エリカ、転生。   作:gab

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2年-5 2年次の終わり

 

1993年 5月

 

 期末試験に向けて毎日勉強と課題に追われる日々を過ごしていたある日、梟便で来た手紙を見て驚いた。

 業者から例のものが手に入ったという連絡だった。ゴブリンの武器。見つかったのは短剣らしい。

 マジか。あれを持っている奴がいたんだ。しかも、手放そうって人が。

 うわあ。きっと没落した純血貴族家だ。前の戦いで直系が絶えた家のどこかかもしれない。

 

 もう誰にも作ることのできない貴重な品だから、提示された金額はとてつもない高額だった。

 うん。レストレンジ家の金庫舐めるな。余裕余裕。

 

 

 入手できた礼を書き、手間をねぎらい、夏休みになればすぐ行くから用意しておいてほしい旨を書いて、マーリンに託した。

 ゴブリンの短剣。きっと素晴らしい輝きだろうな。手に取って見るのが楽しみだ。

 

 

 

 

 

1993年 5月20日 誕生日 13歳

 

 誕生日を迎えた。

 今年もガーデンで家族みんなで祝った。

 マルフォイ家や友人達も心のこもったプレゼントがたくさん届いた。嬉しい。

 

 

 13歳だ。13歳。

 やっと……やっとHUNTER×HUNTERの世界よりも長生きできた。日本なら中学校に入る年齢だ。まだまだ子供だけど、それでも12歳を超えたことがとても嬉しい。

 次の目標は英里佳の享年18歳だ。

 

 うー、この目標はかなり厳しい。だってハリー・ポッター世界の本編は、ハリーが17歳までだから。

 私が無事18歳になるためにはいくつもの試練がある。ヴォルデモート復活の阻止が、その後の人生の岐路だ。

 成功させたい。絶対に。

 

 

 修行は順調だと思う。私だけじゃなくて眷属もだ。

 魔法の練度もずいぶん高くなった。

 

 

 そろそろ念具ピアスがなんの負荷も感じなくなってきた。とうとう私のオーラ量とオーラ制御能力がピアスを超えた。

 若手のための補助具だと考えれば、やっと私は初心者を超えたということなのかな。

 外すと楽すぎるから制御の練習のためにつけ続けるけど。

 

 できればこれと同じ効果を持つものをもうひとつ欲しい。ピアス2個並べて開けるから。オーラを増やせるだけ増やしたい。なんならどこのパンク姉ちゃん? ってくらい耳にずらずらピアスを並べてもいいから。オーラ量増やしたいし、もっと精密な制御を覚えたい。もっとうまくなりたい。

 念具ベルト5点セットももっと重いものが欲しい。数トンの負荷はありがたいんだけど、もっと重くてもいいのよ? どうにか自作できないものか……

 

 壊しても『リサイクルーム』で直るんだから、分解して中に刻まれている神字を調べるか。

 でも、コピー避けに、分解したら神字が消えるなんて工夫がされていたら困るし。うーん。

 

 

 ……あれ?

 私の影分身はピアスと念具ベルトセットをつけたままだし、しっかり負荷も感じている。

 これ、もしかして、もしかする?

 

 

 多めにオーラを込めた影を出す。彼女から念具を外してもらって、私が自分のものの横に並べて一緒につけてみた。ベルトをつけて、シュッと身体に合うサイズに変わる。お。動いている。ずんと身体が重い。足首と手首にも填めてみる。身体全体に負荷がかかった。

 

 うわあ。増えた。増えたよ。すごい。すごいよ。

 久しぶりに身体の重さが辛いと感じる。重い。すごい。両手首を眺める。太めの銀のブレスレットが二重に並んでいる。シンプルなデザインだからあまり気にならない、と思う。

 

 

 新しい影を出す。その影も二つの念具を並べてつけている。うん。

 

 私が念具を借りた影を消す。と、同時に念具も消える。新しい影の方も一つだけになっている。うん。なるほど。素晴らしい。

 なら。これから毎日影ひとりから念具を借りてつければ、ずっと二重に付けられるってことだね。

 

 あとでロニーにピアス穴を開けてもらおう。開けたての穴に毎日ピアスをつけるのって辛いから、新しく開ける穴に原本をつけて、もともと開いている穴に毎日影ピアスをつければいいね。うん。

 

 

 

 

 スリザリン寮の私室でロニーを呼ぶと、数分後ロニーがやってきた。2年目にして初めてホグワーツから呼びかけてくれたことに有頂天のロニーは、ワクワクした面持ちで命令待ちしている。大きな目が感動に打ち震えている。一人にしてごめんよ、ロニー。

