エリカ、転生。 作:gab
ノヴさんの“発”『四次元マンション』の能力はすごく便利だ。
安全な待機場所としても使えるし、マンション内を移動することで転移のかわりもできちゃう。
私のジャンプと同じであらかじめ設置してある場所へしか移動できない。
任意の場所に設置した「念陣」を入り口として、マンションの各部屋へ人や物を転送することが出来る。入り口と出口は別で、マンションから出るための出口はまた別に「念陣」を設置しなくてはいけない。
入り口用「念陣」と出口用「念陣」を別の場所に設置することで疑似的な転移能力になっているというわけ。
今回の作戦に必要なマンション出入口は――
宮殿敷地内の、できるだけ「玉座の間」に近い場所に「出口」を数ヶ所作る。その「出口」に繋がる「入り口」を、少し離れた宮殿の全景が見渡せる場所数ヶ所に作る。同じ場所に首都の「入り口」から繋がる「出口」を作る。
これで首都で集結したメンバーを当日一番都合のいい場所から宮殿へ送り出せるようになる。
その『少し離れた宮殿の全景が見渡せる場所』に、私のジャンプポイントがある。
ポイントを設置した影が消えて私の頭にその経験が流れ込んできた。
さっと見取り図を開き、ポイントを設置した場所を書き入れる。
「戻ってきました。この5ヶ所にポイント設置しています。後ろはともかく左右の四ヶ所は中央塔にじゅうぶんステップできます。
“円”の大きさは中央塔の3階を中心に、このくらいまででした。それから、この庭園に……」
と偵察してきた情報をノヴさん達に説明する。
「なるほど。ご苦労さまでした。いい判断です、エリカ。ここからステップで行けるなら無理に建物の中まで侵入する必要はありません。王の強さは我々とは一線を画します。博打は必要ありません」
「ええ。あとは深夜にどの程度灯りを点けているか、ですね」
「当日はおそらく煌々とつけているでしょう。500万人が移動するのに何時間もかかります。どうせ前日あたりから動かせるはずです。照明があればステップも余裕だと思いますよ」
それもそうか。なら深夜でも問題なく見えるよね。
これからノヴさんを連れていって念陣を描いてもらい、その後も数時間おきに偵察にでるつもりだ。その時に夜の状況も確認できるだろう。
「キルアからの連絡で、人間の時の記憶が戻ったキメラアントと仲間になったそうです。その二匹をあわせて、当日宮殿に乗り込むメンバーは12名。エリカとダブル2名の3人だけで移動させるのは時間がかかりすぎます。できれば庭園か、屋上の端にでも出口を置ければいいのですが」
12名かあ。
私は未だにちみっこいけど念能力者だから数トンくらい平気で持ち上げられる。
(ステップ・ジャンプ)は空間を跳ぶけど身体が動くわけじゃないし、持ち上げる仲間達も全員念能力者で身体能力に長けた者ばかりだ。
多少無茶な体勢でもお互い転移すると理解してさえいれば移動時に取りこぼす心配はない。
中国雑技団かよ、とかトーテムポールかよってツッコミたくなるような持ち上げ方でも抜群のバランス感覚でしっかり姿勢を保てちゃうのだ。
だから一人が3か4人持てばいいだけなら、何の問題もないよね。
ただ、マンションの出口もあれば万全だと思う。
マンションの出口は王に近い程良い。でも、見つかってしまえば意味がない。キメラアントに出待ちなんてされた日には、こちらの計画がすべて無駄になり、仲間達が危険にさらされる。
だから、屋上やベランダへ直接跳ぶのは私のステップで行き、それ以外のメンバーが庭園から建物に入るという形でいこうと決まった。
夕方、向こうの様子を見て安全を確認したあと、ノヴさんを抱き上げてもう一度跳んでいく。1,2,3,A,Bの岩山に「首都と繋がる出口」と「宮殿内出口に繋がる入り口」の念陣を描き入れる。
