エリカ、転生。 作:gab
ブラック本家は今はおばあ様一人しかおらず、ほとんどの交わりを絶ち、引きこもっていらっしゃる。
ここも防犯の都合上、煙突飛行ネットワークはブラック分家“ポラリス・マナー”にしか繋げていないそうだ。
本家の屋敷は原作にも出てきたグリモールド・プレイスにあるあのお化け屋敷のような場所。
今はそんなおどろおどろしい未来の姿とは似ても似つかない、豪華絢爛な豪邸だ。
映画で見た時にはなんとなく狭くて縦長のアパートみたいに感じたんだけど、中は当然のように拡張されていて広々とした空間が広がっている。
映画では狭そうに見えた階段も、ゆったりと広い。
しもべ妖精の首が並んでいるあたり、しっかり魔法界の闇を取り仕切っていた家系らしさをじわじわ醸し出している。
さてさて。ヴァルブルガおばあ様だ。
映画のあのヒステリック婆の姿を知っているだけに、今日はドキドキで顔を合わせた。
……驚いた。
すごく綺麗だ。気の強そうな気品ある老女。
晩年のヴァルブルガ・ブラックは失ってしまった家族への想いでおかしくなってたんだと思う。
「初めまして。ヴァルブルガおばあ様。ベラトリックスの娘、エリカ・アレクシア・レストレンジです。おばあ様にはご機嫌麗しく存じます」
どうだ。5歳にもなるとこれくらい流暢に話せるようになるんだよ。貴族家の教育すげえっしょ。
「よくいらっしゃいました。エリカ。賢い子ね、黒髪も灰色の目もまさにブラック家だわ」
「そうだろう。エリカは優秀だ。素晴らしい魔女になる」
褒められた私よりおじい様のほうが自慢げだ。ヴァルブルガおばあ様は孫がいないから、孫自慢しているんだろう。大人げない。
「エリカ、おじい様は少し話がある。少し向こうで遊んでおいで。屋敷からでてはいけないよ」
「はい、おじいさま」
しばらく歓談の時を過ごしたあと、大人同士の難しい話になってきておじい様にそう言われ、私は淑女らしく礼をして部屋を出る。広い屋敷を探検して回ろう。できればレギュラスの部屋に行って《R・A・B》のマークを見つけてクリーチャーと話すのだ!
私は居間からでると上の階を目指しておうち探検をはじめた。
3階に上がり、レギュラスのマークを見つけた。ここがレギュラスの部屋か。ということは隣がシリウスの部屋かな?
私はわかりやすく扉に触れ、「あーる、えい、びー。RABだわ、読めるわ。お名前かしら? きっとあれはこの方のものだわ」なんて呟いてみせた。
しばらく意味深な言葉をぶつぶつ話していると「お嬢様」と小さな声が私のすぐ後ろから聞こえてきた。
よし! クリーチャーの注意をひけた。
いくぞ。わたしは、女優よ。
「あなた、クリーチャーだったわね。ここは?」
「この部屋はレギュラス坊ちゃまのお部屋でございます」
「レギュラス。私の叔父様ね。知っているわ。優秀な方だったんでしょう?」
「もちろんでございます。レギュラス坊ちゃまは素晴らしく聡明で、慈悲深きお方でございました」
それから私はクリーチャーにレギュラスの部屋に招き入れられ、いろいろ話をしてもらった。
語り合うために座るように促し、「クリーチャーめにクッションを勧めてくださるなんて」と泣きながら盛大に感謝され、それをなんとか宥めて。
大好きなレギュラスのことを話せるのが嬉しいのか、要所要所で褒めたり、驚いたりして先を促す私の言葉に気をよくしたのか、クリーチャーは本当になめらかに滔々とレギュラス坊ちゃまの話を続けた。
よしよし。
ほどよくクリーチャーと打ち解けられたあと、私はおもむろに切り出した。
「わたし、この《R・A・B》の文字が入った日記を持っているの。きっとレギュラス叔父様が私に残してくださったんだと思う。だって知らないうちにいつのまにか手に持っていたの。今はうちにおいてきたけど。
ねえクリーチャー、日記の開き方を教えて頂戴。わたし、レギュラス叔父様が何を考えていらしたか知りたいの」
クリーチャーはいつの間にかなくなっていた日記が私のもとにあることに驚いていた。
「レギュラス坊ちゃまはクリーチャーに日記を誰にも渡すなとおっしゃいました」
