エリカ、転生。   作:gab

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衝撃

 

 

 それからも私は毎月のようにブラック分家とブラック本家に顔を出しにいった。

 ブラック本家もレストレンジ家の暖炉と繋げてくれたから、あっという間に移動できるのがほんとに便利だ。

 

 シグナスおじい様とドゥルーエラおばあ様はたった5歳の孫が何度も会いにきてくれることを、毎月楽しみにしてくれている。

 あまり態度に示さないけど、子供の喜ぶお菓子がいつも用意されていることからも彼らの歓迎の気持ちがわかる。

 私も、おじい様達と話すのは昔の話をいろいろ聞かせてもらえて楽しい。

 

 

 もちろんブラック本家の訪問もヴァルブルガおばあ様にもクリーチャーにも歓迎されている。

 

 ヴァルブルガおばあ様が原作みたいに病んでしまわないよう、できるだけ話し相手にならなきゃね。

 数回会いに行くと、ヴァルブルガおばあ様は私の訪問を待ち望むようになってくれた。

 

 

 

「ごきげんよう、ヴァルブルガおばあ様。エリカがまいりましたわ」

 

「エリカ、また来てくれたのですね」

 

「ええ。おばあ様、少しお痩せになったのではなくて?」

 

「そうかもしれないわね。このところ少し疲れてしまって」

 

 毎月会っているのに、おばあ様は会うたびにやつれていく。もう先は短いのかもしれない。別れの予感に寂しさが募る。

 だからこそ私は明るい5歳児として(といってもおばあ様にはだいぶ大人ぶった子だと思われているけど)おばあ様とたくさん会話を交わしている。

 

「クリーチャー、お菓子を持ってきたの。用意してちょうだい。紅茶もお願いね。

 ……おばあ様、マダムシェンカーのタルトですわ。今とても流行っているんです。おばあ様にも召し上がっていただきたくて、シシー叔母様にお願いして用意していただいたんです」

 

「まあありがとう。ほんとうに優しい子に育ってくれて」

 

「親には会った瞬間、アバダケダブラを飛ばされそうですけどね」

 

「ベラトリックスは昔から気性の激しい子でしたものね」

 

 お前の口が言うのかい、との言葉は呑み込んだ。『原作史上、もっとも気性の激しい女性は誰だ』選手権を開催すれば一等賞はヴァルブルガおばあ様あなたよとは言わない。エリカは空気の読める子だから。うん。

 

「レギュラス叔父さまを殺したのも、シリウス叔父さまがアズカバンにいるのも、みんな“例のあの人”のせいですもの。私、間違ったことはしてませんわ」

 

 おばあ様にはレギュラス・ブラックがどうやって亡くなったか話している。

 レギュラスはクリーチャーに『家族には話すな』と命令して逝ったけど、“例のあの人”が消えてる現在、これを秘密にしておく必要はない。

 むしろ話さないほうがレギュラスのためにならないとクリーチャーに説明して納得してもらってからおばあ様に話した。シリウス・ブラックにも話すつもりだ。

 レギュラスの日記も見せた。

 

 おばあ様はレギュラスの最期を知って泣いた。

 そして純血主義を謳ったヴォルデモートを擁護していた自分を嘆き、怒った。

 

 ロケットのことはおばあ様が自分で壊したがったけど、おばあ様はすでに本当に弱ってらして、もうこの頃はベッドからほとんど起きられない状態なのだ。今から壊し方を探すことは無理だと自分でもわかっているのか、私に託すと言ってくれた。

 

 たった5歳の女の子に頼むってのも変な話だけどさ、弟シグナスはブラック分家でブラックを守る立場がある。状況次第ではそのまま別の使い方をされてしまうかもしれない。姪の夫ルシウス・マルフォイは元死喰い人で分霊箱を壊すなんて情報を知られれば敵になる可能性がある。おばあ様が託す相手はもう私しかいない。

 

 最初、おばあ様は幼い私にもわかるよう「ロケットを壊すことは、レストレンジの両親と対立することだ」と何度も説明してくれた。ほんとうにそれでいいのか、と。でも私は死喰い人になるつもりがないのだから、対立はすでに決まったことなのだ。だから気にしないでいいとはっきり言いきった。

 私の決意が固いことを知り、おばあ様は安心して私に託せたのだ。

 

 おばあ様はレストレンジ家から独立して暮らせるだけのお金を残すから何かあればすぐに逃げなさいと言い、分霊箱を壊すために何か必要なものがあってもこのお金があれば何とかなるだろうと断言した。

 

