エリカ、転生。   作:gab

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4年-13 5月24日、課題発表の夜

 

 

1995年 5月24日

 

 『第三の課題』のちょうど一月前の今日。選手たちに課題の内容が発表される日だ。

 

 クィディッチ競技場を取り壊して巨大迷路が作られた。今日、まだ成長していない生垣を見せて、一月後には迷路が完成すると説明があるはず。

 

 課題当日、迷路の中は魔法生物が多数放たれる。

 取得点数の高い者から順に中に入っていき、呪いを破ったり襲い来る生き物を退けながら中心まで進み、一番早く中心に置かれた優勝杯に触れたものが優勝となる。という試合内容だ。

 

 その優勝杯が、復活の儀式の行われるリトル・ハングルトンの教会墓地へ送るポートキーになっていて、それをハリーに掴ませるため他の選手を邪魔するのがクラウチ・ジュニア扮するムーディなのだが。

 

 

 あらかじめハリーには『課題の説明がある時に連絡をちょうだい』と言っておいた。念のため危険がないよう確認したいからと言えばハリーも神妙な表情で頷いてくれた。両面鏡も渡しておいたから、今日夕方にちゃんと連絡を貰えてほっとする。

 原作で知っていたけどね。知っている理由付けのため、わざわざハリーに頼んだのだ。

 

 だってその日、クラウチ邸から逃げだしたクラウチ・シニアがそこに現れるはずだから。

 

 そのうえでいつでも出られるようロニーを呼び出しておいた。ロニーには『ハリーの近くに危険人物がいれば頼むから、私を連れてそこへ姿現わししてね』と頼んである。

 

 これで“『第三の課題』について説明のため代表選手達が呼び出されたから、念のため『忍びの地図』を見てハリーの身に危険がないかロニーと一緒に監視していたら、バーテミウス・クラウチの名前を見つけた”と説明ができる。

 

 私は動きやすい私服を着ていつでも飛び出せる準備をしている。

 

 そして。

 寮の私室、ベッドの上に置いたトランクの中。

 『忍びの地図』でクィディッチ競技場と禁じられた森の付近をじっと見てクラウチ・シニアがやってくるのを今か今かと待ち続けた。

 

 

 クラウチ・シニアを助けるかどうか、ぎりぎりまで迷った。

 彼が逃げだしたあと見つからなければ帝王側は情報が漏れたと考えるはず。そうなると計画を早めて儀式を行おうと考えるかもしれない。

 向こうはいつだってハリーにリドルの墓行きのポートキーを掴ませられるんだから。

 

 

 原作を読む限り、この時点でのクラウチ・シニアは服従の呪文を過度にかけられ続けたことでかなり壊れている。彼を助けても、証言が取れるまで回復するには時間が足りない。

 

 ぶっちゃけると、私は彼を一度助けて「彼がうわごとの様に『骨、儀式、ハリー・ポッター』とか言っていた」とシリウス達に言えればそれでいいのだ。強引なやり方だけどさ。

 肉親の骨がいるなら、儀式はゴーント家やリドル家の墓があるリトル・ハングルトンの教会墓地かもしれない、ってわかるもの。

 

 クラウチ・シニアは法を犯している。

 死期の近い愛妻の願いを断れず、息子の脱獄を手助けした。

 息子が家に軟禁されていることを知ったバーサ・ジョーキンズに忘却術をかけた。

 

 それにシリウスのことを裁判もなしにアズカバンに放り込んだせいで12年も彼が苦しんだことは違法ではないけど身内としては許しがたい。

 

 もし彼を保護してしかるべき場所へ知らせれば、おそらくアズカバンに収監される。今の彼がアズカバンに入ればあっという間に亡くなってしまうだろう。

 だから助けてもどうせ死ぬ運命にあるなら、無理に助ける必要はない。

 シリウス達にも、彼を助けようとしなくてもいい、気に病まないていいんだと以前も慰められたことだ。

 

 

