エリカ、転生。   作:gab

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新たな“発”

 

1994年12月 6歳

 

 悲しみは尽きない。

 それでもメリーさんやラルクに支えられて、少しずつ日常を取り戻していく。

 

 

 

 今後、私がどうやって行くか、真剣に考えようと思う。

 原作についてはもはやどうでもいい。

 

 だけどキメラアントやその後現れるかもしれない新たなボス敵に世界征服なんてされたくはないのだ。原作の流れに沿うのが一番だと思う。

 

 そのうえで、できればハンターになりたい。

 お母さんにも勧められたしね。

 

 でもダメなら無理することはない。

 ぶっちゃけ身分証だけなら天空闘技場で稼いで闇の戸籍を買ってもいいわけだし。

 

 それとスペルカードをコンプして、バッテラの恋人を助けて報酬を貰いたい。

 

 あとは残された大切な家族。メリーさんとラルクを連れて外へ出たい。

 大切な思い出に溢れる家も。便利なグリードアイランドのグッズもすべて含めて持っていきたい。

 もう何も奪われたくない。

 家も、アイテムも、メリーさんやラルクも、ぜんぶ、私のものだ。

 

 

 家を持ち出す“発”については後々考えるとして。

 どのタイミングでハンターになるか。どのタイミングでバッテラと接触するか。

 もちろん、『大天使の息吹』を手に入れることが大前提なんだけど。

 

 

 まずバッテラの恋人について。

 原作ではクリアが間に合わなくて死んでしまう。これ、私の転移があれば助けられる。

 

 だけど、原作の流れを邪魔しちゃだめだ。

 キメラアント編に進むにはゴンとキルアがちゃんとカイトに会わなきゃいけない。そのためにはバッテラさんに雇われてゲームに入ってクリアする必要があって……ううむ。

 

 

 しばらく悩んで、決めた。

 このままゲームの中で修行する。

 天空闘技場でいろんな奴と戦う経験を積みがてらお金を稼ぐのもいい。

 

 外に出るたびに情報収集して、ハンター試験やヨークシンでのオークションの話や何やらを調べていれば、いずれ原作開始の時期もわかるはず。

 もしそれでもわからなければ。

 

 ゴン達の原作の流れではヨークシンのあとがグリードアイランド編なんだから、毎年9月中旬から10月あたりにグリードアイランドの初心者の街付近を見張っていれば出会えるはず。

 あ! そうだ。

 アントキバの月例大会で指定カードをゲットして、そのあと他のプレイヤーに奪われてたっけ。

 つまり、毎年9月15日の月例大会を見張ってればゴンに会える。うん。決まり。

 

 ゴンやキルアと知り合いになれば一緒に修行させてもらえないかな。

 ビスケ師匠の教えが受けたい。

 

 キルアが途中で抜けてハンター試験を受けにいくはずだから、それに便乗して試験を受ける。

 この試験はキルアがやる気マックスで全員のしてしまって合格者一名って回だから一緒にうけて合格者二名ってなるようにしたい。

 そのためにもキルアと知り合いになってないとね。

 

 そのあと、キルアがゲームに戻るときに別行動をとって、私はバッテラさんのところへ。

 大富豪さまにアポを取るのは難しいかもだけど、ハンターライセンスを持っていて、『大天使の息吹』の話をすれば、おそらく話くらいは聞いてくれるだろう。

 そこで転移の話をして、報酬を決めて、ゲーム内に連れて帰ってカードを使う。これでOK。

 

 原作で恋人が亡くなるのがキルアが戻ってきてからだから、これで間に合うし、原作の流れにもじゃましない。

 あんまり早く治しにいって、ゴン達がグリードアイランドに入ることができないのは困るし……

 

 

 ああ、でもなあ。

 ゴンやキルアと一緒に修行するならカードの話もするよね。私のカードも見せる必要があるかも。

 クリアを真剣に考えている彼らのそばで『擬態』させた『大天使』を持っていることを内緒にしているなんて、できないや。

 なまじ仲良くなっていたら、騙しているようで心苦しいもん。

 