 日記にこのロケットが分霊箱だと気付いた経緯が書かれていて、ブラック家にあった闇の魔術の本『生とは死とは―闇の秘術の深淵』を読んだと書いてあったらしい。

 おばあ様はご自身ではもう読めないからとその本も私に渡してくれた。闇の本は読むだけで気力が削られてしまうのだ。私にも手渡しながらも「本を開くのはもう少し大きくなってから」と約束させたほどだ。

 

 

「待っていてくださいませおばあ様。私、きっとあれを壊します」

 

「ありがとう。エリカ」

 

「それよりもレギュラス叔父様のお話を聞かせてくださいませ」

 

「そうね。あれはあの子が7歳のころ……」

 

 おばあ様は愛する息子達や夫の昔話をいろいろと聞かせてくれた。

 

 

 それと、クリーチャーからレギュラスのロケットを取り上げたままなのは可哀そうだから、おばあ様に頼んで、クリーチャーにレギュラスの遺品をひとつ与えてもらった。できればロケットやペンダントのようなクリーチャーにもつけられるものをお願いします、と。

 

 学生時代の彼が使っていたペンダントをもらったクリーチャーは衝撃でそのまま死ぬんじゃないかと思うほど喜んだ。感激に打ちのめされた彼は、自分は世界一幸せなしもべ妖精だと号泣しながら宣言し、おばあ様と私にとても感謝し、高貴な方々のこれほどのご恩情に、矮小な自分はどうやって報いればいいのかと慟哭し、より一層の忠義を尽くしてくれるようになった。

 

 

 

 んでさ。

 おそらく原作でヴァルブルガおばあ様がおかしくなっている原因のひとつだろうと思える人物がいる。

 ヴァルブルガおばあ様の夫、ブラック本家の当主で今は亡きオリオン・ブラック。その、父親。こいつが、まだ生きているのだ。

 

 アークタルス・ブラックはコテコテのマグル嫌いで、偏屈で、純血至上主義で、イカレてて、未だに自分が魔法界の王だと信じて疑わない狂った老害。

 オリオンおじい様が別邸に押し込めたんだけど、隙あらば孫ひ孫に干渉してまたブラック家の実権を握ろうと狙っている。

 私にも手紙が来ているらしいんだけど、ロニーがきっちり止めてくれている。

 

 若くして当主となったオリオン・ブラックから支配権を取り戻そうとしたり、ヴァルブルガおばあ様を子供の監督不行き届きだと批判する手紙を何度も送りつけたり。

 

 それもあっておばあ様はかなりつらい思いをしていたんだけど。

 

 ほんと、早く死なないかな、あいつ。

 会ったことはないし会いたくもないんだけど。

 

 

 

 でもさ。

 シリウスはともかく、レギュラスがヴォルデモートに一矢報いて勇敢に死んでいったことを知ったおばあ様は、俄然、持ち直した。

 

 これまでは純血貴族家のものとして、それがどれだけ子供達を追いつめていたのだとしても、純血主義を謳うヴォルデモートのことを悪く言えなかった。

 でも、レギュラスは死喰い人をやめて、しかもヴォルデモートの分霊箱を奪ってみせたのだ。

 

 彼女は、今は純血主義とヴォルデモート卿一派とはまったく別のものだと思えるようになった。

 レギュラスの勇気は、子育てを失敗した駄目な嫁という老害の言葉に傷つけられる日々から彼女を救った。

 だって、レギュラスは勇気を持って死んだんだもの。私の息子は素晴らしい子だった。子育ての失敗なんてしてないわよ!(シリウスからは目そらし)

 って感じに。

 

 

 私もヴァルブルガおばあ様に言ってやったのだ。

 

「妄執に憑りつかれた過去の遺物。無視してしまえばいいのですわ」

 

 それから、アークタルス・ブラックからの梟便はこの屋敷には届かないように防備の設定をかえたらしい。

 

 

 

 

1985年 12月

 

 ヴァルブルガおばあ様が亡くなった。

 原作でも同じ時期に亡くなったのかな。享年はどこにも書かれていなかったけど4巻でグリモールド・プレイスの館を「十年間誰も住んでいなかった」と言っている。

 だいたい今頃かな。

 

 おばあ様はずいぶん弱っていたからそろそろかもしれないと思ってはいたけど、やはり寂しい。

 おばあ様は私に形見分けで、指輪と、私名義の金庫をひとつ残してくださった。

 前に言ってくださった「レストレンジ家から独立して暮らせる生活費と、分霊箱を壊すために必要なら使うため」のお金だ。本当にありがたい。

 