 原作でクラウチ・ジュニアがふらふらとホグワーツに忍び込んだ父親を見つけたのは、おそらくハリーから取り上げた『忍びの地図』を持っていたから。

 おそらくクラウチ・シニアが逃げだしたとペティグリューから連絡を受けて、ホグワーツにやってきたら速やかに殺すためしょっちゅう地図を見ていたんじゃないかなと推察している。

 

 だけど『忍びの地図』は私が持っている。クラウチ・ジュニアに見つかる前に彼を回収することはロニーがいれば容易い。

 

 ただ、回収したままにするわけにはいかない。ちゃんと返さなきゃ。でなきゃ作戦は中止か前倒しになる。だから証言を聞いてすぐに返すしかない。

 

 でもそれは見殺しにするってことで……

 でもそうしなくちゃ復活の儀式の阻止が難しくなりそうで……

 

 私は自分の中でルールを作っている。

 相手が悪人で、それが必要なら殺しても構わない。

 だけど善人は殺さないし必要以上の被害はもたらさない。

 

 バーテミウス・クラウチ・シニアは悪い事はしているけど、悪人ではない。

 息子の脱獄は愛妻の最期の頼みだったから。それに罪人の息子を脱獄させたけど野放しにせずずっと屋敷に閉じ込めていた。悪事を重ねさせないため軟禁していたわけだ。妻の遺志と自分の正義の落としどころがそこだったってこと。その秘密を知ったバーサに忘却術をかけたことも、まあ仕方ない事だと思う。

 シリウスを問答無用でアズカバンに入れたのも、息子が死喰い人であることを知られたからこそ、より苛烈に正義を貫く姿勢を周囲に見せつけるため。

 

 彼を殺すことは『私ルール』上、ナシ、なのだ。

 

 原作を知る私はバーサ・ジョーキンズやリドル邸の庭師が殺されることだって知りながらそのままにしておいた。でも目の前にいるクラウチ・シニアを見殺しにすることとは全く違う。

 

 

 私はきっとこれからも長く続くであろう転生人生を私らしく生きるために、自分の決め事は守りたいと考えている。でなきゃ堕ちる。

 

 

 

 と、けっこう何度も何度もずっとずっと迷い――腹をくくった。

 

 とりあえず、助けよう。

 これで作戦が前倒しになるのならそれでもいい。

 もう、頼れる大人達に全面的に頼ろう。

 

 

 

 地図を睨みつけるように眺めながら意思を固めていると、クィディッチ競技場にはルード・バグマンとルビウス・ハグリッドの名前がある。

 やがてハグリッドが森番の家のほうへ動き出し、ビクトール・クラムとフラー・デラクールがそれぞれクィディッチ競技場へ近づいていく。

 そのあとにセドリック・ディゴリーとハリー・ポッターの名前が二人揃って動いている。

 そろそろ課題内容の説明が始まるようだ。

 

 

 ホグワーツ内には姿現わしができない。だからどこかの入り口から歩いて入ってくるはず。正面の城門は夕方になると閉門してしまうし、当然、塀は乗り越えられないよう結界が守っている。

 だからこの時間にはもうホグワーツ内に入り込んでいるはず。

 

 

 『禁じられた森』にでもいるんだろうか。

 森の奥に入ってしまえば命が危ない。蜘蛛もいれば人狼もいるらしい。危険な魔法生物がいっぱいだ。精神的に壊れかけている彼がそんなところで逃げきれるはずがないもの。

 

 『禁じられた森』の中は地図に表示されていない。さすがに悪戯仕掛け人4人でもあの森を網羅することは難しかったのだろう。

 

 時間が経つにしたがって焦り始めた。地図を動かしながらいろんな場所を探しているんだけど『バーテミウス・クラウチ』の名前は見つからない。

 念のためにDADAの準備室を見ればバーテミウス・クラウチはおらず、城内を歩いているクラウチの名前を見つけた。こっちはおそらく息子の方。父親が来ていないか探しているのかも。彼が城外に出てくる前に仕事を済ませたい。

 

 

 このあとハリーとクラムが話し合いをしているとクラウチ・シニアが木に向かってぶつぶつ話しかけている姿を目撃するはずなんだけど……

 

 クィディッチ競技場の方を見ると、説明が終わったのかみんなが移動しはじめた。ハリーとクラムは特に話すこともなく別れたのか、ハリーとセドリックが城内へ。バグマンがその後ろからついていく。彼は今夜城内に泊まるんだろうか。それとも城門を開けてもらうのか。

 クラムは湖へ、デラクールはハグリッドの小屋の方へ進んでいる。地図には表示されていないけどそこに馬車があるはずだ。

 

 

 ……あ!