 どうせその頃はハメ組が残りの『大天使』を押さえているだろうから、私のカードを複製しようとしても失敗しちゃうし。

 

 私が『大天使』を取得した時にあらかじめ『複製』で増やしておいてそれをあげてもいいんだけど。それもどうかと思うんだよなあ。

 

 

 やっぱりダメ。この案却下。

 

 

 その前だ。

 バッテラさんに提供するのは『大天使の息吹』だけにしておいて、『魔女の若返り薬』や他の便利なカードを、正式にクリアしたメンバーから買い取ってくれと言えば、原作通りに進むんじゃないかな。

 

 命の危険は回避されるからバッテラさんがオークションで7本とも買うかはわからないけど。

 

 あ、でもゴンがクリア報酬のカードでカイトのところへ行かなければゴン達がキメラアント編に参加できなくなるか。

 

 えっと。

 ……グリードアイランドは今私がプレイ人数一人だけのものを持っている。

 ゴンとキルアを私のゲーム機から連れていってあげればいい。

 そうすればゴン達のクリア報酬はバッテラさんに渡さなくていいもん。

 

 どこかのタイミングで、ゴン達に私が持っていることを匂わせておけばいいかも。

 ジンのメッセージでゲームの話を聞いたら、私のことを思い出せるように。

 

 

 ってことは、ゴンと一緒のタイミングでハンター試験を受けたほうがいい?

 

 ハンター試験で少し仲良くなったら、グリードアイランドってゲームの途中で試験を受けに来たの、とか話せばいいかも。

 そうすれば、グリードアイランドがジンの居場所のヒントになると知った時に、私のことを思い出してくれる可能性もあるだろうし。

 

 ハンター試験のあとはついていくつもりはない。

 私がバッテラさんの恋人を治すことで原作の流れが変わって、ゴン達がゲームに参加できなかったりクリア報酬を使えないかもしれないから、それを回避するためだけだから。

 

 それになによりヨークシン編で旅団と戦うのは今の私の力では無理。

 ゴンらは死ななくても、私は死ねる。

 

 それに、私の転移能力なんてクロロが欲しがるに決まってるもん。絶対捕まって拷問される。

 しかも転移は固有スキルで念能力じゃないんだ。奪えなければより苛烈な拷問が待っている。考えただけでぞっとする。

 9月のヨークシンシティには絶対に行かない。絶対にだ。

 

 

 これで原作通り?

 

 恋人が元気になったことでバッテラさんがヨークシンでのオークションに参加しなくなる可能性はあるかな。

 参加しても7本とも買おうとはしないかも。

 そうなるとバッテラさんの契約プレイヤーとして入ってきた人達が来なくなる可能性もあるのか。

 ビスケも来ないかもしれない? ゴン達が強くなれないかも?

 

 まあ、バッテラさんが買わなければそれまでとしよう。

 私が原作に介入してしまう“バッテラの恋人の死亡阻止”のバタフライエフェクトがどれほどのものになるかわからないけど、私が責任持てるのは、“バッテラさんにクリアデータの懸賞を続けてもらうこと”と“ゴンとキルアを私の持つゲーム機でゲームに誘うこと”。

 このふたつだけ。

 それ以上は知らない。

 

 ゴンとキルアがキメラアント編に突入してもしなくても。

 ビスケがグリードアイランドに来なくてゴン達が成長しなかったとしても。

 どちらにしても、ネテロ会長とかも動いていたし、そうなると最終的には同じような結末を迎えるはずだよね。

 主人公達の成長はないかもだけど、世界の平和は守れる。よね?

