エリカ、転生。   作:gab

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4年-3 4人目の選手

 

 ここで、私が今、何に迷っているか説明したい。

 

 まず、『忍びの地図』。

 シリウスは『忍びの地図』の存在を知っているから、シリウスに『マッドアイ-ムーディの名前がバーテミウス・クラウチと表示されている』というだけでじゅうぶんクラウチ・ジュニアの存在を知らせることができる。シリウスやルシウス叔父様にはね。

 

 でも、それを他の人に説明しにくいのだ。

 『忍びの地図』って、ものすごくプライバシーを侵害している魔法具だよね。誰がどこにいるか一目でわかるんだから。

 

 先生方にこの地図の存在を知られたくない。

 だって、立場上絶対没収するしかないじゃん。

 原作3巻でルーピン先生からハリーが返してもらえたのは、ルーピン先生が退職したあとだったから。『もう教師ではないから、これを渡しても後ろめたくない』と渡していた。

 本職の教師陣なら没収する。普通なら。

 だから地図を見せるわけにはいかない。

 

 特に今年はクラウチ・ジュニアとリータ・スキーターがいるんだから、この地図は必須なのだ。今この地図を奪われるわけにはいかない。

 

 

 でも、まあ。

 『忍びの地図』についてはシリウスとルシウス叔父様に相談すれば、シリウスかルシウス叔父様がマッドアイ-ムーディの事を気付いたことにするとか、そういうごまかし方はできるかもしれない。

 

 

 

 

 んで。次ね。

 どうして先生方が云々、という話になるのかというと、だね。

 

 奴らの狙いが『復活の儀式』で、儀式の方法はこうで、儀式にハリーの血を必要としていて、儀式は第三の試練の日で、お辞儀様の現在の状態はこんな感じで、向こうにいる仲間は誰がいて、どうやって連絡を取っている。

 こういった情報を主だった大人達に周知したい。

 そのためにクラウチ・ジュニアを失神させて拘束し、真実薬を飲ませて情報を聞き出す。

 

 そして、ヴォルデモートを斃すあるいは監禁するため、私の理想とする進め方、

『向こうの計画をそのまま進めさせて、逆にそれを利用して罠を張り、復活の儀式のために墓場にスタンバイしている無防備なお辞儀様一行をこっちが急襲する』

という方向に話を持っていきたいのだ。

 

 そこで、問題となるのが。

 1.マッドアイ-ムーディ(クラウチ・ジュニア)を拘束して尋問する場所

 2.真実薬の取得

 3.クラウチ・ジュニアとお辞儀様に気付かれないほどの完璧な忘却術と記憶操作

 

 1のためには先生方の誰かを仲間に引き入れたい。

 だって学校内で教授を拘束するんだから。

 しかも相手は闘いに長けている。簡単に捕らえることは難しい。ちょっとした騒ぎになるかもしれない。

(私の能力を使わずに大人達にやってもらうこと前提の話ね。私がやるならシルヴィアで一瞬)

 それに聞きたいことが多いから拘束時間も長時間になる。尋問はトランクや『必要の部屋』を使うにしても戦闘や後始末を考えれば学校側にバレずに行うのは難しい。

 

 それから2の真実薬も、できればスネイプ先生くらいの技巧者の作ったものが欲しい。

 

 3の忘却術と記憶操作。

 聞きだしたい情報が多いからどうしても1時間以上はかかってしまう。その間何をしていたかの記憶もちゃんとクラウチ・ジュニアの頭に入れこまなくてはいけない。

 

 クラウチ・ジュニアは敵地に一人で入り込んでいる。開心術や真実薬などを警戒して何某かの対策をしているかもしれない。もちろんそれも尋問の際に聞きだすつもりだけどね。

 それに、彼は、父親の『服従の呪文』を自力で解いたほどの精神力の持ち主なのだ。

 そんな彼が記憶の齟齬に気付かないほどうまく記憶操作しなくてはいけない。

 

 クラウチ・ジュニアがお辞儀様に定期連絡とかしていたとしたら、お辞儀様が違和感を持つ可能性もある。そうするとお辞儀様の開心術で調べられてしまう。

 

 シリウスやルシウス叔父様も能力が高いけど、そんなデリケートな精神操作をできるのか。

 

 