 

 ちょうど『禁じられた森』のある付近からいきなりバーテミウス・クラウチの名前が現れた。

 

 

「ロニー、『禁じられた森』の入り口付近にバーテミウス・クラウチの名前があるの。そこまで連れていって」

 

 一緒に地図を覗き込んでいたロニーが私を振り仰ぎ、「かしこまりましたご主人様」と言うと私に手を伸ばした。

 地図を手に立ち上がる。そして左手でロニーの手を握った。

 

 

 ぐるん、と周囲が回り、次の瞬間私達は暗い森の切れ目に立っていた。

 

「……それが終わったら、ウェーザビー、ダンブルドアにフクロウ便を送って、試合に出席するダームストラングの生徒の数を確認してくれ。カルカロフがたったいま、十二人だと言ってきたところだが……」

 

 声の方を見ると、クラウチ・シニアが伸びてボサボサになった頭をゆらゆら動かしながら木に向かって身振り手振りで大袈裟にポーズを取りながらぶつぶつと話している。

 無精ひげに覆われた顔は擦り傷だらけになっている。膝も破れて血が滲んでいるし、ボロボロのローブは埃や土だらけだから何度も転んだのかもしれない。

 

「ああ……ダンブルドアに……ダンブルドア、っ! そうだ……ああ、知らせないと」

 

 今ここで時間をかけるわけにはいかない。彼が私、つまりレストレンジの娘を見て正気に戻ったら叫び出すかもしれないもの。だから問答無用で『失神呪文』をかけると手を握る。

 

「ロニー。『叫びの屋敷』に飛んで」

 

「かしこまりました」

 

 

 

 

 

 『叫びの屋敷』に入ると二階にあがる。古ぼけたベッドに彼を寝かせて両面鏡でシリウスとルシウス叔父様に呼びかけた。

 急な連絡に驚きながら彼らも互いに鏡を繋げ、私、シリウス、ルシウス叔父様の三人での会話が可能となった。

 

「お忙しいところ、申し訳ありません」

 

「どうしたんだねエリカ」

 

「今日、『第三の課題』についての説明がある日でした。それで念のため地図でハリー達を見ていたんです。何かあれば駆け付けられるよう、ロニーにも待機してもらっていて。

 それで、あの、その近くにクラウチ・シニアが現れたのでロニーの姿現わしで彼を保護して『叫びの屋敷』に連れてきたんです」

 

「なっ」

 

「自力で逃げ出してきたということか?」

 

「ええ。ですが、どうやらとても精神的におかしい状態みたいで。今は『失神呪文』で大人しくさせていますが、木に向かってぶつぶつと何やら指示を出していました」

 

「わかった。すぐにそちらへ行く」

 

 二人と通信がきれて、そっと息をつく。

 それから、このあとどうやって話を進めていくべきか、じっと考えた。

 

 

 

 

 

 

 しばらくしてシリウスとルシウス叔父様がやってきた。

 

「すみません。証言だけ聞いてそのまま放り出すのが正しいとわかっているんですが。……やっぱり私にはできませんでした。叔父様方にご迷惑をおかけしますが」

 

「いやいい。君はよくやったともエリカ。あとは大人に任せなさい」

 

 ルシウス叔父様の言葉にシリウスも頷いてくれる。大人達が怒っていないことにほっとした。

 

 大体の状況を説明し、死喰い人に拒否感を持っている彼に姿を見せるのは得策ではないだろうとルシウス叔父様と私は少し後ろへ下がり、シリウスが話を進めることになった。

 

 クラウチ・シニアにかけた『失神呪文』を解くと、シリウスが話しかけた。

 

「クラウチ。しっかりしろクラウチ。ここは安全だ。君はわたし達が保護した。クラウチ、聞こえているか?」

 