 

 もう一つピアスを開けたいから、今ついているピアスの横にまた穴をあけて、と頼んで耳を見せる。

 元々開いているピアス穴にはすでに影ピアスが嵌っている。

 

 原本ピアスをロニーに手渡すと、久しぶりの私の世話に喜びに身を震わせながら綺麗に穴を開けてくれた。

 左右に二つ目の穴が開いて、ぎゅっとオーラが喰われる。おお。凄い。久しぶりにオーラの制御が難しく感じる。魔力も……うん。まさに、要練習と言う感じ。

 

「ありがとう、ロニー」

 

「また何かございましたら、すぐにロニーに御用を申し付けてくださいませ、お嬢様」

 

 そう言うと名残惜し気に帰っていった。可愛いロニー。夏に帰ったらちょっと甘えてみよう。

 

 これでまた一層修行に力が入るね。

 こんな使い方ができるなんて。凄くない? とても汎用性の高い能力だわ……うん。まーべらす。

 

 

 

 

 

 

 もうひとつ、喜びの報告がある。

 ついに……ついに……ついに!

 ついに、『守護霊の呪文』ができるようになった。

 

 守護霊は顕現に成功した時に、自分の守護霊が何かが本能でわかるものらしい。紛らわしいほど似通った種族でも、しっかり自分の守護霊がわかる。

 

 私の守護霊はカラス……ワタリガラスだった。カラス(crow)じゃなくて、ワタリガラス(raven)ね、レイヴン。サイズが大きいし、なにより嘴が長い。

 メリーさんの守護霊は仔パンダ。子育て大好きなメリーさんだから仔パンダなのかな。

 小雪はマルチーズ。チャイナ風だからペキニーズかと思ったのに、小雪はマルチーズだと断言した。内弁慶で人見知りだけど明るく可愛らしい小雪にマルチーズはぴったりだと思う。

 

 お披露目のため、ガーデンでラルクとシェル、ジェイドが見守る中、私、メリーさん、小雪が杖を構えて立つ。

 

『エクスペクト・パトローナム!(守護霊よ来たれ!)』

 

 杖先から銀白色の靄が飛び出す。それはあっという間に力強い翼を広げるワタリガラスの姿に変わり、周囲を飛び回る。

 同時に放たれたメリーさんの仔パンダ、小雪のマルチーズと、時に並んで、時に交差し、縦横無尽に空中を翔ける。

 まるで生きているかのように躍動感あふれる銀白色の生き物達は、『空を翔けまわるのが楽しい』と全身であらわしているかのよう。

 

 

 

 ……不思議だ。

 前世では何人も人を殺した。相手は悪人だけだったけど、間違いなく私は人殺しだ。

 その記憶を持った魂でも、守護霊はこうやって助けてくれる。

 “闇の魔法や人殺しは魂を穢す”って言うけど。私の魂は『管理者サマ』に守られているのかな。

 

 この呪文がちゃんと使えることは、とても嬉しい。まだ私の魂は穢れていないという証だから。

 できれば……ううん。必ず、ずっとこの呪文が使えるままでいなくては。

 

 

 あとはこれをもっと使いこなせるようにならなくちゃ。

 本当に焦った時にも出せるように。ディメンターの前では幸福の記憶を思い浮かべられずに守護霊が出せないなんて困るし。

 

 それから、『守護霊の呪文』の上級者は伝言を遠くにいる相手に届けることができる。とても便利だ。マクゴナガル先生なんて原作7巻で無言呪文かつ3体同時出ししていた。あれが目標だな。

 

 

 

 それにしても。

 ワタリガラスね。

 ほんと。守護霊がワタリガラスなら、動物もどきもワタリガラスっぽいかな。

 

 しなやかで強く、じつに魔女らしい姿だ。それに警戒心が強くて収集癖があるところがまた私らしい。

 しかも私の望む『人込みに紛れられる』動物もどきの良さをじゅうぶん活用できる姿。空だって飛べちゃう。

 

 この姿なら街中で変身してもバレずにいられる。木や屋根に止まれば目立たない。一般的なカラスよりサイズが大きいけど、ワタリガラスなら街にいないこともない。目もいい。

 逃走するにも、誰かを追跡するにも、こっそり潜んで秘密を探るにも、ばっちりな生き物だ。

 

 これは『動物もどき』になる練習に気合が入るよ。うん。

 はやく勉強したい。

 

