エリカ、転生。   作:gab

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4年-14 第三の課題

 

 

1995年 5月24日

 

 ロニーの姿現わしでスネイプ先生と一緒に『叫びの屋敷』へ行った。スネイプ先生にシリウスとルシウス叔父様が来ていると言いそびれていたため、着いた瞬間、シリウスとスネイプ先生が杖を向け合うという事件が起きたけど、その後はおおむねうまく進んだと思う。

 

 スネイプ先生がクラウチ・シニアを診察しはじめたのをしばらく見ていたんだけど、消灯時間が過ぎていたため私だけ帰らされた。

 もうちょっとと粘ってみたけど、スネイプ先生に睥睨されて「学生の本分もわからぬと見える、ミス・レストレンジ」と蔑んだ口調で叱られるという、原作ファンとしてはご褒美な注意を受けて諦めて帰ったのだ。

 影を残していくという手もあったけど、話す内容はだいたい想像つくからまあいいかなってね。

 

 

 

 

 

 翌日、鏡で話したルシウス叔父様がとても疲れた表情をしていたから、シリウスとスネイプ先生が話し合いの途中で何度も嫌味の応酬をしたんじゃないかな。

 

 とりあえずスネイプ先生にはハリーが額の傷痕を通じてヴォルデモートと繋がっているということや、夏に見た夢の話、それから私達が気付いたことや予測していることなどを話したそうだ。

 帝王の復活の儀式の時間と場所を知り、先回りすることで儀式阻止と帝王の身柄の拘束、しもべ達の捕縛あるいは誅殺が我々の目的であると話した。

 分霊箱のことはまだ話していないらしい。

 

 クラウチ・シニアはシリウスが連れて帰ったらしい。まだ公にできないため、屋敷でこっそり静養させるという話だった。

 

 結局一度も正気に戻らなかったけれど、スネイプ先生の飲ませた薬と開心術で、いくつかの情報はとれたのだとか。

 ただ、常軌を逸したままのクラウチ・シニアが強く思い浮かべていた情景だけで、本当の記憶なのか狂人の妄想なのかは判断が付かないとスネイプ先生が苦い口調で話していたらしい。

 

 ・ノッカーがなって玄関の扉を開けたら赤子のような異物を抱いたピーター・ペティグリューと大蛇がいて、赤子の持つ杖が魔法を放った

 ・赤子のような異物は闇の帝王の今の姿らしく、クラウチ邸で我が物顔に振る舞っている

 ・アズカバンの独房でポリジュース薬を飲んで入れ替わるクラウチ・ジュニアと細君

 ・クラウチ邸に来たバーサ・ジョーキンズとクラウチ・ジュニアが顔を合わせてしまい、忘却術をかけたこと

 

 だいたいの情報は出そろってるよね。あとは復活の儀式の内容と場所だけだ。

 特に敵陣営のメンバーがわかったことが大きい。大蛇は別として、魔法使いはクラウチ・ジュニアとワームテールしかいないと知れただけ朗報だと思う。

 

 

 スネイプ先生からダンブルドアに報告すると話していた。

 帝王サイドが情報漏れと判断して計画を早めてしまう前にクラウチ・ジュニアを捕まえる必要があるため、今晩には動く予定になっているらしい。

 

 クラウチ・ジュニアの捕縛と尋問、それから忘却術と記憶操作はダンブルドア、スネイプ先生の二人で済ませるらしい。

 記憶操作の際、クラウチ・シニアを見つけて殺し、遺骸は『禁じられた森』で燃やしたという情報も埋め込んでおくとのこと。クラウチ・シニアを殺さずにすんでほっとした。

 

 

 

 

 

 数日後、ハリーから『「占い学」の授業中にぼんやりしてしまって夢を見た。ヴォルデモートにワームテールが罰として磔の呪文をかけられていた』と相談があった。

 

『ワームテール、きさまはしくじった。が、すべてが台無しにならなかった。奴は死んだ。二度と失敗しないように身体に覚えさせよう。苦しめ。クルーシオ!』

 と、ほぼ原作の通りの話だった。

 

 つまり、まあ、クラウチ・ジュニアへの記憶操作がちゃんと成功したってことだよね。

 さすがはダンブルドア。

 

 当然ハリーから得た情報はルシウス叔父様とスネイプ先生にも報告しておいた。

 これで計画は予定通り進めるだろう。

 

 

 そして――

 

 

 ダンブルドア陣営とブラック陣営の話し合いの時間が持たれた。

 これも私は参加していない。

 

 ムーディの目の前でダンブルドアが誰かと会談している姿を見せるのはあまりよろしくない。

 そのため、スネイプ先生とルシウス叔父様が休日に会って打合せすることになった。

 

