エリカ、転生。   作:gab

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お疲れ会とカキン国での仕事

 

2000年 3月 11歳

 

 ビスケとはログアウトの場所が違うから、後ほど待ち合わせることにして隠れ家へ戻る。

 

 ビスケはサヘルタ合衆国にあるバッテラさんの所有する古城へ戻っていった。原作みたいにバッテラさんからキャンセルを言い渡されたわけじゃないんだもん。雇用主に契約終了の挨拶をしておくべきだもんね。

 私の借りているフラットはサヘルタ合衆国の北部マーリポスにある。古城も北部らしく、お互い移動しやすいマーリポスの空港で待ち合わせることになった。

 

 

 

 

 

「ブック。うわ、ちゃんと出た」

 

 ルドルノンの家に戻ってさっそくゴンがそう唱えると、現実世界なのにちゃんとバインダーが現れた。

 カードが3枚だけ入った特別製のバインダーだ。

 

「はい、エリカ」

 

 バインダーごと私へ。

 

「ありがと。これって私の鞄にしまえるのかな?」

 

 倉庫にそのまま入るかと鞄にしまいながら“収納”と念じる。自分の所有物しか収納できないんだけど、元々の所有者であるゴンが“エリカのもの”と考えているからか、すんなり倉庫へしまえた。どうやらバインダーはもう私のものらしい。

 ビスケのものが1枚入っているけど、私から譲渡するものという位置づけなのかも。

 

 

 ふたりのロムカードは抜いて私の分だけ残してゲーム機を倉庫へしまう。

 キルアの指輪はロムカードを抜いたとたん消えたけど、ゴンのものは残った。バインダーが残っているからだろうか、あるいはジンが細工してあるからか。

 ゴンは指輪とロムカードを記念品として鞄にしまった。

 

「さてと。これからどうする?」

 

 キルアが聞いてきた。

 

「マーリポスにはポイントが残してあるからすぐ行けるよ。先に行って向こうでゆっくり買い物したりしてもいいけど」

 

「じゃあこの家ですこしのんびりしてからでもいいね。ってか少し家具が増えてる?」

 

 ゴンがリビングを見回す。

 

「うん。前はホームコード置き場としてしか使ってなかったんだけどここでも住めるようにしようかと思って」

 

「へえ」

 

 キメラアント編の宿泊用だよ、とは言えないからちょっと濁して話す。

 

「ってか早く行こうぜ。ゴトーを追い返してえ」

 

 そうだった。ここには招かれざる門番がいるんだった。

 

「ゲームはもう終わったから帰れって言ってここを出よう。途中でまいて逃げるぞ」

 

「そっか。出ていく姿を見せないとだね。ずっとここにいられるのやだもん」

 

 このままジャンプで消えればまたゲームに入ったと思われてしまう。ゲームクリアしたからもうここへは来ないって言っておかなきゃなんだ。

 

 先に玄関を出たキルアがゾルディックの執事達と話をしているうちに私とゴンも外へ出て鍵を閉める。

 

「とにかく! もうついてくんなよ」

 

「承知いたしました。行ってらっしゃいませ、坊ちゃん」

 

「お久しぶりです。ゴトーさん」

 

「ご無沙汰しております、ゴン様。それからエリカ嬢」

 

 自己紹介した覚えはないけど私の名前は知ってて当然か。

 

「話す必要はねえぞ。行こうぜ」

 

「あ、うん」

 

 ゴンと一緒にぺこりと頭を下げると私達はそろって歩きだした。ゴトー達は生真面目なお辞儀をしてそれを見送る。

 

「お気をつけて。キルア様をよろしくお願いいたします」

 

 街を歩きながら何度も道を曲がる。隠れたところで二人を抱き上げて(マーリポス、ジャンプ)。

 私の借りているフラットへ飛んだ。

 

 

 

 

 

 そこから街を少しぶらぶらする。

 

 ゴン達はゲーム中ボロボロになった服を買い替えたり、キルアの充電池を買ったり。

 私はとっくに着替えてるからボロくないよ。倉庫ってホント便利。

 

 そのかわり美味しそうなものがあればいっぱい買い漁った。念能力者はみんな大食漢だもん。私もこの小さな身体のどこに入るのかってくらい食べる。食材や料理はいくらあってもいい。

 倉庫にしまえるのだから目に付いたものは全部買う。

 

 

 

 

 マーリポス空港について、ビスケに会う前に飛行船の予約をしておこうという話になった。

 

「ねえ」

 

「なに?」

 

「どした? エリカ」

 

「あのさ。このあとのことなんだけどね。二人はどこか行く予定ってある?」

 

「なんにも」

 

