エリカ、転生。   作:gab

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1年-4 秘密の部屋

1991年 10月

 

 10月も半ばを過ぎた、ある日の深夜。

 バジリスクに会いに行った。

 いや、正しくは、影が会いにいく準備をしに行った。

 

 

 嘆きのマートルが取り憑いているトイレの場所は女子の先輩方からすぐに流れてきた。「故障中の札がかかっているけど間違えて入っちゃったらヤバい」からって。まあね。もよおして駆け込んだのにゴーストに脅かされて耐え切れなかったらヤバい事になりかねないよね。主に女子の尊厳的に。先輩方から受け継がれていく情報ってほんとありがたい。

 

 “隠”+“絶”の影がトイレに行き、『故障中』の掲示のついた扉を開いた。

 

「ひゃっ、だれ? え? 誰もいないの?」

 

 マートルが独りでに開いた扉に、おどおどとした声をあげた。ゴーストにも“隠”+“絶”で隠れた影は見つけられないんだな、と内心ほっとしながら、手入れのまったく行き届いていないトイレの中を見回した。

 

 長く誰にも使われていないトイレは修理もされず、染みだらけの鏡やペンキの剥がれ落ちた小部屋の木の扉、燃え尽きそうな蝋燭の火が、陰鬱な雰囲気を醸し出している。

 

 大きな鏡の前に進む。石造りの手洗い台をじっくり調べると、銅製の蛇口の脇に、小さな蛇の形が彫ってあるのを見つけた。原作どおりなら、ここが“秘密の部屋”の入口だ。

 

 念のため、とりあえず仮でその場にジャンプポイントCを設置しておこう。扉を閉める必要があるものね。

 

「ポイントC登録“トイレ”」

 

 小さな声で呟いたのだけど、しんと静まった深夜のトイレではじゅうぶん聞こえたようだ。マートルが「ひぃぃ」と悲鳴をあげて便器の中へ飛び込んだ。

 

 可哀そうなことをしたかもしれない。気弱なゴーストを脅かすなんて。

 でもマートルに“秘密の部屋”の扉を開けるところを見られなくて良かったと思おう。

 

『開け』

 

 蛇の彫り物を本物だと信じ込むように、パーセルタングで語りかける。

 

 蛇口が眩い白い光を放ち、回り始めた。そして手洗い台が徐々に沈んでいき、太いパイプが剥き出しになる。

 

 そっと中を覗き込む。

 奥の方は真っ暗でよく見えないけれど、太いパイプが滑り台のようにずっと下まで曲線を描いて繋がっているみたいだ。

 

 よし。

 気合を入れて、ぽんと飛び込む。勢いよく滑り始めた。曲がりくねりながらどんどん滑り落ちていく。あんまり勢いよく落ちれば衝撃で影が消えてしまうかもしれない。じょうずに降りれますように。

 

 祈りながら滑り降りると、勾配が緩やかになり、出口から放りだされた。

 うっし!

 大丈夫。タイミングを見計らっていたからちゃんと着地成功しました。うん。念能力者なめんな。

 

 杖に灯りをともして進む。

 どこもかしこもジメジメしている。壁はぬるぬるしていて、床はところどころ水たまりがあり、ぬめった何かが通り過ぎた跡がいくつもあった。

 

 バジリスクに見られたら死ぬ。というかさ。影は衝撃で消えるけど、レンズや水越しに見て石化したらそのまま身体が残ったりしたらどうしよう? 試してみるつもりはないけど。

 “円”で注意深くまわりの生体反応を調べながらゆっくり進む。

 

 小さな動物の骨がそこら中に散らばっていて歩くと骨を踏むシャクという音がする。ってか蛇なのに丸飲みしないの? 丸飲みしてから骨だけ吐きだしてるんだろうか。

 巨大な緑色の抜け殻を横目に通り過ぎ、曲がり角をいくつかすぎると、前面に壁を見つけた。

 二匹の蛇が絡み合った彫刻。その目には輝く大粒のエメラルドが嵌め込んである。

 

 この先がバジリスクの住み家だ。

 

「ポイントB登録“秘密の部屋外”」

 

 この先は昼間に、本体で来よう。ここまでは原作で『真っ暗だ』と書いていたから邪魔の入らない夜中に来たけど、この先は明かりがあったはず。

 どうせなら輝く緑の鱗を見たい。

 

 昼間に来ても直接ここに飛んでくるんだもの。邪魔は入らない。

 

『またこんどくるわね』

 