 指輪はブラック家の家紋が入っている指輪だ。

 家紋は手放せば消える。レストレンジの一員である私が貰えば家紋は消えるものなのだけれど、これはブラック家が、己が所縁の者へ与えたという印で、しっかり家紋が入ったままだった。

 

 この指輪には、精神干渉系の抵抗力を上げる呪文が籠められているらしい。開心術や服従の呪文も防ぐというから、私にとってものすごく嬉しいものだった。

 おばあ様ありがとう。お金も指輪も、大切に使わせていただきます。

 

 

「ロケット、絶対に破壊しますからね」

 

 私はおばあ様の等身大の肖像画に誓った。

 

「無理はしなくてもいいのよ、エリカ。貴女はまだ小さいのだから」

 

 生前と変わらぬ……いやいや十数年は若返った微笑みと声音に、この世界の肖像画は凄いな、と思う。この肖像画には死ぬ直前くらいまでの記憶がちゃんと残っているのだ。そして話しかけるとおばあ様そのものの反応が返ってくる。ほんと、すごい。

 

「はい、おばあさま。

 クリーチャー、おばあさまは亡くなったけど、ここの管理を頼むわね。一人暮らしになるけど、掃除や魔法具の管理を怠っちゃだめよ。また来るわね」

 

「はい、エリカお嬢様。クリーチャーは奥方様とこのお屋敷を守ります」

 

 

 

 

 

 

1986年 5月 6歳

 

 誕生日が過ぎ、私は6歳になった。

 

 レギュラスの日記は、実はまだしっかり読めていない。

 クリーチャーが教えてくれたように杖で表紙のドラゴンを一度叩き、パスワードに設定された言葉を唱えるとあっけなく開いた。

 杖は私のものは持っていないのだけど、ロニーがどこかから予備の杖を持ってきてくれたのだ。私の魔法練習用として使わせてもらおうと思ったけど「まだお早いですお嬢様」と言われて使ったあとすぐ取り返された。

 魔法を習い始めるのは貴族家でも11歳まで駄目らしい。無理に幼い頃から始めても制御できないうえ、身体に負担がかかりすぎて良くないため、ホグワーツに行くまでお待ちくださいと言われた。ううう。練習早く始めたいのに……残念。

 まあしかたない。まだ実際私の身体は未成熟で、念と音楽だけでも目一杯だ。

 

 レギュラスの日記のパスワードは『シリウス』だった。このツンデレ兄馬鹿め。

 

 よし、読むぞ! ってなったんだけどね……

 

 

 

 なんていうの? 英国人の手書き、読めない。ありていに言って字が汚い。

 

 まだ英語にすら慣れていない私達(私と小雪ね)はもう四苦八苦しながらこの日記を読んでいる。

 汚れないようコピーして原本を残し、コピーに手書きで色々書き込んだりしながら読み解いている。

 内容はわかりやすい処だけで言うと『寂しい』とか『シリウスと話したい』とか。

 

 文面から親の期待の重責と非行に走った兄への想いに押しつぶされそうな、傷つきやすい少年の悲しみが滲んでくる。

 

 レギュラスの日記に重要な内容が書かれているとは思っていない。下っ端死喰い人のレギュラスがたいした情報を知っているわけないんだから。原作知識を持つ私の方が知っていることは多い。

 でもこの日記には価値がある。

 “分霊箱”という単語が入っているのだ。おばあ様が『生とは死とは―闇の秘術の深淵』の本を私にくださったということは、日記にはこれが何か調べ、分霊箱だと判明する過程が書かれている。

 

 これを持っていると、小さい頃から“分霊箱”という単語を知っている理由付けができる。ヴォルデモートが死なない理由を知っている原因を日記と言うわかりやすい物で示せるのだ。

 それにシリウス・ブラックへの想いが書いているから、これを見せてシリウスを説得できるかもしれない。これはクリーチャーとシリウス・ブラックを協力者にできるアイテムともいえる。

 

 手書き文字になれるのは魔法書を読むための訓練にもなる。私は毎日、日々崩し文字の英語と奮闘している。

 

 

 ちなみに『生とは死とは―闇の秘術の深淵』の本はもっと読めない。魔力抵抗のない今、そんな闇に引きずられそうな本を読む勇気はない。

 おばあ様ももう少し大きくなってからとおっしゃっていたもの。せめて10歳になるまで待とう。

 

 

 

 勉強しているのは書き文字だけじゃない。

 魔法族の社交界で通用する、綺麗な英語を覚えなくちゃ。

 