「だな。ジンの手がかりは掴めなかったしな。適当にいろんなとこに行くって感じでいいんじゃね?」

 

「そうだね、行ったことのない街へ行こうよ」

 

「じゃあさ。私と一緒にカキン国へ行かない?」

 

「カキン?」

 

 カキン国はアイジエン大陸にある大きな国で、去年の8月仕事でそこに行ったのだと説明する。

 “ほむら”を覚えるために行き、そのあとはそこで知り合った先輩ハンターの仕事を手伝わせて貰っていたことなど。

 

 『同行』が使えなかったのだから、せめてカイトのもとへ私が連れていくべきかと考えたのだ。これで断られればキメラアント編は私だけで進むつもりだった。

 

「先輩ハンターがすごくいい人でね、いっぱい勉強させてもらったし、すんごく楽しかったの。

 新種の生き物を見つけるって仕事でさ、珍しい動物をいっぱい見たよ。ダンもまだそこにいるはず」

 

「へえ、いいね」

 

「面白そうじゃん」

 

 他に行く予定もない二人が乗り気になって、いろいろ話をする。

 

 どんな仕事かを説明しているうちに先輩ハンターの名前がカイトだと話し、それならゴンの知り合いでかつジンの知り合いでもあるとわかった。

 

「カイト!?」

 

「知ってるの? ゴン」

 

「うん。ジンの弟子なんだって。ジンのこと教えてくれた人でさ、オレの恩人なんだ」

 

 うわあ偶然だね、じゃあ内緒で行って驚かせようよ、なんて盛り上がる。ちょっと演技くさかったかもしれない。

 

 カイトに電話すると運よく繋がった。いつもは奥地でキャンプ生活だけどちょうどデータのまとめに街にいるところだったらしい。

 「友達になったハンターと一緒に行くからまた手伝わせて」と言うと「歓迎するぜ」と言ってくれた。

 

 電話している私の横でゴンもキルアも悪戯っぽい笑顔を浮かべてピースサインをした。私も同じようにピースサインを送る。

 

 カキン国までの飛行船の乗船券を三枚ゲットして準備完了。あとはビスケを待つばかりだ。

 

 

 

 

 

 

「ビスケ!」

 

 人込みの中から茶髪のポニーテールがぴょこぴょこと見えて手を振った。

 

「こっちこっち!」

 

 キルアも手を振って声を張り上げる。

 

「お待たせ、みんな」

 

 4人でレストランに入って個室を取る。

 さっそくゴンからもらったバインダーを取り出した。

 

「きゃあー、これよ、これだわさ! 夢にまで見たブループラネットちゃん!」

 

 早速ゲインしたビスケが喜びの舞を踊る。

 

 “ハンターたるもの何かを狩らなければいけない”

 

 宝石ハンターのビスケにとっては、グリードアイランドのクリアよりも『ブループラネット』を手に入れたことのほうが何よりの狩りだったんだろう。

 

「エリカはこれどうするの?」

 

 ガーデンのことは内緒だから、世界を回って一番気に入った街に家を買い、そこに『一坪の密林』も置くつもりだと話す。

 

「一度ゲインさせちゃったらもう動かせないものね。ここぞ!って場所を見つけるまではこのままかな」

 

 もう1枚についても聞かれたけど、これは使う場所が決まってるんだと濁して話した。

 

 

 

 それからゲームの中での思い出を肴に賑やかに話す。

 すごく中身の濃い日々だったから、話は尽きない。

 

 修行の大変さ、できた時の嬉しさ、カード集めの途中あった面白かったこと。笑ったこと。レイザーとの対戦。ゲンスルー対決。

 

「あ、そうそう。ツェズゲラから伝言があったんだわさ。みんなの口座にそれぞれ10億ずつ振り込まれているから確かめてだって」

 

 『一坪の海岸線』の情報提供料は10パーセント。50億をゴレイヌと私達4人が分配してそれぞれ10億だ。

 ハンターライセンスと紐づけて開設した口座に直接振り込んでくれたらしい。

 

「うわっ、ほんとだ! すげえ。チョコロボ君が山ほど喰える」

 

 携帯でネットバンクを調べたキルアが声をあげる。10億ゼニー分もチョコロボ君食べちゃダメだよキルア。

 ビートルを取り出して私もチェック。ほんとに10億増えていた。

 

「別にいらなかったんだけど」

 

「何言ってんのさゴン。くれるものは貰っておけばいいんだわさ」

 

「そうだよ。これから旅してまわるんでしょ? いくら飛行船やホテルが無料だからってお金は必要だよ。カードは私が貰っちゃったからお金はゴン達で分けてもらおうと思ってたのに」

