エリカ、転生。   作:gab

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ハリー・ポッター
転生しました


 

 

 

 

 赤ちゃんの泣き声が聞こえる。

 うるさいぐらいギャン泣きしている……と思ったら自分だった。

 そう。

 わたしは、すごく、かなしいのだ。

 

 抱きしめてほしい。撫でてほしい。優しい声をかけて安心させてほしい。

 なのに。

 

 

「チッ、うるさいねぇ。ガキって泣いてばっかり。殺したくなる」

 

「しかたあるまい。赤ん坊は泣くものだ。おい、ロニー、なんとかしろ」

 

「かしこまりました、ご主人様」

 

 苛ついた女性の声と宥める男の声。そしてそれに応えるキーキー声。

 

 よくわからない。

 わからないから、私はいっそう泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうも。

 やっと記憶がはっきりしてきました。二回目の転生だね。

 エリカ3歳です。フルネームはまだ知らない。

 

 

 えっと。

 うちの両親は私に興味がなかったみたい。虐待はされてないけど、可愛がられてはいない。

 抱き上げてもらった記憶がない。

 

 

 そしてある日を境にぴたりと姿を見せなくなった。

 

 

 

 私のことは、ロニーが万全の態勢で世話をしてくれる。

 

 家中をピカピカに磨き、美味しい料理を作ってくれ、私が呼べばすぐに現れていろんな要望に応えてくれる。

 

 

 

 

 

 ――なんていうのかさ。

 

 前の生の時、記憶が戻ってからさ、最初に考えたのって「なんで私ってばパンダに世話されてんの?」だったんだけど、今回も言わせてもらおう。

 

 

 なんで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんで私ってば小人に世話されてんの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロニーの容姿をちょっと紹介しよう。

 

 成人男性の膝くらいまでしかない小さな身体。

 ガリガリに痩せた手足。

 コウモリの翼みたいな大きな耳。

 大きなぎょろ目と先の尖ったわし鼻。

 髪のない頭。

 甲高いキーキー声。

 清潔なキッチンタオルで身を包んでいる。

 

 うん。

 わたし知ってる。これ屋敷しもべ妖精だ。

 

 ああ、今回の生は、ハリー・ポッターの世界だ。

 屋敷しもべ妖精がいるんだから、きっと純血の家だね。

 

 わお。魔法の世界だよ。

 

 

 

 

 

 うん。

 

 ハリー・ポッター世界の生き方については後程考えるとして、記憶がはっきり戻った今は、まずメリーさん達に会いたい。

 

 

 今世はじめて使うのだけど、大丈夫だろうか。

 深く息をつき、心を落ち着ける。

 

(ポップ)

 

 心の中で強く願うと、視線の前の空間に小さな枠が開く。そこからガーデンの様子が見えた。

 

 よかった。

 (ステップ)と(ジャンプ)は管理者サマに貰った能力だけど、(ポップ)とガーデンは私が念能力の“発”でつくったものだ。

 

 こうして生まれ変わる前、あの白い部屋で、『記憶が戻る頃には、前世の能力が新しい身体に馴染むようになっています』と担当者サマの説明があった。

 今の私はすでに精孔のあいた念能力者なわけだ。

 

 “発”もちゃんと使えてほっとした。

 

「(ポイント1番登録“ホーム”)」

 

 小さな声でジャンプポイントを設置する。ここは私専用のプレイルームだ。あとで寝室に設置変えしてもいいけど、とりあえずここに設置。

 

 しもべ妖精の気配がないか、もう一度周りをうかがって――とはいっても彼らは姿を消せるからもしかしたら見られているかもしれないけど、いないことを願おう――そっと(ポップ・ステップ)でシークレットガーデンへと飛んだ。

 

 

 HUNTER×HUNTERの世界で最後に見た時と寸分変わらぬ景色……いや、惨状に眉を顰める。

 

 なぎ倒されて折れたパンダの像。何かが激しくぶつかったような割れた石畳。

 前世の死体はないようだ。

 血痕すら残さず消えてくれたんだろう。

 

 

 せっかくメリーさんが丹精込めて作ってくれた公園なのに。

 像は作り直しになるのかな。

 

 おっと。

 忘れていた。

 『影分身(ドッペルゲンガー)』で影をひとり出して、ホームへ戻ってもらう。影には私の代わりにおもちゃで遊んでおいてもらおう。

 

