エリカ、転生。 作:gab
1984年 5月20日 誕生日 4歳
今世の誕生日は5月20日らしい。無事4歳になりました。
マルフォイ家で祝ってくれました。ドラコ可愛い。
もちろんガーデンでもパーティした。ガーデンでは前世と同じように、私の誕生日がみんなの誕生日ということで、全員同じ日に祝うことにしている。
ロニーに読み聞かせをしてもらって、英語を読めるようになった。
魔法界の絵本はマグルのものとは違う。
絵はもちろん動くし、文字だって時々うねうね動く。
『シンデレラ』や『白雪姫』じゃなくて『ぺちゃくちゃウサちゃんとぺちゃくちゃ切り株』や『魔法使いとポンポン飛ぶポット』。
最初に覚える“世界”がこれなのだ。マグルと分かり合うのって難しいんだろうなってしみじみ思う。
とにかく、これでおおやけに英語が読めるようになったから、これからはどんどん絵本を読んで知識を蓄えていかなくてはね。
影にレストレンジの家を任せ、私はもっぱらガーデンで身体を動かしたり音楽を聴いたり演奏したりして過ごしている。
絵本や辞書、簡単なおとぎ話などを影数体と一緒に読み、文字を書き、一時間ごとに分体を吸収して、各自が習得した知識を本体に溜め込んでからまた分身して、と、小まめな技を駆使して勉強すると、理解度が違う。
『超一流パイロットの卵』は今も毎日欠かさず3時間温めている。
たぶん、順調だと思う。でもまだ身体が子供すぎてさ、3時間座っているうちに眠っちゃったりするから、やっぱり前回くらい時間がかかるかもしれない。
『超一流ミュージシャン』の時に実感したのだけれど、これはイメージ次第ですんごく化ける能力だ。
その中でもパイロットってミュージシャンと同じように幅の広い言葉だと思う。
パイロットと言われると一般的には飛行機の操縦士のことを連想するよね。
飛行機も、飛行船も、ジェット機も、戦闘機も、セスナ機も、ヘリコプターも、ロケットや宇宙船も、全部パイロットだ。
ね。私、文明が進んだ世界に行ったら宇宙船の操縦もできちゃうよ? すごくない?
そのままイメージを広げると、空を飛ぶものならなんでも操作できそう。
もちろん箒だって上手になるはず。クィディッチの選手も夢じゃない。
ちょっと強引に言えば、ドラゴンライダーもパイロット。(いや、大丈夫。念はイメージ)
それにもっと広げて考えてみよう。
そもそも、パイロットの語源は“水先人、水先案内人”のことだ。
もともとは船の先頭に立って、行く先を指示していたもの。
水先案内人なら海の乗り物もOK。船もボートも潜水艦もいける。はず。
そこから広がって。
水先案内人と言えば“初めての場所、よく分からない場所を先頭に立って導いてくれる存在”のこととなった。
「よく分からない場所を導いてくれる存在」なのだから、リーダーとか指導者、案内人、冒険者ということもできるだろう。
パイロット=乗るものを操る者、と定義するなら、乗馬も馬車や車の運転も行ける気がする。
過大評価、拡大評価ばっちこいだ。
強く念ずれば、その想いに応えて、可能性を広げてくれる。それが『◎◎の卵』シリーズだと思う。
イメージを思い浮かべることは、前世のある私には容易い。映像や画像でたくさん見ているのだから。
コックピットから眺める空。地平線を染めて色づく夜明けの空。
宇宙から眺める青い地球。
風を切って飛ぶ爽快さ。
ハリー・ポッター世界の映画で箒に乗ったハリーの映像は英里佳時代に何度も見た。途轍もない速さで空を縦横無尽に飛び回る楽しさや、スニッチを追いかけて地面すれすれで掴んだあの箒捌きも。すべて覚えている。
夢想するやり方は前回でよくわかっている。卵が孵るその時を楽しみに、今日も3時間の瞑想を続ける。
我が家に家族が増えたことで、2階の四部屋のうち、もともとお母さんが使っていた部屋を小雪の部屋に改装した。メリーさんが小雪の好みに合わせて内装を変えてくれていた。
壁紙やカーテンもいろいろ買ってて良かった。
『金粉少女は非常に内気でずっと家から出ない』
グリードアイランドの金粉少女のカードに書かれていた言葉だ。
もしかしたら小雪って個室から全然出てこなくなるんじゃないかとこっそり心配してたんだけど、全然そんなことなかった。
小雪は内気ではない。明るくて元気だ。いや、もしかしたら内弁慶で、他人と会えばシャイなのかもしれないけど、我が家ではとても元気だ。
そして家から出ないというよりは、オタク気質だった。
まず本やDVDにとても興味を持った。
放っておくと図書館の視聴覚室でずっと過ごすくらい。メリーさんに長い爪で頭をツンツンとつつかれて説教されていた。「夜は寝なさい」って。
メリーさんにしても小雪にしても、ラルクやシェルも、ほんとにしっかり個性があるな、って思う。グリードアイランドのアイテムってホントに凄い。
んで、そのオタク気質な小雪は、今の世界の元となった本『ハリー・ポッターシリーズ』に大ハマりした。
おかげで私と一緒にいろいろ考察したり、情報の書き出しをしてくれるようになったのがありがたい。違う視点で指摘してくれる相手ができたのは本当に幸運だった。
私もまた1巻からしっかり読みかえした。そりゃあしっかり読み込んだよ。
これは私の生命線だもの。
んで!