 シシー叔母様やおじい様、おばあ様が厳しく発音や言い方を注意してはくれるけど、ちゃんとした勉強を早く始めたい。

 なので、シシー叔母様に礼儀作法と言葉使いも含めた優秀な家庭教師を紹介してもらうことにしたのだ。

 

 ちなみにメリーさん達とは日本語で話してる。私の眷属となったことで私の言葉は何語で話しても理解できるようになったらしいのだけれど、彼女達も英語は知っておいた方が魔法習得や読書のためにも必要だから私と一緒に英語の勉強をしている。

 

 「早くお勉強がしたいです」とシシー叔母様に頼むと、さっそく家庭教師を手配してくれた。

 うちはいろんなところに恨みを買っているし、しもべ妖精がいるとはいえ子供の私しかいない家に他人を入れるのは少し不安がある。

 

 シシー叔母様がルシウス叔父様と相談して、マルフォイ家に家庭教師を招き、ドラコと一緒に学ぶことになった。

 

 

 

 初めての羽ペン。初めての羊皮紙。

 まあなんと書きにくいんでしょう! シャーペンやボールペンが懐かしい。

 子供の小さな手で長くてほっそい羽ペンを持つとぐらぐらしてよけいに書きにくい。

 努力の日々が始まったのだ。

 

 

 

 一緒に勉強できる私をドラコはとても歓迎した。

 可愛いよドラコ。ほんと、天使ちゃん。

 

 せっかく小さな頃から仲良し従兄弟なんだ。できるだけ性格矯正を(ルシウス叔父様に叱られない程度ね)しておきたい。

 だってすっごく天使だよ。とっても王子様。

 

 

 ドラコとはしょっちゅう一緒に遊ぶ仲だ。特に勉強をマルフォイ家で一緒にするようになってからはほぼマルフォイ家で過ごしている。

 

 彼は今のところ、大金持ち貴族の一人息子で溺愛されてて欲しいものはなんでも与えられて甘やかされ放題で、だから“選ばれし者”特有の鼻持ちならない自信過剰な面はあるものの、素直で、真面目だ。

 

 原作でも、ハリーやグリフィンドールへの対応は悪すぎるけど、時折り描写される日常の彼は、頭がよくて気が利いて、仲間想いで、わりと人がいい。

 その上イケメン。友人としては最高だと思う。

 

 そ、し、て。

 

 母親同士が姉妹で血がすごく近いから、絶対恋愛対象や結婚相手にはならない。つまりお互い変な気を回さないで済むし、他の女子生徒に嫉妬されることもない。まさに安心安全な立ち位置。

 安心して仲良くしていい異性の友人なのだ。

 

 だから私も安心してドラコを愛でられるってわけ。

 

 

 

 

 

 

 勉強の合間、私とドラコはよく庭で遊んだ。

 魔法使いは軟弱だもん。ドラコにも体力つけて欲しいわけだよ。だから庭に誘っては走り回っていた。

 

 

 

 

 そんなある日――

 

 

 隠れ鬼をしていて、私は丁寧に切り揃えられたこんもりと丸い草むらに潜り込んでいた。

 その時。聞こえたのだ。

 

『おやおやレディ。ここは僕の隠れ場所だよ?』

 

 はっとして振り向くと、そこには誰もいない。大きな木の影になっていて下生えの草が長く伸びているのが見えるだけ。

 

『もっと下だよ、レディ』

 

 恐る恐る視線を下げる。そこには、50センチもない小さな蛇が鎌首を上げてこちらを見ていた。

 

『やっと僕を見たね、レディ』

 

『へび……』

 

『そうだよレディ。僕の隠れ場所を取らないで欲しいんだけど』

 

 私は衝撃で卒倒した。

 

 

 

 

 

 気が付いたらマルフォイ家の客間のベッドだった。

 どうやら隠れ鬼で私が見つからず泣き出したドラコの泣き声に気付いたしもべ妖精(ドビーだよ、ドビー)が私を見つけて叔母さまに知らせてくれたらしい。

 

 癒者を呼ばれて診察されたけどどこにも異常がなく、勉強を始めたことで環境が変わり、疲れが出たのだと判断されたらしい。

 すごく心配したとシシー叔母さまに言われた。

 ドラコも泣きながら私に抱き着いてきた。

 

 心配をかけてしまってごめんなさい。ほんと、大丈夫だから。

 

 

 

 

 

 

 皆が部屋から出ていき、ひとりになる。

 私は深い深いため息をついた。

 

 

 

 どうしよう。

 私、パーセルマウス(蛇語使い)だ。

 

 

 

 

 

 私……ヴォルデモートの娘ってこと?

