エリカ、転生。 作:gab
1994年 5月20日 誕生日 14歳
今年も無事誕生日を迎えることができた。14歳だ。中二。
身長もだいぶ伸びてきた。HUNTER×HUNTERのエリカはちみっこだったけど、ここのエリカはブラック家のスレンダー美女の血をひいているからか、だいぶ背が伸びている。まだ160センチにも届かないのだけど、最近の伸びの勢いを思うともしかすると170近くまで伸びるんじゃないかと期待している。
んでさ。だんだん成長してきて思うんだけどね。
私は順当にいけば成人、つまりあと3年でレストレンジ家当主となる。でも、実際のところレストレンジの血をひいていない可能性が高いのに、当主になんてなっていいのかって悩むんだよね。散々資産を使っておいて言うことじゃないけど。
それに私は両親の遺伝子を残すつもりがない。血を繋げていくことが義務である貴族家当主はちょっと荷が重いよね。まあシリウスがハリーに残したように、私もドラコの子供へ残せばいいんだけど。
今後の事を考えて、レストレンジから離れてもこれからずっと生きていけるだけの資本が必要だと思うんだ。
おじい様とヴァルブルガおばあ様から頂いたふたつの金庫には潤沢なお金が入っている。でもさ。私はレストレンジでこの英国魔法界では確実に醜聞が付いて回る。
私としてもこんなに差別まみれの世界に居続ける必要はないもの。
それに、卒業したらやりたいことがあるのだ。
できれば日本に行ってマホウトコロに入学……は年齢制限があるから無理だけど、日本式の魔法を覚えたい。聞くところによると、杖を使った魔法以外に、お札を使ったり式神を使役したり、まるで陰陽師のような技能があるらしいのだ。ぜひ覚えたい。
特に式神。農作業や薬草の手入れなど、ガーデン内での作業が多いから、式神を使いこなせるようになりたい。
今でも影がいて『7人の働く小人』がいて、家事はメリーさんに任せているし、小雪も手伝ってくれているけど、式神がいると単純作業を任せられるし。
入学は無理でも、マホウトコロのカリキュラムを教えてもらえないかな。日本の魔法省に問い合わせるか、スネイプ先生に相談すれば、個人教授の斡旋を頼めるかもしれない。
ホグワーツ卒業後、ぜひ日本に行って学びたい。
もちろん英式の魔法の勉強や研究もずっと続けるけど、日本式もしっかり身に付けたい。音楽レッスンや純血家としての業務は月一程度イギリスに戻ればいいだろうし。
それに日本に行くなら小説や漫画やゲームも買い求めたい。英語のものはちょこちょこ買っているけど、日本にしかないものだって買いたい。
ってことでマグルのお金が欲しい。
できれば世界中で引き出せるマグルの銀行に口座を作って、マグルのお金を貯めていきたい。
そこでふと思いついた。マグルの世界の株を買ってみよう、って。
英里佳だった世界の話。
私が生まれる前の話だから、あまり詳しく知らないんだけど、この辺りの時代でパソコンの転換期のような発明があった。webと繋がったパソコンの時代がくる。
“窓95”だ。
記憶が定かじゃないけど、95ってくらいなんだから、1995年に発売されたんだよね、きっと。
この世界ではどうなるのかわからないけど、マグル生まれの友人に聞いてみると“MS社”は実在するらしい。
今は1994年。95年になる前に株を買っておくべきじゃない?
“窓95”が発売されたらきっと株価があがるよ、うん。多めに買っておけば大金持ちになれるかも。
他にも有名どころの株を買っておこうか。“りんご”、“ぐーぐる”、“そふとBK”。このあたりは2000年くらいまで待った方がいいのかも。でも時期を覚えてない。早めに買っておかなきゃ。
他には何があったっけ?