 

 まあゴンやキルアなら多少流れが変わってもきっとしっかり成長してがっつり物語に食い込んでいきそうだもん。多分大丈夫な気がする。

 

 本当は女王が流れ着いた瞬間に殺しちゃうのが一番なんだけど。私にはそんな能力はないし。誰かに説明しても、そんな荒唐無稽な話、信じてくれるはずもないか。

 

 

 

 

 ってことで、今後は修行しながら情報収集で原作の時系列確認。

 天空闘技場でお金稼ぎ。

 それから、スペルカードを集めて『大天使の息吹』を手に入れる。

 時期がわかれば、ゴン達と同じ回のハンター試験を受ける。

 

 うん。決まり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……と決めたはいいけど。

 

 圧倒的に修行時間が足りない。

 

 正確な時系列はまだわからない。でも、プレイヤー狩りが始まったんだ。

 時間は刻々と進んでいる。

 私が知っている原作の時に、近づいている。

 

 

 と、切実に考えながらも両手の間にある水を覗き込む。

 水見式のグラスだ。

 

 歪な泡がぼつぼつと出ていて、葉っぱが複数枚に分かれている。

 最初に水見式を終えてからも、何度もこれをやってみている。

 変化が顕著になるまで続けるのも修行だ。

 

 自分の特質が何かを考える。

 “特質系”ってのは、つまり特別に変わった資質ってこと。ひとりひとり固有な資質があって、他の系統に収まらないものは全部“特質系”になっているってことだよね。

 んで、私の場合、葉っぱが増えてる。

 

 何度もやっているうちに変化はさらに顕著になり、いまはわさわさと葉っぱが水を覆うほどになっている。

 泡も増えた。丸じゃない変形した泡。それも生き物のようにうねうねと動くのだ。

 

 

 “発”は術者の願いが形になるもの。

 自身にあった能力。

 

 私が今欲しい能力は、このグラスの中身を見るに、実現が可能なんじゃないかしら。それも希望通りのものが。

 

 

 

 なので。

 

 “発”を作ろうと思う。

 私の欲しい能力。“分身”だ。

 

 分身とは、あのNARUTO世界の超お便利能力、影分身。それも多重影分身。

 つまり、自立して行動してくれて、分身を解けば本体にその経験が還元、吸収されるもの。

 みんなでやれば習熟までの時間を短縮できる。

 仲間のいない私の補助にもなってもらえる。今一番欲しい能力だ。

 

 

 自立して行動出来て、経験を本体に還元する、なんて考えるだけでメモリを喰いそう。

 しかも本体と離れた場所でも行動してもらうってことは私の不得意系統である放出系も入ってるよね。

 でもね。

 

 メモリのキャパシティについてはそんなに心配していない。

 だってさ。

 私は“管理者”から“健康で成長しやすく、その世界で必要とされる才能を十全に引き出せる素地を持って生まれ”させてもらっている。

 三歳から修行を欠かしたこともない。素地があって努力をしているんだ。

 だから念に関して言えば、能力容量はかなり大きいと思うんだよね。

 

 それにこんなに葉っぱがわさわさ増えるんだもの。分身体をたくさん作れそうな気がする。

 

 

 

 それから、誰にも奪われない私の領域。“シークレットガーデン”関連。

 こっちにも追加で、いろいろ能力を作る。

 GIのアイテムである家族たちや屋敷の施設を取り込む方法はまだ検討中だけど。

 影分身と(ジャンプ・ステップ)を使いこなすために、いろいろと考えたんだ。

 

 

 

 それが、こちら。

 

 まず、物品用収納スペース。

 

 

【倉庫(インベントリ)】

具現化系、特質系

・オーラを消費して術者の念空間に物品専用の収納空間を作り出す

・広さは大型コンテナの積載容量程度

・中は時間停止

制約

・生きているもの、他人の所有物は入れることができない

誓約

・特になし

 

 

 時間停止はちょっとメモリを喰ったかもしれない。でもこれは必要でしょう。

 ちゃんと時間停止が効いているから、熱々の飲み物もアイスクリームも入れておける。

 

 まだGIのアイテムは持ち出せないから、今のところは外に出た時に買った地図や、マサドラで買ったもろもろを入れている。

 すぐ取り出したい武器や楽器、スコップやペンチやナイフ、はさみ、ロープなんていうものも。

 

 お金がもっとできれば、食料品もいっぱい買い込みたい。

 

 

