花山薫は極道である   作:バロックス(駄犬

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年も終わる・・・終わっちまう・・・休暇が終わる・・仕事が始まる。
ゆゆゆいの本篇が始まる・・・ウワァァァ!!

2018最後にこんな作品を出していく。一本は作りたいと思っていた。


樹海にて漢花は咲く

 樹海で繰り広げられる異形達との戦闘。蠍型のバーテックスを地面に叩きつけた花山がまったく動いてこない敵を見つめて小さく息を吐く。

 

・・・・・あとはアイツらだけ、だな。

 

 ゆっくりと双眸が移したのは残る二体のバーテックス。花山が撃滅したバーテックスは奇妙な青白い光と共に消滅していく。この世界では弱り切った敵を神樹の力で消滅させる、浄化の儀と呼ばれる現象が起こっていたのだが事情を知らない花山だったが無言でその光景を眺めては思う。

 

 

・・・・・綺麗ェ、だな。

 

 直後、残りのバーテックスに動きがあった。尻尾に挟みを持ったバーテックスが花山に向かって突進を仕掛ける。向かってきたバーテックスはその人など軽く両断できるであろう大鋏を構えた。それを見て、またしても花山が感じたのは、危険、だとかその前に。

 

・・・・・鋏……カニ?

 

 首を傾げ、考えたのはこの生物が自分たちの世界でいうなれば蟹に見えなくもないという事だった。以前に海中で巨大鮫を仕留めたことがある花山だったが、流石にこのサイズの蟹と対峙したことはない。まずこの生物は食えるのだろうか、食えるのなら持ち帰って木崎にでも調理してもらおうかと考えていたその矢先。

 

「避けてッ!!」

 

 後ろで銀が叫ぶ声が聞こえた。花山の眼前に、鋏を大きく開いたバーテックスが迫る。鋏は開けば花山の背など軽く超えるほど長大な長さだ。

 

 

 

―――胴体に狙いを定め、両断せんと迫るバーテックスに花山が動いた。

 

 

 

 

 

 

「アタシ、その蟹っぽいバーテックスと立ち回った時に分かってたんです。あの鋏はかなり固い、でも胴体の方はそれほどでもない」

 

 

――――弱点は確かにあった。だから、その人に言おうとしたんです。

 

 

「鋏を躱して、胴体を狙って!って、でもまさかですよ、まさかなんです」

 

 

――――その人、前に向かっていったんですよね。鋏が前に迫って来てるってのに。

 

 

「フツー、武器も何も持ってなかったら防ぎようがないじゃないですか。アタシみたいな防御も出来る大斧も持ってる訳じゃないし・・・」

 

 

――――そしたら、蠍型の尻尾を掴んだ時みたいにその鋏を掴んじゃったんです。ええ、止まりましたとも」

 

 

「ピタリ、とですね。まるで時間が止まったかのように・・・でもここでアタシ、一つ勘違いしてたんです。 あの人は腕力が強かったわけじゃなかったんですよ、確かに腕力もあったけど、それ以上に―――」

 

 

――――握力がスゲー強かったんです。

 

 

 

 

 

 喧嘩師、花山薫を語る上で浮かんでくるものはまず握力だろう。 彼の握力に関しての逸話は数多く存在する。まず、彼の握力は握力計器では測定することが出来ない。測定する前に計器が故障してしまう。だがここまでなら、彼の世界でも測定不可能クラスのファイターは数多く存在するだろう。

 

 

 だが、私たちが普段遊びで使っているトランプ。そのトランプを千切ったことはあるだろうか。2~3枚程度ならば、カードを重ねても誰でも千切る事は出来るだろう。だがそれが箱に入っていたトランプ全てだったらどうだろうか。

 

 

 花山薫は親指と人差し指だけで52枚重ねて引き裂くことが出来る。引き裂かれたトランプは人差し指と親指で挟まれた部分だけ見事にくりぬかれるのだ。 他にも車のタイヤを素手で引きちぎったり、車体のボディーに指を貫通させたり、故に、彼の握力に関しては右に出る物はいない。

 

 

「ま、マジか・・・」

 

 

 バキ、バキと何かが砕け、めり込む音がしたのを銀は聞いた。鋏の刃に花山の指がめり込んでいく音だ。花山は自身の指が挟みに食い込み、それが第一関節辺りに到達したくらいだろうか。頃合いか、と五指に力を込める。

 

 

「・・・・」

 

 花山の拳に力が集中する。手の皮膚には血液が止まったためか、無数の血管が浮き出て、異常すぎる握力によって彼の手は真っ赤に変色していった。次第に指が食い込んでいった部分から鋏の刃に亀裂が走り、それが全体へと広がっていく。そして次の瞬間。

