エリカ、転生。 作:gab
……死んでしまった。
ちくしょう。クロロめ。
まだまだ生きたかったのに。すごく中途半端なところで死んでしまった。
はああああ。
キメラアント編をやっとクリアしてこれからってところだったのに。
まだたったの12歳だよ。12歳。小学校卒業程度!
念能力者は長生きできるのに。120歳まで生きるつもりだったのに。
私の“音楽ハンター、エリカ・サロウフィールド”としての活動はぜんぶぜんぶこれからだったのに。シルヴィアだってまだ衝撃波ができるようになったくらいじゃん。
会長達と暗黒大陸、行きたかった。
めちゃくちゃ危険だし、私の技術では無理だったかもしれないけど。でも、あれこそホントの冒険だよ。
みんなのハンター魂がね、眩しかった。
どうなったのかなあ。
ってかきっとみんな心配しているよね。
もう……
私はため息をつき、周りを見回す。
懐かしき、といっていいものかどうか。そう。何もないこの部屋を。
「転生の部屋」だ。
パソコンに向かう。
**************
【転生の部屋】
被験者No:T028-035
個体名:柳原英里佳
通算:30年6ヶ月
初転 ▼
固有スキル:転移能力(ステップ・ジャンプ)▼
一転 『HUNTER×HUNTER』
個体名:エリカ・サロウフィールド
享年:12歳2ヶ月(通算:30年6ヶ月)
取得能力:念能力、『超一流ミュージシャン』の才能▼
特記:眷属
メリー(メイドパンダ)
ラルク(カメレオンキャット)
7人の働く小人
質疑応答を行いますか? Y / N
!attention!
《死亡時点の(ジャンプ)ポイントはすべてクリアされました》
《来世で初めてシークレットガーデンへ入る際は、(ポップ)(ステップ)でお入りください》
《協議の結果、グリードアイランドのアイテムのうち、いくつかは没収となりました》
《注意事項があります。詳しくは『質疑応答』にてお確かめください》
**************
初期画面が前に見た時と変わっている。
『▼』が何ヶ所かある。
『初転』の横の『▼』をクリックすると……ああ、詳細画面か。最初の転生時に見た情報がでてきた。(ステップ・ジャンプ)の横の▼は固有スキルの詳細。
『HUNTER×HUNTER』の取得能力の横にある『▼』をクリックすると、この世界で私が手に入れた能力や“発”の一覧とかその他技術についてとかがずらずらと書かれている。
下部の『!attention!』の文字がわかりやすく点滅している。
!attention!
《死亡時点の(ジャンプ)ポイントはすべてクリアされました》
《来世で初めてシークレットガーデンへ入る際は、(ポップ)(ステップ)でお入りください》
《協議の結果、グリードアイランドのアイテムのうち、いくつかは没収となりました》
《注意事項があります。詳しくは『質疑応答』にてお確かめください》
一つ目は、まあ、うん。
次生まれ変わってからハンター世界に行けたらダメだよね、さすがに。
でもみんなに会いたかったなあ。
ああ、お金がまだ残っていたのに。
手元にあるゼニーは他の世界じゃ紙屑だよ。我が家にはゼニーを支払って健康診断する『コインドック』があるけど、それだけで使い切れない程にある。
それに、口座に残ったお金はもうどうしようもない。
もっと買い物して物品にしておくんだった。
いろいろ買ったけどね。本とか楽器とか雑貨品とか食料とか。わりと山ほど買った。
でもきっと口座には数百億は残っていたはず。手元にあるお金も100億ほどあるんじゃないかな。
っと。まずはこれを聞かねば。
カタカタとキーボードを打つ。
「あの後みんな、どうなりましたか?」
《貴女と連絡が取れなくなり、それぞれ探していました。
ゴンとキルアが隠れ家を訪問して崩壊した家に血痕が残っていることを発見しました。パームに水晶で“見て”もらい、貴女の姿が見えないと回答を受けずいぶん憔悴していました。
亜空間に監禁されている可能性を考えたキルアが行方を探すためゾルディック家からアルカを連れ出そうとしてイルミと対立します。イルミはクロロ=ルシルフルの依頼でゾルディックの知る貴女の情報を売ったことと、クロロからは逃げたらしいが怪我をしていたためそのまま死んだ可能性が高いことを話します。
キルアはアルカを連れてそのままゾルディックから出奔、二人で旅を始めます。》
ああ、いっぱい心配かけちゃったよね……うう……ごめん、みんな。
「暗黒大陸には行ったんでしょうか」
《ネテロは暗黒大陸への渡航を決めました。貴女の知人だけ申し上げますとカイト、ダン、ゴン、ノヴ、モラウ、ナックル、シュート、パーム、メレオロン、イカルゴ、レオリオ、カイトの仲間のアマチュアハンター数人も同行します。》
そっか。暗黒大陸、行ったのか。いいなあ。新しい冒険だもんなあ。って、え?