 

「もう! そういうのナシ。正当な取り分なんだからみんな自分で使いなさい! わかった?」

 

「わ、わかった」

 

 ビスケの強い言葉にみんな頷く。

 びしっと指を立てて言うからゴンとキルアが“凝”で指先を見ている。習慣ってすごい。気付いてまた笑いあった。

 

 

 

 

 

 

 

「ビスケ、いろいろありがとうございました。お世話になりました」

 

「うっす! ありがとうございました」

 

「おす! ありがとうございました」

 

 3人揃ってびしっと体育会系な礼をする。

 ビスケは目をうるうるさせて手を振って見送ってくれた。

 

 

 ビスケと別れるのはさみしい。

 

 ビスケはすごい師匠だったし、話のわかる大人だった。子供な私達と一緒にわいわい騒いでくれて、しかも締めるところはしっかり締めてた。

 原作通りキメラアント編のゴン達の修行に来るのかな? ならまたすぐ会えるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 飛行船でアイジエン大陸まで飛ぶ。

 教えてもらった宿泊先へ着くとカイトとダンが出迎えてくれた。

 

「よく来たなエリカ。ってお前……ゴンか!? おー、でっかくなったな。エリカの友達ってゴンだったのか!」

 

「カイト!」

 

 ゴンが満面の笑顔でカイトへ走り寄る。

 

 ダンもゴンとカイトが知り合いだったことに驚いていた。ダンからハンター同期の話がでてゴンのことがバレているかもと考えてたけどドッキリが成功して楽しい。

 

 その後キルアのことも紹介して、みんなで話をする。

 

 カイトの仲間のアマチュア達も集まってきた。

 

「おかえり、泣き虫エリカ!」

 

「ただいまスピン。って泣き虫じゃないもん」

 

「泣き虫じゃん。『帰りたくなーい』ってカイトのお腹に抱き着いて泣いてたじゃん」

 

「え、そんなことしたの、エリカ」

 

 ゴンがびっくりして私を見る。キルアなんて「ぷぷぷ」って揶揄う気満々な顔してる。

 

「してな……くないけど……」

 

 あう。改めて言われると恥ずかしい。18歳+11歳なのに。

 

「だってすごく楽しかったんだもん」

 

 恥ずかしくって俯いてそう呟くとカイトに頭をがしがし撫でられた。

 

「まあよく戻ってきたな。また手伝ってくれるか?」

 

「うん!」

 

 ダンにも揶揄われ、みんなにもみくちゃにされて真っ赤になっちゃった。

 久しぶりに会ったけどこうやって騒ぐとまた仲間に入れてくれたようで嬉しい。

 

 

 あらためてゴン、キルアを紹介する。

 

「ええ! フリークスってあの?」

 

「ゾル、ディック? まさかあの有名な暗殺一家の?」

 

 ジンの息子と暗殺一家の息子ってのはインパクトがあったみたいだ。うわあすごーいなんて明るく騒ぐみんなの声に、ああ去年もこんな感じで騒がしくて楽しかったなと思い出す。

 

 

 そのあとはみんなで新種の映像やデジカメ画像を見たり、どんな風に仕事を進めるか説明を聞いたりして過ごした。

 

 キャンプタイガーの映像なんてすごく面白かった。この世界は生き物が多様でほんと楽しい。

 ゴン達も新種を発見したくてすでにうずうずしている。

 

「じゃあ明日から頑張ろう」

 

「おー!!」

 

 

 

 また再びのカキン国での生物調査の仕事は楽しかった。

 

 この旅が終わればキメラアント編に突入だ。

 絶対カイトを助ける。ゴンをゴンさんにしない。そのために何ができるか。そればかりを考えながら、厳しい戦いの場へ向かうまでの残り少ない休息時間を精一杯楽しんで過ごした。

 

 

 

 

 

 

2000年 5月

 

 カキン国の仕事を終え、“サザンピースに奇妙な生物の一部が持ち込まれた”との情報を得る。

 

「こちらでございます」

 

 これが女王の腕か。漫画で見ていたけど大きい。実物を見るとその異様さが実感できる。青ざめて見つめる私をよそに、みんなはそれぞれの見地からいろいろと話し合っている。

 

 危険性を感じたカイトが一部を譲ってもらい、調べることに。

 リンやスティック達はもらったサンプルを解析したり、潮の流れを調べたりと忙しく動き出す。

 

 私達もカイトとともに海沿いの村々に聞き込みをしたり、ゴンの嗅覚で足取りを探したりした。

 そして分析の結果がでたリン達からその個体がキメラアントだと知らされた――

 

 

 

 

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