「……ぅあ……」

 

 目を開けた彼はぼうっと視線の定まらぬ目で周囲を見回している。

 

「ダンブルドアに会いに来たんだろう? 危険を知らせるために」

 

「ダンブルドア!」

 

 彼はいきなり上体を起こして叫んだ。

 ベッド脇に座るシリウスの肩をがっと掴む。その目はシリウスの事を見ていない。

 

「私は……会わなければ……ダンブルドアに……」

 

「わかっているクラウチ。ヴォルデモートが復活しようとしているんだろう? 何を計画しているか知っているなら教えてくれ。我々はきっと阻止してみせる」

 

「私は……私はばかなことをしてしまった……知らせなくては……」

 

「奴らはハリー・ポッターをどうしようとしている? 教えてくれ。彼を助けたいんだ」

 

 クラウチ・シニアはあきらかに正気ではない。視線は全く合わず、うろうろと見まわしたり、いきなりどこかを凝視したり。緩んだ口元から涎がだらりと垂れた。

 

「警告を……ダンブルドアに……」

 

「もちろん知らせるとも。ハリーのことを教えてくれ、クラウチ」

 

 シリウスは根気よく話しかけ続ける。

 

「ハリー、そうだ。ハリー・ポッター。警告しないと……闇の帝王……ハリー・ポッター……言わないと……」

 

 クラウチ・シニアは歩こうとしたのかがくんと前へ倒れ込んだ。シリウスが急いで肩を掴んだおかげで頭から落ちることは防げた。そっとベッドに横たえたシリウスがこちらを向く。

 

「駄目だな。これでは何も聞き出せそうもない」

 

 私は覚悟を決めて叔父様達に対峙した。

 

「シリウス。叔父様。スネイプ先生を呼びませんか」

 

「何を言いだすんだエリカ」

 

 シリウスが驚きと腹立たしさを綯い交ぜにした表情で私を見た。

 

「ここまでくればムーディに扮したクラウチ・ジュニアを捕まえたほうが早いです。それで彼から証言を聞き出すんです。ホグワーツ内で彼を捕まえるならダンブルドアに知らせなくては。我々の正当性が疑われては意味がありませんもの」

 

 おそらく、クラウチ・シニアが逃げだしたことはクラウチ・ジュニアにも連絡が届いているだろう。きっとクラウチ・シニアがやってくるのを待ち伏せしつつ、誰かに情報が漏れた可能性を考えて警戒しているはず。

 今シリウス達の姿をホグワーツで見れば余計警戒する。

 だからホグワーツで動けるのは私しかいない。

 当然ダンブルドアに接触しようとすればクラウチ・ジュニアに気付かれる。こんな時間に私が自然に話しかけられるのはスリザリンの寮監であるスネイプ先生だけだ。

 

 私の説明に、二人は納得したようだった。だけどシリウスは過去の諍いがあるため苦い表情のままだ。学生時代から闇に傾倒していたスネイプ先生をどうしても信じられないらしい。

 

 ただ、これまでルシウス叔父様がちょくちょく彼のことをうまくフォローしていたのか、原作よりはシリウスのスネイプ先生に対する態度は若干マシになっている。

 

「やつは……」

 

 シリウスは言いよどむとちらりとルシウス叔父様に視線を向ける。

 

「やつは、死喰い人じゃないのか」

 

 ルシウス叔父様は眉を顰め、ゆるく首を横にふった。

 

「セブルスは無罪判決を受けている。ダンブルドアが後見になっているほどだ。あの頃のことはわからぬが、今の彼が帝王のために動くとは思えない」

 

 ルシウス叔父様はブラック陣営を立ち上げてから死喰い人だった人達の切り崩しに勤しんでいる。当然もともと仲の良かったスネイプ先生にも声をかけたかったのだけどね。彼はダンブルドアのもとにいるうえ、確執のあるシリウスをルシウス叔父様が盛り立てていることもあって、なかなか話が進んでいないのだ。

 

 私も急いで言った。

 

「私はスネイプ先生を信じています。1年の時もハリーを守っていたのはスネイプ先生です」

 