「でも日記はわたしのもとにあったわ。とても小さな時で覚えてないけど、ある日、私の手元にあったの。日記が私に何かを伝えようとしているのだと思わない?」
「ですがクリーチャーは」
「クリーチャー、レギュラス叔父さまは何故亡くなってしまったの? 私はレギュラス叔父さまは素晴らしい方だと思っているわ。だから日記はレギュラス叔父様が私に何かを伝えようとして私の手に届いたのだと思うの」
なんどか押し問答を続けて、「レギュラス叔父さまの助けになりたいの」という私の言葉に、クリーチャーはとうとう泣き出した。
そして「それがレギュラス坊ちゃまのお望みなのであれば」と日記の開き方を教えてくれた。
「教えてくれてありがとうクリーチャー。きっとレギュラス叔父さまは私に何かしてほしいことがあったから日記を預けてくださったんだと思うの。クリーチャーには何か思い当たることはない?」
そこまで言うと、クリーチャーは堰を切ったように話し出す。
「レギュラス坊ちゃまは、きちんとしたプライドをお持ちでした。ブラック家の家名と純血の尊厳のために、なすべきことをご存知でした。坊ちゃまは何年も闇の帝王の話をなさっていました。隠れた存在だった魔法使いを、陽の当たるところに出し、マグルやマグル生まれを支配するお方だと……」
クリーチャーは話し出すと止まらず、原作のように在りし日のレギュラス坊ちゃまのことを最大の尊敬と愛情を込めて話し出した。
懐かし気に部屋中を見回しながら。
クリーチャーの話は続く。
ヴォルデモート卿の仲間になったこと。
憧れのヴォルデモート卿にお仕えすることの喜びを語る坊ちゃまの姿。
「ああ、それなのに……」
クリーチャーは悲し気に倒れ込み、嗚咽を交えて切々と語る。
ある日、ヴォルデモート卿にしもべを差し出せと言われ、レギュラスはクリーチャーを差し出した。
名誉ある仕事だと喜んだのに、クリーチャーは大切な魔法具の守りをテストするための捨て駒にされた挙句、そのまま捨て置かれたのだ。
死に瀕したクリーチャーが助かったのは『必ず戻ってこい』というレギュラスの命令がしもべ妖精の本能を刺激して、力を振り絞ってレギュラスのもとへ飛べたから。
ヴォルデモート卿に幻滅したレギュラスは死喰い人であることを辞めた。
「クリーチャーはレギュラス坊ちゃまのご命令のとおり、坊ちゃまを洞窟へお連れしました」
クリーチャーに水盆が空になったらロケットを取り換えるよう命じ、母親には決して洞窟の中での出来事を明かさないように、そして取り換えたロケットを破壊するようにと言い、レギュラスは水盆の中の薬を一人で全部飲んだ。クリーチャーがロケットを取り替えると、レギュラスは水を求めて湖に近づき、そのまま亡者によって湖に引き込まれた。
クリーチャーはレギュラスの命令があったため、彼が湖に沈んでいく姿を、なすすべもなく見守るしかなかったのだ。
自分を罰しようとするクリーチャーを抱きしめて宥める。ああ、敬愛する主を見殺しにするしかなかったクリーチャーの悲しみが痛い程わかる。
原作で知っていたけど、彼の慟哭は可哀そうすぎて、私も一緒に泣いてしまった。
「それで、そのロケットは壊せたの?」
「ああ! できなかったのです!」
クリーチャーは私の手を逃れて床に倒れ込み、頭を何度か打ち付けるとすすり泣いた。
「クリーチャーは全部やってみました。知っていることは全部。でもどれも、どれもうまくいきませんでした」
外側のケースに強力な呪文があまりにもたくさんかかっていて、ロケットを開けなくては壊すことができないとわかったこと。それでもロケットの開き方がどうしてもわからないこと。何度も何度も試し、そのたびに自分を罰し、もうずっとずっと努力してきたことを涙ながらに語った。
「ロケットを見せて」という私の要請にクリーチャーは姿を消した。
やがて。
バチンと音をたてて戻ってきたクリーチャーがそっと私に差し出したのは豪華な造りの金のロケットだった。長い鎖が重たそうだ。
息をつめてそれを見つめる。
……禍々しい“気”を放つものだった。
触れることも躊躇われる。
おそるおそる手を伸ばす。
それほど自己主張が激しいのに、手を触れるとふっと馴染み、恐ろしさを感じなくなった。
