エリカ、転生。   作:gab

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4年-12 死ぬ準備と生きる準備

 

 

1995年 5月

 

 『必要師匠』での動物もどきの修行はしっかり続けている。

 

 結局誰にも内緒のまま、必要師匠にお世話になり続けることにしたのだ。もちろん、習得できても誰にも言わない。黙っていて、しかも魔法界で一度も使わなければ誰にもバレることはないもの。

 普通なら、使わなければ習得した意味がないのだけど。

 でも私は違う。動物もどきは次回以降の世界でうんと役立つはずだもの。

 

 

 ということで。私は今日もひとりで練習を頑張っている。

 

 影分身の能力を持つ私には他の人にはできない、とても有効的な訓練方法がある。

 影を、動物の姿に変身させるのだ。

 

 前にも言ったと思うけど。

 変身術で動物の姿に変化させると、その人に相応しい生き物の姿になる。

 

 この時、他者の力で強制的に動物の姿になった者は、自分が人間であることを忘れてただの動物と同じような行動を取ってしまう。

 その後人に戻ると、変身させられていた時の記憶がちゃんと残っているのだ。

 

 私の場合はワタリガラスね。

 影……ビリカをワタリガラスに変身させる。ビリカはただのワタリガラスだからいきなり人の前に連れてこられたと感じて恐れ逃げ出そうとする。

 シリカに『野の春』を演奏させてビリカを落ち着かせて、大人しくなったらそっと抱き上げて撫でて、その姿を細かくチェック。

 

 

 ワタリガラスになった影を宥めつつ、じっくり観察する。

 カラスより大きい。頭から尾羽の先まで60センチはある。マーリンより大きい。堂々とした体躯だ。

 

 羽根は大きく、厚く、光沢がある。“カラスの濡れ羽色”とはよく言ったもので、艶々と輝く羽はまるで濡れているようなウェットな色合いなのだ。

 黒ではなく、青と濃紺と紫のグラデーションの羽色をしている。深い色合いは日光の下で見ればきっと輝いて見えるだろう。物凄く綺麗だ。

 鋭利な嘴や爪を持ち、凛と立つ姿は、強い生き物の風格さえ漂う。

 

 『野の春』で落ち着かせてから『失神呪文』で動けなくさせ、翼を広げたり、羽毛をそっとより分けて肌を見たり、足や尾羽、首から胸、お腹やその下の方など、羽毛で隠された身体を細かいところまでじっくり見る。

 本人だから遠慮も羞恥心もない。

 

 影の変身術を解いて人間に戻すとワタリガラスだった時の記憶もしっかり覚えている。

 影を消すと、ワタリガラスだった時に身体中を撫でまわされた感触や周囲の風景の違いをまざまざと思い返して、心に刻みつける。

 

 まず色が違う。カラスには判別できない色が違う色のものに見えている。あと視線の高さの違い。匂い、音の感じ方の違い。動物は目が悪いものが多いのだけど、ワタリガラスは目がいいし視界も広い。耳だって良く聞こえる。

 

 そうやって“ワタリガラスの姿になった自分”をじっくりイメージして形に落とし込んでいく。これって念能力で影を作った時や、シルヴィアを作り出した時と同じ工程だ。

 

 

 

 そうやって細かなディティールまでしっかり覚え込んでから変化の練習を重ねる。

 変化の練習を始めて2ヶ月経つのにまだまだ全然うまくいかない。まずサイズが小さくならないし、骨の向きや形もバラバラ。

 

 変化しては、『必要の部屋』師匠に戻してもらう。

 必要師匠が出した黒板に注意事項や改善点などが文字となって浮き上がる。

 それをよく読んで失敗した部分を考えてもう一度トライ。

 また失敗して、人に戻してもらって、考察、そしてトライ。

 

 中途半端に変化してしまってどうしようもないときも師匠ならすぐに戻してくれる。この安心感ったら。

 

 

 練習を進めていると、夜中に寝ぼけて……というか、夢の中でも練習してて、眠ったまま変化してしまう時がある。

 変化を解く呪文は覚えたけど、中途半端に一部分だけ変化している時には影には上手に治せない。そんな時は深夜でも『必要の部屋』に飛んでいって師匠に治してもらうのだ。

 

 変化の失敗で呼吸器がおかしくなったりすると命にかかわるため、寮は影にまかせて本体が寝るのはガーデンの私室で、そのうえいつでも影の護衛がつくようになった。

 

 

 

 

 

 