 もうね。

 そんなことできるの、ダンブルドアくらいしかいないじゃん。

 

 

 

 ダンブルドアはヴォルデモートを斃すために、時間をかけて準備していた。

 なのに私がしたことで彼の計画とは流れが違ってしまった。彼の思惑と外れたこともあるだろう。長年にわたる計画を修正せざるを得なくなったことで、彼が今何を思って、どう感じているかはわからない。

 

 でも。

 

 彼の目的も私達の目的も、『ヴォルデモートを斃す』なのだ。

 その一点においては、私達は共闘できないこともない。

 

 

 それに、もしかしたら、原作のようにハリーのために『死の秘宝』を揃える必要が出てくるかもしれない。

 『死の秘宝』は3つ。

 ひとつめの『透明マント』はハリー自身が持っている。

 

 ふたつめの『蘇りの石』は分霊箱になっているから、壊さなくてはならず、そして、その後修復させる必要がある。だけど一度分霊箱となったものの修復は難しく、レパロなどで簡単に直せるものじゃない。

 『ダンブルドアでなくては直せなかった』と原作者がインスタで語っているのを読んだ記憶がある。修復することを考えるなら壊し方も気を付けるべき。

 だから、『蘇りの石』の分霊箱破壊と修復はダンブルドアに頼むしかない。

(もちろんうちのリサイクルームならおそらく直せるけど、できれば誰にも知られたくない)

 

 そして3つめの『ニワトコの杖』はダンブルドアが所有している。一時的にでも借り受けなくてはいけない。

 

 

 そういうあれやこれやを考えると、だね。

 ダンブルドアとは、そろそろ和解――別に今も敵対しているわけではないから、和解というよりは『協力関係の樹立』と言うべきか――をすべきなのではないか、とも考えている。

 

 

 だけど、どういう流れで話を持っていくのか。

 私はそれについて未だ迷っているのだ。

 私一人で勝手にやってしまうなら容易にできることなのに、と思えるだけに、けっこう邪魔くさく感じてしまう。

 

 

 

 私がそうやってイライラと考えているうちに、シリウスはハリーの棄権が認められず、ルシウス叔父様に宥められながら帰っていった。

 

 

 

 

 

 翌朝、大広間にハリーがハーマイオニーとハンナに守られるようにして入ってきた。とたん、冷たい視線が彼に突き刺さる。

 ほんと、なんなんだろうね、この温度差。ずっとハリーを英雄だって言ってても、あっという間にこれだもの。原作でよくハリーは折れなかったものだ。

 

 やっぱりロンとは喧嘩になったのか、ロンはあからさまにハリーを無視したまま他の男子生徒達とテーブルについている。

 他寮の生徒達はハリーを批判し、厳しい目をむけていて、グリフィンドール生はハリーを応援しているけど、ハリーの無実は信じていない。

 

 ハリーは硬い表情のまま朝食を無理やり喉に詰め込むように摂っていた。

 

 朝食を終え、大広間を出たところで声をかけた。

 

「おはようハリー。大丈夫……じゃないみたいね。大変ねハリー。ハンナとグレンジャーもね」

 

「おはよう。エリカも信じてくれるの? ドラコも? グリフィンドールじゃハンナとハーマイオニーしか信じてくれなかったんだ」

 

 私の顔を見て、そしてその横にいるドラコやヴィンス達の顔を順に見回す。

 

「ハリー、夏に見た夢を覚えているでしょう? ハリーを利用しようとしている企みがあると。あなたがゴブレットに名前を入れていないのなら、誰かが入れたのよ。とても危険なのよ」

 

 私やドラコから情報を聞いていたから、死喰い人の暗躍だと考えたヴィンス達もハリーが名前を入れていないと信じた。肩をすくめて肯定するように頷くヴィンスとグレッグ。

 

「ハリー、何かあれば僕達も力になる」

 

「うん、ありがとう、ドラコ。クラッブ、ゴイルも」

 

 昨日シリウス達もハリーに激励と注意を促す言葉をかけて帰ったらしい。

 ハリーはハンナ、ハーマイオニーに続き、シリウス、ルシウス叔父様、私、ドラコ、ヴィンス、グレッグと信じてくれる者が増えたことにやっと表情を綻ばせた。

 今も気遣うドラコと微笑みあっている。

 