 パーセルタングでそう扉に語り掛けると、(ジャンプ、トイレ)でマートルのトイレへ戻った。

 時間経過で閉まるのかわからないけど、今はまだパイプがむき出しのままだった。

 ちらりと個室の方を窺う。マートルもまだ帰ってきていない模様。

 

『閉じろ』

 

 そう命じてパイプが隠れ、手洗い台が元通りになったことを確認し、ジャンプでガーデンへ帰った。

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 おあつらえ向きにヒマで安全な魔法史の授業があった。影に授業を任せ、私は“秘密の部屋”の扉前のジャンプポイントへ飛んだ。

 

 “円”で中を調べると、ずっと向こうのほうに大きな生き物の気配を感じる。

 

 ……こんな危険なことは、本体じゃなくて影に任せるべきだと思う。

 けどさ。

 

 私はバジリスクと仲良くなりたいのだ。来年、あんな事件を起こして、無為に殺される、そんな未来は阻止したいと考えている。

 『トム・リドルの日記』に操られたジニー・ウィーズリーを主に定めていない今なら、推定スリザリンの末裔たる私を主に認定してもらえるのでは、と期待しているのだ。

 

 1000年の齢を重ねる、スリザリンの系譜のものに従う聡明な魔法生物に、ニセモノの身体で会いに行っては私の誠意を疑われてしまう。

 だから、思い切って本人がやってきた。

 

 もちろん死ぬつもりはない。

 ガーデンにシルヴィアを構えた影を何体も準備し、(ポップ)でガーデンへの小窓を開けたままにしている。小窓が開いてさえいればいつでも影が自分の判断で飛びだせる。

 私は念能力者だ。たとえ襲ってきたとしても即死の邪眼と目を合わさない限り死ぬことはない。直視できなくても“円”で居場所がわかれば攻撃されたってかわせる。そのあとのことは、殺しあうか、逃げるか、説得するか、それはわからないけど。

 

 二匹の蛇が絡み合う彫刻へ向かって『開け』と命じる。絡み合っていた蛇がわかれ、両側の壁がするすると滑るように見えなくなった。

 

 地下にあるとは思えないほど高い天井を支える石の柱にも絡み合う蛇が彫刻されている。ずいぶん広い空間だ。“円”で感じる巨大な気配はじっと動かず私のことを警戒している。でも、侵入者への強い怒りは今のところ感じられない。むしろ、すこし嬉し気だ。

 

『バジリスク。私はスリザリンに連なるもの。いきなりあなたの住み家へ足を踏み入れたことを謝罪するわ。話がしたいの。目を閉じて姿を見せてほしい』

 

 バジリスクがぞろりと身体をうごめかせる。

 私は巨大なスリザリンの石像を見上げた。原作本に書いていた言葉をパーセルタングで述べる。

 

『スリザリンよ。ホグワーツ四強の中で最強の者よ。我に話したまえ』

 

 私の言葉を受け、石像の口が徐々に広がっていく。やがて大きな黒い穴ができた。奥からシューシューと音が聞こえる。私にはなんて言っているのか、わかった。

 

『我を呼ぶか。面白い』

 

 目をしっかり閉じ、“円”で周囲を確認しながら後ろへ下がる。ずりずりと何かを引きずる音が聞こえる。『超一流パイロット』の優秀な空間把握能力が石像の口から這い出てきた巨大な生き物がとぐろを巻いていく動きを感じ取った。

 

 バジリスクの即死の邪眼は目を合わせることで効果を発揮する。バジリスクが見るだけでも、こちらが見るだけでも、死ぬことはない。互いに目を合わせて、はじめて即死の効果があるのだ。

 私は蛇の目を見ないよう細心の注意を払いながらそっと目を開けた。

 

 巨大な、鮮緑色の鱗を持った美しい蛇だった。とぐろを巻いているため長さはわからないけど、太さは丸太ほどもある。私の両手では回らない太さだ。

 

 パーセルマウスになって私の審美眼も変わったのか、エリカ・レストレンジとして生まれてからはもふもふ愛はそのままに、蛇の鱗も美しいと思うようになった。

 ……あ、違う。

 エリカ・サロウフィールドも、ラルクのしっぽのことをずっと愛らしいと思ってたわ。そうか、私を鱗好きにしたのはラルクだったのね。納得納得。

 

『はじめまして、美しき蛇の王、バジリスク』

 

『はじめまして、新たな主よ。サラザール・スリザリンの“秘密の部屋”をよくぞ探し当てた』

 

『私の名はエリカ・アレクシア・レストレンジ。エリカと呼んでくれると嬉しいわ』

 

