エリカ、転生。   作:gab

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1年-3 『必要の部屋』と三つ目の分霊箱

1991年 10月

 

 10月になった。

 ホグワーツでの生活にやっと慣れてきて余裕が生まれてきた。影が代わりにやってくれるからやろうと思えばすぐにできたんだけどさ。私の頭の処理が追い付かないのだ。だからここの環境や勉強になれるまでは何もできなかったの。

 

 そろそろいろいろ進めるとしよう。

 授業を進めつつ、“隠”+“絶”の影を動かす。

 

 ちなみに“隠”+“絶”の影はいつも黒装束に魔術師のローブを着てフードをしっかり被り、顔も黒の布地で隠している。念能力者にさえ見えづらい私の“隠”の影が見つかるとは思えないけど、万が一見られてもエリカ・レストレンジだとわからないようにするためだ。

 それにすべてが複製品。抜け毛一本残さず消える究極の隠密。

 魔法具は一切使っていない。

 ダンブルドアや先生方は魔法にはめっぽう強い。魔法具を使っていないほうが却って安全なのだ。念能力だけを駆使した影は、ホグワーツの空気に溶け込むように存在を隠したまま活動する。

 

 

 

 まず、何より先にやっておかなくてはいけないことがある。『忍びの地図』だ。

 

 この地図が欲しい。

 もちろん便利だから欲しいのもあるけど、私が使うためと言うより、誰にも使わせないために。

 

 だって私はジャンプで色々移動している。作業を影数人に任せることもある。

 私の名前が変なところに突然現れたり、複数同時に私の名前があることを知られるのはものすごくまずいのだ。

 できればこれを入手するか、ウィーズリーの双子が持っている時にこっそり壊すかしたい。

 人のものを奪ってしまうのは申し訳ないのだけど……ごめん。

 これは許してほしい。

 

 

 それに『忍びの地図』を持っていると、いろんなことの説明がつけやすいのだ。

 

 ということで。

 彼らを“円”で見張って行動範囲を調べる。私の“円”は半径180メートルだから、自分達をスニークしていることは気付かれないだろう。

 

 数日見ていると、彼らはちょくちょく地図を広げている。

 自分たちに視線が向いていないか周囲を確認して羊皮紙を取り出し、杖で軽く触れると文字が浮き上がってくる。そして確認がすむとまた杖で触れて終わらせる。その後大事そうに仕舞いこむ。その一連の動きをじゅうぶん観察した。

 

 

 ある日、私は彼らがよく通る2階の渡り廊下のあたりで待ち構えた。どうやらこの先に隠し扉があるらしく、彼らは頻繁にここで地図を確認して、周囲の人の有無を調べてから先に進むのだ。

 近くにあるベンチにダフネ達数人と座って本を広げて勉強しながらおしゃべりを楽しんでいた。その日は天気が良く、周りにもたくさんの生徒達が思い思いに過ごしている。

 

 “円”で調べると、双子がふざけ合いながら歩いてくる。渡り廊下で立ち止まり、周囲をさっと見回した。今だ。

 

 私は“隠”+“絶”の影を2体出した。一人はステップで反対側へ。もう一人は私より少し離れた木陰へ。

 

 双子の片割れが羊皮紙を取り出した。もう一人が呪文を唱えながら杖をとんと動かす。次の瞬間、反対側にいる影が『突風』で強い風を吹き上げる。同時に木陰の影が『アクシオ 忍びの地図』で地図を呼び寄せる。あっという間もなく羊皮紙は双子の手を離れこちらへ飛んでくる。焦って廊下から飛び出そうとする双子をよそに、地図は風に乗って木陰に隠れた影のもとへ届き、掴んだ瞬間ジャンプでガーデンへ逃げ込んだ。

 

 残りの影も消し、(ポップ)で小窓を開くと、先ほどガーデンへ飛び込んだ影がピースサインをしていた。

 よし! 成功。

 情報が見えている状態の地図を“拾い”ました。

 