 

「(ポイント6番登録“ガーデン”)」

 

 これだけは永久固定の番号。6番にガーデンを登録した。よし。

 

 

 

「ん? ……あ。そうだった」

 

 中心地点にぽつんと置かれた怪しげな本。

 お父さんがクロロから奪った本だ。

 

 

 留め具も何もないのに開くことのできない、皮表紙の本。

 

 怪しい気配、と思っていたもの。今ならわかる。魔力だ。

 きっとこれは魔法で封をされている。

 

 魔法ならこれはハリー・ポッターの世界の本なんだろうか。

 表紙には金で描かれたドラゴン。

 このドラゴンに魔法的な何かをすれば本が開くのかも。

 

 杖を手に入れたら何か試してみよう。

 

 

 

 それまでどこにしまうか。

 

 ガーデンの中にあるものはみんなドラポケでいつでも取り出せる。

 でもさ。ドラポケは自分の所有物しか使えない。この本は、まだ私のものじゃない。

 

 今はどうしようもない。誰かが迂闊に触らないよう、私の寝室にでもしまっておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 公園を抜け、我が家へと向かう。早く家族に会いたいと焦る気持ちにまだ3歳の身体がついていかない。よたよたぽよぽよと頼りない足取りで、それでも急ぐ。

 

 三歳児にはノッカーもドアノブも届かない。精一杯手を伸ばして玄関扉を叩こうとした時。

 

「にゃ!!!」

 

 扉の猫ドアからすごい勢いで飛び出してきたラルクが私に飛びかかってきた。

 

 まだ修行もしていない小さな身体にその衝撃は大きかった。胸に飛び込むラルクを抱き留めかね、一緒になってごろごろと転がってしまう。

 

 ラルクがびっくりしている。

 あれ? 小さい? って戸惑っているのがわかる。

 

「ただいま! ラルク」

 

 精一杯抱きしめる。

 柔らかくて毛足の短い苔みたいなふわもこ毛皮に顔を埋める。はあ、落ち着く。

 

 そうしていると玄関が開き、メリーさんが走りよってきた。

 メリーさんも小さくなった私に驚いているようだ。

 

 

 今回の姿は前の“エリカ”とはちょっと違う。前よりもっと色白で、髪はゆるい巻き毛の黒髪。

 たぶん今生の両親の遺伝で、目が灰色で若干シャープな目鼻立ち。

 前も洋風美幼女だったけど、今回もとびっきりの洋風美幼女だ。ロニー達に着せられる服装からしてもすっごく貴族っぽい。

 

 だけどしっかり前のエリカの面影がある。

 メリーさんもラルクもちゃんと私を“エリカ”だってわかってくれた。

 

 

 メリーさんは何が起きて私が幼女に戻ったのか、心配でしかたないらしい。具合が悪くないか、どこか辛くないかと真剣な表情で(パンダだけど)身体を触ってみている。

 

 久しぶりに無条件に与えられる愛情にふれて、胸がきゅっと苦しくなる。

 

「あいたかった。メリーさん、ラルク」

 

 ぎゅっと抱き着いた。

 

 しばらく再会を喜んで抱き合ってから、屋敷に入るとリビングのソファによじ登る。

 いつもの席に座ると「帰ってきた」と実感できた。うん。おうち最高。

 

 

「あらためて。久しぶりメリーさん、ラルク。しんぱいかけてごめんね。また会えて、ホントによかった」

 

 ラルクを胸に抱き、メリーさんにそっと抱き着く。

 しわ一つないエプロン姿のパンダ。私よりも高い体温に包まれて、帰ってきたと実感する。

 ああ、しあわせだあ。

 

 

 小さくなった私に母性本能をぎゅんぎゅん刺激させられたのか、メリーさんがめちゃくちゃ過保護だ。

 

 膝に乗せてあーんでお菓子を食べさせようとする。

 

 

 そういえば3歳の頃はこうだったかもしれない。

 あれ? じゃあ私って同じ3歳なのに今回の方がちょっと精神的にも大人かも。これも成長?

