エリカ、転生。   作:gab

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三たびのグリードアイランド3

 

 

2000年 2月 11歳

 

 久しぶりに会ったレイザーは16人を順に見回した。実力を測っているのか。

 その首の動きは私のところで一度止まったのだけど、もしかしたら昔会った“ルナ”だと気付いたのかもしれない。

 まあイエローカードは貰ったけどそのあと何もしてない(ことになってる)から問題ない。善良な(いち)プレイヤーですって顔をしておいた。ぷるぷる、ボク悪いプレイヤーじゃないよ。

 

 原作でも船で乗り込んできた旅団メンバーに対しても追い出すだけで、普通にプレイヤーとしてちゃんとくるなら歓迎するぜって言ってたし、プレイヤーの殺し合いはスルーだし、ここのGMの規則は緩い。強者の余裕って奴か。

 

「1人1勝、先に8勝した方の勝ちだ。勝負のやり方はオレ達が決める。それでお前達が勝てばこの島を出ていこう」

 

 原作通りボクシングやリフティング、相撲、ボーリングなど指定された競技で戦う。

 負け前提と割り切って情報集めに注力してすべての試合を熟し、解散となったそのあと。

 

 ゴレイヌは私達と一緒にもう一度『一坪の海岸線』取得にチャレンジしたいと言ってきた。よかった。ゴレイヌはゴン達の実力にちゃんと気付いた。スタートが違ってもちゃんと原作通りになってホッとする。

 

 そして他のメンバーを探すことに。

 

 ゴンが「クロロ=ルシルフル」を確かめたいと言い出して、会いに行く。

 ああ、ヒソカに会っちゃった。

 

 ヒソカはゴン、キルアをみて、順調に育っていることに愉悦の表情を浮かべた。

 水浴び中だった彼は鍛え抜かれた美しい裸体を惜しげもなくさらして、しかも股間が……ってはずなんだけど、会ったとたんにキルアが私の前に立ち、ビスケが目を塞ぐから大事なところは見てません。

 

 ビスケの一言でヒソカも仲間になることが決まる。これで6人。

 そのあとヒソカのリストにあったツェズゲラへ『交信』することに。

 

 

 ツェズゲラ組に情報料として報酬の10%をもらう交渉を済ませ、協力してレイザー戦に臨むことに決まる。これで10人だ。

 

 原作みたいにプレイヤー選考会でゴン達に会ってないから、最初は、大人組とビスケはさておき、他の子供達と組むのはと難色を示された。

 

 ゴンが拳で大岩を砕き、キルアが電気をビリビリと見せつけ、私はステップで後ろにまわって膝裏を蹴り首に手を添える。

 

「わ、わかった。君たちの実力はじゅうぶん見せてもらった。こちらからも頼もう。『一坪の海岸線』取得のためにともに戦ってくれ」

 

 ツェズゲラにそう言ってもらってゴン達と微笑みあう。やったね。

 それから数日かけてスポーツの練習を一緒にして、ツェズゲラ組の面々とも打ち解けていった。

 

 

 『離脱』カードで交渉した数合わせプレイヤーを5人引き連れ、もう一度ソウフラビへ。

 

 

 

 

 

 

「1人1勝、先に8勝した方の勝ちだ。勝負のやり方はオレ達が決める。それでお前達が勝てばこの島を出ていこう」

 

 レイザーのセリフは前回来た時とほとんど変わらない。NPCらしく定型文があるんだろう。

 メンバーを見回す視線に満足の色があったから、今回のメンツは戦いに足る者が揃ったと判断してくれたみたい。

 

 あとは原作どおり。

 ツェズゲラ組の3人が順に3勝して、その後ボポボの不戦敗でこちらが4勝。

 

 ゴンの名前を聞いてやる気マックスになったレイザーがドッジボールでの戦いを提案。

 8対8の試合が始まった。

 

 

 

 

 私が入ったことで人数がひとり増えている。

 ツェズゲラ、ゴン、キルア、ビスケ、私、ヒソカ、ゴレイヌ。それからゴレイヌの念獣の白ゴリラ。

 白はゴレイヌと場所交換、黒は他人と場所交換だったっけ?

