エリカ、転生。   作:gab

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キメラアント編終了と世界の広さ

2000年 7月 12歳

 

 キメラアントとの戦いが終わった。

 

 ネテロ会長は王を斃し、私達討伐軍は護衛軍の2匹を斃した。

 東ゴルトー国民の被害も原作よりずっと少なかった。

 原作知識の最後を飾る、100点満点の原作改変だったと思う。

 

 

 

 

 決戦のあの日。

 

 ゾルディックのお爺さんの“龍星群(ドラゴンダイヴ)”の小龍が降り注ぐ中、私達はそれぞれの敵のいる場所へ向かった。

 

 誤算だったのは、“龍星群(ドラゴンダイヴ)”に撃たれて人間の女の子が重傷を負ったこと。

 彼女は王が大切に想う相手だったらしい。きっと原作で王と語り合いながら死んでいった子だと思う。

 

 治療を望む王に、『必ず治療し、その後の処遇も決して悪いようにはしない』とネテロ会長が誓い、彼女はノヴさんによって治療チームのもとに連れていかれた。

 

 

 その後の戦いについては語るほどのこともない。2匹しかいない敵に、こちらは12名もいた。精神支配を受けていた人間の兵士たちはシルヴィアで意識を失わせて保護し、その合間に襲い掛かってきた師団長の狼とザリガニも斃した。

 護衛軍を斃したあと、宮殿内に残った蟻の掃討と人間達の保護、催眠から覚めた民衆たちを誘導して首都へ帰す処理など、忙しく働くうちにネテロ会長が戻ってきて、王を斃したことを知り――

 

 

 

 東ゴルトーは悪辣な地下組織による危険な薬物を使った集団催眠によってもたらされたテロリストの侵略を受けていたと発表。

 

 原作と違って“貧者の薔薇”による大規模災害がなかったことと、党首以外の首脳陣が生き残ったことで国家としての体裁は保たれている。

 村々で起きた“選別”の被害者は50万人以上に及んだが、混乱はすぐに収まった。

 

 NGLは国際保安維持機構が暫定統治後、永世自然保護区に指定され、保護区の管轄責任のすべてはハンター協会に一任されることとなった。

 

 まあつまり、ハンター協会が大きな庭を手に入れたってことらしい。

 

 

 キメラアントとの戦いは政治的な問題にすり代わった。

 コルトやメレオロン達を含む投降したキメラアントは新種の魔獣ということで折り合いがついた。

 

 平穏を望む者は隔離された元NGLの僻地の村でその後を過ごすことになった。

 仲良くなったハンターと行動を共にする者や、数年間の監視付きで解放され人間だった頃に住んでいた場所に戻った者もいる。

 

 総数5000にも及ぶキメラアントの繭はハンター協会の飛行船によって研究チームの待つ保護施設へ運ばれた。

 繭はキメラアント化された元人間で、5000体すべてが念能力者だ。

 

 彼らの身体から王の影響力を取り除き、ネテロ会長の下、人に敵対しない新種の魔獣として生きられるかどうかは今後の研究チームの努力にかかっている。

 

 

 

 

 

 王と戦ったネテロ会長、ユピーと戦ったカイト、シュートがそれぞれ全治1ヶ月から数ヶ月の怪我で入院中。

 私を含む他のメンバーも多少の怪我を負っていたため、病院の一部を対策本部として借り入れ、入院中のメンバーの看病も兼ねてほとんど病院で過ごしていた。

 ノヴさんや会長の側近ビーンズさんの書類仕事を手伝ったり、もろもろ忙しくもある日々を過ごしていたある日。

 

 ネテロ会長が全員を呼び寄せた。

 改めて皆をねぎらい、健闘を称えあう。

 

 

 全盛期の身体を取り戻した会長は、若返ったことで大きく変わってしまった外見をまだ公表していない。

 

 東ゴルトーでのテロ組織との戦いで怪我をして、年齢を考慮しそのまま長期間の休養に入ると言うことになっている。今の姿を見たのは私達とそれから協会の側近達だけだ。

 