『我はバジリスク。名はない』

 

『不便じゃないの?』

 

『名を呼び合う相手などおらぬわ』

 

『そう……ね』

 

 ちょっとかわいそうだけど、たしかにここには彼しかいないものね。

 

『50年ぶりの主よ。我に何を望む』

 

『そうね。とりあえずは仲良くなりたい、かな』

 

『なんと言った?』

 

『仲良くなりたい、よ。バジリスク。私は力を求めてきたんじゃないの』

 

『50年前の主はマグル生まれの生徒を襲えと言ったぞ? おぬしはいらんのか』

 

『マグル生まれも貴重な魔法使いよ。今は魔法使いの数がものすごく減っているの。マグル生まれを排斥すれば魔法族が滅ぶくらいに危険な数なのよ。そんな無駄はしないわ』

 

『我の力はいらぬと?』

 

『あなたの強さは素敵だと思うわ。でもそれよりも私はあなたの叡智が欲しいの』

 

『我の知ることを話せというか』

 

『そうね。おしゃべりをしたいかな。そしていろんな話を聞かせてほしい』

 

『ふむ。それも一興。我はスリザリンの系譜の者に従うのみじゃ』

 

 律義に目を閉じたまま語るバジリスクをそっと見る。50年ぶりの対話が嬉しいのか、少し楽し気な気配を感じる。

 私はトム・リドルのことを話すことにした。

 

『50年前のあなたの主は、私の父親らしいの』

 

『おお、そうか。ぬしはあの青年の娘じゃったか』

 

『ええ。感じるかしら?』

 

『我がわかるのは、スリザリンの系譜か否かだけよ。50年前の主も、新しき主も、どちらもスリザリンの系譜であることはわかる』

 

 考えてみれば当たり前の話だった。

 主になれるのはスリザリンの血が入っている者だけ。ならば過去歴代の主は、血の濃淡の差はあれど、みな親類縁者ってわけだ。直接親子ってのは珍しいんだろうけど。

 

 長く続いたブラック家やロジエール家にはどこかでサラザールの血が入っている。過去のブラック一族にだってパーセルマウスがいたくらいだもの。結局私がお辞儀様の娘かどうかはバジリスクにも判断できないのか。

 

『それでね。来年あたり、ちょっとここもうるさくなるの』

 

『どういうことかの?』

 

『うちの父親が、この部屋を開いたあと記憶をある魔法具に封じたの。それを使ってあなたを利用しようとしている人がいるみたいでね。

 私、せっかくこうやって知り合えたのに、あなたが殺されるのはいやなの』

 

『なるほどのう。50年ぶりに目覚めたと言うに、やれ賑やかなものよのう』

 

『本当は来年までに我が家へ移動してもらいたいのだけど』

 

『何を言うか。ホグワーツに危機が迫るのであれば、我が戦わずしてなんとする』

 

 ここを守るのがスリザリンの命令だったらしい。でも守る側じゃなくてあなたがその危機になるんだけど。

 

『ホグワーツを混乱に陥れようとしているのはあなたの前の主が16歳だった頃の記憶を封じ込めた魔法具よ。あなたは戦える?』

 

『我が主は今日よりおぬしじゃ。50年前の主そのものであれば話も聞こうが、他の者が操る魔法具ごときではおぬしとは比べられぬわ』

 

『ありがとう。私を選んでくれて』

 

『うむ』

 

『まあそう言うわけで、来年のことはまた改めて話すわね。今年は何度か会いに来るから、あなたもゆっくり考えて』

 

『そうしよう』

 

『じゃあ……ああ、えっと』

 

 ずっとあなたとかバジリスクとか呼ぶのも、変だよね。

 

『私があなたの名前を付けてもいいかしら?』

 

『我に名をとな……ふむ。よかろう』

 

 名前は……うーん。

 あ!

 

『失礼なことを聞くけど、あなたオス? それともメス?』

 

『我のどこがオスに見えるのだ』

 

 メスだったわ。

 えー。

 原作でバジリスクが『俺様の牙で引き裂いてやる』みたいに話してたのに、オスじゃないじゃん。これは日本語版(ハンター文字)の翻訳ミスなんだろうか。

 

 彼女によると、オスは頭に深紅の羽毛が生えているらしい。トサカみたいな感じなんだろうか。鶏成分はここ?