 結局のところ、私は別に戦いが好きじゃない。

 修行して自分が強くなっていくのは楽しい。成長を感じられて達成感がある。

 だけど、私が本当に欲しいのは、安全な住み家と大好きな家族なんだな。

 

 我が家をガーデンへ取り込むことができれば……

 倉庫に山ほど食料を入れておけば何年でも隠れ住むことができそう。

 

 

【自由な手(ドラポケ)】

操作系

・手に触れて(収納)と念ずることで、術者の念空間の任意の場所へ収納することができる

・収納の際、手に触れていれば大きさや重量は問わない

・取り出したいものを思い浮かべることで術者の念空間内にある物を手元に取りだすことができる

制約

・他人の所有物は収納できない

・生物は収納できない

・出し入れする際、その物の重量に応じてオーラを消費する

・他人の所有物や生物を入れようとした場合、収納は失敗し、重量に応じたオーラを消費する

・取り出したいものが術者の指定した場所より大きければ取り出しは失敗し、重量に応じたオーラを消費する

誓約

・特になし

 

 

 取り出し用。ガーデンの中でも倉庫の中でも好きなところに入れられて、必要なものを即取り出せるってお便利能力。

 武器を取り出したり、瞬時に取り換えたりするのもノータイムノーリアクションでできたほうがいいじゃん。これも攻撃手段のひとつになる。

 だから大事な能力なのだよ。

 メモリは多少喰いました。

 

 

 実際使ってみると、ドラポケはめちゃくちゃ使える。

 手に触れてすぐに収納できるのは便利だ。倉庫でもガーデンでも好きな方へ入れられる。多少の重量のあるものも触れてさえいれば収納できる。

 

 これのキモは思ったものをすぐ手に取れること。

 

 手元に武器を一瞬で出す練習は欠かせない。何も持ってないフリをしていて急に武器が出てくるとそれだけでリーチが変わる。

 念があると素手でもじゅうぶん強い。でも槍や鎖とか、形状の違う武器があるのはやっぱり有利だ。

 

 一瞬で武器を倉庫から取り出し瞬時に“周”を纏わせる。それを殴りつける動きの途中でできれば敵の意表をつける。

 失敗すれば自分の意識がそこに取られて中途半端な攻撃になり、相手に攻撃のチャンスを与えることになる。

 これは反復練習が必要だね。

 

 

 次に、小窓の追加能力。

 

 

【小窓を門へ(ゲート)】

具現化系、操作系

・小窓に術者が身体の一部を入れてスライドさせることにより、外界と念空間を繋ぐ門が開く

・スライドさせる幅でゲートの大きさが変わる

・ゲートが開いている間は他者にも視認できるようになり、出入りが可能となる

制約

・ゲートを維持している間オーラを消費する

・ゲートの大きさにより消費するオーラ量がかわる

・ゲートを維持している間、術者はゲートに常に触れていなくてはならない

誓約

・特になし

 

 

 (ステップ)を使わず直接ガーデンへ出入りするため。いずれメリーさん達も出入りするようにするからいちいち抱き上げて移動するのもね。

 

 それに小窓は自分の任意の場所に自分が知覚できる窓を開く。

 もし万が一、目を潰されてしまったとしても、自分で開いた場所にある小窓なら触って広げられるんじゃないかと。

 視覚を失うと(ステップ)できない仕様の救済処置だ。

 そのために作った能力。

 (ポップ)を少し改良しただけだから、メモリの消費は抑えられた。

 

 

 目をつむって(ポップ)してみる。この辺りにあるかな? ってところに手を持っていくと四角い窓に触れる。そして指を窓に入れてすっと横に手を動かす。

 それだけで空間の切れ目が広がってガーデンへの出入り口ができる。

 

 おお。できた。

 これで避難時の(ステップ)の弱点が解消されたよ。よくやった私!