 急いで降りてきた双子が焦ったように木陰を探してまわっているのをよそ目に、私達はおしゃべりを楽しみ、喧嘩しながら騒がしく庭をはい回ってから諦めたように肩を落として帰っていく双子をみんなと一緒に怪訝な表情で見送ってから寮へ戻った。

 

 その後、ガーデンで調べてみたけど、(収納)できず、これは私のものになっていないことがわかった。即収納の恩恵は必須だから、『マスターエクスチェンジ』で私の所有物とさせてもらいました。

 ごめんなさい。

 有意義に使わせてもらいます。

 

 ウィーズリーの双子には、本当に申し訳ない。罪悪感で胃がきりきりするけど、この地図はどうしても欲しいんです。ほんとう、ごめんなさい。

 いつか何かで埋め合わせを考えよう。なんならウィーズリー・ウィザード・ウィーズの出資もしますとも。

 

 

 

 

 

 

 

 挙動を確認したくて、空き教室に入って地図を取り出す。

 

 ぼろくて黄ばんだ羊皮紙を開く。

 ちょっと感動しちゃう。すごい。

 

 ホグワーツの敷地内の詳細な地図には、せわしなく動き回る足跡が見える。そしてその足跡ごとにその人物の名前が表示されている。リアルタイムで表示が変わり、しかも変装もポリジュースも動物もどきも見破って本名が現れる。素晴らしいよねこれって。

 

 影を2人出してみる。1人は普通に、1人は“隠”+“絶”で。

 

 地図を確認すると、3つの足跡と3つのエリカ・レストレンジの名前。

 “隠”+“絶”状態の影分身の名前がはっきり表示されている。うをぅ。“隠”+“絶”でも載るのか。そういえばゴーストも載るんだもんな。凄いよねこの地図。

 『必要の部屋』と『秘密の部屋』は『位置発見不可能』の呪文がかかった部屋だから地図には表示されないってどこかに書いていたっけ。あ、じゃあ『検知不可能拡大呪文』のかかったトランクはどうなんだろう?

 さっそく飴色トランクを出して、影にひとり入ってもらう。エリカ・レストレンジの名前が2人になった。なるほど。トランクの中にいれば地図も見つけられないのか。

 

 『忍びの地図』が手に入ったから、これで安心していろいろできる。

 

 

 

 ちなみに、開いたままでおいて様子を見ていると、まる1日で勝手に閉じた。なるほど。誰かに見つかると困るから1日で自動的に閉じるという魔法をかけてあるのかな。双子みたいに数日かけて呪文を解読したことにしよう。最初に開いた状態で“拾った”から、どういうものかわかっているんだもの。必死で解放する呪文を探すのも当然だよね。

 

 そうそう。

 『忍びの地図』はアクシオで奪い取っ……じゃなくて風に乗って飛ばされてきたものを拾ったわけだけど、やったことはやり返される。

 ツインズがアクシオの呪文を覚えたらきっと試すはず。

 だから、魔法具作成の呪文集から、アクシオなどを拒否するための呪文除けの呪文を見つけ、それをかけてある。これで誰かにアクシオで取られる心配はないだろう。

 

 

 

 

 まず第一目標である、8階の“必要の部屋”を探した。

 

 大きな壁掛けタペストリーに、トロールにバレエを教えようとしている「バカのバーナバス」の絵が描いてある。その向かい側の、何の変哲もない石壁。そこが『必要の部屋』だ。

 

 ホグワーツのいたるところにある絵画やゴーストはみんなダンブルドアのスパイだ。どこで誰に聞かれているかわからないのだから、絵画の前で怪しい素振りを見せるのは自殺行為なんだけど。

 ここに入るには、どうしてもこのタペストリーの前を3回、願いを思い浮かべながら行き来しなくてはいけない。

 

 とりあえず絵画から死角になる場所を選び、ポイントを設置する。

 

「ポイント3設置 8階」

 

 その後、本体がフードを目深に被った黒のローブ姿でやってきた。

 廊下を進むとバーナバスを殴っていたトロールが動きを止めてこちらを見る。

 