 

 私はステップがあるけど、逃げてるだけじゃ点は取れない。強化系は不得意系統だけど、数字の若いアクマ相手なら何とかなるかな。

 それにステップでコート内にちゃんと戻れるから失格になることはない。はず。

 

 

 ゴレイヌの白ゴリラが外野でスタート。

 

 順調に三体外へ出したところでまずツェズゲラがやられて6人。次にレイザーのボールがゴレイヌへ。剛速球に恐れをなしたゴレイヌは白とスイッチして外野へ移動。これで5人。

 コナゴナに砕かれた念獣を見て私もちょっとびびった。

 余波の風だけで身を切りそうだ。

 

 そのあと、ゴンが真正面からレイザーの球を受け、壁に激突。これにもびびった。

 

 

 こわいなあ。

 この4ヶ月でけっこう無茶な修行をしたからその時にいっぱい怪我はしたけど。やっぱりレイザーの攻撃は怖い。

 ピッチングマシンから時速250キロで飛び出す鉄球よりもレイザーのボールの方が威力がある。

 

 全治数ヶ月単位の大怪我をしそうな場に立つのは初めてだ。

 レイザーの球を受けきれるか……

 

 ――だめ。

 ここで不安になると絶対に取れない。さっきの念獣が消えたのはボールの衝撃よりもゴレイヌの受けた恐怖のせいだ。気持ちが負けると念の力も弱くなる。

 

 ゴンを見てみろ。

 額からだらだら血を流しながら「バックはオレが宣言する」って言い放つあの真っすぐな瞳を。

 あの強さを、私もまねよう。

 

 だから、絶対負けない。負けないぞ。負けるなエリカ。修行8年半の成果を見せてやれ。

 

 

 ふぅっと深く息をつき、“堅”を維持する。いつでもボールを受ける場所へ攻防力を速やかに移動させられるよう心を落ち着けて。

 

 大丈夫。目はレイザーの球を追えている。避けるだけなら私でもできる。

 

 

 ゴンが抜け4人となったメンバーが、レイザーの強い一撃を警戒してコートの後ろぎりぎりに広がって構える。

 

 キルアを狙った球が直角に折れ曲がり、こちらへ飛んでくる。ビスケ、ヒソカ、私が避け、外野アクマが取ると即私目掛けて投げてきた。ギュルギュルと音を響かせ私の顔へ硬い球が迫る。こんなシーンたしか原作でもあった!

 

 身体をひねりながら顔の前で腕を構え、攻防力を移動させる。踏ん張る必要がないから全力で腕と顔を守って。

 

「エリカ!」

 

 途轍もない衝撃とともに吹き飛ばされる。受け止めた手と反動で当たったこめかみの痛みはやけどのように熱い。

 必死でボールを落とさないよう押さえながら衝撃を殺すようわざと大ぶりな回転状態で飛ぶ。

 壁に激突する前に体勢を変えて内野コートへ(ステップ)。

 ステップでは運動エネルギーは消せない。ざざざざっとずり下がりながらなんとかコート内に踏みとどまった。意地でもボールを落とさない。

 

「ほぉ」

 

 レイザーから感心するような声がもれた。

 

「ビスケ選手アウト! 外野へ移動です」

 

 ビスケのスカートがごっそり消滅していた。これで内野はキルア、ヒソカ、私の三人だ。向こうはレイザーとアクマ二人。どちらもバックはまだ残している。

 

「大丈夫か?」

 

 キルアとヒソカがやってくる。

 とっさに守った腕だったけど、右手は痺れて感覚がない。顔もジンジンしているからたぶん腫れてるんだろう。血もでている。

 

「ボール、頼んでいいかな」

 

 ヒソカに渡す。しばらく投げるのは難しそうだ。ありていにいえば、くっそ痛い。

 

「大丈夫! 外野を経由したらボールの破壊力は激減する。直近から投げられたけどこれくらいの怪我で済んだもん」

 

「レイザーの球にさえ注意してよければ大ダメージは避けられるな」

 

「そういうことだね♦」

 

 ボールはヒソカが投げてまずは2番をアウトに。落ちるボールはバンジーガムでヒソカが捕球。その後13番を狙うもこれは取られた。レイザーへまた球が回る。

 

 

 避けた時に互いにぶつからないよう、三人がコートへばらけて構えた。

 あ、やばい。これ絶対私が狙われる。

 

 無傷なヒソカとキルア、手に怪我してる私。

 ステップという使い勝手のいい能力は先に潰したいとレイザーも思ったのだろう。

 重いボールがうなりをあげて飛んでくる。

 

 レイザーが原作でやっていたように、バレーのレシーブの構えで待つ。攻防力を一気に両腕に集め球を斜め上へ弾きながら、衝撃を殺すため自分の力で後ろへ飛ぶ。両肘が嫌な音を立てて折れた。

 

「ヒソカ!」

 

 叫んだ。これは意地だ。頼むよヒソカ!