 

 

 指だけじゃない。

 ゲートは“術者が身体の一部を入れてスライドさせる”とした。

 

 身体の一部ってのは、腕が使えなくても足でもできるし、鼻とか肘とか膝とか舌とか、なんでも使えるようにね。

 どんな状況でもなんとかガーデンへ逃げ込めるように。

 小窓の位置も足元でも手元でも目のあたりにでもどこにでも開けるから便利だ。

 

 あ、これ慣れれば荷物で両手が塞がってても足で障子を開けるみたいな感覚でガーデンへ出入りできちゃうね。

 

 それに、ドラポケでは他人の所有物は倉庫へ入れられないけど、これを使えば、たとえば戦いの最中に敵の武器を奪ってガーデンに投げ込んだりもできるかも。あ、これも要練習だ。

 

 

 

 そして、私が欲しかった修行用“発”。影分身。

 

 

【影分身(ドッペルゲンガー)】

具現化系、操作系、特質系、放出系

・術者のオーラを分割し、実体を持つ分身体を作り出す

・分身体は、術者と同じ思考・記憶・人格を持ち、自身が分身であると認識している

・オーラ量を調整することで複数体の分身体を作り出すことができる

・影分身の耐久度はその分身に籠めるオーラ量によって増減する

・術者を起点とした半径5メートル以内の任意の場所に出現させることができる

・出現時、術者が着ている服装や装備中の武器、持ち物なども含めてすべてを複製する

・術者が指定した場合は、装備や服装を変更した状態で出現させることができる

 その場合、複製する物は倉庫内にあるものに限られる

 倉庫内にある実物を装備して出現することもできる

・出現後は術者本体からどれほど離れていても活動できる

・術者が解除する、または分身体に込めたオーラを消費しきる、または過度の衝撃を与えると消える

・分身体が消えると、それまでに分身が得た経験が術者に還元される

 但し、分身体が受けたダメージは還元されない

制約

・出現後24時間たてば分身体は消える

・術者本体より5メートル以上離れた状態では倉庫へアクセスできない

 またシークレットガーデンへ(ステップ)で入ることもできない

 但し、(ジャンプ)でシークレットガーデン内へ転移すれば倉庫にもアクセスできる

・術者の念空間、または術者の“円”の範囲より離れた分身体は、本体との距離に応じて戦闘能力が著しく低下する

誓約

・特になし

 

 これはメモリをごっそり取られた。でも反省していない。

 でもこの能力は必要だもん。

 これから先の転生先でもずっと使える能力だからね。

 

 影にはいろんなことをしてもらいたいから、NARUTOの多重影分身にできることは全部盛り込んだ。

 本体と離れた場所で行動してもらうためには放出系の能力も必要になる。だから円より外にいる影は戦闘能力を下げることにしてメモリ消費を抑える。

 離れて活動するのは情報収集が主だろうから戦闘能力は求めてないし。

 

 放出系は私の特質系から言えば60%の習得率だけど、地力をあげていけば放出系の威力も上がっていくはず。

 

 

 不得意系統を含む複合能力はメモリの無駄遣い?

 そんなことはわかってるよ。

 

 でもね。HUNTER×HUNTER世界の念能力者の寿命は長いの。

 それに私はこの生が終わった後も、この能力を持って次の生に行くの。その次も、またその次も。

 修行できる時間は無限にある。

 苦手系統でも習熟度が上がれば威力もあがる。

 

 それにさ。

 何回も転生を繰り返しているとまたそこでも新しい能力を手に入れるわけだよ。

 転生を重ねていろんな能力を持つようになると、どの能力も使いこなすためにたくさんの修行時間が必要だよ。

 ちゃんとやっておかないと引き出しがありすぎて、咄嗟に迷ってしまったり、使い慣れた一部の力しか使わないようになっちゃうんだよ、どうせ。

 そんな時に影分身があれば、いろんな能力を組み合わせて戦ったり創意工夫の時間が取れる。

 

 この先の人生でもまた今回みたいに6歳で独り立ちなんてこともありえるんだから、短期間で習熟できる影分身の能力はすごく役立つ。

 それに誰の助けもない時には、手が増えることはありがたい。作業を分担してくれるし、吸収すればすべてわかるから“報連相”の時間すらいらない。安心のバックアップスタッフになる。

 

 

 ちゃんとした必殺技も必要だけどさ。

 先々を考えれば、必殺技を作ることよりも影分身のほうがずっと必要なわけ。

 

 

 

 

 

 

 

 できた。

 できたできた!