「誰にも見つからず閉心術を習得できる場所が必要です。誰にも見つからず閉心術を習得できる場所が必要です。誰にも見つからず閉心術を習得できる場所が必要です」

 

 一心に祈る。壁に扉が出現したときは、嬉しさで舞い上がった。そっと扉に近付き、中へと入る。

 

 

 

 

 広い部屋を見回す。

 テーブルとソファ。テーブルには何冊かの本が乗っている。きっと“閉心術”についての指南書や何かだろう。

 それから魔法の練習ができる広いスペース。

 

 

 そこには大きな鏡があった。

 

 いかにも何かありそうな古めかしい銀の文様が描かれた大きな鏡。

 その前には倒れ込んでも怪我をしないよう大きなソファが置かれている。ご丁寧に柔らかそうなクッションが床にまでいくつも置いてあった。

 

 

 

 

 

 

 ふう……

 心を落ち着けて鏡の前に立つ。

 

 そっと鏡に映る自分を見つめる。

 鏡の中にいる黒ローブ姿の私は、緊張の面持ちでこちらを見つめ返している。

 すると――

 

 鏡に映った私がにやりと笑い、杖を構えると『レジリメンス』と呪文を唱える。

 

 とたんに頭の中にぞわぞわと嫌な感触を感じた。鏡の中の私の姿がもやもやとぼやけると、ガーデンの中にある屋敷のリビングの風景が広がった。

 メリーさんがいてラルクがいて、小雪もシェルもいる。

――私が一番誰にも知られたくない、誰にも奪われたくない記憶だ。

 

 そう、これを守らなければ。

 

 頭を直接いじられる不快感と他者に記憶を覗かれる嫌悪感、彼らを失う恐怖に吐き気をもよおす。

 あまりの気持ち悪さにふらふらとソファに倒れ込んだ。

 

「っ! ……はぁ……きつい」

 

 想像以上にきつかった。

 

 

 “閉心術習得のための訓練手引き”説明書きによると。

 

 

 開心術の手練れは相手に何も気付かれずに記憶を覗き込む。

 そのうえ、上級者になれば他者の脳に違う記憶をそっと入れ込むことすらできるのだとか。

 おそらくそこまでの能力がある術者は極々限られた一部の者だろうけど、気付かれずに記憶を見られるのは怖い。知らぬうちに変な記憶を植え付けられるのはもっと怖い。

 

 そういえば昔wikiで読んだ情報では『ヴォルデモート卿は開心術が巧みで、拷問される風景をずっと見せ続けて発狂させるような遊びをしていた』って読んだことがある。

 

 

 

 

 今回の開心術は、違和感を感じるようにわかりやすく行ってくれているそうだ。

 こちらが慣れて閉心術が少しでも使えるようになれば、次はもう少しわかりにくいように術を仕掛けてくるようになる。

 つまり、この鏡自体が相手に合わせてどんどんレベルアップしていくのだそうだ。

 

 私はそれに対応していかなければならない。

 

 

 常に閉心術をかけておくことも必要だけど、それでは相手に警戒されてしまう。

 

 いつ覗かれても良いように表層に疑似人格を作り、開心術をかけられても大切な情報を知られないようにすることができるのが理想だ。

 

 そう、見られたくない情報は意識のそのまた下に入れ込むことを意識して。

 しっかり鍵をかけて何も見せない。それが目標。

 最上級は、閉ざしていると気付かれないほど自然に心を閉ざすこと。

 表層に別の意識をのせ、開心術を行った者にはただの子供のような疑似人格や疑似記憶をみせて無害な人物を装う。

 これが、最上級。

 

 つまり、まあ、先はうんと長いってことだよ、うん。……がんばろう。

 

 

 だってダンブルドアは開心術の名手で、原作でもいろんな二次小説でも、生徒にさくっと開心術を使ってるものね。

 

 作者さんがインスタかどこかで『ダンブルドアの目がきらりと光った』とか目に関する描写がある時は開心術をかけている時ですって書いていた気がする。ほんと、人のプライバシーをもっと考慮して!

