花山薫は極道である   作:バロックス(駄犬

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 こんなシーン書きたかった。


エピローグ ~わすゆ編~

――――数日が経過して。

 

「・・・・ん」

 

 目を覚ました三ノ輪銀の視界に飛び込んできたのは白い天井だった。 それは、見慣れた病室の天井だ。

 窓のカーテンの隙間から絶妙な光がちょうど銀の目元を照射している。 起きる事が出来たのはそれのお蔭だろう。

 

「・・・おっ?」

 

 ふと、銀の左腕がやけに重く感じた。 重しでもつけて寝ていただろうかと気になる左側を見ると、

 

「すやすや・・・」

 

 乃木園子が銀の左腕を勝手に枕にして寝ていたのだった。

 銀は呆れて眠気を我慢しながら左腕を引き抜こうとするが、園子が抵抗し、抱きしめるようにして離さない。

 

「やれやれ・・・・・園子には困ったもンだな」

 

 あんまり病院に寝泊まりはしてはいけない、と言われていたはずなのだが。 これでも良くなった方で、入院したての時はほぼ毎日園子達は病院に勝手に寝泊まりしていた。 それが2日に1回というペースになっただけだが。

 

「こら園子ぉー、起きないとイタズラしちゃうぞ ・・・・ほれ、ほれ」

 

 園子の頬をむにゅ、と突くと餅の如き弾力で銀の指が沈む。 寝ている園子はそれがやたら嬉しそうで、彼女はにやけ顔で、

 

「えへ、えへへへ・・・・」

 

 と、まだ起きそうにない。 

 しばしその反応を楽しんでいると、銀のベッドの真下から物音が聞こえた。

 

銀がまさか、と右側の方を見ると、

 

「あら、銀もう起きたの? 私より起きるのが早いなんて、明日は雪なのかしら」

 

 寝袋にくるまった、どこかのCMに出てきそうな姿をした鷲尾須美が銀の真横に立っていた。

 

「え、須美サン――――なんで平然とアタシのベッド下から現れるんすか?」

 

「銀? いくら大赦管理下の医療施設、優秀な看護師がいても、すぐ側で銀の異常を察知して呼び鈴を鳴らす人間は必要よ ・・・・ここが一番対応しやすいの」

 

 目元にクマを作り、笑顔すらも形成する須美の姿は若干ホラーで、寝袋にくるまった姿も相俟って新種のバーテックスかと錯覚する。

 須美だけは銀が入院してから"ずっと"この病院に寝泊まりしている。 ぶっちぎりの皆勤賞だった。

 

「いや、普通に寝ろッ! お前絶対寝不足だろッ あと、ずっと真下で寝ていられるとアタシも寝づらいんだけどッ!!」

 

「大丈夫よ銀、人間4時間くらい睡眠しとけば死にはしないわ ・・・・昨日は2時間も寝てないけど」

 

 いや、そろそろ死ぬぞ須美。 と内心で突っ込んだ銀であった。

 

「むむ、銀が眠りにくい状況を考慮してなかったわ・・・・ 次からはもっと気配を消せるようにしておくから」

 

「いや、そういう問題じゃないから」

 

 ついには声に出した。

 

 

 あの日、銀たちが三体のバーテックスと戦ってから2週間が経過していた。

 銀はあの後、樹海の中で須美と園子と合流を果たす。 3人合流した喜びもつかの間、銀のダメージはかなりのものだったため、樹海化が解除されてすぐに銀は大赦の管理下にある医療施設へと緊急搬送された。

 

 

 危険な状態であったものの、なんとか一命は取り留め、まだベッドから降りるのに車椅子が必要だが、順調に回復の段階を踏んでいる。

 

 

「そう言えば須美、アタシが手術してるときに凄い泣いてたらしーじゃん」

 

 寝袋ミノムシ、須美の身体がピクリと動きを止める。 壊れたロボットの如く、首だけを動かして視線を向けた須美は顔を真っ赤にしながら、

 

「ど、どこでその話を・・・」

 

「園子が言ってた」

 

「そのっちィッッ!!」

 

「泣くだけじゃ飽き足らず、神社で百度参りもしてたってのも知ってる」

 

「――――邪ッッッ」

 

 寝袋の隙間から伸びた須美のアイアンクローが銀の顔面に炸裂する。 このままでは銀の顔面が砕け散る。

 銀がたまらず、須美の手をタップしたのを見て顔からの拘束が解かれる。

 

「――――もうッ 人の気も知らないで・・・・」

 

 ぷいっ、とそっぽを向いた須美に銀は苦笑いを浮かべる。

 だが、こういう風に軽くイジけた感じになる須美は相変わらず可愛らしいな、と同時に思ったのだ。

 

「まぁまぁ、須美さんや、こんな優しい仲間たちに囲まれて入院生活送れるなんて、三ノ輪銀サマは幸せもんだねー、と言ってみる」

 

「むぅ、おだてたって無駄よ銀」

 

 頬を膨らませて、まだご機嫌斜めの須美に銀もやれやれ、と言った表情だ。

 