そして事前の打ち合わせ通り、庭園の正面玄関近くへ(ステップ)。
ここまで近づくと宮殿の中に強いオーラの持ち主がいることがわかる。
ビリビリと肌を刺す、強き者達の気配。
とてつもない緊張感と恐怖感だった。
そっと降ろしたノヴさんが念陣を描く間、周囲を窺う。
私は影だから死なない。それに捕まえても拷問に掛けられる前に消滅する。だけど、ノヴさんは別だ。彼が捕まれば、どれだけおぞましいやり方で情報を搾り取られるか。
だから絶対ノヴさんを連れて帰らなきゃいけない。
いつでもノヴさんを抱き上げられるよう身構えながら周囲を窺う。
ノヴさんのハンドサインをうけ、彼を抱き上げる。ここでジャンプの宣言の声を上げる愚は冒せない。外塀を見て(ステップ)。
塀に片手で取り付いて身体をぐっと持ち上げる。遠くの荒野を見て(ステップ)。
そして。
「ポイントCジャンプ」
私達は、次の瞬間、隠れ家にいた。
モラウさん、パーム、本体の出迎えを見て、ほっと息をつき、ノヴさんを降ろした。
決行日前日
分かれて行動していた仲間達が集まってきた。
みんなの無事な姿を見てほっとする。それぞれ大変だったらしいことはそのボロボロの服が語ってくれる。
キルアはどうやら無事イルミの針の呪縛から抜け出したようだ。憑き物が落ちたようにすっきりした表情を浮かべている。よかった。
それから仲間に加わったキメラアントのふたりも紹介してもらった。
カメレオンっぽい姿のメレオロンと、タコにしか見えないイカルゴ。
メレオロンは息を止めている間、姿も気配も完璧に隠すことができる“神の共犯者”と言う能力を持つ。それも触れている仲間も一緒にだ。
イカルゴは死体を操り、その死体が持つ能力すら使える。
どちらもすごく強い能力だ。そして二匹とも性格がいい。みんなすぐに彼らを仲間として受け入れた。
私の“お守り”はちゃんとみんなに渡してある。衝撃波、かますつもりだから。
討伐軍は12名。
モラウさん、ノヴさん、パーム、カイト、ダン、私ことエリカ。
シュート、ナックル、ゴン、キルア、メレオロン、イカルゴ。
強くて頼りがいのある仲間が揃った。
私達の目的は、護衛軍の足止め。
だけど、足止めだけではダメなのだ。彼らを生かしておくことはできない。
なぜなら……
「コルトの説明では、護衛軍にとって王は絶対。王の身を脅かす者とは決して相容れることはないでしょう。精神的にわかりあえたとしても、王の殺害が我々の使命である以上、対立は避けられません」
「仲間になってくれたキメラアントもいる。人の頃の記憶が戻ったキメラアントだっている。だけどよ……」
みんなの視線がメレオロンとイカルゴに集まる。彼らは深く頷いた。
「ああ。護衛軍にとっては王は絶対の存在なんだ。王を脅かす俺らは奴らにとって敵でしかない。友になるどころか、人の存続を許せるわけもない」
「殺すしかねえってことだな」
ノヴさんとパームは割とドライだけど、モラウさんやナックル、ゴン達は『できることなら助けたい』と思っている。
だけど。王を斃さなくてはいけないってのが大前提なら、一般兵はともかく、護衛軍とは決して相容れない。
そのことが理解できている彼らは、護衛軍と殺しあうしかないことを、呑み込むしかなかった。
護衛軍を斃すにあたってどう攻めるか。
王がいるのはおそらく中央塔の3階“玉座の間”だろう。私達の目標、護衛軍はおそらく王の傍。
私達侵入者が現れると、王を守って護衛軍はその近くに立ち、王に背を向けてこちらと対峙するはず。
その二匹をどうやって王から引き剥がすか。
私達は何度も話し合い、それぞれの能力を組み合わせた実験も重ねた。
たとえば。