 ダンブルドアに知られたくない情報がいっぱいあるんです。私。

 

 もちろんヴォルデモートや死喰い人に見られるなんてとんでもない。魔法省の役人にも絶対ごめんだ。

 

 これからもちょくちょくきて頑張るぞ。

 

 影は一定以上の負荷がかかると消える。危ない授業の途中で人前で消えると後々すごくヤヤコシイことになりかねない。原作で読んだもろもろの危険がある授業はできるだけ本体が受け、危なくない授業はぜんぶ影にまかせることにしよう。

 

 そうだ。せっかく人に会わずに練習できる場所があるんだ。ここにメリーさんと小雪も呼べば彼女達も『閉心術』が覚えられるか。

 ガーデンから出てもこの部屋の中なら安全だし。

 

 今はこの『必要の部屋』の存在を知る生徒はいない。当面みんなで入り浸ることにしよう。

 閉心術はすごく気力を削られるからこうやってクッションに倒れ込んで精神を休めている間に他の二人が順に練習すれば効率もいい。

 

 ついでに、ここに現れた『閉心術』のための指南書たちを書き写しておこう。買ってよかった自動筆記羽ペン。私達が鏡と格闘している間に、どんどん羊皮紙に書き写していってくれ。

 もちろんタイトルは控えておく。本屋で同じ書籍が見つかればしっかり購入しよう。

 

 

 部屋の外のポイントを設置したことで6ヶ所全部埋まってしまった。しかもどこも外したくない。

  ・(ポイント1)ホーム    レストレンジ家 私室

  ・(ポイント2)寮私室    ホグワーツスリザリン寮私室

  ・(ポイント3)8階     必要の部屋前

  ・(ポイント4)ダイアゴン  ダイアゴン横丁

  ・(ポイント5)マグル街   ロンドン マグル街

  ・(ポイント6)ガーデン   シークレットガーデン

  ・(ポイントA)1階大広間前 1階大広間前(上書き用)

  ・(ポイントB)校庭     校庭(上書き用)

  ・(ポイントC)8階廊下   8階(上書き用)

 

 これからは上書き用のABCに入れていくことにしよう。

 姿現わし術ができるようになればもっと楽になるのに。早く大人になりたい。

 

 

 あ!

 そうだ。

 

 せっかく『必要の部屋』についたんだから、先に“レイブンクローの髪飾り”も貰っておこう。

 影を15人出して一斉に探せば何とかなるだろう。時間はまだまだある。何日か掛けてもいいんだし。

 

 よし。まずメリーさん達と順番に閉心術の練習を進めてから、かな。

 

 

 

 

 

 それから、もうひとつ、試してみたいことがあったんだっけ。

 

 念具は魔法に対処できるか。

 

 まず、これ。

 グリードアイランドのアイテム『聖騎士の首飾り』。奇運アレキサンドライトの取得イベントに必要で、もともと親の時代から家にあったものと、カストロさんといた時にゲインしたもののふたつが手元に残っている。

 これ、『呪いをはね返すことができる』のだ。

 もし、この世界の呪いも跳ね返せるなら、かなり使えるアイテムだと言える。

 

 試してみた。私がまだ呪いなんてできないから、『必要の部屋』に頼みましたとも。

 

 結果。できました。クラゲ脚、舌もつれ、足縛りなどの初歩の呪いから始め、痛みを与え続けるような悪意のある呪いまで跳ね返してみせた。相手の死を願うほどの強い呪いは首飾りが壊れてしまった。危ない。『リサイクルーム』があるから直せるけど、大切な防具をなくすところだった。

 でもドゥルーエラおばあ様の形見の純銀のブレスレットと併用すればどちらのアクセサリも壊すことなく防げた。うん。重ね掛けって大事だな。

 

 “開心術”や“死の呪文”、“服従の呪文”は呪いじゃなくて呪文だから跳ね返せない。そっちはヴァルブルガおばあ様に頂いた精神干渉を防ぐ防御系アクセサリで対応するしかない。“死の呪文”は対処できないけど。