「なんだよー、じゃあどうすりゃ機嫌直してくれるんよ?」

 

「そのっちみたいな喋り方になってるわよ・・・・・似てないけど」

 

 銀の問いに、須美は少し恥ずかしそうに視線を逸らした。

 

 

 

 数秒程の間を明けて、須美が流し目でこちらを見ながら、一言。

 

 

「・・・頭、撫でて」

 

「ははっ、喜んで」

 

 銀が手招きをして、呼び寄せると須美は近くの椅子を展開し、座り込むと銀の方へ頭を差し出した。

 

 

 ゆっくりと、艶のかかった黒髪をかき分けるように、銀は須美の頭を優しく撫でる。

 途中、誤って指を絡まってしないように丁寧に、時には髪の毛一本一本をなぞりながら。

 

「・・・ふぁ」

 

 気持ちよさそうな顔を見て、銀は一安心する。 遠足の時も同じような事があったな、と思い出しながら小さく笑った。

 少しほど経ってから銀が一旦手を止めて、

 

「もういいか?」

 

 尋ねると、須美は小さく首を横に振り、

 

「・・・・もうちょっと」

 

「・・・へいへい」

 

 おねだりがあったので撫でる動きを再開する。 

 

「・・・ん」

 

「須美は甘えんぼさんだなー、そんなにいいのかコレ」

 

 コクン、と頷いている須美を見て自分の右手はもしや魔力でも宿っているのではないかと錯覚した銀である。

 

――――鷲尾キラーハンドッッ

 

 内心で勝手に命名した銀だったが、その反対方向でただならぬ風を、暴風を感じた。

 

「いいよ・・・・」

 

 小さく呟くその声に反応した銀が隣を見ると、いつの間にか目を覚ましていた園子がノートとペンを持って目を輝かせていた。

 

「いいよいいよ、イイヨイイヨ114ォォォォォ!!」

 

 人語を崩壊させながら、一瞬のうちに数十枚のメモ帳の半紙を文字で埋め尽くす。そして鼻息を荒げながら両の人差し指と親指で四角形を形成させ、銀と園子を除くように構えた。

 

「目の前でこんな熱い展開が待っていたなんて・・・・創作意欲がGUNGUN湧き出るよォ!」

 

 おかしい、窓も空調も聞いていないはずなのに彼女の周囲にはエアロガでも発動してるかと言うくらいに風が吹き荒れている。

 

「私の事なんて気にしないでッッ 私は観葉植物園子ッ そのまま続けてッ 続けなさいッ イヤ、続けろッッ -----私は一向に構わんッッ」

 

「ヤメロォ!」

 

「やめなさい!」

 

 危険状態となった園子をなんとか二人掛かりで止めに入ってなんとか事態は収束した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、銀・・・・その人、銀を助けてくれた人って結局―――」

 

「調べて貰ったんだけど、”花山組”なんて、この四国のどこにもなかったんだとさ」

 

 残念そうに銀は須美の質問に答える。 ベッドの側には、あの戦いの最中、男から渡された名刺があった。

 

 

 

 戦闘が終わり、銀は大赦に人の捜索を頼んでいた。 名刺を頼りに、四国内のその手の組織をしらみつぶしで探してくれたのだが、そこに”花山組”という暴力団組織は存在しなかった。

 

 旧世紀の時代の資料も出来る限り調べて貰ったのだが、手がかりは全く出てこない。あまりにも手がかりが無い、勇者の命を救った男の正体を大赦と言う組織はまったく掴めずにいたのだ。

 

 

 やがて、一人の大赦の職員はこう言っていたがその内容も、

 

 

『その御仁は、私達の住む次元とはまた違う次元から来た人間なのでは』

 

 

 と、理解には困る半ば投げやりな回答であった。

 

 

「おかしな出会いってあるもんだね~ 神世紀の、不思議ってやつだよ~」

 

「そうだな、でも、もう会えないのかな」

 

 肩を落とす銀を見て須美が呟く。

 

「でも、”また会おう”って言ってたんでしょ?」

 

 彼女は続けて、

 

「一回そんな不思議な出会いがあったんだから、二回目だって、きっとあるわよ銀」

 

「―――うん、そうだな。 次会ったらもっとお礼も言いたいし、アタシも強くなっていないとな!!」

 

 拳を握って、義に溢れた大きな背を銀は思い浮かべる。

 

「そう言えば銀、神樹様から新たな神託があったそうよ」

 

「ええ・・・また敵ィ?」

 

「ミノさん違うよー、なんか神樹様の体の中で大変な事が起きてるみたいでねー」

 

「結局敵のような気がするんだけど・・・・」

 

「ま、今は治療に専念して、早く戦えるようにしなきゃね」

 

「とほほ・・・・銀サマ、疲れとれないまま戦いに行くのね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――過酷な運命を乗り越えた小さな花たちの物語はまだ見ぬ”花結いのきらめき”へ。

 




 勇者シリーズというものに会わせてくれて感謝と言いたいッ
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