 

「メリーさん、エリカ赤ちゃんじゃないよ」

 

 って言ったけど、胸に抱きしめられて背中をぽんぽんされたら、あ、もうだめ。

 なんという安心感。

 

 身体が溶けてしまいそうな安らぎに、たっぷり注がれる愛情に、この腕の中は世界中のどこよりも安全だと思える。

 幸せすぎて泣きだしてしまった。

 

 今なら私に無関心な両親のことも許せる気がする。……いや、うそ。許せないな、やっぱり。

 うん。さみしかったんだ。

 すっごく。

 

 ――さみし、かったんだ。

 

 さすが3歳。“さみしい”と感じたとたん、制御できない感情が高まってギャン泣きした私をメリーさんはいっぱい甘やかしてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し落ち着いて、お互いの状況を話す。

 

 メリーさんは傍にいた私の影が突然消えて(おそらく私が死んだ瞬間)、驚いたと思ったらふっと眠けが襲ってきてソファに倒れ込んだらしく、気が付いたのが今だったのだそうだ。

 急に意識が戻って、私がいないし、何かあったのかもと心配していたのだとメリーさんが言葉を話せないかわりに身振り手振りで説明してくれた。

 

 

 いきなり三歳児に戻ったのは、別に病気や呪いじゃなくて、新しく生まれ変わったのだと説明した。

 “生まれ変わった”なんて話、メリーさんはすごく驚いた。

 前世ではそんな話はしなかったもの。

 

 これから何度も私が生まれかわること。それから、生まれる世界はまた違う世界なのだと説明する。

 まだ幼い口が上手に言葉を紡げないのが悔しい。

 

「だからまた3さいからはじめるから。こんどは長生きしたいなあ」

 

 メリーさんは「不思議な話ね」とばかりに首を傾げている。ラルクはよくわかっていないみたい。

 

「でね、これからはメリーさんもラルクも外に出られるようになったの」

 

 本来ならグリードアイランドの中でしか生きられないはずの二人。ガーデンを疑似グリードアイランドとすることで誤魔化していたわけだ。

 メリーさん達は私の眷属となったため、今後は外に出ても存在していられることになった。

 

 だけど、二人とも今度の世界でもちょっと目立つから、やはりかくれていなくちゃいけない。

 また不自由をかけるけど、ごめんね、と話すとメリーさんは「心配しなくていいんですよ」とばかりに優しく首を振る。

 

 

 そして、この世界には魔法があるのだと言うと、メリーさんは両手を頬にあてて驚いたしぐさを見せる。いつもながら可愛らしい。癒される。

 

 メリーさん達にも魔法が使える可能性があると言えば、目を輝かせて喜んだ。かわいい。

 

 ハリー・ポッター世界の魔法は生活に根差した魔法が多いからメリーさんも覚えたらすごく便利かも、とどんな呪文があるか説明する。

 

 まず、料理や掃除洗濯に使える魔法が多い。

 魔法薬を作るためのものだけど料理にも流用できる内容が多いからだ。鍋をかき回す呪文や煮込む時間を短縮する呪文、服を洗ったり水分を飛ばす呪文、同じ形に洗濯物を畳む呪文、埃を集める呪文、綺麗に汚れを落とす呪文などなど。

 

 話すとすごくやる気になったようだ。

 私が杖を手に入れれば、メリーさんも一度試してみようね、と話す。もし使えるようなら一緒に修行したいとかなりの前のめりな感じ。

 うんうん。魔法、楽しそうだよね。

 

 

 

「あ、そうだった」

 

 金粉少女とシルバードッグをゲインしておこう。

 

 担当者サマに仲間にしていいってお許しを貰ったんだから早めに出しておきたい。

 ガーデンに家族が増えるのは大歓迎だし、どうせなら一刻も早くゲインさせて、ちゃんと友達になりたい。

 

 それに彼女達の出してくれる金粉と銀塊は、私の糧になる。

 

 『金粉少女』は1日1回の入浴で約500gの金粉が採れ、『シルバードッグ』は1日5gの金をドッグフードに混ぜて与えると、1kgの銀糞を出す。

 

 私の今の状況がよくわからないから、お金があるに越したことはない。魔法の道具類はめちゃくちゃ高価なものが多い。先立つものはいくらでも必要なのだよ。

 それに金銀はどの世界に行っても通用するだろう。

 

 

 (ドラポケ)で一枚のカードを取り出す。グリードアイランドの指定ポケットカード『金粉少女』のカードだ。

 

「『金粉少女 ゲイン』」

 

 唱えるとカードが煙に包まれて消え、金粉がふわりと飛んだ。

 キラキラと舞う金粉エフェクトのなか、一人の少女が立つ。

 16,7歳くらいかな?