あー、通信関連以外覚えてないもんだなあ。
ゲームもありかな。“小波”と“NTD”は買っておかなきゃ。
と、まあこれはまだあとでいい。本当にこの世界でも英里佳の世界と同じように“窓95”が発売されることを確かめてから。
レストレンジ家の管財人はマグル界の資産の管理もしてくれている。マグルの株に詳しい知り合いもいるかもしれない。
梟で「ブラック家の祖父から貰った個人資産を使ってマグルの株を買いたい」と相談に乗ってもらう。
「買いたい株の名前と金額を指定してくれればこちらで管理する。ただ、マグルの銀行に口座があるほうがいいので、そのためにはマグルの戸籍を取って、その戸籍に紐づく銀行口座を作る必要がある」と回答がきた。
レストレンジのマグル界の資産はレストレンジ家名義のマグルの口座に入り、最終的な報酬がグリンゴッツに振り込まれるのだとか。個人資産であれば個人名義の口座を作った方がいいだろうと、戸籍の取得方法についても書かれている。
うん。この人とっても頼りになる。
エリカ・アレクシア・レストレンジはマグル界に戸籍がない。まず魔法省でマグル界で通用する戸籍を申請しなくちゃいけない。
説明してくれたところによると。
マグル生まれの魔法使いは戸籍がマグル界にしかない。ホグワーツ在学中もそのままだ。
ホグワーツを卒業して魔法界での就職が決まれば、初めて魔法省で魔法界の戸籍を用意することになるらしい。魔法族と結婚した場合も婚姻届と同時に魔法界の戸籍が作られる。
魔法界の戸籍とマグル界の戸籍は同一人物として紐づけられていて、どちらかに変動があれば、同時に他方の戸籍にも変更が書き加えられる。
半純血は両親が既に魔法界に戸籍を持っているから(マグル生まれの片親も魔法族と婚姻関係を結んだ際に魔法界の戸籍を取得しているため)、生まれた時に魔法界の戸籍を得る。その時にマグル界のものも同時に取得している場合が多い。
純血の場合はどうか。
純血が魔法界を出ることはあまりなく、マグル界との接点がまったくないため、まずマグル界の戸籍を取得することから始める。
これも魔法省に行って申請すれば、魔法界の戸籍に紐づいたマグル界の戸籍をすぐに作ってもらえる。
魔法省か。
あんまり行きたくないけど、仕方ないよね。
うん。夏休みには魔法省へ行って、マグルの戸籍を作ってこよう。
それに、これでまっとうな理由で魔法省に入ることができる。予言に近付くチャンスでもある。ジャンプポイント設置のためにも、ぜひ、行かなくては。
ついでにここで言うと、もし、卒業後、マグルの大学へ進んだり、マグルの会社に就職しようと考えると、学歴の証明が必要になるよね。
そこは、ホグワーツにマグル向けの卒業証明書を申請すると、ちゃんと『セント・アントニヌス・カレドニア・パブリックスクール』という聞いたこともない学校の卒業証明書が発行される。
学校はスコットランドの実在の学校で、代々の理事が魔法族で、長年融通を利かせてくれているのだとか。
私もマグル界で活動することがあるかもしれないんだから、申請しなくちゃだね。
1994年 6月
学期末試験が始まった。毎日頭の中がぱんぱんになるまで情報をつっこみ、厳しい試験期間を戦い続ける。
ドラコの誕生日は6月5日で、毎年ちょうど期末試験中だからあまりゆっくり祝える状況じゃないため嬉しそうじゃない。でも今年は、朝ニコラが運んできたルシウス叔父様からの手紙を読んだとたん、「すごいぞ!」と立ち上がって喜びの声をあげた。
どうやら叔父様にしつこくねだったらしく、ファイアボルトをプレゼントしてもらえるらしい。ただ試験中にこんなものを渡して試験が疎かになると困るから夏に帰ってきたら渡すと書かれていたらしい。
今すぐ乗り回したかったドラコは残念そうだったけど、来年のシーズンまで他寮には内緒にしたほうがいいじゃんと話せば納得していた。(ほんとは、来年は三校対抗試合があってクィディッチの寮対抗戦はなくなるんだけどね)
来年の試合が楽しみだね、と言うと、「もちろん勝つのは僕さ」と気合が入っていた。
夏までに私も用意しておくから休みになったら一緒に乗ろうねと話す。これで一緒にファイアボルトに乗れる。楽しみだ。
私達は気合を入れなおして残りの試験に立ち向かっていった。
ところで、さ。
『闇の魔術の防衛術』の教授職は呪われている。
私達が入学する前の歴代の教授方もみな、きっかり1年で不正がバレたり、何らかの罪が明らかになったりして退職している。本人に罪がない方でも、家庭に不幸があったり、怪我や病気で続けられなくなったり、とにかくみんな喜ばしくない理由で辞めているのだ。
心身や立場に悪影響なく辞められたのは、もともと最初から『1年間のみ』という契約で任に就いた方々だけ。