 目を見ないよう気を付けながら、鱗がちょっとトゲトゲしている頭を見る。なるほど。このバジリスクには羽毛がない。つまり、レディってことね。

 

 じっと顔を見ていると、名前を待っているのか、目をつむったまま少しそわそわしているのがわかった。おお、ちょっと可愛い。

 

 うん。メスね、メス。

 名前なまえナマエ。

 

 メリーさんはお母さん達がつけた名前。その後家族はみんな私が名付けた。

 ラルクは『虹』、小雪は『雪』、シェルは『貝殻』、マーリンは『森の賢者』。

 蛇かあ。

 

 水系? 水よりちょっとヌメヌメして見えるからイメージがなあ。

 それよりやっぱりこの綺麗に輝く鮮やかな緑色を名前につけたほうが彼、じゃない、彼女のイメージに合うよね。

 エメラルドグリーンというより、翡翠色っぽいね。

 じゃあ、翡翠。そのままヒスイ? 英語にしてジェイド? どちらにしても女性でも男性でも使える名前だ。ん……よし、ジェイドにしよう。

 

『あなたの名前、ジェイドでどう? その見事な鱗の色合いを名前にしたの』

 

『ジェイドか、ふむ。悪くないのう』

 

 満足げな気配を感じる。どうやら喜んでくれたようだ。

 

 

 ジェイドに昔の話を聞いた。

 サラザール・スリザリンと過ごした時間は短かったけど濃密だった。彼からはいろんなことを教わったし、蛇好きの彼は生まれたばかりのジェイドをいたく可愛がってくれたとか。

 そしてこの場に縛り付け、働かせるために生み出したことを、謝ってくれたのだと懐かし気に話す。

 

 その後、創設者達の間での確執があり、スリザリンはジェイドにこの場所を守れとの命令を残してこの地を去る。ジェイドは必要な時が訪れるまで眠りについた。

 

 

 50年前の話も聞かせてもらった。

 ジェイドはトム・リドルが『秘密の部屋』を開く前から起きていたらしい。ホグワーツ内にアクロマンチュラの気配を感じたから、だそうだ。ハグリッド、めっちゃ戦犯じゃん。

 なんとかアクロマンチュラを仕留めようと考えていたけど、敵は地下にある部屋の一室で大切に守られていて(ジェイド目線だとそうなる。ハグリッドが隠し育てていたからだね)果たせず、水道管をうろうろしているうちに、トム・リドルが『秘密の部屋』を見つけ出した。

 

 マグル生まれを殺せとリドルに言われて、アクロマンチュラを仕留めるチャンスだと考えて外に出たら運悪くそこに女子生徒がいた。

 マートルはマグル生まれだけど、トム・リドルの予定していたターゲットとは違ったらしい。まさか部屋の入口すぐで殺してしまうなんて彼にとっても計算違いだった。

 

 マートルを殺したあとリドルが苦しそうに呻いて(たぶん分霊箱のために魂を切り裂いた瞬間か)、そして、人が来るからもう戻れと命じられた。ジェイドはアクロマンチュラが地下の一室にいることをリドルに教えて退治したいと訴えたけど、こちらでやっておくから戻れと強く言われて部屋へ戻ったのがリドルと会った最後らしい。

 

 その後はおそらく監視が厳しくなってこれ以上『秘密の部屋』を開くことができなかったんだと思う。

 そして、自分への疑いをそらすため、ジェイドからの情報を上手く利用したトム・リドルが、アクロマンチュラの飼い主のハグリッドを告発したんだろう。

 ダンブルドアだけが彼を疑い続けたけど、トム・リドルは優等生の皮を被ったまま卒業していった。

 

 『秘密の部屋』を開く者もおらず、アクロマンチュラの気配もなくなった(アラゴグが森へ逃げたから)ため、ジェイドはまた眠りについた。

 そのアクロマンチュラが『禁じられた森』で巨大コロニーを形成していることを知ればきっとジェイドは怒って襲撃に行きそうだから黙っていよう。コロニーの蜘蛛達が文字通り『蜘蛛の子を散らすように』一斉に逃げ出したら、生徒達が危険だもの。

 

 

 

 ジェイドは千年生きているけど、そのほとんどの時間は眠ったままだったらしい。秘密の部屋を誰かが開いた時、ホグワーツに危険が訪れた時、目覚めるようにサラザール・スリザリンが“呪”をかけていたのだとか。

 だから生まれてから千年の時は経っているけど、活動していた時間は短い。

 身体が成長しているのは、このスリザリンの石像の奥に隠された部屋に記された魔法陣から供給される魔力を取り込んでいたから。

 

 眠っている間はともかく、起きているなら食事が必要らしい。でも彼女が餌を求めて水道パイプを動き回るのはちょっとご遠慮いただきたい。

 