 

 

 

――――バーテックスの鋏は完全に砕け散っていた。

 

 

 

 

 

 

「バッキィィインッッ! って音がしましたね・・・もうそこらじゅうに鋏の破片が散らばってて」

 

―――流石のバーテックスもビビったんじゃないですかね?”え?コイツ、マジ?”って顔してました。いや、ウソだけど。アイツら顔とかまず表情分からないから嘘だけど。

 

「まさか一番固い鋏を握りつぶすなんて、アタシは思いませんでしたね。だってアタシの斧もあの鋏は壊せなかったのに、人間の握力だけでぶっ壊してたんですから」

 

 

――――それから鋏を持ったバーテックスは明らかに怯んでました。一瞬だけあの人から離れようとしましたからね。

 

「そこでバーテックスが取ったのは防御行動でした。自分の武器である鋏がなくなっちゃたからそれしかできないのも当然なんですけど」

 

 

――――あの反射板には本当に苦戦しました。アタシも殆どはあの反射板の死角攻撃にやられたっていうか・・・。しかもそれでいて、あの反射板も固いんですよね。

 

 

「でも、それでもあの人にとってはあまり関係なかったんでしょうね。むしろ、”アレ”を見た後で言うのもなんですけど、あの人の前で棒立ちになるという行為は愚策なんだなって、改めて思いました」

 

 

 

――――その人、奇妙な構えをしたんです。こう、身体全身を捻って、自分の右腕を身体の陰に隠すくらいに大きく、振りかぶっていたんです。

 

 

 

 

 

 花山薫は反射板を盾にしたバーテックスの前で構えた。大きく右腕後ろに下げ、自身の巨体に隠すくらいに捻ったそのポーズはさながら、力を溜めているかのよう。

 鋏を持ったバーテックスも花山の強靭さに自信があるように、自分の反射板の防御力には絶対の自信のようなものがあった。だからこそ、花山の前で動かず、反射板を翳している。絶対に彼の拳を受け切って、その拳を破壊することが出来ると思っているからだ。

 

 

 だが、バーテックスはこの花山薫という男の全てを見誤っていた。握力と腕力だけがこの男のすべてではない。

 

 

実践空手の父、大山倍達はこう語っている。『握力×体重×スピード=破壊力』である、と。 この方程式を花山に当てはめる。

花山の体重は160kg、スピードは100M走なら彼は10秒台を出せるほどのスプリント力、もとい、瞬発力がある。

加えて天井知らずの握力。ここから生み出される花山の必殺の一撃。

 

 

 

「・・・・ッッ」

 

 極端なスウェーイバックによる溜めから微動だにしないバーテックスに対して繰り出される花山の拳。

 拳が反射板に直撃した瞬間、反射板に亀裂が走る。 それでは終わらず勢いが衰えることない花山の拳は反射板を砕き、二の腕が入るほどまでに貫通させていた。 自身の最強の防御手段である反射板を破壊されたバーテックスは次の反射板を花山の前へと翳すが、同じことである。

 

「・・・すげぇ」

 

 銀は次々にバーテックスの反射板を拳一つだけで破壊していく花山の姿に戦慄する。 バーテックス相手にこれほどの攻撃力を発揮する拳が人間へと向けられた時のことを考えてしまったのだ。 まず、無事では済まないだろう。 だが、戦慄すると同時に銀は思う。

 

 

・・・・・かっこいいなあ。

 

 敵の攻撃を躱すのではなく、受け切る。 全てを受け切った上で礼を尽くさんばかりの全力反撃(フルカウンター)。 自分では真似できない、彼の、花山薫としての生き様を表すかのような豪快なファイトスタイルに、銀は憧れを抱いた。 

 言葉を多く語らず、その背中だけで語るように、花山の背中は偉大だった。 いつしか自分も、ああなりたい、と、銀は思ってしまったのである。

 

 

「ごふっ・・・!!」

 

 その背後で倒れていた銀は胸にこみ上げてきた異物に気づいて、咳き込んだ。 吐き出されたのは血だ。 バーテックスの攻撃で肺が損傷したからかだろうか。 とてつもなく、苦しい。

 

「・・・・・」

 

 バーテックスの盾を全て破壊しつくした花山が銀に視線を向ける。 壁の外に撤退していくバーテックスを見向きもせず、花山は銀へと歩み寄る。

 

「お嬢ちゃん・・・・・」

 