 ヒソカはバンジーガムでボールをキャッチしてくれた。それを確認する間もステップする余裕もなく壁に激突した。

 ぐはっと息が洩れる。内臓がぺしゃんこになるかと思った。

 衝撃で凹んだ壁からバリバリ音をたてて地面に倒れる。咄嗟に背中を防御できてなかったら背骨も逝ってたかもしれない。

 

「エリカ!」

 

 心配する声に応える余裕がなかった。

 いやあ、生きてて……よかった。ガクッ。

 

 

 

 そのあとは私が気絶しちゃったから、あとで教えてもらった。

 

 ヒソカが捕球できたから私はセーフなんだけど、気絶しちゃったため気が付いたら復帰ということでいったん私抜きでゲームを再開。

 

 内野が2人になったことでゴンがバックを宣言した。

 こちら側の攻撃からスタートになる。

 

 原作どおりゴン、キルアコンビのジャジャン拳で13番をアウトへ。レイザーの球はゴン、キルア、ヒソカの合体技で捕球する。

 

 激しい攻防の末、無事に勝つことができたらしい。

 最後まで見守ることができなかったのが不覚だ。

 

 

 でも、レイザーに立ち向かった私えらい! すごいぜエリカ。ビビりの子兎エリカが、ヤドカリエリカが、あのレイザーの球を真っ向から受けた。……気絶しちゃったけど。

 

 目も身体もちゃんとレイザーの球を捉えていた。うん。確実に強くなってる私。

 それが私としては満足かな。

 

 

 

 ジンの話をするゴンとレイザーを遠くから見守りながら互いの負傷箇所を確認する。

 

 私は両腕の骨折がわりと酷くてけっこう長引きそう。両腕とも前腕部分の肘のすぐ下あたりがバキッと折れている。肘を粉砕されていたらもっと大変だった。これくらいで済んでよかったと思おう。

 肘を曲げた状態で添え木を当てて、ガチガチに固定して三角巾で首からつる。両手ともだ。当分日常生活に困りそう。

 あとは背中、顔の怪我。血を吐いたからきっと内臓も傷ついているだろうけど骨は無事だった。こちらも当分テーピング。顔は腫れがひけば問題なし。

 

 ヒソカは両手の指の骨折。

 キルアの両手は下手をすると治らないかもしれないほどの酷い怪我だ。『大天使の息吹』を手に入れることがわかっているから心配はしてないけど。

 

 

 

 手当を受けている途中、ヒソカが傍にやってきた。

 

「雰囲気変わったね。何かあったのかい? エリカ♠」

 

「そうかな?」

 

「わかるよ♥ それにずいぶん強くなってる。興味あるね♠」

 

「……ヒソカ……」

 

 やっぱりこの人ってすごく観察眼が鋭い。ゴンほど美味しいおもちゃになれない私のことすら目敏く気づくんだから。

 この強さと賢さがあれば……

 

 

 ……あれ? なんでキメラアント編にヒソカっていないんだろう?

 クロロの除念はもう終わってるはずだよね?

 何やってたの? この時期。クロロと対戦したくてずっと追いかけっことか?

 

 

 

 劇薬すぎるか?

 アリ退治に連れていってアリそっちのけでネテロ会長と殺し合いとかされたらしゃれになんない。

 それに、ヒソカを雇うのは金銭的に無理だし。

 

「ねえ、ヒソカ」

 

「なんだい?」

 

「強くって、ヤバくって、多彩な能力持ちの敵がいっぱいいるとしたら、ヒソカもヤりたい?」

 

「……へえ♠ どの程度?」

 

「ネテロ会長よりずっと上がひとり。会長並みが少なくとも3。その下も面白い能力者が山ほど」

 

「いいね……詳しく聞かせてくれるかい?」

 

「私はヒソカを雇えないけどさ。5月か6月あたりにハンター専用サイトを調べればヒソカなら仕事として協会が雇ってくれるかもよ。場所は……バルサ諸島のあたりとだけ」

 