 正式な話し合いは儀式の阻止を終えたあと、となった。

 

 

 クラウチ・ジュニアの証言も教えてもらった。

 

 母親の願いでアズカバンから脱獄させてもらえたけど、その後ずっと服従の呪文をかけられて屋敷で軟禁されていたこと。しもべ妖精のウィンキーが世話をしてくれていたこと。

 隙をつくため大人しくしていたら、クィディッチ・ワールドカップを見せてあげて欲しいとウィンキーがクラウチ・シニアに頼み込み、当日座席に座っていたこと。

 死喰い人がマグル虐めをして騒いでいる姿を見て、帝王を助けることもせずふざけた遊びしかできない低能に怒りが湧いて『闇の印』を打ち上げたこと。

 

 ヴォルデモートの方の動きはどうかというと。

 アルバニアでワームテールが旅行中のバーサ・ジョーキンズに見つかってしまい彼女を拘束。ヴォルデモートの開心術により、ホグワーツで『三校対抗戦』が行われること、クラウチ・ジュニアが脱獄して屋敷に軟禁されていること、今年のDADA教授がマッドアイ-ムーディであることを知る。

 

 クラウチ・ジュニアが今も帝王の忠実なしもべであると判断したヴォルデモートは復活の儀式のための計画を練り、ワームテールの助けでイギリスまで戻ってきた。

 クィディッチ・ワールドカップの騒ぎが収まったあと、ワームテールに抱き上げられた帝王がクラウチ邸へ現れてクラウチ・シニアを服従させ、クラウチ・ジュニアを開放した。

 

 復活の儀式にハリー・ポッターを使おうと考え、『三校対抗戦』を利用してハリーを誘拐しようと計画を練った。

 マッドアイ-ムーディを強襲してクラウチ・ジュニアが成り代わってホグワーツへ潜入し、ハリー・ポッターを優勝させるべく手助けをしていた。

 

 ワームテールはクラウチ邸で帝王の世話とクラウチ・シニアの監視をしていたが、監視を怠ってクラウチ・シニアを逃がしてしまった。ヴォルデモートからの連絡を受け、ホグワーツへ来るであろう父親をここ数日待ち受けていた。

 

 復活の儀式には『しもべの肉、父親の骨、(かたき)の血』が必要。敵の血を奪う相手としてヴォルデモートがハリー・ポッターを望んだ。

 父親の骨はリトル・ハングルトンの教会墓地に埋められている。

 

 彼らの予定では、優勝カップをポートキーにして、ハリーを墓地に送り込む。そこで『ヴォルデモート復活の儀式』の準備を整えて奴らが待ち構えている。ハリーは復活に必要な血を帝王に献上する。

 そして、儀式が成功すれば、闇の帝王、ヴォルデモート卿が復活を果たすことになる。

 

 クラウチ・ジュニアの話では、現在のヴォルデモートは赤ん坊サイズの仮の身体を得ているらしい。それからペットの大蛇が彼を守っている。ワームテールが傍に付き従っているとのこと。

 

 

 なるほど、ね。時系列がすっきりした感じ。原作で詳しく書いていない部分もあったけど納得した。

 儀式の事もちゃんとわかってよかった。やっと情報を手に入れられた。

 

 

 『ヴォルデモートの企みを見破り、復活の儀式を阻止した』と大いに公表するため、向こうの計画通り第三の課題を利用するつもりだ。当日は新聞社の記者やカメラマンもたくさん来ている。彼らが大きく報道してくれるだろう。

 

 『ヴォルデモートは殺さずに身柄を確保することが必要』だと言うこちらの強い要望については、ダンブルドアも同意した。殺せばまた霞のように消え去ってどこかに現れるのを待つしかないものね。

 うん。これは一番大事なことだから、墓地での戦闘に参加するメンバーには必ず周知徹底をはかって欲しい、マジで。大事なことだから。

 

 ただ、ヴォルデモートを捕まえたとなれば、魔法省が黙ってはいない。犯罪者の引き渡しを要求されてしまう。それは困るのだ。

 あいつら杜撰すぎて逃がしかねないし、今のやわな身体のお辞儀様の世話ができずに殺してしまうかもしれない。それに短絡的にディメンターのキスなんてされてもその後どうなるか予測がつかない。なんせ分霊箱はまだあるんだから。復活の可能性は否定できない。

 第一、あのおぞましい赤ん坊をはたして帝王本人だと奴らが納得するかもわからない。

 