 でも、『動物もどき』は変身術のめちゃくちゃ高度な奴。しかも自分の身体を変えるなんて途轍もなく繊細で高度な術だ。

 失敗するととんでもないことになる。

 これは独学では無理だよ。いずれマクゴナガル先生に相談するつもり。……いや、それともこれも『必要の部屋』師匠に頼るか。

 

 

 

 

 小雪とメリーさんは閉心術、開心術もできる。

 嬉しいのは言葉を話せないメリーさんと閉心術と開心術で心を読ませあうことで会話が可能になったことだ。

 

 さっそくハンドサインを決めた。HUNTER×HUNTER時代のビスケ師匠にあやかって指を一本立てるという仕草だ。

 メリーさんが指を(爪を?)たてれば開心術で彼女の目を見る。するとメリーさんが伝えたい事を思い浮かべてくれる。言葉じゃないけど風景とか動作を見せてくれるからわかりやすい。ケーキいる? とか、コーヒーと紅茶どちらにする? とかね。

 こちらは話せるからそれに対して口で返事をすればいい。

 

 でもこれって誰にも気付かれずに会話が可能ってことだから、私と小雪もそれをできるように練習している。

 お互いそうやって話したい人が指を立てて、一言も話さずに心と目で会話をできるようになった。

 これって閉心術の練習にもなる。相手に知らせたい事柄だけを一番上に浮かべる練習になるため、心の階層がより上手に操れるようになったからだ。

 

 開心術の技術もうまくなった。

 最初は下手な開心術で侵入されてお互い頭が痛くなったから、それも反省材料にして『必要の部屋』の鏡を相手に何度も練習を繰り返し、繊細な開心術の使い方をできるようになった。メリーさん達も危険を冒してまた『必要の部屋』通いを続けた。

 

 おかげで技術は上達したと思う。もう少し慣れれば、気付かれずに開心術を使うこともできるようになるだろう。

 

「ね。小雪」

 

「なに? マスター」

 

「小雪はもう閉心術ができるようになった。精神干渉を防ぐマジックアイテムも買えたし、ある程度自衛はできるようになったと考えていいんじゃないかな。

 だからね。ホグワーツには通わせてあげられないけど、魔法界の個人レッスンなら受けられると思うよ」

 

 本当はガーデンから一歩も出したくない。彼女は文字通り“金の卵を産む鶏”だ。そして未成年の女性で容姿が整っている。戸籍がなく、後ろ盾もない。いろんな意味で美味しい獲物だから、もし誘拐されて、そして、考えるのもおぞましいけど、女性的な被害にあったとする。そのあと、誘拐犯は気付く。彼女の身体から金粉が落ちることを。

 ああ、もう。想像しただけで不安で不安で仕方なくなる。

 

 だけど。彼女達の自由を奪ってしまうのは、駄目だと思うのだ。夜はかならずガーデンに戻って、私の影が護衛しながらなら、外に出てもいいんじゃないかな。

 

 人見知りで、魔法界とマグル街へ週1回ずつジェイドの餌を取りに行く作業すら負担に感じる彼女に酷だけど。でも「出られない」のと「出ない」のは別だと思うんだ。

 

 でも彼女の返事は簡潔だった。いわく。「やだ。こわい。他の人に会いたくない」

 人見知りここに極まれりだ。

 

「あのねマスター。私もメリーさんも、ここに閉じ込められているんじゃないよ? 私は家の中で本を読んだりゲームをしたりDVDを観たりするのが好きなの。メリーさんもメイドパンダとして家事をすることは本能だし、空き時間はアトリエに籠って好きなものを描いたり作ったりしてるし。それにガーデンは広いもん。『森』だってあるし。全然飽きるヒマないよ?」

 

「ありがと」

 

 メリーさんも深く頷いている。

 閉じ込めているって罪悪感を感じてたんだけど。そう言ってくれてほっとした。

 

「あ、でもさ。本当にどうしようもない時に逃げられるようにさ。姿現わし術は覚えてほしいな」

 

 これはちゃんとプロに講習を受けてほしい。ばらけたらとんでもないことになる。焦って手足をどこかに置き去りにしてしまうなんて、本当に怖いから。

 巨大な森で迷子になっても自力で帰ってこれるしね。どこかで覚えられるチャンスがあればいいんだけど。

 

 せめて、守護霊の呪文での伝言は早く覚えてほしい。これがあれば『森』で迷子になっても救援要請が出せるし。

 

 あ、そうそう。両面鏡と箒、水、保存食くらいは常にモークトカゲの巾着に入れて持っていてほしい。

 そういうと、ふたりともうんうんと頷いた。

 