メレオロンの“神の共犯者”で一緒に姿を消したナックルの“
“神の共犯者”中のモラウさんが出す煙は消えるのか、とか。
それぞれの技と連携のしやすさなどを考慮して、チームを決めていく。
ついでに、メレオロンをおんぶしたノヴさんを抱き上げた影が宮殿に行けば出口を増やしてこれるな、なんて話もした。
私のジャンプならマンションから自由に出られるし、首都経由でまたここへ戻ってこれるから、当日作戦直前の偵察時にどうしようもないほど位置がずれそうならこれも検討しよう、という話になった。
それから会長がゾルディックのお爺さんの龍でやってくるという話にも言及し、キルアが“
無数の小さな龍が空から降り注ぐらしい。ひとつひとつの龍が矢のように突き刺さってくるからみんな死ぬ気で避けろよ、がキルアのセリフだった。
先に知っていてよかった。わかっていれば上空からの攻撃に備えられる。
細かく連携を確かめつつ、臨機応変に対応できるよう、いろんな合図を取り決めたりしていると時間が刻々と過ぎていく。
建国記念大会前日午後2時
サイレンが鳴り響き、民衆に対し宮殿へ移動するよう命令する放送が流れた。
いったいどこに隠れていたのかと思うほどたくさんの人がぞろぞろと外へ出てくる。この数日狭い空間に押し込められていた人々は疲れた表情を浮かべて列に加わっていく。
途切れることのない行列は宮殿へ向けて移動を始めた。
外の様子を見てきた仲間達がそれぞれのタイミングでマンションへ集合する。
この部屋から出る「出口」は宮殿の周りの岩山に繋がっている。あとは、時間まで身体を休め、戦いに向けて準備をするだけだ。
『四次元マンション』の一室では“決行のその時”を待つ者達がいた。
それぞれ身体をほぐす者、座禅を組む者、壁にもたれて目を閉じている者、見取り図を睨みつけるように眺めている者、武器の手入れに余念がない者、それぞれ思い思いに、戦いに向けて心と身体を高めていた。
あと1時間となった時、偵察に出ていた影からの報告が私の中に戻ってきた。
「偵察戻ってきました。プフは橋から移動を始めた民衆の上を飛びながら鱗粉をまき散らしています。民衆は催眠状態で自由意志は見られません。宮殿の敷地より前で留められて整列しています。誘導している兵士は精神支配されています。
“円”の範囲は中央塔を囲んでいますので、王とユピーはおそらく玉座の間付近にいると思われます」
私の報告に、それぞれがどう動くか考察を始める。
誰が誰を相手取るかは既に決めているから、あとはどこから誰がでるかという相談だけだ。
ノヴさんの出口と、私、ビリカ、シリカのジャンプ、ステップでの移動。4方向から同時に動くことになる。
「10分前だ。行こう」
モラウさんの言葉に、みなが立ち上がる。出口をでると、左側から宮殿を見渡せる岩山の上だった。
ノヴさんと私以外は、見取り図は見ていたけど実際に目にするのは今が初めてだ。
“絶”で気配を殺し、草むらに身体を隠した皆が、じっと宮殿を見下ろす。
宮殿正面には自由意志もなくぼうっと立ち尽くす人々が列をなしている。その上を飛びながら鱗粉を飛ばすプフの姿も見える。
じっくり観察を済ませたものからマンションの「入り口」へ入っていく。あとは、決戦を待つのみだ。
「7分前だ。決行1分前にコールするから出口に集まってくれ。それまでは各々一番良い方法で待機」
モラウさんの言葉に、それぞれが動く。
とうとうこの時がきた。
側近がたった二匹しかいない彼らは手が足りない。一人が身の回りの世話と護衛についている間に、“選別”のための準備をすすめたり、諸外国からの横やりが入らないように国内外の調整をしている人間の動きにも目を配ったり、師団長クラスや兵隊長クラスの蟻へ指示したり、おそらく休む暇もないんじゃないかな。