 だから、あくまでも復活の儀式を行う計画を阻止し、死喰い人達を捕縛あるいは誅殺したことだけ公表して、ヴォルデモートがそこにいたということは伏せられることになる。

 

 

 

 墓地でヴォルデモート達と戦うのは誰か、ホグワーツでクラウチ・ジュニアを拘束するのは誰か、どういう段取りでいくのかはこれから詰めていくらしいけど、私には教えてもらえない。

 子供は黙って勉強しておきなさいと諭されてしまった。まあ期末試験がもうすぐ始まるからね。

 試合当日はホグワーツでハリーの活躍を応援していて欲しいと言われた。

 

 もちろん、影軍団で行きますが何か? 本体が行くとダンブルドアに見つかるかもしれないから影だけ出動するつもり。本体は墓地付近でガーデンの中から見ることになるかなあ。

 

 

 あとの話はその後の、ブラック陣営とダンブルドア陣営の正式な顔合わせの時になる。

 

 

 

 

 

 

 

1995年 6月

 

 学期末試験が始まった。この5月はちょっと他の作業が多かったけど、動物もどきの練習も、ドラコ達との訓練も全部お休み。次はまた来季9月になるまではお預けになる。

 期末試験はこの一年の勉強の集大成だものね。しっかり厳しい試験期間を戦い続けなくちゃ。

 

 たくさん書き込みのある教科書は私のバイブルだ。採点されて戻ってきた山ほどの課題や参考書も読み込みながら頭に詰め込んでいく。

 

 選択科目も合わせて9科目。どれもちゃんと理解できている。

 今回も全教科満点以上が目標だ。

 

 

 ハリーは選手だからテスト免除となっていて、テスト期間中も迷路踏破のための訓練をしていたらしい。ハンナ達もちょくちょく手伝っていたと話していた。

 私は応援するだけだ。

 

 

 

 

 

 

1995年 6月 24日 第三の課題

 

 朝食後、私たちは最後の試験を受ける。その時間に選手達は、最終課題の観戦に招待された家族との対話の時間がある。

 ハリーの家族として訪れたのは当然シリウス。そしてマルフォイ夫妻とリーマスさんだった。

 

 

 私はその前に、朝食の時間を利用してシリウス達と『叫びの屋敷』で落ち合った。

 

「エリカ、心配いらない。わたし達が負けるはずがないだろう?」

 

 そう。シシー叔母様はここに残るけど、シリウス達は今夜リトル・ハングルトンでの戦いに赴くのだ。

 自分が戦えないぶん、彼らのことが心配でならない。影が見に行くつもりだけど、シリウスにはいつでも死亡フラグが立ちっぱなしな気がするんだもん。ルシウス叔父様は何があっても生きていそうなタイプだけど、原作でもシリウスとリーマスさんはほんとあっという間に死んだもの。リーマスさんなんて夫婦そろって死の瞬間の描写なしだからね。

 

 私は順に彼らに抱き着いて、そして私同様不安を押し隠しているシシー叔母様と抱き合った。

 飄々と生き抜きそうなルシウス叔父様だけど、彼は彼で恐怖を押し殺している。だって落ちぶれたとはいえ帝王がいるのだ。彼らは帝王に恐怖を植え付けられている。今日の戦いは自身の内なる恐怖との戦いなのだ。

 

「私は行けませんが、せめてこれだけ私の代わりにお持ちください。大蛇がどんな種族の魔法生物かわかりませんがこの剣ならきっと殺せます」

 

 私は巾着からゴブリンの短剣を出すとルシウス叔父様に渡した。

 結局ナギニが分霊箱だと言えるチャンスがなかったのだ。あれはゴブリンの短剣でしか殺せない。

 

「わかった。これは預かっておく」

 

「怪我をしないで。無事に帰ってきてください」

 

 

 

 

 

 

 その後、ハリーと午前中を過ごすため城門を通ってホグワーツへ行くシリウス達と別れ、私は試験のため学校へ戻った。

 『魔法史』の試験で今季の試験がすべて終わる。頑張ろう。

 

 

 

 昼食の時にハリーと一緒にグリフィンドールの席に座ったシリウスを見かけた。リーマスさんもいる。なんかめっちゃ馴染んでいる。さすが元グリフィンドール生。

 私はドラコ達と一緒にスリザリン席に座ったルシウス叔父様とシシー叔母様に近付いた。

 

「父上、母上。いらっしゃってたんですか?」

 

「ええ、ハリーの応援にね。ドラコも元気にしておりましたか?」

 

「はい、母上」

 

「試験はどうだ? ドラコ」

 

「ちゃんとできました、父上」

 

「うむ。期待しているとも」

 

