絵師が違っていても同じように魔法界の画材で描かれた同人物の肖像画なら何枚でも同調して動くのだとか。

 だからまず1枚目の肖像画を早めに仕上げて、私はこの地での生を終えるまで、その絵に記憶を流し込み、ずっと語らいながら過ごせばいい。

 

 

 絵師は誰に頼むかって?

 もちろん、私にとって一番の絵師は『超一流アーティスト』であり、“私”を誰よりも理解しているメリーさんだ。

 

 描き方がわかった時点でメリーさんには説明を済ませていて、肖像画に必要な画材もすべて揃えてあった。

 メリーさんはそれからずっと魔法界の絵の研究に熱心に取り組んでくれた。メリーさん自身も魔女として成長する必要があったし、魔法具の習熟も必要だった。

 そして、ある程度以上の技術を習得できたとメリーさんが判断したのが1年前。

 練習を積み重ね、最終テストとして取り組んだメリーさんの自画像を見せてもらったけど、ほんと、素晴らしかった。

 

 魔女のローブを羽織ったメリーさんがソファに座り、優しい表情でこちらを向いている。時折り手を振ったり、頬に手を添えてみたり、首を傾げたり、杖を振るって紅茶を出したり、動きもメリーさんそのものだ。

 メリーさんは話せないけど、メリーさんと絵画のメリーさんの間ではちゃんと対話が可能らしい。

 でもメリーさんは死ぬことがないから、記憶装置にはならないんだけどね。

 

 まあ練習用としてはじゅうぶん役に立ったし、それに絵自体が素晴らしいから言うことない。

 だってメリーさんの自画像なんて素敵すぎるじゃん。しかも動くし。

 

 小雪も同じように肖像画を描いてもらっていた。

 チョウ・チャンがクリスマスパーティの時に着ていたチャイナ風のドレスローブがすごく綺麗だったから、あれを参考にしてメリーさんに仕立ててもらった。

 チャイナ風ドレスローブを着て微笑む小雪はとても可愛らしい。

 でも小雪も死なないからね。

 

 

 万全の準備が整ったので、私の肖像画に取り掛かりたい、とメリーさんが宣言したのは、今年の2月のこと。

 それから毎日ガーデンの工房でポーズを取っていた。

 

 それが、やっと、出来上がったのだ。

 

 肖像画は14歳の魔女らしく、ホグワーツの制服に身を包んでいる。当然スリザリン・カラーだ。

 ひとめでハリー・ポッター世界の魔女だとわかる姿だね。

 私がいつも身近に置いて何度も記憶を流し込めるよう、動かしやすい大きさのキャンバスにしてもらった。バストアップでほぼ原寸に近い大きさに描かれている。

 

 14歳の若さに満ちた少女は、純血貴族家らしい上品な優しい微笑みを浮かべている。ただ、時折り悪戯っぽく輝く灰色の目が、決して大人しいだけの少女ではないことを教えてくれる。

 バストアップだから額縁から見えるのは胸元までなのだが、時折り髪に触れたり杖を構えてみせたりするとブラック家の指輪や純銀のブレスレットをつけていることがわかる。

 

 メリーさんが渾身の力を振り絞り、今までの技術の粋を尽くして作り上げた作品だ。魔力を籠めすぎて、出来上がったあと1週間も魔力が戻らなかったほど、まさしく命と魂を削って描きあげてくれた。

 私もモデルを影に任せることなくずっと私本人がメリーさんの前に立った。

 

 肖像画って、絵師とモデルの共同作業なんだなって思う。

 

 メリーさんの『超一流アーティスト』の腕と、画家とモデルの間にある強固な信頼関係により、柳原英里佳の18年、エリカ・サロウフィールドの12年、エリカ・アレクシア・レストレンジの14年の厚みを、私自身を、余すところなく表現し、昇華させている。

 

 描かれている間、私の魔力やオーラまでも引き出されたもの。それだけじゃない。私の内心や秘密、魂の形まで、すべてを引きずり出され、余すところなくキャンバスに注ぎ込まれた。

 

 素晴らしいね。

 現状の私達の、まさに最高傑作だ。

 

 きっと次の生にいけば、今の私のすべての技術や知識をしっかり継承してくれると思う。私そのもののように。

 

 私はこれからエリカ・アレクシア・レストレンジが生きている限り、私のすべての知識と経験をこの絵に注ぎ込んでいく。いずれ死を迎えるその寸前までずっと。

 

 私が“私”として生きるのもこれで45年。だんだん忘れてきている記憶もある。

 念修行や魔法修行、音楽に対する想い、行動のスタンス。いろんな物語や漫画に対する知識や感想。もしその世界に行ったらどうしたい、なども。

 私の外付けHDDとして、これほど使い勝手のいい記憶媒体はないよね。

 

 一番身近に置いていつも語り合えるよう、ガーデンの私の部屋に飾ることになった。

 

 

 それから、他にも記憶媒体として使い勝手がいいのが“憂いの篩”。

 原作でダンブルドアが昔の貴重な記憶を瓶に入れてラベルを付けていつでも見れるように保管していた。

 

 すぐに人に見せられるし、時々自分でも見直しできる。無修正の記録映像だもの。

 “憂いの篩”を手に入れ、自分の記憶を上手に取り出せるようになったころから、私も過去を忘れないため、昔の想い出を取り出して残している。

 

 前世の頃。

 ラルクが家族に加わった4歳の誕生日の思い出。お母さんとの修行の日々。

 カストロさんとの修行や一緒に過ごしたグリードアイランドでの日々。

 ディアーナ師匠のつけてくれる稽古やダンと過ごしたカンチョリ自然公園での経験。

 ハンター試験。カイトと出会ったマーフォア族の秘祭“ほむら”と虎の魔獣の寿ぎ。

 ゴン、キルア、ビスケとのグリードアイランドの訓練と戦い、そしてクリアした喜び。

 キメラアントのピトーとカイトの3時間に及ぶ熱い闘い。

 ノヴさんモラウさんの厳しい修行。

 キメラアントとの戦い。

 東ゴルドー王宮での、決戦。

 クロロ=ルシルフルに捕まった、エリカ・サロウフィールド最期の記憶。

 

 今世でも、いろいろと。

 ガラス瓶の多さは、私の今までの人生の経験の多さだ。

 

 特に歴代の師匠達がつけてくれた修行内容は私のバイブルだ。『想い出』とは別に『技術の記録』としても重宝する。

 

 一人、部屋で私の肖像画と一緒に見て、想いを共有していく。

 

 万が一、復活の儀式の阻止の際に死んでしまったとしても、できるだけ今までの知識を次に残していけるように。

 

 

 

 

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