エリカ、転生。   作:gab

60 / 112
ハリーとの出会い

 

 

1991年 7月 31日

 

 原作通り、7月31日の今日、マルフォイ家と一緒にダイアゴン横丁へ買い物へと出かけた。

 

 ドラコと一緒に楽しいお買い物の時間だ。

 あなたの分も引き出しておきましたよと、金貨の詰まった巾着をシシー叔母様にもらった。

 

 そして、映画でハリーが行ったとおり、いろんな店をはしごする。

 ある程度はもともと持っているものもあるけど、羽ペンやインク、羊皮紙などはたくさん必要になるから山ほど買い足したし、自動筆記羽ペンも何本か買っておいた。

 

 フローリシュ・アンド・ブロッツ書店へは叔母様達が買いに行ってくれることになって別れ、私とドラコは鍋屋で調合用具やもろもろを購入。

 

 買ったものはどんどん黒革トランクにしまっていく。荷物が軽くて快適だ。

 

 秤や鍋とかを買う店がテンションあがった。

 この前セブルスさん……スネイプ先生に貰ったアドバイスを参考に鍋を選ぶ。

 めっちゃ楽しい、ここ。ドラコも楽しそうだった。ドラコって魔法薬学得意になるんだものね。今からこんなに楽しそうなのは、やっぱり才能があるものは惹かれるのかもしれない。

 ある程度調合ができるようになったらまたいろいろ買いに来よう。

 

 

 同じように買い物をしている同年代の子供と何度かすれ違った。

 話すチャンスはなかったけど、お互いに、『入学前の買い物のわくわく感を、あなたも味わっているのね』って共感が初対面のぎこちなさを超えて、目が合うと笑いあったり、軽く手を振ってわかれる。

 ドラコは手を振るかわりにふんと大人ぶって顎を突き出していた。かわいい。

 

 ホグワーツへ通う期待がぐんぐん膨らむひと時だった。

 

 私がレストレンジだと知れば、彼らも態度を変えるだろうけど、今はただの見知らぬ11歳。こういうのってもうこの先はないんだからね。

 

 

 そしてマダム・マルキンの洋装店へ向かった。

 ちょうど他の子が一人、丈合わせをしていたから、ドラコを先に行かせた。

 

「ドラコ、先にどうぞ」

 

 言われるままにドラコが台に上る。

 それを眺めながら少し話していると、前の子が終わって、私達と会釈を交わして出ていった。

 私もドラコの横に並んで丈を合わせてもらう。

 

 

 そこに、チリリンとドアベルが鳴って次の客が入ってきた。

 

 おお。やった。タイミングばっちり!

 ハリー・ポッターの登場だ。

 

 マダム・マルキンに誘導され、ためらいがちにこちらに近付くハリーに、私はニッコリ笑って話しかけた。

 

「こんにちは。あなたもホグワーツ?」

 

「え? あ、うん。そう。ホグワーツ。君も?」

 

 おどおどと返事してくれるハリー。不健康そうに痩せてる幼いハリーの姿を見るのはちょっと辛い。

 

「そうよ。あ、彼も一緒。私はエリカ。彼はドラコ」

 

「やあ」

 

 片眉をあげて気取って挨拶するドラコ。だけどマダムに採寸されながらだから、あんまり格好はついてないよと言うのは酷かな。

 

「やあ……あ、えっと。僕はハリー」

 

 ハリーはちょっとテンションが低い。原作みたいに「金持ちぼんぼんだ」って思ってるのかな。

 

「今日の買い物は一日掛かりね。でも学校の準備ってすごく楽しい。そう思わない? ハリー」

 

 よし、ファーストネーム呼びだ。

 私は仲良くなりたいんだよ。ハリー。

 

 私の問いかけはハリーにも共感できる言葉だったからか、ハリーがちょっと恥ずかしそうな笑顔を見せた。

 

「うん。面白いものがいっぱいあって、ちょっとわくわくした」

 

「ね。大鍋とか秤なんて触ったことないもの、私」

 

 魔法薬作りはまだ習っていない。スネイプ先生の授業はすごく楽しみだったりする。

 

「君は自分の箒を持っているのかい?」

 

 ドラコが気取った話し方でハリーへ問いかける。

 

 

 ……あのさ。

 原作見た時は、こまっしゃくれた偉そうな男の子って思ったんだけど。

 

 ドラコを知っているとさ。もうね。このやり取りってさ。

 