 両面鏡は、ガーデンの居間に二人に渡したものの片割れが並べて置いてあるのだ。だから常に鏡を持っていてくれると安心できる。

 だけど、ガーデンは私の念空間、『山神の庭』はそこだけ『一坪の密林』というアイテムが作り上げた別の念空間だ。だからこの二点間も別の念空間同士となり、鏡が繋がらない。

 だから、『森』で迷子になれば、守護霊に飛んでもらうしかない。試してみたけど、『森』の格子戸は守護霊が通り抜けられるから。

 それに万が一連絡もなく帰りが遅くなれば、片割れの鏡を持って『森』に迎えに行けばいい。『森』同士なら繋がるからそれで連絡を取れば探しやすいもの。

 

 箒なんだけど、二人とも空を飛ぶのは好きじゃないらしく、必要に駆られないと乗らない。今年買ったニンバス2001に替える? って聞いたけど2000のままでいいと言われた。

 そうして彼女達はニンバス2000をそれぞれ巾着に常備するようになった。

 

 

 

 

 念の修行も順調だ。

 

 ちなみに、影分身の数は今のところ15人以上は同時に出さないようにしている。オーラ量で言えばもっと多数を同時に生み出せるんだけど、戻ってきた時の私の頭がめちゃくちゃ混乱するのだ。

 もちろん同時に消さなければいいのだけど、一日に覚えられる知識量なんてそこまで多くない。いっぺんに詰め込んで覚えても忘れてしまえば意味がないもの。だから訓練や勉強などは数人に留めて、単純作業員を含めて15名まで、と決めているのだ。

 一斉に同じ単純作業をさせるだけなら30体は余裕で出せる。同じ行動をさせるだけなら一気に戻しても混乱しないし。

 30体で衝撃波を一斉に放ったり、魔法や念弾の一斉射撃なんてこともできちゃう。

 

 

 念能力者は私とラルクだけ。ラルクは変化系だった。

 

 しかもラルクは身体のサイズを変えられるという途轍もなく使い勝手のいい“発”を作り上げた。

 もともとラルクはカメレオンキャットという種族で、同じ大きさのままでどんな生き物にも変化できる能力を持っている。

 翼があれば当然飛べるし、イルカなら海を泳げる。馬なら何かを背に乗せて走ることができる。

 ただし、身体の大きさは変わらないという制限があった。

 

 そのラルクが変化系の“発”で大きくなれた。

 私を乗せて、走ったり空を翔けることができるようになったというわけだ。

 

 彼は昔からずっと『大きくなりたい』と願っていた。私を乗せて走るのが夢だった。だから彼の“発”がこうなるのも当然だよね。

 

 そして『山神の庭』で会った翼のある毛玉(種族名は知らない。さすが固有種の森)をリスペクトして、彼の姿を取るようになった。私を乗せてガーデンの空を飛んでくれたのだ。

 あの日の感動は忘れない。

 だってさ、私を乗せたいからこの“発”を作ったんだよ。ラルクの一番はいつだって私。そんなの、嬉しいに決まっている。守護霊の呪文のキーになるほどの喜びだった。

 

 それに『超一流パイロット』の能力は生き物の騎乗にも効果があるってはっきりわかったことも幸せに上乗せされた。

 だってとても安定して乗っていられる。どこに座ってどう体重をかけ、どのあたりに掴まっていればいいのか、すぐに理解できたのだ。騎獣のやりたいことも何となく伝わる。『超一流パイロット』SUGEE。

 

 ラルクはもとの身体が小さいため念能力者としてはあまりスタミナがない。長時間重荷を乗せて飛ぶにはまだまだ念修行が必要だろう。

 

 私を乗せるという目標以外にも、敵と戦う際に大きさを自由に変えられるのは大きなアドバンテージだ。

 ラルクはやる気満々だ。より一層修行に身を入れるようになった。

 

 彼の攻撃方法は鋭く変化させた爪と牙。そして爪先から放つ念弾。

 

 放出系は私もラルクも苦手分野だ。特質系の私からも、変化系のラルクからも放出系は60パーセントの習得率だもん。

 だけどこの世界の人に見えない念弾はとても有利な攻撃手段で、私はかなり力をいれて念弾の訓練をしている。

 ラルクもそれに参加していたから、一緒に上達していったみたい。隠し玉のように額から放つこともできるようになった。ラルクSUGEE。

 

 

 

 バジリスクのジェイドはもう存在だけで強者ですから、修行には参加しない。戦闘訓練なんてして気持ちが高ぶって噛みつかれたら、解毒剤はないんだもの。『大天使の息吹』はあと2枚しかないしね。

 でも『(いにしえ)の魔法』を知っているから、その知恵で私達を助けてくれる。

 

 

 訓練の話になると一度も名前がでないシェルはどうだって?