 このまま会長職を辞任したいと考えているらしい。

 

「若返りは人類の希望じゃしな。わしの姿を見て良からぬことを考える者も現れるじゃろうて」

 

 ああ、そうか。

 こんな有名人が若返ったら、そりゃあ話題になるか。

 グリードアイランドのカードだってことを公表するには念能力について説明しなきゃだし。ヤヤコシイことこの上ないね。

 

 王との対戦のことだけ考えていたけど、その後の混乱のことも予想して然るべきだった。

 

 申し訳ない、と思った私を会長はものすごく嬉しそうな笑顔で遮った。

 

「なんのなんの。おぬしには感謝しかないわい。貴重なものを、わしのために使ってくれたことを、もう一度礼を言おう。エリカ。ありがとう」

 

 若返ったことだけじゃない。

 キメラアントの王との血沸き肉躍る熱い闘いを全力でできたことが、自分にとって素晴らしく嬉しいことだったのだと彼は笑う。

 

 そして。

 

 名実ともに『人類最強』の身体を取り戻したことで、やり残したことに片を付ける、良い機会ができたのだと語った。

 

「わしの寿命がまた半世紀以上延びたことでの、暴走する奴がおるんじゃよ」

 

 息子じゃ。と、会長は乾いた笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 会長から聞いた話は、驚きの内容だった。

 どうやらこの世界はもっともっと広いらしい。

 

 私が知っている世界地図はほんの一部分で、しかも私達が海だと思っていたものは、大陸の中央にあるメビウスという名の巨大な湖なのだとか。

 

 外の世界には様々な異人類が存在していて魔獣も元々はそこから来たと言われている。

 私達が戦ったキメラアントも、その外側から来た外来種なのだそうだ。

 

 

 原作でそんなことを言ってたっけ? きっと私が死んでからの連載で明らかになったことなんだろう。

 

 え? 世界ってそんなに広いの?

 公表されている場所だけでも地球の世界地図と同じくらいの広さだったよね?

 自転とか公転とかどうなってんの?

 

「世界は、そんなに広いのかよ」

 

「すごい、すごいよ」

 

 キルアとゴンはキラキラと目を輝かせている。私もワクワクして、一緒にはしゃいでしまった。大人組は知っていたみたい。プロになればどこかの段階で知ることになるのかも。

 

 冒険だ、なんて興奮したけど、話はもっと深刻らしい。

 

 

 人類は広大な世界にある資源を求め、かつて幾度となく新大陸を目指して進出してきた。

 そして、そのたびに人類滅亡級の厄災を抱えて敗走してきた。

 外の世界は、それほど危険なのだ。

 

 そのため、近代5大陸、通称V5によって不可侵条約が締結されている。

 

「かつての調査団に専門家として同行したのがわしの息子ビヨンドじゃ。わしの忠告を聞かず未踏のルートを探検することに拘った結果、多大な犠牲者を出して戻ってきた。新たな厄災も抱えてな。息子は再挑戦を望んだがわしが死ぬまでは許可せぬ枷を与えた。

 そしてわしも協会の新大陸進出をタブーとしたのだ」

 

 なるほど。

 会長が死ぬまでは渡航ができない。

 会長は120歳を超えているから、息子さんはきっと思っていたはずだ。あと数年待てば、また新大陸への挑戦ができる。

 そしておそらく、その時のために水面下で準備をしていた。

 

 会長が死んだら、すぐに動けるように。

 

「そっか。会長、若返っちゃったから……」

 

 ゴンが生命力の塊のような会長を見て呟く。私も会長を見た。うん。半世紀どころか、もっと長生きしそう。

 そりゃあ息子さんも暴走する、かも?