 ウィーズリー・ツインズも『必要の部屋』で開発するようになってから開発費がずいぶん楽になったようで着々と商品を作り上げているらしい。

 

 時々参加させてもらうこともある。彼らの閃きは、決められた量を変えることなく教科書通りの魔法薬を作るだけでは決して生まれないもので、私は彼らから大いに刺激を受けた。

 試行錯誤の楽しさも味わえた。

 

 正解を知って、それからアレンジを加える。

 4年になって薬草学や魔法薬学がじゅうぶん身に付いてきたから、私もやっとその域に達したのかなと嬉しい。

 

 生き生きとした彼らを見ていると、絶対この双子が片割れを亡くすような未来にはさせないとしみじみ思う。

 

 

 

 ハリーもドラコ達も閉心術をクリアできたそうだ。

 彼らもどんどん進んでいる。

 

 

 

 

 

1995年 5月20日 誕生日 15歳

 

 誕生日だ。15歳になった。成人まであと2年。

 今年のガーデンでのお祝いはロニーも一緒に祝えたのが嬉しい。

 

 

 死ぬ準備は着々と進んでいる。

 でも、さ。

 まだまだ死ぬつもりはない。……フラグじゃないよ、まじだよ?

 

 儀式の阻止だって、みんなと一緒にやらなきゃ今後の生活に差し障るから彼らと協調しているんであって、阻止が失敗しそうなら無理やりでも自分でやるもの。

 ヴォルデモート復活は私の特大死亡フラグ。絶対に阻止しなくては私や私の周りの面々の安寧はない。

 お辞儀様の身柄は、多少強引なやり方になってでも絶対拘束するつもり満々です、はい。

 特に『ナギニは分霊箱』とまだ誰も知らない。当日ナギニを殺すことは絶対成功させなくちゃいけない。

 

 当日は影が全方向からカバーするつもりだ。全方位シルヴィア砲の恐ろしさを思い知らせてやる。

 

 

 

 んで。

 死んでしまって次の生に行く準備も大切だけど、生き残れたらその先の人生も当然ちゃんとあるわけで。

 

 やりたいことはいくらでもある。

 

 動物もどきもまだ習得できていないし、6年からの『錬金術』の授業も楽しみだし、年齢的にまだ練習できていない『姿現わし術』だって今後のためにも絶対習得すべき技術だ。

 

 ホグワーツを卒業したら日本へ渡って日本式の魔法を習うという目標もある。

 音楽の勉強もマグル街にも広げて、もっといろんなジャンルの音楽にも触れたい。ピアノとバイオリン、サクソフォン以外の楽器もその道のプロに師事してみたい。

 

 

 だから私としてもこんなところで死んじゃうつもりはない。

 

 

 あとはそうだな。

 早めに車の免許を取りたい。

 なんていっても私って『超一流パイロット』だもの。車の運転もお手の物、のはず。

 

 英里佳時代に免許を取ったけど乗る暇もなく18で死んでしまった。

 運転なんてすでにすっかり忘れ去っております。英里佳はあまり得意じゃなかったし。でも『超一流パイロット』になったんだから今後は大丈夫、だよね。

 

 

 お金は潤沢にある。

 音楽活動のためにマグルの世界でも生活するなら車はあって然るべきだよね。

 それに原作みたいに検知不可能拡大呪文で広げれば車の中も快適空間になるし。軽自動車がリムジンにもキャンピングカーにもなるってやっぱ魔法SUGEE。

 

 原作でウィーズリーの双子が車に乗ってハリーを迎えに来ていたことからも、魔法をかけた車は魔法使いなら誰でも運転できるんだと思う。マグル街で車を買って魔法をかければいつでも乗れる。それはもちろん作るつもり満々。

 

 だけどさ。

 私は次の世界に車を持っていきたい。

 もし次の世界で仲間になった人がいればその人に運転してもらうこともあるかもしれないじゃん。その人が魔力がない可能性もあるし、車なんて存在しない中世ヨーロッパ系の世界とかに行く可能性もあるでしょう?

 

 運転技術を教えるためには私がまず覚えなきゃ。だからちゃんとした運転技術は知っておくべきなのよね。

 『超一流パイロット』の腕は車の運転技術にも反映されるはず。いや疑うな。大丈夫。きっと反映されるから!