 

 さっそく影分身を出してみる。うまくオーラを操れず、最初は一人しか出せなかった。

 これも練習あるのみだ。

 

 今は影1人でも、本体とあわせて2倍の修行時間となる。1年修行したら2年分の成果。

 2人になれば1年で3年分。

 10人になれば? たった1年で11年だ。

 

 NARUTOを知っているから、私の想像力が影分身の能力を正しく出現させることができる。

 いろいろなことをやってもらった。

 

 影分身も(ステップ)(ジャンプ)ができる。

 念空間は基本的に術者のそばにできるものだから、離れた場所にいる影はガーデンへステップで入ることはできない。倉庫にもアクセスできない。

 

 だけど私のそばにいればどちらもできる。

 緊急時、たとえば私が拘束されている時など、倉庫から取り出したペンチを装備させた影を私のそばに出現させて私の拘束をはずす、なんてこともできるだろう。

 

 

 あとは影との連携。

 同時に何体か出して連携を取ってそれぞれステップしながら攻撃。とかね。

 

 私の5メートル以内にいれば倉庫から武器を取り出せるから、どんどん武器を取り換えて攻撃したりもできる。

 もちろん影は過度の衝撃で消えちゃう。複製した武器もそう。“周”を纏わせるから影自身よりは強度があるけどね。

 だから強い攻撃を加えたいなら武器は複製じゃなくて実物を持たせる必要がある。

 

 使い捨てになるかもしれないから、そう割り切って雑多な武器をいろいろ倉庫へたくさん収納しておこう。

 なんだったら私の後ろからガンガン実物の武器を出しては投げ出しては投げなんて攻撃だっていいだろう。“周”して投げればいい固定砲台になるかもしれない。

 今はお金があんまりないけど、お金が手に入ったらいっぱい買おう。

 

 倉庫に何があるか私が知っているということは影も知っているということ。

 出現させる時は私が装備を決めるけど、そのあと武器の切り替えや動きは影が判断してやってくれる。どちらも私だ。まかせて安心。

 

 影分身、申し分ないね。うん。

 

 

 影を使った攻撃は、どれも本気の本気の切り札。影の存在を知られるつもりはない。

 外向けに見せる私の“発”は、あくまでもステップとジャンプ。

 あとは若干能力をごまかした倉庫くらいか。

 

 ガーデンと影分身は、誰にも教えるつもりはない。

 逃げる時や、相手を確実に殺す時にしか使わないつもり。

 

 

 

 ああ、そうだ。

 離れた場所にいる影がガーデンに入るために、ガーデン内にもジャンプポイントを設置しなきゃなんだ。

 うわあ。貴重なポイントの枠が。

 ……仕方ない。ポイント6設置“ガーデン”。これでよし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 影分身ができるようになって修行の仕方が変わった。

 体力つくり、筋力アップは本体にしかできない。影を出現させるのも。

 それ以外の修行を影に分担してもらう。

 

 最初は1体しか出せなかった影も、影が手伝ってくれることで効率は倍になり、すぐに2体になった。

 これから習熟度があがってオーラも増えていけば影も増える。

 

 どこまでも遠くへ行けるというつもりで作ったけど、まだ制御が甘くてGIと隠れ家に離れると24時間持たなかったり、動作が不安定だったりする。

 これも修行がすすめば大丈夫だろう。

 

 多少動きが拙くても、判断力が失われるわけじゃない。隠れ家に飛んで家の掃除をしたりネットで情報収集するくらいはできる。

 ガーデンにいれば常に私のそばにいることになるから、挙動は安定しているし、しっかり修行もできる。

 

 オーラ少な目の紙装甲な影なら3体は生み出せるようになった。

 衝撃で消えるだけで他はなんでもできるから反復練習など強度がなくてもできるものをやってもらう。

 あと修行方法をまとめたり、原作知識を書き出したり、やれること、やるべきことはいっぱいある。

 