 

 

「あやつはきっとワシの枷を打ち破って新大陸へと向かうじゃろう。

 おそらく何某かの大きな動きで暗黒大陸の存在を世界に知らしめ、どこかの国を巻き込んで、自分が主体となって渡航できるように動くだろう。

 

 わしは奴に先んじて大陸へ繰り出すつもりじゃ。そしてあやつを(ハント)する。奴の暴走で世界中のものが危険に曝される。それを断固阻止するつもりじゃ。

 そのうえでの。

 息子より先に、暗黒大陸探検を成功に導きたい。

 

 暗黒大陸より抱えた「厄災(リスク)」のいずれかを攻略し「希望(リターン)」を持ち帰る事。

 

 それがワシの、新たな挑戦じゃ」

 

 会長も公式には一度も渡航していないことになっているけど、過去に2回、暗黒大陸の地に行ってるんだとか。

 

 そして、その広さ、生き物の大きさ、自然の激しさを語ってくれた。

 

 話してもらった暗黒大陸の内容は、わくわくというより、おどろおどろしい情報の方が多かった。

 だけど。

 

 まったく。

 

 

 外の世界だなんて……すごく、すごく、見てみたい。

 

「挑戦を止めた時が人生の終わる時じゃ。わしはの、思いもかけず取り戻したこの『人類最強』の身体で、もう一度、挑戦を始めたいのじゃ」

 

 会長の言葉は、子供達だけじゃなく、カイトやモラウさん達大人も含め、部屋にいたすべてのハンターの心を揺さぶった。

 

「危険じゃ。途轍もなく危険じゃ。じゃが、新大陸進出が現実のものとなれば、ぬしらにも声をかけようと思うておる。

 かの地ではわしらは圧倒的弱者。生きること、生き延びることにこそ注力して、情報を、資源を、知識を持ち帰るのが我らの使命よ。

 各々の個性にあった役割が必ずある。必要なのは一歩踏み出す勇気のみじゃ。

 返事はまだ先でいい。よく考えてみてほしい」

 

「行く! オレ、行きたいっ」

 

 ゴンが叫ぶ。

 

「俺も」

 

 キルアかと思えば、ダンのほうが先に声を上げた。

 

 私は……私も、行ってみたい。

 だけど私の能力ではさくっと死んで終わりな気がする。

 

 あ、そうだ。これ確認しておかなきゃ。

 

「あの、会長。

 キメラアントの王との戦いで会長は死ぬはずでした。私はその未来を阻止した。だから、もう会長の未来は見えません。それでもついて行ってもいいですか?」

 

「ふむ。わしが生き残ったからこその暗黒大陸への船出じゃからの。あっちではエリカの予知はもう働かぬな」

 

「はい」

 

「わしは予知などハナから期待しておらんよ。未知を探求することこそハンターじゃ。それでこそ挑戦じゃよ、エリカ」

 

 会長のお誘いは私の予知を計算に入れていない。原作知識のない私でも、行っていいんだ。

 

 

 “厄災”なんて聞くとさ。ほんとは怖い。

 けど。行ってみたいという気持ちもある。

 

 だって私の知っている原作はここまでだもん。

 

 これからは、もう何のシナリオもない、まっさらな人生が始まるんだ。

 私が、エリカ・サロウフィールドが、やりたいことをやろう。

 

 なら。世界の広さを実感できるのって素晴らしいことじゃないかな。

 

 ……だめだめ。ちょっとハイになってる。

 

 世界の広さなんていうすごい事実を知ったところだから、ちょっと今、私らしくなく興奮してるみたい。

 超絶ハイリスクな旅だよ?

 キメラアントみたいなえげつないのがいっぱいいる世界。王がどれだけ怖かったか、ピトーがどれだけ強かったか……

 

 そんな簡単に『行きたい』なんて思っちゃだめだよ。

 返事はまだ先なんだし、ちょっと落ち着いてからじっくり考えよう。

 

 

 

 会長はこのまま会長職を辞任し、渡航準備を始めるらしい。

 新しい会長はハンター全員による投票になるらしい。みんなもちゃんと投票するんじゃよ、と言われた。

 

 

 

 

 

2000年 8月 12歳

 

 全ハンターによる投票がハンター協会本部ビルで行われた。

 