 

 

 

 ちょっと調べてみた。

 魔法界で車の免許を欲しがる物好きはいないから、これは薬草学で一緒になるレイブンクローの友人にこっそり聞き出したのだ。

 

 まず、イギリスで免許を取るのは17歳から。

 免許取得までは、仮免許→路上講習→筆記試験→実技試験、の流れで進むらしい。

 仮免申請は15歳9ヶ月以上であることが条件。

 

 詳しく言うと。

 

 仮免申請(身分証明と、遠くのナンバープレートが読めるかどうか等のすごく簡単なテスト)をすると数週間で自宅に仮免許が郵送されてくる。その後ドライビング・レッスンの予約をするとインストラクターが練習用の車に乗って家まできてくれる。その車に乗って路上での運転の練習を重ねる。

 

 合格できるだろうラインに達したとインストラクターが判断するまではこれを続けつつ、筆記試験の勉強もしていく。

 その後筆記試験、そして実技試験。

 合格すれば、運転免許証が手に入る。

 

 

 寮生活を強いられるホグワーツ生は簡単にロンドンへ行き来できないのがつらいな。寄宿学校って自由になる期間が短いのが難点だよね。ほんと。

 路上練習にもある程度の日数がいるし、手続きや申請処理などで数週間待たされるものもある。

 

『仮免申請→免許郵送→路上練習予約、レッスン、予約、レッスンを数回繰り返し→筆記試験→実技試験』というプロセスを、夏休み2ヶ月とクリスマス休暇に上手に合わせて計画的に進めなきゃだめだね。

 

 15歳9ヶ月ということは、来年1996年2月以降に仮免申請ができるってこと。

 そして正規の免許、いわゆる一般運転免許証は17歳からだから6年次が終わる夏休み。

 

 ってことで免許取得までのタイムスケジュールを決めた。

 

 5年次終わりの夏休みに入ってすぐに仮免申請を済ませ、夏の間にドライビングスクールでドライビング・レッスンを数回いれる。

 筆記試験のテキストも貰っておかなくては。

 

 6年の授業の合間に筆記試験の勉強をして、クリスマス休暇にも路上レッスンの予約を入れる。

 6年次が終わったあとの夏休みで路上レッスンと筆記試験、実技試験。んで取得を目指せばいいわけだ。

 

 もし都合がつくなら、6年のクリスマスやイースターにでも筆記試験を受けて合格しておけば、夏休みの実技試験までがスムーズになるかも。

 

 『超一流パイロット』に掛かればその程度、できるできる。

 仮免申請の時にマグルの戸籍の証明証がいるらしい。株を買うためにマグルの戸籍を取っておいてよかった。ほんと。

 

 

 あと、練習を始める時にでも車も買わなきゃ。

 どんな車がいいだろう。そういうことを考えるのも楽しみだ。

 

 他の世界で舗装されていない山道を走るかもしれない。ジープや四駆みたいな車が必要かな。小回りの利く軽自動車も欲しいし、キャンピングカーも欲しい。

 魔法で拡張する用の車だって欲しい。

 

 ああ。パイロットらしく空の乗り物だっているよね。もちろん免許も取らなきゃ。

 

 うん。やっぱりまだまだ死ねない。

 

 

 

 

 

 とりあえず潤沢な生活資金は必要だよね。

 小雪とシェルのおかげで砂金と銀塊は日々増え続けている。

 

 念のため言うけど、シェルの銀糞は排泄物要素ゼロだからね。本当にただの銀の塊がコロンと出てくる。一日1キロも。

 金属の塊を出して怪我をしないのかと思うけど、さすが念獣、不思議生物。出した時は柔らかくて数分でごく普通の銀塊の硬さになるのだ。

 

 小雪の砂金は一日500g。お風呂のお湯に溜まる砂金を集めるから多少取りこぼしがあることと、毎日シェルの餌に5g入れるから、一日の増量分は490gほどになる。

 

 それが毎日。ものすごいよね。銀なんて一年で365キロ増えるんだよ? 4歳になる前にゲインして11年。すでに4トンあまりの銀塊がトランクの中に詰まっている。

 一度マグルの店に持っていって見てもらったけど、ちゃんと純銀だった。小雪の砂金も混じりけなしの純金。

 

 今のところグリンゴッツの金庫にあるお金で十分賄えているから全く使っていないけど、いずれこれのお世話になることもあるかもしれない。手元に換金しやすいものがあるのはとてもありがたい。

 

 HUNTER×HUNTER時代に買い貯めた金、プラチナのインゴットもあるんだけど、ハンター文字の刻印があるから入手先を調べられなさそうなところで換金したいと考えている。

 グリンゴッツなら問題なく換金できるだろうから、今度変装して換金してこよう。

 

 

 

 

 




ちょっと短いですが、キリがいいのでここまで。
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