今はもう、欠片も何も感じられない。
不気味さよりも、何か、親愛の情を感じる。
気になる。傍に置いておきたい。手に触れていたい。
気が付いたらロケットを見つめ、象嵌を指で辿ったりただただ撫でたりしていた。
ふっと気付く。
あ、これ、あかんやつや。
……こわい。
呪物のド素人でもわかる。思わず大阪弁がでるくらい、危険な代物だった。
「クリーチャー、魔法具を安全に包めるものはない?」
クリーチャーはよくこれに魅入られなかったものだ。それだけレギュラスの命令がしっかり効いていたんだろうか。
ああ、そうだ。
このロケットがあることで屋敷の中が淀み、ヴァルブルガおばあ様とクリーチャーの妄執が酷くなって映画のあんな状況を引き起こしたのかもしれない。
私はまだ5歳で魔力抵抗がほとんどない。まだ弱いのだ。
これを持って障りがあっては困る。
クリーチャーはまたバチンと姿を消し、数分後一枚のクロスを持って帰ってきた。
『魔力遮断布』でできた正方形のクロスだ。これに包むと魔力が漏れないのだとか。
私はそれでロケットをしっかりと包み込んだ。
「クリーチャー、これは私が預かっていい?」
「お嬢様がでございますか? ですがそれはクリーチャーめが……」
「このロケットはレギュラス叔父様のものよ。レギュラス叔父様がヴォルデモート卿に対抗するために『必ず壊せ』とクリーチャーに命じたものなの。私はレギュラス叔父様の想いを継いで、クリーチャーのかわりに必ずあのロケットを壊すわ。誓います」
「まことでございますか? エリカお嬢様」
「ええ。でもわたしはまだまだ弱いわ。何年かかるかわからない。でも、きっと強くなる。そしてきっと、レギュラスおじさまの代わりにこれを壊すわね。だからクリーチャー、これは私が預かる。壊したら見せに来るわ。待ってて」
「ありがとうございます。エリカお嬢様」
誰にも内緒にするように念をおした。大切な品を取り上げるだけじゃ可哀そうだね。今日はおじい様がいるからできないけど、今度おばあ様だけの時にレギュラスの遺品を何かクリーチャーにあげられるよう頼んでみよう。
そして。
「あのねクリーチャー。いつかシリウス・ブラックか、他の貴方の主人に、このロケットのことを聞かれるかもしれない。その時は、私がレギュラス・ブラックの命令を引き継いで持っていった、って言っていいからね。そのことで自分を罰してはだめよ」
「なんとお優しいお嬢様。クリーチャーは嬉しいです」
―― こうして、私はほとんど苦労もせずにひとつめの分霊箱を手に入れた。
スリザリンのロケットをゲットしたその後。
レストレンジ家に戻り、ロニーに『闇の物品』を安全にしまえる入れ物を用意してもらった。
ロニーが業者から購入したものは『封印箱』というもの。
検知不可能拡大呪文と、呪物を収納できるよう保護呪文がかかっている。中に闇の物品を入れて密閉させると、外に呪いが溢れ出ることがないらしい。
『封印箱』は便利だ。あと何個か買っておいてもらうことにした。魔力遮断布も数枚頼んでおく。
魔力遮断布に包み、『封印箱』にしまった“スリザリンのロケット”は、念のため『封印』の神字を刻んだ自作の念具の箱に入れた。
魔力遮断布、封印箱、念具の封印の三重封印だ。ここまですれば持ち主に障りはないだろう。
その上で、ガーデンの端に移動させたプレハブ小屋の一室にしまい、メリーさんや小雪が触れることのないよう入り口に鍵もかけた。
これで安心。
私が分霊箱を壊すことができるようになるか、ダンブルドアか誰かに渡すまで、ここにしまっておこう。
ガーデンの居間にあるソファに座って、まだ読めていないレギュラスの日記を見つめて、考える。
この日記を手に入れてから死んだから、私はハリー・ポッター世界に来たのかな。
だって転生ガチャで行く世界が決まるのに、偶然前の世界で手に入れたアイテムの世界でした、ってわけはないよね。
そういえば担当者サマは『転生ガチャは基本的に3回まわす』って感じのことを言ってなかったっけ。たしか、こう。
1、転生先
2、時代
3、登場人物との関係性
「基本的に」ってことは3回まわさない時もあるってことでしょ?