「なるほど。ありがと♥ また何かあったら声をかけてよ」

 

 ヒソカは私と電話番号を交換するとそばを離れていった。

 ……ヒソカの電話番号、貰っちゃいました。

 まあ保険のひとつだ。ヤバくって使えないけど。

 

 

 

 

 

 無事『一坪の海岸線』を手に入れた。ゴンチーム93枚目ゲットだ。

 原本はゴン、コピーをツェズゲラとゴレイヌが手に入れた。ゴレイヌはツェズゲラと組むことにしたようだ。

 

 これまでは表面上50枚そこそこでSランクカードは『擬態』していた私達はそこまで注目されてなかった。でもこれからは違う。だって『一坪の海岸線』があるから。

 『一坪の海岸線』はもう隠すつもりはない。堂々とゴンのバインダーに収められた。

 

 ヒソカが何も要求せずに去っていき、その後ゲンスルーからツェズゲラへ『交信』があった。

 

 

 ツェズゲラ組はもうこれで00番の『支配者の祝福』と『大天使の息吹』、『奇運アレキサンドライト』、それからゲイン待ちの『ブループラネット』だけ。

 

 ツェズゲラが交渉してきたことは原作どおりの流れだった。

 

 ツェズゲラ組が3週間ゲンスルー達を引き付けておくから、その間にゴン達は傷を癒してゲンスルー達を倒す作戦を練る。

 ゲンスルー組を斃せればツェズゲラ組へゴンが持つ『奇運アレキサンドライト』を譲る。

 

 

 ゲンスルー達との戦いはゴン、キルア、ビスケが担当。

 私は怪我が両肘で、腕全体を固定しているから戦うのはちょっと無理。

 その代わり、ジャンプステップを活かしてゴレイヌと同様ツェズゲラ組のための移動スペルカード集めの役割を果たすことになった。

 

 私はゲンスルーがボマーだとバレてからログインしたからまだ一度もゲンスルーと会ったことがない。だから私には彼らからアプローチができない。

 ゴン達の主要カードを『擬態』に変え、私が本物を守っている。

 

 

 ついでに『離脱』との交換も続ける。ゲンスルー組へ『同行』や『磁力』を渡さないためにもなるしこちらのカードも増える。

 空いた時間はキルアのそばへ戻って“ほむら”を歌い回復を早める。

 両腕が駄目だから二胡は弾けないもん。でも心を込めて歌えばそこそこ回復量はあがる。

 

 

 ゲンスルー達と戦うためにゴンはビスケの特訓を受け、キルアは傷を癒しながら作戦を練っている。

 私も腕は使えないけど空いた時間には“円”の修行を続けている。

 こっそり影が森へ行きモンスター相手にシルヴィアの訓練もやっている。4月にはピトーとの戦いがある。休むヒマはない。

 

 

 一番の武器が楽器な私にとって両手が使えないのってすごく不便だ。でもビスケに影をこの場で見せるつもりがないから、“ほむら”の演奏を影に頼めないんだよね。

 時々こっそり影と交代でガーデンに入り、影の“ほむら”を聴いて回復を早めている。

 

 ちなみに影は私の状態そのままに出現させることも、怪我のない健康な状態で出すこともできる。

 お風呂とかトイレとかね、個室に入ってこっそり影に補助を頼みました。だって両腕とも固定してんだもん。

 

 ってかさ。

 私の両腕が無事だったらシルヴィアの一息でゲンスルー達三人いっぺんに斃せたのに。やっぱ怪我は禁物だ。

 

 影を使えば何とかなるんだけど。

 でもせっかくのゴン、キルア強化イベントを奪うわけにはいかない。彼らが強くなってくれなきゃ困るし。

 

 

 

 

 いよいよ決戦の日。

 

 マサドラ近くでみんなの無事を祈りつつ隠れて待っていた。

 この3週間で怪我はだいぶマシになった。さすが念能力者。骨折がひと月で治るなんてね。

 

 まだテーピングと三角巾はとれないけど骨は綺麗に繋がっているようでほっとする。

 超一流ミュージシャンの繊細な指使いが復活するまで無理するつもりはないよ。私の大事な財産だもん。

 

 

 

 望遠鏡でゴンの戦いを見守りたかったんだけど、決戦の場に選んだのは森の中だから上手に見れる場所がなかった。

 