気付いた。クロロ=ルシルフルからお父さんが奪ったあの本。
あれ、あれ、きっと日記だ。手記っての? きっとそれ。
表紙に描かれたドラゴンの下、文字が書かれていたのだ。《R・A・B》と。
なぜかドラゴンしか意識しなかったけど、今はわかる。
どこかで見たと思っていたのだ。原作読んでやっと思い出した。
レギュラスだよ、レギュラス。
レギュラス・アークタルス・ブラックだ。シリウス・ブラックの弟。
“スリザリンのロケット”をすり替えて死んだ悲劇の青年。ついでに言うと私の母親の従姉弟。
きっと分霊箱がなんちゃらとか、シリウスがなんちゃらとか、遺書めいたものが書いてあるはず!
まあ誰のものかわかっても、まだ表紙は開かないんだけどね。
今度シグナスおじい様に本家にも行ってみたいとおねだりしてみよう。クリーチャーに見せれば日記の開き方もわかるかもしれないもの。
1985年 5月 5歳
朝ご飯の糖蜜パイにフォークをさした瞬間、先ぶれの梟もなしに、いきなり暖炉からルシウス叔父様が現れた。慌ただしくシシー叔母様も続いて入ってくる。
「エリカ、招かれざる客だ。もうすぐ魔法省の奴らがくる」
ふえっ?!
どうやら魔法省が抜き打ちの立ち入り調査を仕掛けに来るらしい。抜き打ちなのになんで知ってるかというと、マルフォイ家のお耳の長さしゅごい、としか言いようがない。
我が家はあの狂信凶悪残酷夫婦の屋敷であるからして、おそらくそう言った闇系の魔道具やら呪いのなんちゃらやらの闇の物品がいっぱいあるであろう。と思われる。
お父様やお母様の部屋は魔法的なあれこれでガードされてて私では開けられないからどんなおぞましいものがあるかは知らない。
けど、絶対あるよね。あいつらなら。
うちの夫婦は“お辞儀様こそ至高。いろいろやってるけどなんら恥じることはないぜ”ってな宣言かましてアズカバン行きしてるから別にそういうものが見つかってもあまり問題はない。
これ以上罪状が増えても構わないもの。むしろさっさとディメンターのキス受けちゃえってこっそり思ってます。
でも没収されるのは気に入らないし、罰金とか言われてうちの資産を減らされるのも業腹だ。
我がレストレンジ家は旧家で屋敷の守りも強固だ。やろうと思えば魔法省の奴らなどに踏み込めるものではない。
だけど、まっこうから現政府と戦うわけにはいかない。あくまでもロドルファスとベラトリックスのレストレンジ夫妻が死喰い人なだけで、レストレンジ家自体(と後見人であるマルフォイ家)は善良な貴族家だと表面上は示しているから。
なので、魔法省からの正式な立ち入り検査の要請を断ることができないんだよね。
それに、後見人のマルフォイ家にまで飛び火して彼らの
ってわけで朝っぱらから叔父様みずから飛んできてくださったってわけ。
「ロニー! エリカの支度を」
5歳児エリカたんにできることはないし、私の部屋に危ない魔道具はないから、私は他人が来てもいい格好にお着換えして待ってるだけ。
ただ、レストレンジ家の者が立ち会う必要があるからここに座っているのだ。
叔父様はあわただしく二階の夫婦の部屋へと向かった。
きっと危ない道具をどうにか持ち出してくれるんだろう。ノクターン横丁に持っていってお金にして私のお小遣いとして返してくれないかな。……無理か。
9時。
ドアベルがうるさいほど連打され、礼儀知らずの客へぶちぶちと文句を言いながらロニーがドアを開ける。
どやどやと10人近くの厳つい魔法使いが入ってきた。
「魔法省魔法法務執行部魔法警察部隊ならびに闇祓い局の者だ。闇の物品の所持の疑いでレストレンジ家の立ち入り調査を行う!」
居丈高に宣言する言葉を、待ち構えていたルシウス叔父さまは冷たい視線で吐き捨てる。
「まったく、屋敷の主の許しもえず、ずかずかと入り込むとは。少しは礼儀を思い出してみればどうかね」
ルシウス叔父様の言葉を鼻をならすことであしらい、奴らは一斉に屋敷を調べ始めた。
主戦力の人達はわき目も降らずレストレンジ夫婦の部屋に向かったようだ。
あとに残ったのは人数あわせなのか、嫌がらせなのか、立ち入り調査というにはお粗末な調査をする奴ら。
急に大声をだしたり、わざわざ5歳児のそばに近付いて恫喝してみたり、無意味に何の変哲もないテーブルを壊したり。
レストレンジは嫌われている。
あの第一次魔法戦争ではそりゃあたくさんの人を傷つけたんだと思う。殺した人も拷問した人も数多く。
運よく生き残れた人や、被害者の家族、友人達にはきっと恨まれている。
今でもベラトリックス・レストレンジとロドルファス・レストレンジにあえば取り敢えずクルーシオしてみたいという人はいっぱいいるはず。