 上層部の人なんて知らないのに、誰に入れればいいのかめちゃくちゃ悩んだ。

 人柄を知っているノヴさんやモラウさんは、きっと会長と一緒に新大陸に繰り出すつもりだろうから投票されたら嫌がりそうだし。

 十二支んの真面目そうな女性、チードルさんにいれました。

 

 

 開票はすぐに行われ、条件不達成で再選挙となった。

 これ、長引きそう。ちょっとげんなりした。一緒に座っていたダンやゴン達も、他のハンター達も同じような表情を浮かべていたから、きっとみんな同じことを考えたんだろう。

 

 

 ところで。

 この投票のおかげで、ゴンがやっとジンに会えた。周りが騒ぎ立てる中、気恥ずかし気に頬を指先で掻きながら、ジンがゴンを連れて外へ出ていった。

 親子の語らいをできたらしい。

 

 

 その後、数日にわたり、何度も投票を繰り返すことになる。

 そのたびにハンター協会に足を運ぶことになった。

 

 

 

 

 

 

 何度目かの投票を終え、ハンター協会を出て歩きはじめるとふいに後ろから呼び止められた。

 

「やあ、エリカ嬢。君と話がしたかったんだ」

 

 振り向くとさわやかな笑顔を浮かべたイケメンが私の前に立っている。

 包帯をバンダナのように額に巻いた青年。癖のない黒髪は自然と下ろされていて、ラフな開襟シャツに黒い細身のパンツが彼にすごくよく似合っている。

 黒目がちな目が楽し気に煌めく。

 

 ……クロロ=ルシルフル。

 

 

 まじか。

 

 

 

 いきなり声をかけてきた初体面のイケメンさんは、さわやかに微笑み、親し気に語りかけてくる。

 

「あ、オレ、クロ。クロって呼んでよ。オレもエリカって呼ばせてもらっていいかな?」

 

 クロロだ。

 爽やか青年バージョンクロロ。原作ヨークシンシティ編でネオンの占いの能力を盗ろうと親し気に話しかけていた時とそっくりだ。

 

 うわあ、ずっと会わないように気を付けていたのに。ここでくるか、クロロ。

 もう除念は終わったのか。

 

 ああ、やばい。

 ロックオンされている。ジャンプやダブルを盗る気満々だ。

 

「あー、はい。エリカです。どうも」

 

 茫然とクロロを見つめながら機械的に挨拶の言葉を吐き出す。

 

「ってなんで私のことを知ってるんですか?」

 

「キメラアントに立ち向かったハンター達の中にいた少女の話を聞いてね。なんでも転移して危ない場所へ行ったり、分身を使ったり大活躍だったらしいじゃないか。一度話してみたいと思ってたんだ」

 

 ……嘘だな。

 確かにNGLや東ゴルドーでは自重なしにはっちゃけたけど、殲滅作戦中に出会ったハンターの前ではそんな能力見せてない。

 ミッションを一緒に戦った人達は、みんな信用できる人ばかり。人の能力を容易く漏らすような人はいない。

 

 じゃあどこで知った?

 

 ジャンプ・ステップはずいぶん前から人前で使っていたか。

 ハンター試験、グリードアイランドでの戦いでもいっぱい使った。

 

 うわあ。目立ちすぎたか。

 わざわざ団長さまが私の能力を盗りにここまでやってくるとは。

 

 等と考えていると、クロロがまた問いかけてきた。

 

「ねえ君。オレ達って前に会ったことない?」

 

 ……え? そんな使い古されたナンパ台詞で今どきころっといっちゃう女の子なんていないよ?