 無事ゲンスルーを斃したという連絡を聞いてほっとした。勝つことを知っててもさ。万が一があるもん。どきどきしたよホント。

 

 

 

 『大天使の息吹』でみんなの怪我を癒す。

 私の怪我も一緒に治すか聞かれたけど、もうほとんど治ってる。後遺症もなさそうだしこれくらいで大天使を使ってしまうのはもったいないから断った。

 

 なんせ一度きりしか大天使サマは微笑んでくれないんだもの。私は倉庫に大天使がいる。もっと取り返しのつかない怪我の時まで残すべきだ。

 

 

 

 ゴレイヌから連絡を入れ、ゲンスルーから逃げてログアウトしていたツェズゲラ組のログインを待つ。ツェズゲラ達のカードはゴレイヌが保持していたらしい。

 

 無事を祝いあい、約束通り『奇運アレキサンドライト』を渡す。

 

 ゲンスルーの持つ『大天使の息吹』を使ったことでツェズゲラの『引換券』が大天使になり、ゴンから『奇運アレキサンドライト』を受け取ったツェズゲラが98枚に。

 あとは『ブループラネット』のゲイン待ちだけだ。

 

 

 

 私達はその間に少しでもカードを増やそうと積極的に動いた。

 

 数日かけてカードを探し、うちの持ちカードが94枚になった時。

 いきなりみんなのバインダーが現れ、アナウンスの声が聞こた。

 

『プレイヤーの方々にお知らせです。

 たった今あるプレイヤーが99種の指定ポケットカードをそろえました。

 それを記念しまして今から10分後にグリードアイランド内にいるプレイヤー全員参加のクイズ大会を開始いたします』

 

 

 クイズが始まった。とうとうツェズゲラ組が99枚揃えたらしい。

 

「クイズだって! 期待してるわさ! エリカ」

 

「うん、頑張る!」

 

 これのためにめちゃくちゃ勉強したんだもん。頑張るさ!

 

 

「おし! じゃあオレ達は成績悪かったほうが罰ゲームな」

 

 キルアが楽し気にゴンを挑発する。

 

「よし、のった!」

 

 ゴンも楽しそうだ。

 ゴン達ってほんとこのゲームを楽しんでるよね。ちっとも緊張してない。

 

 

『それではこれよりクイズの出題を始めます!

 第一問! ナンバー001「一坪の密林」に関して――』

 

 メッセージが響く。

 

 楽し気なゴン達の声をバックに、冷静に問題を解いていく。

 

 

『それではこれより最高得点者を発表いたします。

 最高点は100点満点中93点!

 プレイヤー名 エリカ選手です!』

 

 

「いえっす!!」

 

 クイズの結果はツェズゲラを押さえて私が一番。

 そりゃね。年季が違うよ、年季が。悔しければ8年ここで暮らしてみろってのよね!

 

 それにクイズがあることは原作知識で知っていたんだもん。今までカード集め中に知ったことも全部しっかりメモっておいた。

 『記憶の兜』で試験勉強までしたさ!

 

 フクロウみたいな鳥が飛んできて封筒を落としていく。中身は『支配者の祝福』だった。

 原作では招待状だったはずだけど、私が100枚揃えてないから直接カードが貰えたってことかな。

 

「すごいぜエリカ!」

 

「やったわね!」

 

「さっすがエリカだぜ」

 

 

 わいわいと騒いでいると、ひゅーんと音が聞こえる。移動スペルだ。

 飛んできたのはべラム兄弟だった。

 

 

「よう、エリカってのはどっちの小娘だ? まあどっちでもいいや。『支配者の祝福』かけて勝負しようぜ。2対4でいいからよ」

 

「悪いがこれは強制だ。まあオレ達に勝てるなら何枚でもやるぜ。けけけ」

 

 うわあ、いかにもやられ役なセリフをありがとう。

 

 あれ? 99枚のツェズゲラにいかずに『支配者の祝福』を手に入れた私達のとこに来たのね?

 ありがたい!

 『支配者の祝福』あわせても95枚しか持ってないからね。やったね!