このままではルーピン先生が不幸な目に遭う可能性がある。原作みたいにスネイプ先生と揉めていないから、スネイプ先生経由で秘密がバレることもなさそう。
どうすべきかと考え、シリウスにも梟で相談してみた。
彼をこちら側の陣営に引き入れるのはどうか、と。
シリウスなら彼の仕事も世話できるし、調べ事も多いから信頼できる手が増えるのは嬉しい。人狼として定職に就けなかった彼は後ろ暗い仕事も多かっただろうから、私達にはない裏側の情報も手に入れやすいのでは、と話してみた。
なにより、ダンブルドアの手駒にされるよりはこちらで確保しておきたいというのも大きな理由だ。
シリウスは、私がルーピン先生が人狼だと気付いたことに驚いていた。
でもさ。一生徒とは違うんだよ? 教授なんてみんなが注目している。一年間毎月毎月、満月付近になると必ず授業を休む教授なんて疑わしいことこの上ない。
スネイプ先生も代理でDADAのクラスを請け負う際に、人狼についての注意点を時折り口にしていた。
それはリーマス・ルーピンが気に入らないという理由も多分に含まれるだろうけど、やはり危険な存在が生徒の傍にいることについて、生徒達に注意を促したいという気持ちもあったはず。
私以外にも気付いている人だっているだろう。ハーマイオニーとかね。黙っているだけで、きっと他にも。
それなら、生徒全員にバレて問題視されたり、最後まで残って嫌な呪いが発生する前に、傷の浅いうちに退職すべきでは、と私はシリウスやルシウス叔父様にも相談したのだ。
シリウスも私の話に納得し、最終日を待たずに一身上の都合として退職するよう、ルーピン先生を促していた。
ルーピン先生は人狼と気付いた生徒がいることに衝撃を受け、そして、シリウスの手伝いをすることを決め、退職を決意した。
ハリーは父親の親友の一人だったルーピン先生にこの一年でずいぶん心を許すようになっている。『守護霊の呪文』ができるようになったのも彼の個人授業のおかげだ。信頼するルーピン先生が退職していくことをとても嘆いていた。
学期末試験を終え、学校中が解放感に包まれた。
なんとか平穏? と言える一年だったかなあ。
……って思っていたのにね。
「ピーター・ペティグリューが脱獄?」
ルシウス叔父様からの両面鏡での急ぎの連絡に、思わず声をあげた。
「でも……でも叔父様。魔法省はあいつがネズミになれるって知ってるんですよ? ちゃんと小動物にも逃げ出せないような牢屋を作るとか、そういうことは誰も考えなかったんでしょうか」
「私も彼らの無能さに言葉を失ったぞ」
え? まじ? これも原作の修正力? そりゃあネズミが逃げてくれるほうが先が読めて楽だけど、え? ありなの?
……まじか。はじまる。はじまるよ。
ああ、『アズカバンの囚人』がもう一度始まるって言ってるんじゃないよ。だってあのネズミがここにくるわけないもの。始まるのは来年のこと。『炎のゴブレット』だ。
4年の事件が、来年、原作通り起きる。
ピーター・ペティグリュー……ワームテールはお辞儀様を頼ってアルバニアへ行き、彼が赤ん坊サイズの実体を持つところまで世話をする。そしてクラウチ・ジュニアが実は脱獄して父親のもとにいることと三大魔法学校対抗試合のことを知り――お辞儀様が復活のための準備を始める。
復活させるつもりはない。そもそもハリーをあそこへ送り込むつもりがないから、儀式自体が行われないと思う。
ハリーを対抗試合に出させるかどうかもまだ未定だ。
それまでにハリーの分霊箱さえなんとかなれば。
お辞儀様がワームテールから今の状況を聞いたとして。
彼の怒りの対象はおそらくルシウス・マルフォイだ。
自分の側近だったくせにシリウス・ブラックを盛り立てて第三勢力のナンバーツーの座にちゃっかりおさまっている。
復活すれば、マルフォイが一番怒りを買う。それから私かな。ベラトリックスの娘がなぜと思うだろう。シリウス・ブラックについても前から騎士団にいて何度もやりあっているから彼のことも嫌っているだろう。
復活は絶対阻止したい。
4巻に関連することで原作と違うことはワームテールが捕まったことでシリウスが無罪になっている事。ルシウス・マルフォイが死喰い人とはっきり決別していて、元死喰い人の中にも第三勢力のブラック陣営に入った者が多い事。分霊箱についてはまだ私達4人(私、シリウス、マルフォイ夫妻)だけの秘密だから漏れることはない。
ワームテールの持つ情報はロンやハリーが話していた噂話程度だから、スリザリンは全員死喰い人だと言うロンの主張のままだろう。だからそこは問題ないと思う。
学校にクラウチ・ジュニアが来てから捕まえるべきか。原作を読むとお辞儀様達はクラウチ邸に潜伏しているはずだし。