 でも呪いに対抗できるものを持っているのはとてもとても安心だ。

 危険な時はいつでも忘れずに装備できるようにしておこう。

 

 普段は使わないよ。自分自身の魔法抵抗力も高めなきゃなんだもの。

 ああ、そうだ。“服従の呪文”も抵抗できるよう訓練していこう。それも『必要の部屋』でなら安全に練習できる。

 

 

 次にHUNTER×HUNTER時代に買い求めた、防御や人避けの念具。

 防御は物理攻撃だけじゃなくて、魔法で起きた事象も防いだ。これは絶対じゃなくて威力による。あまり威力が強いと壊れる。

 魔法自体は防げなかった。

 

 つまり。

 魔法で石の球を出してそれが飛んでくる→飛んできたものは『石』だから防げる。

 『敵を切り裂く』という魔法→攻撃は『肌を切り裂く魔力』だから防げない。

 って感じね。

 

 

 人避けの念具は、マグルだけじゃなくて魔法族も立ち入れない。すごい。

 

 あとは何を調べればいいかな? まあ次に思いついたら色々試してみよう。

 

 

 

 

 

 

 “レイブンクローの髪飾り”の捜索は思った以上に時間がかかった。

 原作本6巻でハリーが『プリンスの本』を隠す描写の時にキャビネット棚云々があったんだけどそれが見つからなくて苦労したからだ。

 

 

「えっと。『姿をくらます飾り棚』と『姿をくらますキャビネット棚』、ね」

 

 原作を読んで首を傾げる。

 『姿をくらますキャビネット棚』についてだ。

 

 2巻では『姿をくらます飾り棚』となっている。

 ほとんど首無しニックがピーブズを焚きつけて、『姿をくらます飾り棚』を天井から突き落とさせたのだ。金と黒の大きな飾り棚という描写がある。

 

 対になっているボージン・アンド・バークスの店のものは『大きな黒いキャビネット棚』だ。これはハリー視点で“姿をくらます”の部分を知らないからそう言う描写なんだろう。

 

 5巻で『姿をくらます飾り棚』は壊れたまま2階に置いてあって、ウィーズリーの双子がそれにスリザリンのモンタギューを突っ込んだことでモンタギューは数週間行方不明になった。

 

 6巻で去年モンタギューが姿を消した『姿をくらますキャビネット棚』が必要の部屋の『隠したいものをしまい込む部屋』に移動している。

 名称が飾り棚からキャビネット棚に変わっててさ。もう、翻訳者さんしっかりしてよって感じだよ。違うものだと思っちゃって混乱したじゃんか。

 

 ドラコが「壊れて何年も使われていなかった」と言ってるから2巻で壊れたあとはただ置いていただけで、5巻で事故があったから隠されたんだと思う。

 

 

 まあ、納得した。

 今はまだ『必要の部屋』にはキャビネット棚がないってことだった。5年目の終わりに起きたモンタギューの事件のあとで移動したんだね。

 だから髪飾りを探す時の目印がなかったんだ。

 納得納得。

 

 

 んでさ。

 この『姿をくらますキャビネット棚』、欲しいよね。

 だってこれ誰かに利用されたら危険だし、それに両方持っていればものすごく便利だよ?

 欲しい。

 すごく欲しい。

 

 この片割れはノクターン横丁の『ボージン・アンド・バークス』にあるはず。

 うん。ちょっと考えてみよう。

 

 

 

 

 

 その後、この分霊箱を見つけた方法を説明しなくてはいけなかった場合に備え、入学前にロニーに買わせた『かくれん防止器』を持ってきた。

 『かくれん防止器』は原作にあった闇魔術検知の魔法具で、ガラス製のミニチュア独楽のような形をしている。胡散臭いものが近くに存在すると警戒音を鳴らし光って回り始めるのだ。

 

 さっそく『必要の部屋』の乱雑に積み重なった品々の周りをうろうろ歩いてみる。と、でるわでるわ。ひっきりなしに光って回る。ちょっと危ない物が多すぎやしませんかね。

 その中でも一等光ったのが髪飾りだった。傍に行くと壊れんじゃないかと思うほどぐるぐる回って光ってビービー鳴り響いた。おお。見つけたじゃん。さすが、闇魔術検知器。

 