ここで親の仇とでもいうようにあちこちを睨みつけながら壁紙を切り裂いてるおじさんも、きっとそんな人のひとりなんだろう。
私は居間でシシー叔母様に抱きしめられてずっと座っていた。
あの夫婦には愛情の欠片もないけど、私の住む屋敷を赤の他人に荒らされるのはすごく腹がたつ。
どいつもこいつも正当な職務だということを免罪符に、悪を成敗している自分に酔っている。内側に嗜虐的な気持ちがあるのを正義の名で覆い隠して。
当たり前のように正義を振りかざし、こいつらは極悪人だから多少行き過ぎたことをやっても許されると思っている。
むしろ罰してやるオレ達すげえって感じだ。
悔しい。
私に見せつけるように目の前で豪奢な置時計を引き倒された時には怒りのあまり魔力暴走が起きそうになった。
「何をするんです! 子供の前で!」
「腐れ蛇の子はみんな腐れ蛇だ。こいつも拷問好きの母親に似るだろうさ」
お気に入りだった置時計は見るも無残に破壊された。
きっとこれも闇の物品に違いないとばかりに執拗にばらけた部品ひとつひとつに『スペシアリス・レベリオ(化けの皮 剥がれよ)』をかける男の目は妄執に満ちていて、すごく気持ち悪くて怖かった。
シシー叔母様はずっと私をしっかり抱きしめていてくれた。
魔法って便利だね。
基本的な道具は『レパロ(直れ)』で修繕できた。
しもべ妖精の使う呪文は人のものよりもっと高度だから、奴らの帰ったあと、荒れ放題だった屋敷はすぐに綺麗に元通りになった。
それでも繊細な魔法具のいくつかが修理の必要があったし、ワインボトルが割れてセラーの床にぶちまかれた中身はすべて無駄になった。
私のお気に入りの置時計も部品が足りずに動かなくなった。ほんと、ムカつく。
ルシウス叔父様のおかげで没収されたものはなかったらしい。実入りのなかった彼らは非常に不満げに出ていった。
これが、正義だ。
これが、レストレンジ家の娘である私の、世間一般からの目だ。
私は、一生、こんな風に後ろ指を指されて生きていくことになるんだ。
……まったく、馬鹿にしてる。
今日はメリーさんと一緒に寝たいなあ、なんてぼんやり考えながら、唇をかみしめていた。
屋敷にじっとしていると鬱屈するだろうと、その日はマルフォイ邸で過ごした。
叔父様も叔母様も、よく事情を理解していないドラコも、すごく優しく気遣ってくれて、本当にありがたい。
闇祓いも死喰い人もどちらも大嫌いだけど。マルフォイ家のみんなは大好きだ。そう思った。
落ち着いてから説明してくれたけど、屋敷には闇の魔法具はほとんど残っておらず、だいたいは別荘に隠してあるらしい。
ルシウス叔父さまが管理するようになってから、処理に困るほど危険なものは金に換えて、高価なものはちゃんと封印箱などに入れて別荘の隠し金庫に仕舞ってあるのだとか。
立ち入り調査は、ある程度の金額を払うことで先に情報を貰えるため、通常は『問題なし』の結果を文書に残して終わる。
だけど、死喰い人を憎んでいる人はまだ一定数以上いて、そういう奴らが闇討ちしたり、死喰い人の子供を襲うような行動に出る前に、ちゃんと闇祓いは対死喰い人としての活動をしていますよというパフォーマンスが必要なんだそうだ。
過激派の行動をコントロールするための、いわゆるガス抜きのようなものなんだろう。
あの、目を血走らせて時計の部品をひとつひとつ調べていた奴みたいなのが暴走したら危ないのはよくわかる。
ドラコはそういう時は別の場所に移動させるのだけど、私は両親が戻ってくる可能性が低いため、若いうちに当主になる予定らしい。じきにそういう輩の相手をすることになるため、最初から立ち合いさせたのだ、と教えてくれた。
嫌な思いをさせたな。と労ってくれました。
この週末はブラック分家のシグナスおじい様にも会いに行った。厳格な彼らは抱きしめたりしてくれないけど、視線が優しくて好きだ。
その他にも、シグナスおじい様が、私を連れておじい様のお姉さまのところへ連れていってくれることになった。
シグナス・ブラックのお姉さま。……そう。ブラック本家、ヴァルブルガ・ブラックだ。
私はとうとうあの、グリモールド・プレイスの屋敷に行くことになったのだ。
感想ありがとうございます。
皆さまがいっぱい考察して書いてくださっているのがとてもうれしいです。
感想欄でご指摘があったように、被験者は管理者や担当者への過度の不服は抱かないようにある程度の調整がされています。死への忌避感や恐怖感も薄まっています。何度も転生を繰り返す間に精神が壊れないための処置でもあります。