 ずぅ、と巨体が銀の前に仁王立ち。190を越えるその身長が小学生程度の銀の前に立つという光景はさながら恐怖しか感じない。

 

「トシは・・・・・?」

 

 年齢の事を聞かれて、銀は答える。

 

「11、です・・・・・」

 

「・・・・小学生かい、驚いたぜ」

 

 目をきょとん、とさせて花山は言う。 まさかあんな化け物と小学生が戦っていたのだとは思いもよらなかったのだろう。 そんな事は銀自体もそう思ってはいたが、次第に戦いを重ねていくとそれが当たり前になる。 慣れというのは怖いものだ。

 次の瞬間、花山の腕が銀の頭部へと延びる。 手を広げただけで頭部を覆い隠してしまう程の掌が銀の頭の上へと置かれる。

 

「頑張ったじゃねぇか」

 

 ぽん、と軽く叩くと花山はそう言った。 彼はそのまま続けて、

 

「こんなバケモノと血流すまで身体張るなんてよ・・・・・」

 

 先ほどまでバーテックスに致命傷を与えていた、反射板を貫き、銀が恐ろしいと感じた拳がこれほどまでに優しいとは思わなかった。

 

「俺も世話になった医者、紹介してやる・・・・・治るとは思うが、多分」

 

 恐らく、気を遣ってもらってるのだろう、と銀は思う。 自身がこんなにも傷ついているから? 否、恐らく、これは花山薫の、不器用な彼なりの気遣いなのだ。

 小さく笑みを浮かべて銀は理解する。 彼は優しい人間なのだと。

 

 

 

「――――!?」

 

 静寂もつかの間、銀の目を覚まさせるような光景が彼女の目に飛び込んでくる。 花山は相も変わらず、銀の頭部に手を置いていたが、

 花山の背中から腹部に掛けて、光の矢が突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

 花山の身体を貫いたのは、鈍い光を放つ光の矢だった。 1メートルほどの長さをもつソレは、花山の皮膚から筋肉、果てには骨までをも貫いている。 だが、瞬間的に花山の肉体は反応し、全身に力を込めた事で矢は貫通することなく花山の身体に留まっていた。

 矢が貫通していたら一緒に銀も貫通されていたことだろう。

 

 

「・・・・」

 

 腹部の刺さった部分から止め処なく血が流れている。 常人だったら失神するレベルの痛みが襲っている筈なのに、花山は原因となっている光の矢をなんも躊躇いもなく引き抜いた。

 花山の腹部から引き抜かれた矢は投げ捨てられ、地面へと転がった矢は形状を崩壊させるように消滅していく。 同時に、花山の腹部からは大量の血が噴出した。

 

・・・・・アイツか。

 

 矢が飛んできた方角を睨むと二つの奇妙な顔があるバーテックスが大きく口を開けていた。 あのバーテックスが矢を発射したのだろう。

 バーテックスは口から光を溢れさせると、次の瞬間には口から大量の光の矢を発射していた。

 

 

「・・・ッッ!!」

 

 花山は動かなかった。 花山に向かって放たれた光の矢は花山と銀がいる場所一面を覆いつくすほどの数だったのだ。 花山が銀を抱え、逃げたとしてもその圧倒的な物量の前では逃げるという行為は無駄だと悟ったのである。

 

 

 

 

「うわ・・・!!」

 

 

・・・・・ヤバイ、今度こそ死んだッ!!

 

 時を同じくして、銀もその絶望的な状況に目を閉じた。 確実に今度こそ終わりだ、と。 あの光の矢の威力は銀が身を持って体験済みだ。 その矢が何十本も突き刺さるのだから、きっと自分は耐えられない、そう思ったのである。

 だが、いつまで経っても来るべき痛みが来なかった。 違和感を感じた銀が目を開ける。

 

「・・・・うそ」

 

 銀の目の前には全身をバーテックスの光の矢に貫かれた花山の姿があった。

 花山の白スーツは自身の血で染まり、所どころが破れ、ボロボロだ。 腕、胸、腹、肩、脚、と彼の隆々とした筋肉をいとも簡単に貫いたその姿に声を震わせた。

 

 

「どうして、アタシなんか庇ったんですかッッ!!」

 

 銀が叫び、両の拳を地面へと叩きつけた。 理由は、銀の周囲にはおびただしい程の光の矢が突き刺さっていたが、銀自体には一本も矢は刺さっていなかったのである。

 花山が銀の前から一歩も動くことなく、退くこともなく、その場に留まり続けた証拠だった。 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

 花山は生きていた。 だが、そのダメージは甚大だ。 骨まで貫く矢の雨に打たれた花山の足元には自身の身体から流れ出た血液で水たまりが出来てしまっているほどだ。

 それでもその目は死んではおらず、闘志を宿した目先のバーテックスを睨み付けては視線を逸らさない。

 

 

「う、うぅ・・・」

 

 背後からすすり泣くような声が聞こえて花山はふと、振り返る。 銀が涙を流していたのだ。

 

 

・・・・・どこか当たってたのか?