 2日を費やして見つけた“レイブンクローの髪飾り”はロケット同様、魔力遮断布、封印箱、念具の封印の三重封印でしっかりしまい込み、ガーデンのプレハブ小屋へ入れた。

 

 髪飾り、カップ、ロケットの3つは私が手に入れた。ホグワーツ創設者の宝系コンプリートだ。

 日記は2年になればホグワーツに来る。ナギニはまだ分霊箱になっていない。ハリーは壊すわけにはいかないね。何か考えなくては。

 指輪は……ゴーント家にある。

 

 

 ゴーント家か。あそこには復活の儀式に必要なトム・リドル・シニアの骨がある。

 ……こっそりトム・リドル・シニアの骨を掘り返しておくのはどうだろう?

 うん。これも要検討だな。

 

 

 

 

 

 不安なのは推定・被験者の彼女、ハンナ・クリアウォーターのこと。

 どんな子だろう? 様子を見ていると性格はいい子っぽいんだけど。

 

 

 特典の固有スキルが何か、それから、何回目の転生で、どんな能力を手に入れたか。

 それから、私のことを排除しようと考えているかどうか。

 これが怖い。

 

 固有スキルは奪えないけど、前の転生で強奪系スキルなんて手に入れているかもしれない。念能力を奪われたら死ねる。

 だってガーデンは念能力でできている。家が、家族が、消えてしまう。

 ってかもう、メリーさん達のいない人生なんて無理。彼女達を奪われたら、私は自分がどうなってしまうかわからない。

 そこはハッキリ聞いておきたい。

 

 

 でも。

 向こうの情報を知るなら、私の秘密も話さなきゃいけない。

 こんなに危険な世界で。

 開心術や真実薬があるような、こんな世界で、情報を知る人間を増やすなんて……怖すぎる。

 

 できれば、お互い内緒のままで、敵対しないという約束を取り付けたい。

 

 

 どうしても私の能力を知らなくては不安だと言われたら。どこまで話すか。

 何も馬鹿正直にすべてを話す必要はない。

 

 これは猜疑心とか友達できないとか、寂しい人だね、とか、そんな次元の話じゃない。だって私の軽率な行動で、大切な家族を失うことになるんだもの。

 私には、守るべき家族がいる。

 

 ガーデンにいる私の家族、メリーさん、小雪、ラルク、シェル。

 人間の言葉がわかり、家事全般すべてを熟せて、超一流アーティストなパンダ。

 毎日金粉が採れる美少女。

 様々な生き物に擬態できる猫。

 美しい銀色の毛皮を持ち、銀塊の糞を出す犬。

 

 それぞれ、価値がありすぎる存在だ。万が一彼らが捕まれば、どんな目に遭うか。

 だからガーデンについては絶対に誰にも明かせない。ガーデン関連の能力は、すべてが秘密だ。

 

 どれだけ信頼できる相手ができても、どれだけ愛する人ができても。

 この世界にはね。開心術や服従の呪文、真実薬、愛の妙薬という、恐るべきものがあるんだ。

 

 開心術はいとも簡単に秘密を暴いてしまう。

 たとえ本人が私の秘密を守ろうとしても、真実薬には逆らえない。

 服従させられれば、どれだけ私を愛してくれていても平気で私の秘密をばらす。

 愛の妙薬で仮初めの恋をしてしまえば、相手の寵を得るためになんだってしてしまう。

 

 だからこそ。生半可な気持ちで漏らしていい秘密じゃないんだ。

 それこそ“破れぬ誓い”くらい交わさなければ。これは信頼感とは別の話だ。

 

 

 倉庫の存在も危険かもしれない。

 だってさ。被験者のうち、前の世界のものを収納してずっと持ち越せる能力を手に入れた人ってどれくらいいるだろう? 特典でアイテムボックスを頼んだ人なら、確実にいろんなものを買い込んで次の世界へ持ち越そうとしていると思う。

 あとは、私みたいに、その世界の能力を工夫することで手に入れた人か。

 

 もし、自分が何も持たずに生まれ変わっていくのに、相手はアイテムボックスでいろんなものを持ち込んでるって知ったら、どう思うだろう。

 きっと羨ましいと思うよね。

 

 それで?