 両親に見つめられて頬を染め、照れを隠すように難し気な表情を取り繕うドラコが可愛い。

 

「叔母様、久しぶりのホグワーツはいかがでした?」

 

「懐かしかったわ。学生時代にいつもデートした小道を今日も彼と歩いたのよ」

 

 叔母様は楽しそうにそう言うと夫を見る。叔父様の優し気な表情を見て、何このステキ夫婦と憧れの目で見てしまった。こんな夫婦に私もなりたい。

 

 

 午後からはマルフォイ夫妻はドラコや私と一緒に城の周りを散歩したり、地下牢を見にいったりして時間を過ごした。

 クラウチ・ジュニアに目をつけられないよう、できるだけ自然に過ごしているのだけど叔父様も叔母様も何ごともない様に楽し気な風情でホグワーツの休暇を楽しんでいる。

 

 シリウスとリーマスさんはハリーと過ごしたらしい。どうやらいくつかの秘密の抜け道を教えたり、ちょっとした冒険もしたのだとか。

 

 

 夕食は豪華な晩餐会が開かれた。

 大広間では豪勢な料理がこれでもかとテーブルの上に並べられていて、みな楽し気に料理に舌鼓を打ち、会話を楽しんだ。

 

 魔法をかけられた天井がブルーから日暮れの紫に変わりはじめたとき、ダンブルドアが教職員テーブルで立ち上がった。大広間に静寂が広まる。

 

「紳士、淑女のみなさん。あと5分たつと、みなさんにクィディッチ競技場に行くようにわしからお願いすることになる。三大魔法学校対抗試合、最後の課題が行われる。代表選手は、バグマン氏に従って、いますぐ競技場に行くのじゃ」

 

 選手たちが立ち上がる。私達は一斉に大きな拍手を送った。皆の拍手と激励の声を背に受け選手達が大広間を出ていく。

 それから5分後、私達もダンブルドアの指示でクィディッチ競技場に向かった。

 

 

 久しぶりに見た競技場はまったく趣がかわっていた。ここがクィディッチ競技場だなんて誰もわからないだろう。クィディッチ選手達が怒りの表情を浮かべた。

 

 生け垣は6メートルほどの高さまで伸びていて周囲をぐるりと取り囲んでいる。中は巨大迷路だと説明があったけど、そんなもの、全く見えやしない。

 また何も見えないままスタンドでこの生け垣を見て待つのか。ほんと、観戦向きじゃないにもほどがある。

 

 

 来客席を見るとシシー叔母様だけが着席していて、自然な様子でルシウス叔父様とシリウス、リーマスさんが審査員席の傍に陣取っている。

 

 今日の段取りでは、ダンブルドアと彼らがクラウチ・ジュニアの準備したポートキーを使ってあちらへ飛ぶつもりなのだ。それが向こうでの開戦の合図となる。

 

 

 巨大迷路の説明をバグマンが軽妙な口調で観客席と選手に向かって話している。彼の語り口によって観客も盛り上がっていく。

 迷路の外側を巡回して危険の際の救出役を務める先生方が登場してきた。マクゴナガル先生、ハグリッド、ムーディ先生、フリットウィック先生、スネイプ先生。ここにスネイプ先生が入っているのは、彼がムーディ先生に扮したクラウチ・ジュニアを捕縛する役目だから。

 

 “円”を広げてみると迷路の中にはいろんな気配がある。ハグリッドの放った魔法生物達だ。あからさまにおどろおどろしい気配のものは何だろうか。

 

「紳士、淑女のみなさん。第三の課題、そして三大魔法学校対抗試合最後の課題がまもなく始まります! 現在の得点状況をもう一度お知らせしましょう。同点一位、得点85点。セドリック・ディゴリー君とハリー・ポッター君。両名ともホグワーツ校!」

 

 バグマンの声に大歓声と拍手が鳴り響く。禁じられた森の鳥たちが暮れなずむ空にバタバタと飛びあがった。

 

「三位、80点。ビクトール・クラム君。ダームストラング専門学校!」

 

 また大きな拍手が湧いた。

 

「そして、四位、フラー・デラクール嬢、ボーバトン・アカデミー!」

 

 ここで点数を発表しないのがバグマンの情けなのか。唯一の女性選手に暖かい声援が送られた。

 

 この後、点数の高い者から順に迷路へ入っていく。いよいよ試合開始だ。

 

「では……ホイッスルが鳴ったら、ハリーとセドリック! ――いち……に……さん」

 

 ピーっとバグマンが笛を鳴らす。ハリーとセドリックが迷路に走りこんでいく。私達は精一杯の拍手で見送った。

 

 

 

 

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