 

「え? ないです。クロさんみたいなイケメンのお兄さんに会ったら絶対覚えてますよ」

 

「そう? なんだか見覚えがある気がしてさ」

 

「貴方もハンターなんですか?」

 

 ハンター協会の前で話しかけられたんだから、こう思うのは当然かと思って質問してみた。私を張ってたんでしょ。とは言えないもん。

 

「うん、そうだよ。本がすごく好きでね。集めるのが趣味なんだ。ビブリオハンターとでも言おうかな。それで……」

 

 そこまで言うと自称クロさんなクロロは口を閉ざし、私の顔をまじまじとみた。

 さわやかイケメンの演技を忘れたようだ。ひやりとした空気が流れる。

 

「君の母親はルミナか?」

 

「っ!」

 

「やっぱりそうか。誰かに似ていると思ってたんだ。そうか……ルミナの子か。ルミナは今どこにいる?」

 

「母は私が6歳の時に死にました」

 

「……カインは?」

 

「えっと……」

 

「君の父さんだろ? ルミナの子ならカインが父親しかありえない」

 

「1歳の時に死にました」

 

「そうか……なにか、ご両親の持ち物はないかな?」

 

「あの、すみません。私、お父さんのことまったく覚えてなくて。クロロさんが何をおっしゃっているのか全然……っ!」

 

 彼の雰囲気がいきなり威圧を増した。

 そしてはっとする。クロとしか名乗ってなかったのに、私ったら今クロロさんって呼んじゃった!

 

「……ほう? 俺を知っているのか? 聞くことが増えたな」

 

 クロロの手がぶれる。っ! 速い! 咄嗟にステップで避け、その後ポップ、ステップでガーデンへ逃げ込んだ。

 

 今までポップする時間すら足りないと思ったのは初めてだ。

 

 ……超危険人物の前で、ステップを見せてしまった。

 

 

 

 

 倒れ込みたい気持ちを抑え、小窓から覗く。

 知覚はできなくてもクロロほどの能力者だ、視線を感じるかもしれない。クロロを直視しないよう注意しながら外を窺う。

 

 クロロは私が消えたことで目を見開き、そしてにやりと笑った。転移能力を見れてご満悦のようだ。

 そのまま携帯を取り出し、誰かと話しながらその場を立ち去っていく。

 

 

 

 お母さん、クロロと知り合いだったんだ。

 うわあ、ヤバい。

 

 ああ、そうか。流星街生まれだもんなあ。私を16で産んだから生きていれば今28?

 年齢的にクロロと同年代くらいか?

 

 

 もう!

 どうしようどうしようどうしようどうしよう。

 

 ……引きこもろう。買い出しやハンター協会へ行くのは影に任せて私はガーデンと隠れ家から動かないから!

 

 

 どうせこれからクロロ達もまた新しい仕事があるよね。

 クロロと対峙するくらいなら新大陸に逃げちゃう、とか?

 

 ああ、もしかして幻影旅団も新大陸を狙う? でも未開の地にクロロ達が欲しがる宝があるかどうか。

 でもヨークシンから1年近くだ。そろそろ大仕事をしてもいい頃だよね。

 

 私のことなんて、かかずりあってる暇はないよ。その間に興味が薄れてくれればいいんだけど。

 私の事なんて、クロロの優先順位の中ではかなり低い。よね? そうだよね?

 

 ああ、なんでクロロって名前だしちゃったかな私。

 ポンコツエリカ! おバカエリカ!

 

 

 

 

 ……超こわい。めっちゃこわい。ああああ、メリーさあん。

 怖かった。小窓を消すとやっと普通に息ができるような気がする。

 

 真っ青な顔をして帰ってきた私をメリーさんは心配そうに抱きしめてくれた。

 

「あーん。メリーさあん。怖かったよお」

 

 温かくて柔らかい毛皮に抱き着きながら半泣きで叫ぶと久方ぶりにメリーさんの膝に乗せられて抱きしめられた。

 ラルクも私の膝に乗って気遣うように寄り添ってくれる。

 

 はぁ。癒される。メリーさんとラルクは私のオアシス。

 精一杯メリーさんとラルクに癒されて、少し元気が出たところでお母さんへ葉書を書いた。

 

 

「お母さんへ

 

 幻影旅団のクロロに声をかけられました。知り合いですか?