「え? スピン達も行ったんですか? 念能力者じゃないのに大丈夫なんですか?」
《同行者には医師や薬剤師、科学者、古代文明の学者などもいます》
そっか。そりゃそうだ。
うん。私はリタイアしちゃったけど、応援しています。
「念空間はどうなっていますか?」
《現在は時間停止状態となっています。転生後は問題なく使用可能です。転生後、貴女の記憶が戻ってガーデンへ初めて入った時点で念空間の時間が動き始めます。》
「念空間にいるメイドパンダ達は無事ですか?」
《無事です》
よかった。
画面上に名前が書かれているから大丈夫だとは思ってたけど。
メリーさん達とまた会える。ちゃんと期待通りガーデンや家族を次の世界に持ち越せたことにほっと安堵のため息をつく。
「メイドパンダ達が眷属となっているんですが、これはどういうことですか?」
《貴女の能力によって生物を保持したまま転生しましたので、貴女の眷属と認識しました》
「これからの人生でも誰かを念空間に入れたまま転生すればその人はみんな私の眷属になるんですか?」
《概ねそのとおりです。ですが、貴女との間に眷属となるほどの信頼関係が構築されていなければなりません》
「その場合その人はどうなるんですか?」
《通常の死亡と同様に扱われます》
「えっと。つまりガーデンからいなくなって、輪廻の輪に戻るってことですか?」
《概ねそのとおりです》
「メリーさん達はこれからは念空間から外へ出してあげられますか?」
《問題ありません》
やった!
ずっと念空間から出せないのは、軟禁しているみたいで申し訳なかったんだ。
といっても直立歩行のパンダとか、カメレオンみたいな猫とか、目立ちすぎる。要注意だね。
来世の世界観によっては外をパンダが歩いても違和感のない世界もあるかもしれない。
もし駄目でも、家の中や人目のない山奥とか、そんな場所でなら出せる。
きっとラルクも嬉しがって走り回るだろう。メリーさんもうきうきな表情を見せてくれるかも。
うん。楽しみだ。
「彼らの寿命はどうなってますか?」
《メイドパンダ、カメレオンキャット、7人の働く小人は念獣ですので、基本的に設定された年齢に達すればその後は寿命も加齢もありません。怪我などを負えば死ぬことはあります》
戦いの場に連れていったりしなければずっと一緒に居られるってことかな?
それは嬉しい。
だってこれからもずっと一緒にいられるってことだもん。
「私が死ぬときにガーデンから出ていたらどうなりますか?」
《その世界に取り残されます》
おう。じゃあ念のため私が危険な時にはガーデンにいてもらうように気を付けなきゃ。
ん? でも、それじゃあ困らない?
「私の死亡時に外にいた眷属とは、もう二度と会えなくなるってことですか?」
メリーさん達は問題ないけどさ、これから行く世界によっては戦闘系の眷属とかできる可能性があるよね。私が死ぬときに仕舞いこまなきゃいけないのは困ることになりそうじゃない?