『僕はもうホグワーツへ行くくらい大きくなったんだ。そして僕はとても情報通なんだ。君は僕とどうしても友達になりたいなら、なってやっても構わないよ』ってねオトコノコの可愛い背伸びなのだとわかるんだよね。

 

 まあ、ハリーにはちっとも通じてないんだけど。ああ、これでホグワーツ特急で友人になってあげようって言葉を拒否されて、拗れるんだなあ。

 

 なんて大人な英里佳がにょっきり顔を出してしまってほのぼの見てたら話は進んでいた。

 こじれるまえにと私は話し出す。

 

「ドラコ。学校にある使い古されたボロボロ箒でも上手に飛べるようになれたほうがかっこいいわよ」

 

「ニンバス2000のほうがずっといいだろ」

 

「男なら自分のテクニックを磨くのよ。……ごめんね。ハリーはまだ箒に乗ったことがないのかしら? 魔法使いは箒に乗って飛ぶのよ。ああ、大丈夫。ホグワーツに行くと飛行訓練の授業があるから。空を自由に飛ぶのって最高なのよ」

 

「へえ……」

 

 空を飛ぶって言われてもピンとこないのか、なんでわざわざ箒なんだよ、って思っているのか、反応が薄い。

 箒の良さをわかってもらうには、時間が足りなさすぎる。

 

 この辺りでドラコが『あれ、こいつマグル生まれかもしれない、やべえ』って初めて気付いたみたいだけど、変な事を言い出す前に、私がいろいろと話しかけた。

 

 箒に乗って戦うクィディッチっていうスポーツがあって魔法界ではめちゃくちゃ人気なスポーツだってこと。

 ホグワーツでも寮ごとにチームがあること。

 きっとハリーもクィディッチに夢中になるだろうこと。

 

 魔法使いに箒やクィディッチの話をすると火に誘われる羽虫のようになる。この魅力に抗える魔法使いはほとんどいない。

 ドラコも話に入ってきて、ふたりでクィディッチのゲームについてハリーに競うように語っていた。

 

「じゃあドラコ、そのシーカーってのが花形なんだ?」

 

「もちろんさ。僕はきっとシーカーになって見せる」

 

「僕は……僕は、どうかな」

 

「箒には誰でも乗れるけど、乗りこなすのはセンスが必要だもの。それに勇気も必要ね」

 

「コツくらいなら僕が教えてやってもいい」

 

 お。ドラコが『一緒に遊ぼう』とお誘いの言葉をかけている。ドラコ検定1級の私にはわかる。が、ハリーには通じてない。残念。

 でもハリーが返事をする前に私達の採寸が終わってしまった。

 

 

「じゃあホグワーツで」

 

「ホグワーツで」

 

 私達は手を振って別れた。

 店を出て、ドラコにさっそくネタばらしをした。

 

「あれ、ハリー・ポッターよ」

 

「まさか」

 

「だって額の傷が見えたもの」

 

「だから君、あんなに親し気に話しかけたのか」

 

「うん。彼と仲良くなりたいもの」

 

「父上にも、できるなら仲良くなっておけとは言われている」

 

「でもそういうの抜きでさ。いい子だったね」

 

「まあな」

 

 話してみるとハリーはやっぱりいい子で、あんな劣悪な環境にいたにしては素直だ。もっとひねて世界を恨んでもしかたがないだろうに。

 

 そこがお辞儀様とハリーの違いなのかな。

 ハリーだって第二のお辞儀様になる可能性だってあった。それを踏ん張れたのは、幼くてもハリーはやっぱり“真のグリフィンドール生”だったってこと。

 

 

 できればホグワーツ特急も同じコンパートメントに乗って仲良くなりたい。スリザリンなハリーもいいと思うんだ。

 分霊箱はすべて壊すつもりでいるから、ヴォルデモートが復活することはないはず。となれば、スリザリンの死喰い人の子供達も、同寮の友人、ハリーを殺す役目を負わずにすむ。

 

 でもなあ。

 ハリーがスリザリンに来たらダンブルドアがどう出るか。

 やっぱり原作どおり進めるところは進めておいたほうがいいのかもしれない。分霊箱関連とヴォルデモート復活阻止はするから4年目以降は事件が起こらない予定だけど、そこまでは原作通りのほうが私も動きを読みやすいもの。

 

 

 私はそんなことをつらつらと考えながらドラコと歩き、シシー叔母様が待っているはずのオリバンダーの店へと向かった。

 