 怖かったです」

 

 そこまで書いてふと気付く。幻影旅団の設立っていつだろう? お母さんがグリードアイランドに入る前かな? 後だったら幻影旅団って名前を知らないよね。

 

 そう考えて付け加える。

 

「クロロ=ルシルフルは流星街育ちのイケメンです。黒髪の、お母さんと同年代くらいの男性。

 幻影旅団っていうのは流星街育ちの者が集まって作った盗賊集団です。クロロはその団長です。

 知っていることを教えてください」

 

 葉書をテーブルの上に置いて、それから倉庫にあるグリードアイランドのカードを調べる。

 『縁切り鋏』は……ないか。

 

 あれがあればクロロの写真を手に入れて切り刻むんだけど、あれは持っていない。くそう。ゴンから全種類複製させてもらうんだった。

 

 

 漫画を読んだりアニメを見たりしていた時はさ、幻影旅団って結構好きだった。

 女性はみんな美女で性格も良くて、カッコイイ女だし、クロロ、シャルはイケメン。

 旅団員はみんな颯爽としてかっこいいし、仲間内にはいい奴だし、自分ができないようなワルをやってのけるのが気持ちいいし。

 法にも倫理にも縛られていない自由な感じに憧れすらした。

 

 だけど実際同じ世界に存在すると思うと、もう恐怖しか感じない。

 

 シャルナークのアンテナとかフェイタンの拷問好きとか、それが自分に向けられると思えばキメラアント並みにおぞましいし、パクノダの姿を見れば触れられたくなくて悲鳴を上げて逃げる。

 能力を欲しがりそうなクロロなんて疫病神にしか思えない。イケメン? そんなの関係ねえ!

 

 

 特にパクノダとクロロは要注意。

 ……パクノダはもう死んでるはず。だよね?

 原作知識や転生のことなんて知られることはないはず。

 

 能力を奪うために拷問されるのも嫌だ。

 

 

 あああああああ。なんでクロロに会っちゃうの。

 今まで会わずに済んでたのに。

 

 原作知識が終わったとたんこれだよ、もう。

 

 

 

 

 翌日、お母さんから返事が来ていた。

 

 

「エリカへ

 

 クロロはカインのことを怒っていると思うわ。

 見つかったら逃げなさい」

 

 

 えええええええええええ。何したの、お父さああああん。

 

 

 




感想ありがとうございます。個別に回答できずに申し訳ありません。


>キルアがお爺さんの念を知ったのはいつ?

 原作コミックス25巻で空から降り注ぐ光の矢を見て「ジイちゃんのドラゴンダイヴ!?」と言ってますので知っていることは確実です。
 念を知ってからキメラアント編までに知る機会があったのは、二度目のハンター試験を終えてミルキに注文していたヨーヨーを受け取りに一度家に帰った時しかありません。
 同じくコミックス25巻でキルアのお爺さんが中華を食べながらくつろいだ感じでネテロの強さについてとか、百式観音のことまでも話してます。聞き手の姿は描かれてませんが、くだけた様子や、他人の“発”という秘密について話すことなどから身内相手としか思えません。
 相手はキルアだと思います。(他の家族も一緒かどうかは不明)
 きっとその時に「じゃあジイちゃんのはどんなんだよ」「よし、ジイちゃんの技もみせてやろう」とか言ってそこで見せてもらったんじゃないでしょうか。


>チードゥ対ヒソカ、全く描写ないのにチードゥがドヤ顔速度自慢からの予め地面に張り付けられたバンジーガム踏んで殴りかかったヒソカの目の前で拳届かずビヨーンしたんだろうなってのが目に浮かぶ

 私もそんな感じのシーンを想像してヒソカ対チードゥにしました。
 きっととってもコミカルな絵柄のなか、残酷に殺されちゃったんでしょうね。


>若返ってもネテロは王に勝てない

 キメラアントの強さがどの程度かってのは皆さんいろんな意見があるでしょう。
 が、作者さまが明言していないので、想像するしかありません。

 キメラアントの王を斃せないくらいの実力で、暗黒大陸渡航2回をどうやって生き延びたの? って私は思いました。コミックスを見ると、あの巨大怪獣大戦みたいな場所に三人だけで立ってます。あそこまで行けるだけで絶対強いです。
なので『全盛期のネテロに120年の技巧があれば勝てる』という本編の結果になりました。


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