王なんて絶対的存在は、きっと当然のように気難しくて扱いが難しいと思う。
原作で多彩な“発”を使って様々な作業をしていたピトーの不在は、確実に護衛軍二匹の負担になっているだろう。
それで奉仕が行き届かなければ王の機嫌が悪くなり、それを挽回しようとまたより一層忠義を尽くすため無理を重ねる。無理をすればまた綻びができて、王の機嫌はますます悪くなる。そしてまた無理をする。悪循環だ。
キメラアントの性質上、すでに王と師団長の間に厳密な主従関係はない。ちょっとした作業は頼めても、重要な任務は護衛軍二匹にしかできない。
きめ細やかな奉仕に重点を置けば、警戒や周囲の監視の目は行き届かなくなる。だけど“円”での警戒は止められない。
彼らの疲労も相当溜まっているはずだ。
こちらは原作ではここにいなかったカイト、ダン、私がいる。パームのキメラアント化(?)も防いだ。メンバーが増えているおかげで個人個人の負担も減った。
連日の任務で多少疲れてはいるけど、気力はじゅうぶん。
すでに原作とは大きく変わってきている。
そう。
私達が負けるなんて、もう、ありえない。
「突入1分前」
モラウさんの言葉に、みなが立ち上がる。
精神がビリッと研ぎ澄まされる。
扉の前に立つのはモラウさん、ダン、キルア、パーム。
彼らは正面玄関付近の「出口」から民衆の上を飛び回っているプフを狙う。
プフは催眠状態に陥らせる鱗粉を振りまくのでモラウさんの“監獄ロック”で煙に閉じ込め、念弾などの遠距離で削っていく。キルアの“
ビリカがメレオロンをおんぶしたナックルとシュートを抱き上げる。
彼らは左側から中庭にステップで跳び、中央塔1階から階段を上がって上を目指す。
シリカがカイト、ゴンを抱き上げる。
右側からステップで中央塔3階の窓を目指す。
ビリカ、シリカの運ぶメンバーが、王とユピーを分断させるため上下から同時に攻略するつもりだ。
ユピーは火力高めのカイト、ゴンが前衛を務め、シュートが遊撃、メレオロンの“神の共犯者”で身を隠したナックルの“
私はノヴさんとイカルゴを抱き上げる。私達は遊撃として左前からベランダへ跳び、“円”で周囲を確認後手の足りない方へ移動する予定だ。残っている師団長クラスも出てくるかもしれない。
イカルゴが操る死体は、マンション内に大量に残されたキメラアントの死骸からトンボ型の者を使うことになった。トンボを飛ばして偵察や捜索ができるから、遊撃に加わり、宮殿全体を監視してもらう。
0時0分0秒。
「腹くくれよ! ……GO!!」
私達は、同時に動いた。
戦いの描写はしません。原作のほうがずっとかっこよくて面白いからです。
ネテロvs王
全盛期の肉体+120年の技巧 vs 能力は高いけど経験値が圧倒的に少ない王
→ 漫画で見ていても、ネテロの技を王は躱せてません。技巧はネテロが上なんです。
全盛期まで若返れば、怪我はしてもネテロが勝ちます。
護衛軍戦
ノヴが折れていない、モラウが疲弊していない
カイト、ダン、エリカ、パームが参戦
パームが行方不明になっていないから精神的不安がない
ゴン、キルアの人間的成長は若干少な目だけど、精神的に元気
対する護衛軍は二匹だけ。原作より負担が多くて疲弊している
→ 余裕で勝ちます。むしろ囲んでタコ殴りです
原作のあのカッコイイ戦いはありませんので、描写なしです。
※原作での王が自分の腕を引きちぎるシーンはありました。が、護衛軍ではなく治療系能力を覚えさせた蟻の誰かが治しました。
ピトーの時のように“円”が消えるなどの変化がなく、エリカ達は誰も気付きませんでした。
王とコムギの最後のシーン。何回読んでも泣けますよね。
HUNTER×HUNTERで一番印象に残る名シーンだと思います。