 髪は頭の左右でお団子にまとめていて、パンツスタイルのチャイナ服を着ている。

 

 うん。可愛い。

 

「はじめまして。わたしはエリカ。こっちはメイドパンダのメリーさんで、カメレオンキャットのラルク。わたしたちの家族になってください。これからよろしくね」

 

「はじめまして。よろしく、マスター。メリーさんもラルクもよろしくね」

 

 中国語だったらどうしようとちらっと思ったんだけど、日本語だった。私のことは「エリカ」でいいと言ったんだけど、そこは譲れないらしい。

 

 あ、そうだ。

 ここはイギリスで、私は家では英語をしゃべっている。3歳だからカタコトだけど、これからは英語の練習もしなきゃだ。

 私とは日本語で会話ができるけど、魔法を覚えようと思うなら英語の習得が必要になってくるものね。

 

 なんて頭の隅で考えつつ、話を続ける。

 

 

 

「えっと。あなたのなまえ、だね。『小雪』ってどうかな?」

 

 さっき、カードをアイテム化した時のエフェクトで、金粉がふわりと飛んだ。

 それが粉雪が舞うように綺麗に見えたから。

 

 フランス語の雪で「ネージュ」とか、チャイナ風だから「シュエ」のほうが良かったかなと思いつつ、やっぱり最初に思いついたのがこれだから、『小雪』で。

 見るからに東洋系の顔立ちなのだから、日本名でも違和感ないよね。

 

 そんなことを幼い舌足らずな口調で一生懸命説明すると、ふふふと笑って、「小雪、いい名前ね、ありがとう」ってはにかむしぐさが可愛らしい。

 仲良くできそうで嬉しい。

 

 

 それから、もう一枚。

 

「『シルバードッグ ゲイン』」

 

 現れたのは、毛足の長い犬。全身の毛が真っ白……ううん、すごく綺麗な銀色。

 って、この子もラルクと一緒でまだ子供だね。

 ふくふくもこもこしてて可愛い。

 

「かわいい! わんちゃん! よろしくね」

 

 

 もしかしたら愛玩系の動物は子供の姿でアイテム化されるのかも。

 だって育てるなら子供の頃から一緒にいたいもの。

 

 メイドパンダは子育てや家事という仕事を頼むためにアイテム化するわけだし、金粉少女は種族自体が“少女”だからこの姿がデフォルトなのかな。

 担当者サマも『設定された年齢に達すればその後は寿命も加齢もない』と言ってたから、小雪はこのまま、シルバードッグは成犬になったら成長が止まるってことかな。

 

 可愛いなあ。ふくふく毛玉みたいだけど、脚が太い。この子、大きくなるかも。

 ピレニーズくらいになる?

 ふふっ、楽しみだね。

 

 ってかこの綺麗な光沢のある白銀色は貝殻みたいだなあ。マベパール? シェル? パールもいい。

 あ、でもシェルにしたら、ラルクと一緒でらるく&しぇる→ラルクアンシエルだ。ってこんなダジャレでもうしわけないけど。

 

「なまえはシェル、ね。どう?」

 

 嬉し気にソファに乗り上げぺろぺろ舐めてくるわんちゃんをわしわしと撫でる。3歳児の私と顔の大きさがほとんど変わらない。うきゃあってはしゃぐとラルクまで参戦してきた。

 ちょっ、待って。ころがるからあ。

 

 

 

 くんずほぐれつ、三人で遊びました。

 楽しかったです、はい。

 

 

 というわけで。

 メリーさんがお母さん、家主で長女な私(3歳児)、長男ラルク、次女小雪、次男のシェル。

 我が家が5人になりました。あ、小人さん7人もいるね。

 

 メリーさんの仕事が増えて申し訳ないけど、大家族楽しくてしあわせ。

 大きくなったらお手伝いするから、ね。

 

 

 




ご意見、ご感想ありがとうございます。
誤字報告もありがとうございます。間違い多くてすみません。

新しい世界は『ハリー・ポッター』です。やっとクロスオーバーのタグが仕事します。
読んでくださると嬉しいです。
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