私はレギュラスの日記を手に入れたから、一度目『転生先』はまわすことなく『ハリー・ポッター世界』に決定した。
2もなしだ。日記の記述より前の世界に生まれると日記が二つ存在することになってしまう。それに日記を活用できる時代だと考えれば『ハリー世代』に確定。
3はあったと思う。だけど、ハリー世代すべてが対象ってはずはない。
手に入れた日記を有効活用できる立場って、小さい頃からブラック家に入れる生まれしかないじゃん。
レストレンジか、マルフォイか、あるいは原作で独身だったシリウスやレギュラスの、私生児かできちゃった婚した子供あたりか。
きっとそれくらいの選択肢からランダムで選ばれたのが、レストレンジの娘。
つまり、この日記を手に入れて死んだから、主要な立ち位置になれたってこと。
死喰い人の子供が幸せかどうかと言われれば、決して幸せじゃない。けど、お金はたっぷりあるし、貴族家だから教育は早く始められる。マグル生まれよりもスタートダッシュは確実だ。
それに、原作に介入したいなら、めいっぱい介入できるポジションだ。なんせ、分霊箱2つに簡単に手が届くんだもん。
あの時、お父さんに葉書を書かなくちゃ日記の存在を知らず、取りに行かなかった。
これを手に入れなかったら、今生はハリー・ポッターじゃなかったかもしれない。
これって、あれだ。いわゆる、SSR確定ガチャチケットだ。
3回まわして主要キャラの身近な存在になれる可能性だってあるけど、確率は低いよね。
もしかしたら、そういう“主要キャラの身内や原作介入しやすい立場”への出生先を決められるアイテムがこの世界でも見つかるのかも。
担当者サマは最初に『何をしてもいい。どう過ごしてもいい』って言ってたけど、魂の成長によって上位の存在を目指すのが私達被験者なんだよね?
それなら、力を付けるための訓練や知識を培うだけじゃなくて、いろんな経験が必要だよ。
物語の世界において大きく運命が動くのはやっぱり原作の内容であって、さ。
レストレンジの娘になんてなってしまえば、どうしてもその大きな運命の動きに巻き込まれていくじゃん。ヤバすぎる立ち位置で、相当の苦労が確定している。ハードモードな人生。
でも原作介入しやすいポジションって考えれば、魂の成長にとって大きなチャンスだと言える。
ほら、やっぱりSSRだ。ちっとも嬉しくないけど。
でも私なら逃げられるよね。外国へ行っちゃうとか。『マッド博士の整形マシーン』で顔を変えて他の国で……例えば日本人になって日本の孤児院にでも入ってさ、マホウトコロから入学許可書が届くのを待つとか。やろうと思えばできる。
このままレストレンジの娘として頑張るってのもできる。私次第、では、ある。よね?
このレギュラスの日記を手に入れたのは、良かった、んだよね?
それでも。
あの時クロロに殺されたのは私の失敗だった。
今にして思うと、私の情報がクロロに漏れたのってヒソカからだよね?