 

 うちのメンバーの見た目に騙されたね。ゴンとキルアが一発でさくっと倒しちゃった。

 

「やったね。ゴチになります、おじさん」

 

 るんるん気分でバインダーをチェック。

 

「あ、この人『一坪の密林』持ってる! これ貰うね」

 

 何枚でもやるって言ってたんだしいいよね、って言いながらゴンに渡す。

 

「『ブループラネット』と『影武者切符』もよ」

 

 横から覗き込んだビスケが2枚とってゴンへ。

 

「あ、『同行』も貰っておこうぜ」

 

 キルアもそう言って『同行』カードも貰う。

 

 これで98枚になった。あと2枚か。

 そこでツェズゲラから『交信』が入った。

 

「まずはおめでとうと言っておこう。君には負けたよ、エリカ君」

 

 はい。来ると思ってました。

 

 

 ゴンはバッテラさんの契約プレイヤーじゃないからツェズゲラ達と競合しない。

 

 ツェズゲラと交渉して、ツェズゲラに『支配者の祝福』を譲渡する代わりにうちの足りない2枚を『複製』させてもらい、無事ゴンも99枚になった。

 もう一度『支配者の祝福』を得られればクリアだ。

 

 

 

 『支配者の祝福』は限度枚数1枚のみだからツェズゲラ達がクリアしないとクイズは開催されない。

 ツェズゲラに、ゴンという者が99枚揃えて待っているとGMへの伝言を頼んだ。

 

 クリアは1人しか想定していない可能性もある。でもこういっておけばゴンのクリアも認めてくれるんじゃないかと期待しての行動だ。

 

 

 そして――

 

 

「やったー! クリアだあ!!」

 

 4人で飛び上がって喜ぶ。

 

 ツェズゲラチームのクリア後もう一度クイズがあってまた私がゲット。これでゴンもクリア。

 ゴンは城に招かれ、念願のGMとの会談に向かった。

 

 

 

 

 ツェズゲラ組、ゴン組あわせての祝宴祭の翌日。

 ゴン、キルア、ビスケと4人。リーメイロ城下町のホテルの部屋に集まり、クリア報酬の3枚を選ぶことになった。

 

 ゴンは『同行』を使ってジンのところへ行くことを考えていただろうけど、約束だから断念したみたい。っていうか“ニッグ”がジンのアナグラムだと気付いたかな?

 私から聞くのも変だから黙ってるけど。

 

 

 約束通り1枚は私が、もう1枚はビスケが選ぶ。

 

 残りの1枚はゴンとキルアが何にするかわいわいと相談していたけど、結局特に欲しいものはないみたいだった。残りの1枚も私に選ばせてもらえた。

 

「これはエリカのゲームだからね!」

 

「ホントに私が2枚使っちゃっていいの? 結局ジンの手がかりは掴めなかったのに」

 

「いいよ。ジンの作ったゲームを楽しむことはできたし」

 

「最初からそういうメッセージだったんだからな」

 

「ありがとう。大切に使わせてもらうね」

 

 ちょっとかわいそうな気はするけど。でも結局カイトのところへ飛ぶんだもん。

 あとでちゃんと私が連れて行くから。ありがたく使わせてもらいます。

 

 

 もともと私が選ぶつもりだった1枚はキメラアント編で使うためのもの。

 『大天使の息吹』をもう1枚というのも考えたけど。誰かが怪我したらたった一人にしか使えないものはちょっとね。

 

 それにカイトは死なせない。ゴンもゴンさんにしない。

 

 

 

 なら、この1枚は自分のために使おう。

 できれば倉庫に持っていないものがいいよね。

 

 悩んだけど『一坪の密林』を貰うことにした。

 これはゲットできたのがべラム兄弟からで、本当に最後だったから私が『複製』を持つチャンスがなかったやつ。

 

 選んだ理由は、ガーデンに森が欲しかったから。

 

 これをガーデンに入れるとメリーさんが森を散歩できるかも。山菜や果物もあるかもしれないし、たまに木を切ったりもできるよね。きっと喜ぶ。

 人によく懐く珍しい動物がいっぱいいるらしいからラルクの友達もできるかもしれないし。

 

 

 

 

 

 そして――

 

 ビスケと別れ、私は三度目のグリードアイランドでの生活を無事終えた。

 

 

 

 

 次は、いよいよキメラアント編だ。

 

 

 

 

 




感想ありがとうございます。いろいろ考察してくださっているのは嬉しいんですがキメラアント編についての感想はレスなしにさせてくださいませ。ネタバレしちゃいそうなんで。

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