 

 

 

 

 

 

 ベラトリックス・レストレンジのヴォルデモートへの想いってさ。教祖へ向ける信者の想いだよね。

 

 ヴォルデモートのすべてを愛しているけど、それは肉欲とかそういうんじゃなくて、神様への滅私の心なんだと思ってたんだけど。

 

 『呪いの子』って原作というよりスピンオフとかIF本みたいなもんだと思うんだよね。

 あれが本来の未来軸にある物語だと言われると首を傾げる。原作者に言うことじゃないけど、解釈違いにも程がある。セルフ二次と言われたほうがしっくりくるほど違和感があるんだもん。

 

 でも、実際私がパーセルマウスなのだから、おそらく私の父親はトム・リドルなんだろう。

 

 いや、違うよ。

 ブラック家もレストレンジ家もおばあ様のロジエール家も、過去のどこかでスリザリンの血が入っているはずだし、それでなくても古い血統ならパーセルマウスが生まれてもおかしくはない。

 だから、『パーセルマウス = トム・リドルの子供』と短絡的に考えなくてもいいのでは?

 

 ……希望的観測すぎる、かな。

 じゃあやっぱり私の父親はトム・リドルってこと?

 

 

 でもそれにしてはうちの両親の私への対応が淡泊すぎる。教祖様の子だよ? もっと大事にしない?

 

 

 

 もしかして……

 性欲処理係かな?

 

 うちの母親って確かにすごく綺麗だけど、好きになったりしないよね。

 だってヴォルデモートの言うこと全肯定でやることなすことみんな絶賛するような狂信者なんて恋愛対象にならないと思う。

 やっぱり好きになるにはある程度の意思疎通というか、会話のキャッチボールができなくちゃいけないと思うんだよね。ただのイエスマンは取り巻きとしてはいいのかもしれないけど、愛情を持てるかというとちょっと首を傾げざるを得ない。

 

 だから子供が欲しくてそういうことをしたんじゃなくて、溜まるものを処理する相手が何人かいて、その中の一人がベラトリックス・レストレンジだったんじゃないかな。

 他にも純血のお綺麗なお姫様がいろいろお相手してたのかも。

 ほら、純血コンプレックス拗らせてるじゃん、お辞儀様って。だから純血貴族の姫をとっかえひっかえしてさ、コンプレックスを紛らわせていたんじゃないかと。

 

 

 ベラトリックスとしてもお相手はしてるけど自分だけじゃないし、夫ともちゃんとそういうことをしていたから、妊娠しても特に彼の子だって考えも浮かばなかったとか?

 あ、被験者って『本来なら妊娠しなかったものが生き残って産まれる』んだった。え。もしかして避妊してたのに産まれたとか? え? ……え? ……それはどうなの? 担当者サマぁ。

 

 

 

 はあ。

 とにかく。

 これは誰にも知られたくない。ヤバい情報だ。

 

 

 それに。

 ヴォルデモートは半純血だ。

 つまり、その娘の私は純血じゃないってこと。4分の1はマグルの血が入っている。

 

 おじい様とおばあ様に知られれば……きっと嫌われる。ううん。それだけじゃない。ブラック家は純血以外許さない。

 ブラック家の家系図から消される可能性もある。

 

 ルシウス叔父様とシシー叔母様も、私を嫌いになるだろうか。

 

 今まで愛してくれていた彼らから冷たい目を向けられることを想像するだけで心臓がぎゅっと締め付けられる。

 

 どうしよう。怖い。

 

 

 

 

 ほんと。怖い。

 

 

 

 

 

 トム・マールヴォロ・リドル。

 私の、推定父親。

 

 

 トムのことは可哀そうだと思う。年を取ってからの彼は狂ってるだけで最初は眉目秀麗で才気煥発、将来有望な青年だった。

 たしかに若い時から残酷で狡猾なきらいはあったと思うけど、彼を歪めたのは孤児院での生活と、ダンブルドアだと思う。

 

 だけど……

 

 だけど彼が父親ってのは、ないわー。

 

 ほんと。ないわー。

 

 

 

 

 

 ヴォルデモートが復活すれば、私は死喰い人にさせられる。しかも帝王の娘だ。徹底的に仕込まれる。それを否定したら“服従の呪文”で従わされるか、“磔の呪文”で従うまで苦しめられるか。

 

 復活は阻止しなくちゃ。私の安全で平和な日常はこない。

 今までヤバいヤバいと思っていたけどさ。今日は、ほんと、心底、そう思った。

 

 

 うん

 ヤバくなれば逃げよう。

 

 

 

 

 

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