「だが」

 

「シリウス。あなたとスネイプ先生が学生時代とても仲が悪かったことはわかっています。ですが今はハリーのために呑み込んでください。スネイプ先生は尊敬できる素晴らしい方です」

 

「……わかった」

 

 私はみんなを見回す。彼らは頷きで応えてくれた。スネイプ先生がまだ魔法薬学準備室にいることを地図で確認し、ロニーに頼んで魔法薬学の教室付近まで送ってもらった。

 クラウチ・ジュニアは城外に出て城門や前庭、それから馬車道などをぐるぐると歩いている。

 

「スネイプ先生、いらっしゃいますか?」

 

 ドアをノックして声をかける。しばらく待つと扉が開き、いつも通りの黒一色の先生が顔を出した。

 

「どうしたのかね、ミス・レストレンジ。そろそろ消灯の時間だが?」

 

「先生。ちょっとご相談がありまして、中に入っていいでしょうか」

 

「……入りたまえ」

 

 先生が扉を大きく開くと中へ誘う。私は礼を言いながら彼の前を通り過ぎた。ふっと魔法薬の匂いが鼻をくすぐる。どうやら調薬中だったようだ。扉が閉められると私はスネイプ先生に向き合った。

 

「先生。バーテミウス・クラウチが錯乱した状態で見つかりました。ホグワーツへ忍び込んできたのを保護しました」

 

「なんだと?」

 

「スネイプ先生。ハリーが四人目の選手に選ばれたのは、帝王の計画なんです」

 

 時間がないから畳みかける。スネイプ先生は私をじっと見ると、おもむろに口を開いた。

 

「……続けたまえ」

 

「ポリジュース薬である人に成りすました何者かがこの学校にいるんです。この一年。その人がハリーの名前をゴブレットに入れたんです」

 

「それとクラウチに何の関係がある」

 

「クラウチ氏には息子がいました。バーテミウス・クラウチ・ジュニアは死喰い人で、終身刑を受けてアズカバンに収容され、一年ほどで獄死したとされています。クラウチ氏の奥様も同時期に病気で亡くなっています。

 クラウチ・ジュニアが死を迎える寸前、両親は面会を許されて牢へ入っています。その際、ポリジュースを使って入れ替わったのだと思います。おそらくご自分の死期を覚った奥方がクラウチ氏に頼み込んだんでしょう。息子をアズカバンから出して欲しいと。その後、息子は服従の呪文で縛られたまま屋敷に軟禁されていました。この夏まで」

 

「つまり父親は反対に息子に軟禁され、息子は屋敷を逃げ出してホグワーツへ来ているというのかね」

 

「ええ。帝王復活のための計画を練っているらしいです」

 

「クラウチ・ジュニアは誰に?」

 

「マッドアイ-ムーディです」

 

「……なるほど。それを証明できるものは?」

 

 うわあ。聞かれたくない質問。ってか言いたくない質問。

 

「シリウスの持ち物ですから、お渡しできませんよ」

 

 念を押しつつ、『忍びの地図』を広げて見せた。前庭を動いていた『バーテミウス・クラウチ』の名は今『禁じられた森』のほうへ進んでいる。タイミングがずれたおかげで見つからずに済んだようだ。

 

「この地図は今現在のホグワーツ内の様子が表示されます。シリウス達が学生時代使っていたそうです。ポリジュース薬で姿を変えていても本来の名が表示されます」

 

 城内のDADAの準備室には誰の表示もない。

 

「マッドアイ-ムーディの『魔法の目』はずいぶん離れたところまで見えています。本当は校長先生にも来ていただきたいんですが、彼が動くと目立つので」

 

「わかった。クラウチ・シニアの様子は?」

 

「服従の呪文を何度もかけられたのか、正気に戻りません。『ダンブルドアに知らせなくては』とか『ハリー・ポッターが』とかうわごとの様に言ってます」

 

 私の説明を聞くと先生は戸棚からいくつかの薬品を取り出すと「案内してくれ」と私を見た。

 

 

 

 

 

 




更新遅れてすみません。ちょっと展開に悩んで何度か書き直していました。
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