 ハリーに気遣う言葉をかけるドラコに、ハリーは安心したように愚痴りはじめた。

 

 ハリーが選ばれてロンが嫉妬でとてもややこしくすねているらしい。ハリーが裕福になったことでこじれ始めていたロンとの仲はこのことで一気に爆発した。

 

 もともと原作のようにロンとハリーが大親友なのではなく、ハリーとハンナが親友でそこにロンが仲間入りし、その後ハーマイオニーが入って4人組になった、という経緯がある。

 ロンとは同性の友人として一番ではあるが、原作ほどの堅い絆ではない感じがする。ロンの前にハンナと言う理解者が傍にいたから、ハリーがロンにそこまで執着していないためだ。

 これ、もしかしたら、第二の試練で水底に連れ去られるのはロンではなくてハンナになるかもしれない。

 

 『ゴブレットに名前を入れていない』と言う言葉を信じてくれたのはグリフィンドールではハンナとハーマイオニーだけで、仲良し4人組のうち女子二人がハリー側についたことでロンは余計にへそを曲げた。

 ロンとの関係を修復するのは原作よりちょっと難しいかもしれない。

 

 それでもやはり同性の親友は大事だ。一緒にふざけてバカなことをやって女性陣に叱られる。そういう付き合いのできるロンがいないことに、きっとけっこう傷ついていると思う。

 

 

 

 

 

 ハグリッドも信じてくれたらしい。

 ハリーはそれは喜んだのだけど……ハリーと私やドラコが仲良くなった夏から、ハグリッドは私のことをずっと信じようとしなかった。

 「スリザリンの腐れ蛇の事を信じちゃなんねぇ」と何度もハリーに言っていたらしい。どれだけ説明しても、ハグリッドの判断基準は「スリザリンだから」「レストレンジだから」「マルフォイだから」。今回、すんなりハリーの言い分を信じてくれたことで少し持ち直したけど、私達のことについては相変わらず批判しか言わない。

 その頑なさにハリーも彼のことを盲目的に好きでい続けるのは難しくなっているみたいだった。

 

 

 

 

 授業が始まってしばらく経っても、ハリーの状況は相変わらず針の筵らしい。

 それでもハンナとハーマイオニーの存在と、授業が一緒になったり、廊下や大広間ですれ違えば声をかける私達が、彼の救いになっている。

 

 ハリーがホグワーツ中の批判を浴びている代わりに、セドリック・ディゴリーの人気は凄まじいものがある。

 確かにセドリックは非常に容姿が整っていて折り目正しい好青年ぶりで女生徒たちの視線を集めている。プロのクィディッチ選手という付加価値付きのクラムと人気を二分しているのだからセドリックの凄さがわかるというものだ。

 

 学校中がざわざわと騒がしい。

 

 ハリーは第一の課題のための準備を何もしていなかった。ただ、嫌味や野次や批判の声を無視して過ごすだけで精一杯のようだ。

 でもそれじゃあ精神的にもよくないよね。

 

 ハンナと鏡で話した時に、原作の5年みたいに自分達で色々練習したほうがいいんじゃないと言ってみた。ハリーも自信がつくだろうし、嫌な視線を気にせず身体を動かせて発散もできるだろう。

 ハリー、ハンナ、ハーマイオニーで『必要の部屋』に行き、武装解除やプロテゴなどから練習してもいいね、と決まったらしい。原作を知るハンナがいるんだから、きっと『アクシオ』もやるだろう。

 

 

 

 スリザリンの仲良しメンバー9人(私、ドラコ、ヴィンス、グレッグ、ダフネ、パンジー、ミリセント、セオ、ブレーズ)は今も一緒に課題をやっている。守護霊の呪文の練習もそれぞれちゃんとやっているらしい。

 ハリー達が訓練しているという話をしたら、私達も守護霊の呪文を覚えた時のようにまた訓練したいと言い出した。

 ドラコやヴィンス達も同意見のよう。

 

 今年はクィディッチもないから時間はたっぷりある。

 また週に一度のトランク内での修行をすることが決まった。

 

 最初のレッスンは、やはり『武装解除』だ。

 