 杖だ。

 

 ねんがんの、つえを、てにいれたぞ

 

 

 ドラコの杖は原作通り『サンザシにユニコーンの毛』の杖に決まった。

 

 そして。

 映画のように、渡された杖を振ること数回、私の杖が決まる。

 

「カエデの木、ユニコーンの毛、30センチ。

 少々しなる。冒険や新しい環境を好む。共に学び、成長していくよい杖ですじゃ。

 末永く使ってくだされ」

 

 ですって。

 いや、まあね。

 私ってこれからもずっと、次もその次もずっとずっと使い続けるわけで。そりゃあ冒険しますってもんよ。一緒に成長してくれるのは嬉しい。

 

 それにさ。

 持った瞬間に、ぐぐっと、ああ、この子は私の相棒だわ。って感じた。

 

 持ち手部分だけが少し太くて、手に沿うようにねじった窪みがあって。杖は艶のある深い茶色で先のほうだけが黒い。

 自分の杖だからか、ものすごく美しく感じる。

 

 しまう気になれず、ずっと手に持って見とれてたら、シシー叔母様が微笑まし気に見つめていた。

 ちょっと照れて笑うと、二人にそれぞれ杖の手入れ用グッズを買ってくれた。わーい。

 

 

 

 

 

「エリカ。貴女、ペットはどうなさるつもり?」

 

 オリバンダーさんの店をでるとシシー叔母様がそう聞いてきた。

 

「はい。梟を買おうかと思っています」

 

 ホグワーツに連れていけるペットは、梟、猫、ヒキガエル。

 実は私、せっかくだからラルクを連れていこうかと考えていた。

 ラルクの本来の姿は毛色が緑で、尻尾は鱗だ。だけど、彼は姿を擬態できるんだもん。普通の猫の姿になっていれば一緒にホグワーツに行ける。

 そう考えたんだけどさ。

 

 ホグワーツにいても私と常に一緒にいられるわけじゃない。基本的な授業は連れていってもいいけど、魔法薬学や呪文学でも危ない内容の時はペットは立ち入り禁止になる。結果的に寂しい思いをさせてしまうかも。

 ガーデンにいれば、常にメリーさんや小雪、シェルがいる。私だって本体か影が絶対いる。影なんてたくさんいてそれぞれがいろんな修行してるから、ガーデンのどこへ行っても私に会えると言っても過言ではない。

 それで、どうする? 行ってみる? とラルクに聞いたんだけど、シェルと離れたくない、と言わんばかりにシェルにぴたりと寄り添った。うん。シェルを置いていくのが心配なのかな。すっかりお兄ちゃんになって、もう。可愛い。

 まあラルクは毎日私と一緒に念修行もしているし、ね。

 

 ということで。ホグワーツには私だけで行くことになる。どうせなら梟が欲しいなって思ったのだ。この世界の梟はとても賢い。言葉はちゃんとわかるし、どれだけ遠くてもちゃんと配達してくれる。とても賢くて良い子達なのだ。

 ぜひ、欲しい。

 

「そうですか。では、それを私達夫婦からの入学祝いとしましょう」

 

 めっちゃ嬉しいかも!

 

「いいんですか?」

 

「ええ。もちろんですとも。ドラコも梟を持っていくのよ。ふたりで好きな子をお選びなさい」

 

「ありがとうございます、叔母様」

 

 わくわくしてドラコと微笑みあう。急き立てるように叔母様とイーロップふくろう百貨店へ入った。

 暗い店内を見回すと、バタバタと羽音がして宝石のような目がこちらに集中する。いっぱいいる!

 

 こうやってみると梟もいろんな種類があるのね。大きいのから小さいのまで。

 真っ白の凛々しいフクロウと目が合ったけど、あ、やべ、これヘドヴィグだ。先に買ったらダメな奴だ。って目をそらす。

 っと!