 嫉妬、するよね。反感を持つかも。

 だって人は妬む生き物だもの。誰だって自分より有利な者優秀な者を羨み、嫉妬し、自分が持てない力を持つ者がいることに対し怒りを覚えるのだ。

 

 もし持ち越せなかったことで苦労してたら……たとえば記憶が戻った3歳児の時に浮浪児か何かで食べ物がなくて死にかけたとか、服がなくて凍えたとか、物がないことで大事な人を亡くしたとか。そんな経験をしていれば余計に悔しく思うはず。

 

 それに。

 この世界の魔法の杖。これがなければ威力は激減する。私は次の世界に杖を持っていけて、相手は、持てない。私なら、悔しすぎて憎悪するかも。

 うん。羨ましがらせていいことなんて一つもない。これも、内緒。

 

 

 そうだ。

 ちゃんと回答は決めておかなくては。

 全部嘘をつく必要はない。友好的に助け合えるかもしれないんだし。できるだけ誠実に付き合いたいと思う。

 ただ、話せることと、話せないことがあるだけ。

 

・特典は何だったか

・何回目か

・前世の世界はどこで、どんな能力か

 

 これはお互い必ず聞きたいことだよね。

 前世はHUNTER×HUNTER。これは話していい。念能力者であること。これも、相手によっては話す。“発”も相手によっては話してもいい。

 能力は? 全部は言わないよ。ガーデン関連と倉庫はナシ。グリードアイランドのもろもろも全部なし。

 

 私の能力って。

 特典で貰った固有スキルの(ステップ)(ジャンプ)。

 念能力の“発”は『ガーデン』『倉庫』関連はトップシークレットとしてそれ以外だと、『シルヴィア』『影分身』『マスターエクスチェンジ』か。

 あとは神字の知識や、呪曲関連か。

 

 『シルヴィア』は初見殺しだと思う。だから隠し玉としておきたい。でも、分かりやすい能力として説明はしやすいよね。

 

 『ジャンプ』は秘密にしようと思う。

 特にこのホグワーツを出入りできることなんて、知られていいものじゃない。

 『影分身』も駄目だ。知られれば、私のアリバイは今後決して証明されないことになる。

 特に死喰い人の娘という悪評のある私が、しかも実はヴォルデモートの娘である私が、どこへでも飛べて、何人にでも分裂できるなんて知られたら、たぶん世界中の事件の犯人がすべて私だってことになってしまう。

 

 

 熟考の結果、決めました。

 

 特典は『ステップ』

 ・“ステップ”と唱えると目に見える範囲であればどこへでも移動できる

  暗がりでは飛べる範囲が狭まる

 

 念能力は『音楽によるバフデバフ』

 ・オーラを消費して様々な楽器を生み出せる

 ・術者の望む多彩な音階を奏でることができる

  基本は演奏を楽しむため。攻撃時はバフデバフができるって感じの能力

 

 衝撃波については話すかもだけど、できるだけ伏せておきたい。

 となるとシルヴィアだけでは能力が少ないと思われると困るから、どうせなら呪曲も念能力としようかなって。それに二胡の癒しと浄化の能力は人前でも使う場面があるかもしれない。

 “ほむら”は『必要の部屋』で試してみたところ、この世界の穢れにもじゅうぶん効果があった。

 楽器を(ドラポケ)で出し、演奏が終われば(収納)すれば、そういう具現化の能力だと思ってくれるんじゃないかな。

 

 よし。これで私の能力は決まった。

 最大限、ここまでなら話すギリギリのラインはここまで。

 最小限は「何も話さない」こと。

 

 彼女が、攻撃的なタイプじゃなければいいんだけど……

 願わくば……助け合える友人となれれば、うれしい。

 

 

 

 

 

 

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