 うん。

 シェルは魔法も念も覚えていない。彼はとてもマイペースだ。

 訓練している私達と一緒に走ったり、横で居眠りしたり、彼は彼でとても楽しそうだからそれでじゅうぶん。

 

 私はべつに誰にも戦ってほしいわけじゃない。

 ただ何かあった時に私が助けに行けるまでの間自衛してもらえればそれでいいのだ。操られたりしないために閉心術と服従の呪文の抵抗訓練は当然必須だけどさ。

 

 メリーさんは料理や掃除に魔法を使っていて、すごく時間短縮できるようになったと喜んでいる。鍋の時間操作で出来立てほやほやのシチューが煮込まれた状態になっていたり、包丁に魔法をかけて野菜を刻ませたり、掃除は呪文ひとつで終わらせたり、とても上手に操っている。

 

 メリーさんが『エバネスコ(消えよ)』と『アパレシウム(現れよ)』を上手に使えるようになり、ホワイトボードに“エバネスコ中リスト”を書き込みながら管理できるようになった。私の倉庫に頼らなくても、生鮮食品や出来立てほやほやの料理がたくさんストックできるようになったことはとても心強い。

 

 小雪も魔法を覚えることが楽しいみたい。教科書を見ての独学でも私達はすでに4年のものまで進んでいる。それに小雪っていろんなDVDを見てはハリー・ポッター世界の魔法で再現できないか考えている。

 そうやって魔法を一緒に開発するのも楽しい。

 

 

 

 

 なんてね。色々修行することは多いのだけど。

 それよりも私にはもっと巨大な敵がもうすぐそこまで近づいてきている。

 そう。

 6月1日から始まる期末試験だ。

 

 毎日課題と予習復習で、影を使える私ですら睡眠不足になりそうだよ。

 

 

 

 

 

 

 ロックハートは忘却術で人の手柄を盗んでいたとバレてアズカバン送りになった。私もハンナも何もしていない。どこでバレたんだろう。子供達から授業内容を聞いた親たちのクレームが凄くて、誰かが調べたんだろうか?

 ダンブルドアが実は最初から気付いていたのかもしれない。でもそんな奴教授として呼ぶかな? 

 そこのところはわからない。

 

 とにかく、ロックハートはいなくなり、来年の「闇の魔術に対する防衛術」の教授の席はまた空いた。

 

 ヴォルデモートの呪いってすごい。

 

 

 

 

 試験が終わり、今年の寮杯の結果はスリザリンが一位だった。事件のない今年はハリー達が活躍することもなく、クィディッチはスリザリンが優勝した。

 ダンブルドアもこじつける内容がなかったんだろう。

 ごく普通にスリザリンの飾りつけの中で食べる食事は美味しかった。

 

 

 

 試験の成績はやっぱりハーマイオニーが首位、2位が私で3位がドラコだった。

 

 

 

 

 ホグワーツ特急へ向かう馬車に乗り込む時、ドラコが呻いて後退った。

 

「ドラコ?」

 

 青白い顔をさらに青白くさせて、驚きの顔で前を凝視している。私は怪訝に思って前を……ああ、セストラルだ。

 そうか。おじい様の臨終の時に私もドラコも立ち会ったから。『死を見た』んだ。

 私も急いで驚いた顔をして、ドラコにしがみついた。

 

「ひぃ」

 

 ちょっと芝居臭い。

 ヴィンスとグレッグが何やってんだよ、と軽く言い捨てて先に馬車に乗り込んだ。

 私とドラコも恐々と少しだけ遠回りに歩いて馬車に乗る。

 

 他の人に聞かれないよう、そっと声を潜めてドラコに問いかける。

 

「行きの馬車は何も曳いてなかったのに……ドラコも見えた?」

 

「あ、ああ。馬っぽかった」

 

「翼もあったね」

 

「ガリガリで死体かと思った」

 

「変な生き物。急に見えるようになるなんて、何か理由があるはず。みんなは見えてないみたいだし……列車に乗ったら『魔法生物図鑑』を見なきゃ」

 

 

 と言うような会話を交わし、その後、『幻の動物とその生息地』の本を読んで、『死を見た』者だけが見えるセストラルと言う生き物だと知った。おじい様の臨終に立ち会ったからだな、と納得するドラコに、これで来年も見えないフリをしなくてすんだ、とちょっと安心した私だった。

 

 

 

 

 

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