 

 先ほどの矢をどこかに受けたのかと考えたが銀の身体には矢は一本も刺さってはいなかった。 花山は銀が何故泣いているのか理解できなかった。

 すると、震える声で銀が一言。

 

「ご、ごめんなさい・・・」

 

「は?」

 

「アタシのせいで・・っ、アタシ、勇者なの、に・・・っ」

 

・・・・・ユウ、シャ?

 

 勇者って、あの勇者か?、と普段聞きなれない単語に思わず首を傾げる。

 銀は涙を勇者装束で拭いながら、

 

「お、おじさんは、アタシが助けなきゃいけないのに・・・・っ」

 

・・・・・オジ、サン?

 

 花山は面食らったように動くのをピタリと止めた。 自分は今年で19歳だ。 自身の外見と実年齢を聞いて驚く人間はたまにいるが、小学生の少女からこうして涙ながらに言われると心に来るものがある。 思わずため息をつきたくなったくらいだ。

 ここにはいない、範馬刃牙とかならオジサンと呼ばれることは無かったかもしれない。 自身の生まれをこの時だけ強く呪った花山である。

 

・・・・・まぁ、要するに、だ。 イイ子じゃねぇか。

 

 この少女は、責任を感じているのだ。 この化け物と戦うというのが、彼女の役目であり、それは自分たちのような一般の人々を守る為にあるのだ、と。

 その守るべき対象である普通の人を守護る(まも)どころか守護る(まも)られ、傷を負わせてしまったという事に負い目を感じているのだ。

 見てくれがこんな自分すらも、守護る(まも)対象に入れてくれている辺り、少女はとても育ちが良い子なのだな、と花山は思う。

 

「お嬢ちゃん」

 

 小さく笑って、花山は言う。

 

「・・・・・”勇者”なんだろ?」

 

 再び傷だらけの身体を前へと向け、

 

「簡単に泣いてちゃ、締まらねェぜ」

 

 ヤクザの自分がこんなことを言うのもおかしな話だな、と思いつつ。 心の中で花山は笑った。

 仕切り直しだ、と花山が動いた。 その時、身体に刺さっていた光の矢も霧散して消えていく。 花山としては自力で抜く手間が省けて良かったというべきだろう。

 

 

 花山は自身のズボンの裾を手に掛ける。 後ろでは少女が何をしているのか、と言った表情でこちらを見ているが、花山は構わず続け、裾を下から上へと力ませに引き上げた。

 メリメリと裾は避け始め、ズボンの腰部分まで手が届くと今度は上着も巻き込み、スーツを全て引き裂くという荒業も花山に掛かれば造作もない。

 服を破り捨て、褌一丁の姿になった花山。 その全身には顔面に刻まれた疵よりも遥かに多い疵がその男にはあった。

 

 

 

 

 

「―――ッッ」

 

 後ろで銀が言葉を詰まらせる。 銀程の小学生にとって初めてのことだろう。 背中に刺青をしている人間と出会うのは。

 入れ墨は一人の男が寺の鐘らしきものを背負っているという内容だった。 ただその背中に描かれている男、花山薫の背中には無数の疵がある。刀傷だ。

 よほど深く斬られたのだろう。 背中に描かれている男の刺青は刀傷のせいで繋ぎ目がズレていて、全体的にちぐはぐであった。。

 

 

 だが、三ノ輪銀は知らない。 これが花山薫の根源、彼らの世界で伝説として語り継がれてきた侠客立ち(おとこだ)と呼ばれる不倒の誓い、その所以を。

 

 

 




 色んな人から評価を貰えてうれしい限りです。ありがとうございます。
年越しそば、これから食べます。うたのん、良かったね、私はちゃんと蕎麦を食べるよ。

 次の仕事が始まるまでには完結させるように努力しよう。 そしたら朝露さんのお話も書かなくては・・・。ハッキリ言おう、時間がねェッ!!

 残すところ、エピローグを含めて二話。クライマックスは次くらいで。盛り上げるところはとことん盛り上げていきたい。
 最近ゆゆゆいガチャ新キャラでなくなった・・・・神樹様への信仰心が足りないのかもしれない・・・これからうどんだけ食べます。

 それではみなさん、良いお年を。
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