「杖には忠誠心というものがあるの。いつも大切に使っていれば杖は主と認めてくれる。そうすれば魔法の威力がより高まるわけ。

 それが、武装解除を受けると杖の忠誠心が敵に奪われてしまう。だから『武装解除』は身内で練習できるうちに確実にクリアすべきなの」

 

 一度奪われたくらいであっさり主替えしちゃうような杖は『ニワトコの杖』くらいだけど、せっかく高めた忠誠心は下がってしまう。

 

 奪った杖はかならず本人に手渡しで返すこともじゅうぶん注意しておく。

 それから、強い魔力で武装解除を受けると身体が飛ばされることを説明する。これは怪我をすると困るから、グレッグを相手にして見本を見せた。

 

 グレッグと距離を取って向き合い、杖を構える。そして、同時に呪文を放った。

 

「エクスペリアームス(武器よ去れ)」

 

 グレッグの呪文ははじけ、私の呪文はグレッグを襲った。ばちん! と大きな音をさせてグレッグの杖は私の手に飛び、彼自身の身体は後ろへ吹き飛ばされた。

 皆の悲鳴があがる。グレッグはしなやかな身のこなしで綺麗に身体を回転させてなんとか着地した。おぉと感嘆の声があがる。

 

「こんな風に飛ばされるから、怪我をしないように各自他の組と距離を取って練習してね」

 

 グレッグに杖を手渡しで返しながら説明すると、やる気を漲らせたみんながそれぞれ組になって杖を構えた。

 うん。楽しい。一緒にこうやって過ごせることが、たまらなく楽しい。

 

 

 

 

1994年 11月

 

 「日刊予言者新聞」にリータ・スキーターの三校対抗試合についての記事が載った。

 原作通りの酷い捏造記事で、朝食の席で新聞を読んで、唖然とした。

 

 だって、ハリーは『シリウス・ブラックの名付け子』なのに。原作とは違う。シリウスは脱獄犯じゃなくて、押しも押されぬブラック家の当主だ。

 まさか原作どおりの捏造記事がそのまま載るとは思わなかった。

 

 両親を想って今でも泣く、とか。両親は僕を誇りに思うでしょう。とか。

 それから、ハーマイオニー・グレンジャーがハリーの恋人だと書かれている。マグル生まれの飛び切り可愛い女生徒で、ハリーは彼女とめったに離れることがない、などと書かれていた。

 

 今はハリーを取り巻く状況が悪すぎて、ハリーはいつも、ハンナとハーマイオニーと一緒にいる。そう。ハンナもいるのだ。なのにハーマイオニーが恋人扱いされている。

 

 ハーマイオニーって磨けばめちゃくちゃ美少女なんだけど、今のところ、髪がぼさぼさしていて垢ぬけていない。それにきつい言い方や成績の良さも鼻につくらしく、男性陣にあまり人気がない。

 それと。

 ドラコとハリーの喧嘩がなかったから、原作であった『喧嘩するお互いの呪文が跳ね返って傍にいたハーマイオニーに歯呪いが直撃して前歯が巨大化する→医務室で小さくしてもらう時に程よい大きさまで余分に小さくしてもらう』という流れがなかった。

 だから今も彼女の歯はちょっと大きめだ。バサバサの茶髪と合わさって、とてもげっ歯類っぽいのだ。

 

 それに引き換え、ハンナは被験者だもの。飛び切りの美少女だ。

 どちらが英雄の恋人として相応しいかといえば、美少女ハンナになりそうなものなのだけど、ハンナは4人組の中で大人しく……というか英雄ハリーと自己主張の激しいロン&ハーマイオニーに紛れて目立っていない。

 

 ハリーの恋人はハーマイオニーだと取材に答えたのはハリーの()()コリン・クリービーだと記事に書いてあるから、彼の主観が大いに入っているんだろう。

 それにリータ・スキーターとしてもマグル生まれのあか抜けない才女の方が『面白い』と思ったのかもしれない。

 いずれにせよ、恋人扱いされたハーマイオニーも災難だし、ロンはもっと嫉妬するだろうし、存在をまるっと無視されたハンナもなんだし。

 

 

 

 まあ、この捏造まみれの記事について、シリウスとルシウス叔父様が黙っていることはないだろう。日刊予言者新聞も誰に喧嘩を売ったのか、すぐに気付くだろうね。

 

 

 

 

 

 

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