つまりさ。
例えばドラクエみたいな世界に行ったとしてさ。仲間になったモンスターと一緒に冒険してレベル上げて強くなったのに、ラストバトルはガーデンで待機ね、ってのはね。ちょっとどうかと思うんだよね。
あ、私が死ぬ時に装備している武器防具はどうなるの? それも持ち越せないなら、マジで、ラストバトルは眷属なし、武器防具なしの単独裸装甲で戦うことになる。
なにそれ、絶対死ぬ。
粘り強く交渉した結果。
・死亡時の所持品、装備品は倉庫へ収納される
・死亡時に前世の世界に取り残した眷属は、被験者との魂の繋がりが深く、互いに再会を深く望むのであれば、次の世界に眷属も生まれ変わることができる。縁があれば出会えるから頑張って探せ
と決まった。
世界によっては眷属召喚などの技術もあるからその手の能力を得るのもいいだろうと教えてもらった。
「念空間の中のもの、たとえば収穫した果物やお酒、グリードアイランドのアイテムなどを外に出すことはできますか?」
《問題ありません》
お! これは嬉しい。アイテムを持ち出せなきゃ使い道が限られちゃうもの。
「わかりました。ありがとうございます」
《他に質問はありますか?》
「えっと。次の生で、念で攻撃するとその相手も念に目覚めるんですか?」
《それはありません。各世界での能力はその世界に存在した者のみが保有できます》
「じゃあ相手を念で攻撃しても精孔が開いて殺してしまうってことはないんですね?」
《念に触れても相手の精孔が開くことはありません》
よかった。敵に念能力を芽生えさせちゃったりする危険はないんだ。
ちょっとほっとする。
殺しちゃうのも問題だけど、敵にこんなトンデモ能力を与えて強さ倍増とか、ほんと困るもんね。
《眷属となった者達も次の世界での能力が発現する可能性もあります。いろいろ試してみるといいでしょう》
「ほんとですか! ありがとうございます」
《次に、グリードアイランドのアイテムの件です》
「あ、attentionの『いくつかは没収』ってやつですね?」
《まず、〇〇の卵シリーズは効果が高いので、ひとつのみ有効とし、残りは没収となります。選択してください》
ううう。卵はめちゃくちゃ使えるから、頑張って全部複製させてもらってたのに……
くそお。しょうがない。
もうひとつだけなら、これしかないな。
「では、パイロットください」
《了解しました。『超一流パイロットの卵』のみ倉庫に残し、他の卵系カードは没収いたします》
パイロットの卵は期待できるよね。次の生でしっかり孵そう。
《生き物のカードは人型1枚、動物型1枚に限定します。それぞれ1枚だけお選びください》
集めたカードで棚ぼたみたいに眷属を増やすのがダメってことかな。うん。これもしかたない。
「金粉少女とシルバードッグを残してください」
《了解しました。金粉少女とシルバードッグを残し他のカードを没収します。転生後速やかにカードから実現化されることをお勧めします》
金粉少女は人間だから話し相手になる。それにガーデンに家族が増えればメリーさんもきっと喜ぶ。もちろん金策にも期待しています。
《他者の精神を操作するたぐいのもの、あまりにも有利になりすぎるものは管理者が面白くな……他の被験者に対し不平等となりますので却下されました》
面白くないって言いきればいいじゃん。手打ちなのに芸の細かいこと。
《取得済みのアイテムのうち、黄金天秤、スケルトンメガネ、もしもテレビ、リスキーダイス、コネクッション、移り気リモコン、レンタル秘密ビデオ店、真実の剣は没収いたします。
また、亡くなったご両親とのやり取りのために使っていた『死者への往復葉書』も使い方次第で容易に情報を集めることが可能ですので、申し訳ありませんがこれも没収となりますのでご了承ください》
レンタル秘密ビデオ店、すごくお役立ちだったのに。
往復葉書もだめ、なのか。死人に聞けるのはズルいか。うん。これはしょうがない。
うん……残念だけど……
お母さんやお父さんとやり取りしていたのに。
死んでからもずっと話ができるなんてずるいのか。うん。残念、あきらめよう。
他のアイテムは残してくれたんだから、良しとしよう。
《前回の世界ではあなた方被験者の能力値は非常に高く設定されていました。次以降はもっと低くなるとお考え下さい》
ちょっと説明がわからなかったから詳しく聞いた。
何度かやり取りしてわかったのが、こんな感じ。
最初の転生は死にやすいためある程度能力値に補正をかけていた。管理者もはじめての試みだったため、加減がわからなかったらしい。
私の場合だとオーラの成長率と“発”のメモリが多めに設定されていた。