 毎日影分身を解いて情報がフィードバックされると、その情報量に圧倒されそうになる。

 そして、すべてが血肉となって私が強化される。

 この能力のすばらしさに、感動以外の言葉がない。

 

 

 

 

 影にはすべての装備が複製される。

 だけど、GIの指輪はコピーされなかった。念で作られたものだから多分製作者以外にコピーされないように制限されているんだろう。

 そうしないとカードが使い放題になっちゃうからだろうね。

 

 影は指輪がないからプレイヤー扱いを受けない。

 つまり、影はプレイヤーのそばに近付いてもリストに追加されないのだ。他のプレイヤーから「ルナ」を探しても、本体である私しか見つけられない。もちろん影に指輪を渡していたら影が「ルナ」だ。

 

 これはこれで使い道がある。

 

 

 

 そう。

 もうひとつ、影に任せていた仕事がある。

 

 お母さんの仇について。

 やっと見つけた。

 

 どうやったかというと。アイテムを使ったのだ。

 『レンタル秘密ビデオ店』

 このアイテムは、指定した相手の秘密を見ることができるもの。「ルナ」のバインダーにある遭遇リストの一番後ろの奴から順にこのビデオで調べたら、十数人でわかった。

 

 お母さんを襲うシーンを見たんだ。

 相手は四人だった。顔もしっかり確認できた。あとは『追跡』で居場所を確認して、少年に変装した影分身に様子を窺わせることにした。

 

 影分身は指輪をつけてないから場所を特定できない。

 安心して傍に寄れる。

 身に着けているのは複製品だから、咄嗟の場合、自分を殴りつければ消えて証拠も残らない。そしてその瞬間までの情報は確実に私に戻る。隠密行動に最適だ。

 できるだけ離れた場所からそっと奴らの姿を観察する。影分身が戻ってくるたびに“絶”の習得がはかどっていく気がする。実地はやはり経験値が高いね。

 

 

 しばらく観察していてわかったこと。

 彼らが「ルナ」の生存をまったく気付いていないこと。

 奴らにとって「ルナ」はたくさんの獲物の中の一人だっただけみたいだ。

 

 そして、四人中二人はそこそこ強く、残りの二人は雑魚だってこと。

 この雑魚二人は、私なら今すぐにでも倒せる。たぶん正面から戦っても。

 だけど、そいつらを倒したことで、強い二人のほうに危険を察知されるのは困るわけだ。

 

 だから、隙を狙って、静かに待つ。狙いを定める豹のように。

 

 

 

 

 

 

 倒すべき敵が判明したことで、私の修行に対する想いも一層深まった。

 応用技の練習も順調。

 系統別の修行も積極的に進めている。

 

 

 モンスター退治も。

 

 やっと岩石地帯のモンスター全種類を倒すことができた。別にカードを集めているわけじゃないけどさ。こういうのも経験だもんね。

 私にとって一番やっかいなのは強化系のやつだ。

 モンスターもいろんなタイプが用意してあって、そのうちの強化系のモンスターは身体強化がすごかった。普通に“硬”じゃ効きもしない。

 弱点が移動するから、“凝”でしっかり見極めて“硬”で攻撃。

 決まった時は気持ちいい。嬉しくてうおう!とか叫んでしまう。

 “堅”も“流”も“硬”も“凝”も、どんどん洗練されていく。

 

 

 この辺りでの修行も終わりかな。

 

 “周”の訓練にも足腰を鍛えるのにも、ここの岩場はすごく便利だった。

 ずいぶん掘り返しちゃったけど、ゴン達の修行に差し支えたりして……

 

 はっ!

 ゴン達。

 

 そうだ。ゴン達の修行だ!

 

 あ、べつに彼らの分まで掘り返してごめんって言ってるんじゃないよ。もっと切実な問題。

 奴ら、うちの隠れ家まで掘ってくるんじゃないでしょうね???