それとも復活の儀式の時に捕まえるか。
もし、原作通りになるのなら。
ハリーの実力が予定より低ければ、復活の儀式の前に私がこっそり殺しに行こうか。
赤ん坊サイズのお辞儀様は原作のとおりならかなり脆弱らしい。それでも開心術や『アバダケダブラ』を使っている。でも移動はワームテールに任せているから空は飛べないし『姿現わし術』も使えないはず。
私の“円”は半径180メートル。姿くらましのできないあの赤ん坊サイズのお辞儀様なら、余裕でシルヴィアの餌食なのに。
ピーター・ペティグリューなんて鼻歌まじりに殺せる。ナギニは分霊箱だから念では殺せないけど、私には剣があるもの。勝てる。
……そっか。クィディッチワールドカップの間、あいつらリドル邸にいるんだった。殺せるじゃん。4年の事件の前に殺せるじゃん。
そりゃあ復活の儀式を行うために墓場にいる時のほうが無防備だと思う。見晴らしが良いし。
でもさ。リドルの館でも包囲すればちゃんと斃せると思う。
なにもハリーが4人目の選手にならなくてもいい。『クラウチ・ジュニア in マッド-アイ・ムーディ』が学校に来る前に、襲撃ってのも手だと思う。
だめだ。
ハリーの分霊箱の処理ができていない今は奴を殺してもまた悪霊状態になるし、それを封じ込める方法もまだ見つかっていない。
うーん。
復活の儀式の時に、ハリーを行かさないようにしてポートキーは私達の誰かが使うってどうだろう。
んで、墓場へみんなが姿現わしして囲んで叩けばいいんじゃないかな。
うん。それまでに分霊箱がぜんぶ壊せて、ハリーからお辞儀様の魂を引っぺがせてたら。
これは要検討、だな。
まだ一度もダンブルドア校長と話していない。今のところ私は真面目な優等生で、しかもスリザリン寮9名は『守護霊の呪文』が使える。
おそらく要注意人物の一人としてチェックはされているだろうけど、怪しい行動はすべて隠れてやっているつもり。
ただね。
良い子過ぎるのが怪しいと思われてそう。
家庭環境がアレなのに、って。
常に優秀な成績をおさめ、誰にでも優しいスリザリン寮生。まるでトム・リドルそのものだ。
ダンブルドアの沈黙が恐ろしい。
来年の事件が起こるなら……そろそろ彼とも向き合うべき、かな。
ああ、準備が必要だ。
計画を練らなくては。
今年もスリザリンが寮杯を獲得できた。
成績は今年も1位ハーマイオニー、2位私、3位ドラコだった。
ホグワーツは点数加算制なのだ。今年は一人だけ全教科を受けていた(占い学を落としたからそれ以外だけど)ハーマイオニーの成績はおそらく断トツだっただろう。
キングス・クロス駅へ到着した私達をルシウス叔父様、シシー叔母様、シリウスが迎えてくれた。
ダーズリー家の迎えは断ったらしい。ハリーは弁護士がダーズリー家へ送り届ける。滞在中のハリーのことについてダーズリー家にしっかり頼んで(脅して?)おくためだ。
シリウスが送っていけば、めらめらと髪を魔力で波うたせて威圧するに決まっている。今後5週間のハリーの環境が悪くなりすぎないため、あまりに威圧するのは逆効果だと誰もが判断したためだ。
ダーズリーの家族には旅行にでも行ってほしいと考えたのだけど、伯母と同居する必要があるかもしれないものね、そんな博打は冒せない。5週間一緒に過ごすのは苦痛だろうけど、頑張ってほしい。
シリウスはハリーを弁護士に預ける前に力いっぱい抱きしめていた。8月1日になればすぐに必ず迎えにいく。毎日梟を飛ばすから、ハリーもヘドウィグをよこしてくれるかい? と。
遠距離恋愛の恋人かよって感じで別れを惜しんでいた。
そして、シリウスがひと月早いが今まで贈れていなかった分も含めて、今一番君に必要なものを贈りたい、と言いながらトランクを渡していた。
中に人が入れるトランクで、内装も拘ってる。おそらく私のトランクよりもずっとすごいんじゃないかな。注文してひと月ちょっと。特急料金込みでものすごい金額が動いただろう。
この中なら箒を乗り回せるし、1人だけの自由な時間も過ごせるだろう。どうかこのトランクでこれからの5週間を乗り切ってほしい。
トランクの中を見てきて、興奮で目を輝かせるハリーと名付け子の喜ぶ姿を見て微笑むシリウス。
虐待していた伯母家族のもとへハリーを帰さなくちゃいけないことに、ギリギリと奥歯を噛みしめて耐えているシリウスの背中に、父親っていいなって羨ましく思った。
※戸籍の扱いは捏造設定。
純血家の戸籍がマグルの役所に登録されているとは思えないので、こんな感じなのではと想像。
※マグル向けの卒業証明書も捏造設定。
ホグワーツの卒業証明書はマグル界で使えそうにないですから、進学や就職のためにそういった書類も必要でしょう。
※実在の会社名と製品名はボカしてます。