特に私は母体にいる妊娠初期から6歳まで衣食住すべてを念で具現化されたもので賄ってきた。その後も常に念に触れていたため、念能力への親和性が高かった。
私の場合はメリットばっかりだったけど、そのせいで問題があった被験者もいたらしい。
“能力値をその世界のものの最高値同等程度”としたことで、NARUTOで別の里の有力者の家系に生まれた被験者が原作キャラに代わって人柱力になったり、リリカルなのはの世界で八神はやてより数週間先に生まれ、かつ、魔力値SSだったため“闇の書”の主となってしまった、とかもあったようだ。
人柱力になってしまった被験者は原作知識がなく、虐げられ隔離されていたことですっかり人間不信になっていて、あげく暁に殺されたらしい。
きっとその人って尾獣のことを知らないまま死んだんだね。原作知識があれば自分の中にいる尾獣へ語りかけて仲良くなることを考えると思う。そして協力して逃げればいいのだ。尾獣が眷属になって次の生にもついてきてくれるならすごく心強いのに。
“闇の書”の主は原作を知っているがゆえに、原作を忠実になぞろうとして闇の書に取り込まれた後、夢から覚めずそのままアルカンシェルの攻撃で消滅させられた。
彼は原作を知っていて内心ハーレム要員扱いしていたため、守護騎士達と信頼関係が結べておらず、眷属にはできなかった。
他にも能力の高さが目立ちすぎて抹殺されたなど。デメリットの多い人もいたみたいだ。
今回からは調整が入った。
能力値は抑えられた。といっても“十全に”というのはちゃんと有効だから他の人よりはじゅうぶん高い能力値になるが、そこそこ優秀程度の才能に収まるからあとは努力次第です。と言われた。
でもこれから私達って能力値が加算されていくんだよね? なら今後の転生でも人柱力になったり“闇の書”の主になったりする可能性だってあるんじゃない?
そう考えたけど、生まれた時に強制的にそういう役割になることはないよう設定を調整した、らしい。成長したあとでどうしても“闇の書”の主になりたければ本人がそのように動いて自力で勝ち取ることはできるらしい。強制成り代わりはないけど、自主的にキャラの立ち位置に成り代わるのはアリってことね。
一度目の転生で長生きできたものはほとんどおらず、だいたいみんな成人前に亡くなってしまったんだって。
能力値の高さのせいだけじゃなくて、固有スキルがバレて監禁されたり、捕まって解剖されたりって人もいたんだとか。怖え……
次は頑張ってくださいね、と言われた。
後、転生先はランダムだけど、どういうふうに決めているのかも聞いてみた。くじ引きというか、ガチャみたいなものらしい。抽選は基本的に3段階なのだそうだ。
1.転生先の世界選択
(選択肢から前回までの転生先を除いて、そこからランダム)
2.確定した世界での転生時期選択
(主要登場人物に関与できる年代のいずれかからランダム)
3.その世代における登場人物との関係性
(主要登場人物の家族、幼馴染などから全くの他人までランダム)
主人公と同年代だけじゃなくて、物語の根幹にかかわる出来事に干渉できる年代や、他の主要人物と接触できる年代に生まれることがある。
HUNTER×HUNTER世界を例にすると。
私はゴンと同年代に生まれた。
たとえばジン世代に生まれてジンと冒険するって可能性もあったし、クロロやイルミ、ヒソカと同年代に生まれて蜘蛛の立ち上げメンバーになったり、天空闘技場で君臨したりなんて生き方もあったかもしれない。
私はモブ家族に生まれたけど、ゴンの双子とか、キルアの兄弟とか、もしかしたらキメラアントの護衛軍の4匹目になってた可能性だってある。
そのほか、いろいろ説明を聞いた。
まあそのあたりも、のちのち必要に応じて説明しよう。今は情報量がいっぱいすぎて。
さてと。
次、だね。
「私の姿はどうなるんですか?」
《基本的な貴女の姿は前回のエリカ・サロウフィールドのものです。
それをもとに、転生先の両親の遺伝子的特徴を加味した姿で生まれてきます》
そっか。両親がどんな国籍の……ってかどんな人種になるかまだわからないわけだし。
世界観によってはエルフやドワーフなんて種族だってあるかもだもん。つまり前のエリカの外見プラス今後の両親の種族や姿の特徴ってことだ。
あんまり変わらないのならメリーさん達にあった時に彼女達が混乱しなくてすむかな。
知らない人扱いされたら死ねる。あ、転生するなんて説明してないからいきなり子供になっててびっくりするかも。
記憶が戻ったらガーデンの時間も進みはじめるって話だし、早くメリーさん達に会いたい。
《では、良い人生を》