 

 まっすぐ掘り進むってどうまっすぐ行くの?

 うちの隠れ家は少し離れた場所だけど、でも、私が掘ってない方向を選ぶと、偶然そっちに向かって掘り進むかもしんないじゃん!

 

 それにホームの周りをウロウロされるのも嫌だ。

 

 うん。それまでに発を完成させて、あの空間をすべてうちの念空間に取り込まなきゃ。

 

 やべぇ。時間がない。

 頭脳労働担当影よ。頑張るのだ。

 

 体力作りと筋力アップのため私は身体を使った修行ばかりやっていて、影には頭を使った作業を主に頼んでいる。

 吸収した時にいろいろと情報が入ってくるのがすごい。

 どちらも私だから、自分が経験したこととしての記憶が追加されるの。

 一日走って岩掘りをしてモンスターを倒していたのに、同時に、ネットで情報収集して、原作で存在した念能力を書き出していて、今までの修行のやり方をまとめていたことになっているんだ。

 ほんと、すごい。

 期待してるぜ、影よ。

 

 

 

 

 スペルカードのほうは順調。

 

 普通なら45枚中40枚をダブりなしで揃えることは難しい。開いている場所に目いっぱいの魔獣カードなどを手に入れて換金しなくてはカードが買えないんだから。

 生活に必要なお金もカードで、それがまたフリーポケットを使う。

 

 私の場合、指定カードのほとんどが擬態だ。

 お母さんが残してくれたものは必要なものはアイテム化して家にある。

 要らないものはお金に変えた。

 

 『擬態』が手に入ればすぐに重要カードから順に指定カードに擬態させて指定ポケットにどんどん入れていく。

 どれを何に擬態させているかはちゃんとメモを取ってるよ。しっかり擬態対応一覧表を作っているから間違いない。

 

 指定カードを溜めるつもりがないからこそできる方法だよね。

 

 

 それから、原作のゴン達がやった方法をリスペクトさせてもらった。

 『離脱』カードを持って街でくすぶっているプレイヤーと交渉してバインダーの中身と交換してもらうのだ。

 ハズレも多かったけど私が持ってないカードを持っている人もいて、かなり有意義だった。スペルカードの抜けがこれでずいぶん埋まった。

 指定カードも増えた。ポケットが足りなくなるから余分なものはお金の足しにさせてもらってまたスペルカードを買った。

 

 

 

 

 マサドラで毎日カードを売ってスペルカードを買う作業を続けていると、プレイヤー狩りがよく釣れる。

 

 実感した。

 お母さんがなんで襲われたか。

 

 ゲーム内の状況が膠着して、ゲームから抜け出すこともできないプレイヤーがマサドラでたくさん路上生活をしている。

 そんな中、毎日カードを買いに来る女性。きっと目立ってただろう。

 

 お母さんは一人でカードを売り買いしにきていた。それも毎日だ。

 私もついていくことがあったけど、私の存在もきっとよけいに目立たせることになったと思う。

 

 ずっと観察していても、他のプレイヤーと交流しているようなそぶりもない。

 

 毎日換金してカードを買っていたんだ。ある程度腕がたつことは想像できただろう。

 でも。彼女がどれほど強かったとしても。たった一人だ。または足手まといの子連れか。

 大人数で囲めばなんとかなると、思ったんだろう。

 

 実際、なんとかなっちゃったわけだし。

 いや、カードを奪いそこなったんだから、なんとかならなかったのか。

 でもお母さんは死んじゃった。

 

 

 私もずいぶん目立っているんだろう。

 でも、カード集めはやめられない。今さら止められるわけがない。

 

 プレイヤー狩りがくればカードを壊されたり盗まれたくないから、戦わずに逃げる。

 

 それでも追いかけてくるものはできそうなら攻撃してたおす。

 だめそうならとにかく隠れて(ポップ、ステップ)。

 

 倒せたら、殺しはしないけどカードはぜんぶ貰う。

 これのおかげでまたスペルカードの空きが埋まったのは皮肉な話だ。

 

 

 

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