 ここの魔法陣から魔力供給を受けているため食事量はさほど必要ではなく、鶏くらいの大きさがあれば数日に1羽程度でじゅうぶんなのだとか。

 今度から私が持ってくるから、この部屋付近に迷い込んできた小動物以外の狩りは我慢してねとお願いしておいた。

 

 ジェイドからも何かあれば連絡できるよう、両面鏡を一つ渡し(スリザリン像の髭のあたりに立て掛けて置いた)、私はこの部屋にポイントA“秘密の部屋”を登録するとジャンプでガーデンへと戻った。

 

 

 変装した影がダイアゴン横丁の『魔法動物ペットショップ』に行き、魔法生物のための餌になる小動物はどこで売っているのか教えてもらった。店員は、ここでも売っているけど量によっては仕入れ先の店に直接買いに行ったほうがいいと店を教えてもらった。

 ダイアゴン横丁の外れの方にあって、もう少しでノクターン横丁にかかるかというあたりだった。ハツカネズミから小鳥、ネズミ、鶏、ウサギ、イタチなど毎回その時に手に入りやすいものをいろいろ取り混ぜて毎週買いにくると約束して、手付にひと月分を支払っておく。

 ウサギとハツカネズミを20キロ購入して巾着にしまうと店を出る。

 買い物の途中で「嬢ちゃん、ホグワーツは?」と聞かれ、咄嗟に「来年からさ」と答えてしまった。うん。来年からは小雪に買いに来てもらおう。ちゃんと影が護衛するから、ね。

 

 

 魔法界で買えない時のためのリスクヘッジも必要かな。

 その後マグル街へも行ってもらう。

 街角にある電話ボックスに置いてある電話帳で、鶏やネズミなどの内臓を処理しているだけの死体を丸ごとそのまま売っているような業者を探し、動物園へ納入しているところを見つけた。

 

 さすがに11歳が買いに行ける商品じゃない。変装しても年齢はごまかせない。

 

 グリードアイランドのアイテム『ウグイスキャンディー』をゲインして、一粒取り出して舐める。これ初めて使ったけど、担当者サマに没収されなくてほんとに良かった。

 うちには子供と少女しかいないから『大人の声』が使えて助かった。

 

 飴の力でオジサン声になると、業者へ電話し、爬虫類系の大型のペットを何匹か飼っているお客さんのためにできるだけ丸ごとの死体が欲しいと依頼する。

 鶏、小鳥、ネズミ、兎などの小動物でその時に手に入るものをいろいろ取り交ぜて定期購入したい。これから毎週1回取りに行くから、所定の量を今後継続して買いたいと頼む。

 

「あ? 信用? ちゃんと払うって言ってんだろ? ちっ、じゃあ前払いで払おう。3ヶ月分、纏めてどどんとキャッシュで支払うからしっかり新鮮でいい品を頼むぜ。ああ、明日からだ。受け取りはうちのバイトの女の子に行かせるけど、こいつ、人見知りで喋んの苦手なんだわ、虐めてくれんなよな。じゃあよろしく頼むな」

 

 なんてごり押しして電話を切った。うん。私が取りに行けないんだから、小雪に頼むしかないんだよね。

 

 翌日、作業員っぽい青のつなぎを着た小雪ががくがくと緊張の面持ちでクーラーボックスを抱きしめて出かけてくれた。あ、もちろん一人きりで行かせたりしないよ。『コミュ障の姉を心配するこまっしゃくれた妹』な影が付き添ったよ当然。行き帰りはジャンプだし。

 

 ふぅ、人見知りの小雪に負担をかけちゃってるな。

 申し訳ない。早く外を一人で自由に動き回れるくらいに大きくなりたい。

 

 これで魔法界とマグル街で餌になる動物の死骸を毎週継続して手に入れる算段がついた。多めに買っているから余りは必要になるまで倉庫にしまっておけば鮮度は問題ない。マグルの方は保存料とか使ってそうだから、できればそちらばかり食べないで両方の物をまんべんなくジェイドに与えた方がいいかな。

 

 

 

 これでマグル街のお金が無くなりそうだ。

 マグル街って魔法界みたいにザルじゃないから、金の延べ棒や砂金を現金化しようとすると身分証明書の提示を求められちゃうんだよね。

 じゃまくさいけど、グリンゴッツの窓口で手元にあるガリオン金貨をマグルのお金に換金してこよう。忙しくなる前に行ってきてもらうか。

 私はそう結論づけると影をひとり、生み出した。

 

 

 

 

 

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