 そらした先にいた、フクロウとばっちりご対面。

 あ、この子可愛い。

 アフリカオオコノハズクっていうらしい。「オオ」がつく種族名なのに、小柄だ。もっと小さいものもいるからこれで普通サイズなのかな。

 

 ドラコはワシミミズクという大きな梟に決めたらしい。すんごくかっこよくて素敵だった。私も凛々しい姿には惹かれるんだけど、ああ、でもアフリカオオコノハズクがとても可愛らしい。

 

「この子、こっちの子より小さめですが、ホグワーツとロンドンでも手紙届けられますか?」

 

「大丈夫ですとも。うちのフクロウはみんな配達の達人でさあ」

 

 この種類の梟は威嚇する時に大きく羽根を広げたり、危険になれば身体をすぼませて小さくなったりできるんだって。ほら、みせてやれや、って店員が優しい声で話すと、今まで丸いフォルムだった体がきゅっと細長くなった。凄い。こうやって敵の目を逃れるわけね。

 っていうか、こちらが話していることがちゃんとわかってるのが凄いよね。本当に頭がいい。

 

「この子にします」

 

「坊ちゃんも嬢ちゃんも、どうか大切にしてやってくだせえ」

 

 アフリカオオコノハズクとワシミミズクの入った鳥籠をそれぞれが持って店をでる。

 

「叔母様、ありがとうございました。とっても素敵な子に出会えました」

 

 新しい家族。嬉しい。みんなと仲良くできるかな。

 

 

 

 

 

 今日は一日、楽しいお買い物デーだった。

 

「楽しかったね、ドラコ」

 

「そうだな」

 

 梟の鳥籠を見下ろして微笑む美少年、ぷらいすれす。

 

 

 

 叔父様とドラコとはここでわかれた。ふたりは叔父様の付き添い姿くらましで屋敷へ帰っていった。

 私はまだ用事があるらしい。叔母様に連れられて歩き、着いたのはグリンゴッツだった。ゴブリンが経営する魔法界の銀行。

 

 買い物を済ませた後なのに、なぜ? と問いかけるように叔母様を見上げると。

 

「エリカ、これを」

 

 シシー叔母様が渡してくれたのは、グリンゴッツの金庫の鍵いくつかとレストレンジ家の指輪。

 

「今日の買い物のためのお金は引き出しておきましたが、これからはあなたがするんですよ」

 

 今までは何か必要があるたび、シシー叔母様が代わりに引き出してくれてたんだけど、11歳を機にこれからは私がしっかり管理するようにと言われ、グリンゴッツの鍵と、レストレンジ家の家紋付き指輪が渡されたのだ。

 この家紋付き指輪は現在の当主であるロドルファス・レストレンジの代理人の証。

 

 

 

 

 

 シシー叔母様の説明によると、レストレンジ家にはいくつかの金庫があるらしい。

 

『魔法使いの旧家の宝は、グリンゴッツのいちばん深いところに隠され、金庫は一番大きく、守りもいちばん堅い』

 

 原作に書かれていた言葉だ。

 ドラゴンが守る最奥の大きな金庫のひとつがレストレンジ家のメインの金庫で、その他にもいくつもあるらしい。

 

 原作に出てきた、あのドラゴンが守っている金庫は登録した杖の持ち主しか開けられない。鍵はなくてゴブリンが開けてくれる。

 そのほかの金庫は鍵があって、それを使って開ける仕組みになっている。

 

 

 レストレンジ家名義の金庫は、当主ロドルファス・レストレンジが所有者となる。

 

 ロドルファスはアズカバンに収監され管理ができないため、代理人としてシシー叔母様が今まで管理してくれていた。

 そして、入学を機に、私に代理人の証明となる指輪を渡してくれたのだ。

 これで私の杖を登録すれば、私がすべての金庫の中身を自由にできるようになる。

 

 登録のためには自分の杖が必要だから、今朝買い物の前にこの作業ができなかったんだね。うん、納得した。

 

 

 レストレンジ家は貴族家で、いくつかの荘園を持っていたり、魔法界やマグル界の建物やいくつかの会社も経営しているのだとか。

 うちの両親は人殺ししかできない奴だから、運営はロドルファスの親の世代から引き継いだ時からずっと管財人にすべて任せているらしい。

 

 んで。

 そこから毎年売り上げがあり、諸々の経費を差し引いたオーナー報酬がグリンゴッツのメイン金庫へ振り込まれる。メイン金庫に入りきらなければサブ金庫へと流れていく。

 また、税金や他の支払いも当然あって、それも自動的に引き落とされる。他にも用途別にいくつか金庫があるらしい。

 

 

 

 今日私が代理人として杖を登録すれば、今現在、金庫を直接開けて金品を取り出せるものはアズカバンの2人を除けば私だけとなる。

 

 

 ……自分がレストレンジの血をひいていない(可能性が高い)と知っている私としては若干の罪悪感はあるんだけど。どうせ死喰い人の資金になるなら遠慮なく頂こう。うん。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。