だってヒソカって幻影旅団にいたじゃん。クロロともゾルディックのイルミとも付き合いのある、危ない存在。
ヒソカには能力を知られている。グリードアイランドで短時間だけど一緒に活動しているもん。ステップどころか、荷物を取り出して亜空間倉庫っぽい能力があることもバレていたかも。NGLを出た後キメラアント狩りの途中で会った時にシルヴィアを構えている姿も見せた。
やっぱりヒソカをキメラアント編に誘ったのは失敗だった。っていうか、王や護衛軍討伐に呼んであげなかったことのフォローをしていなかったのは絶対良くなかったよね。
誘っておいて雑魚処理だけ任せ、一番の獲物から遠ざけた私に対してヒソカが怒ってたとしたら。
嫌がらせにクロロをけしかけるくらいしただろうし、あの後、私を売った話をしてゴンやキルアを怒らせて遊んだりしてるかもしれない。
ああ、とんだ爆弾を置いてきた。
ゴンは暗黒大陸だけど、キルアが心配だよ。大丈夫かな。
ううう。
……わたしがわるかった。
だってもっと前にお父さんに葉書を書いていればよかったんだ。
お母さんには何度も出したのに、そう言えばお父さんには一度も出さなかった。
いつだって葉書を出せたのに。
「生んでくれてありがとう。おうちをありがとう。メリーさんと頑張って生きてます」って。
そうしたらきっとお父さんも「おう、あの家に宝石を隠して置いてるから持っていけよ、後クロロの本も奪っちまったから使えるならうまく使えよ」って感じの返事がきたはず。
クロロとお父さんの確執を知っていれば、幻影旅団にはもっと注意を払った。あの時クロロに会っても、もっとうまくごまかせたし、なんなら交渉だってできたかもしれない。
それにもう本は手元にあるから隠れ家に行く必要もなかった。暗黒大陸へ行くまでガーデンにいればクロロに捕まることもなかった。
だめだなあ。反省することばかりだ。
クロロの能力ってさ、奪った相手が死んだらせっかく奪った能力も使えなくなる。
普通さ、大切な“発”を奪われたなら、絶対敵対するし、死ねば消えるなら死んでやる、くらいの気持ちになるよ。
んで、思ったんだけど。
ヨークシン編で能力を奪われた風呂敷の能力の陰獣さんは捕まって縛られてるシーンのあとの描写がなかったけど、あのまま監禁コースだったんじゃないかな。
パクノダの力で忘れさせて解放するって手もあるけど、解放されても能力がなくなれば今までの仕事はできない。仕事で使ってた能力なら仕事仲間や上司が知っている。本人の記憶だけ消してもしかたないものね。
力を失って仕事を首になれば、生き残れず野垂れ死ぬ。せっかく奪った能力も消えちゃう。
なら、眠らせるなり、手足を切るなりしてどこかに監禁して最低限死なないようにだけして飼い続けるのが一番クロロ的に安心なわけだよ。
流星街なら捕虜収容施設とか、監禁の代行サービスとかありえそう。寿命まで眠らせ続ける能力者とかいるかも。コワイ。
ネオンの時は本人が念を知らない子だったから、急に使えなくなっても奪われたことには気付かないからそのまま雑に解放したのかな。
私が持っているスキルハンターの本に、ネオンのページはなかった。彼女はもう死んでいる。占いをあてにしていた父親に愛想をつかされて、ショックで自殺でもしたのか。
消えてもどんどん新しい奴を奪うから平気ってわけないよね。だってすっごく強いやつとかあったじゃん。閉鎖空間で魚が攻撃してくるやつとかさ。使い勝手のいい能力の元保持者はずっと生きていて欲しいって思うよね。
監禁して飼い殺ししかない。
私、あの時死ななかったら、そのあと監禁生活だったかもしれない。
被験者ってさ。その世界の人間には決してできない逃げ道がある。
死ぬことだ。
私はクロロに負けた。
だけど、被験者としては、何も取られずに次の世界に逃げだせた。死は被験者にとって次へのパスポートでしかない。『強くてニューゲーム』での転生が確定しているんだもの。
そういう意味では、私は勝者だ。
……今度の生でも、いつでも死ねる準備は必要かもしれない。
それでも。
悔しいし、あそこで死んだのは後悔ばっかりだし、仲間達ともう会えないのは悲しいし、考えれば考えるほど泣きたくなる。
はあ。ほんと。どこまでもポンコツエリカだよ、私。
今度こそ気を付けよう。
うわああ、だめだ。
落ち込んで抜け出せそうにない。
やばい。
……………………いつまでもへこんでちゃ、だめ。
反省したことは、ちゃんとこれから活かしていこう。