Fate/Table Talk 偽史夢幻奇島ニライカナイ ~虚光のタウミエル~   作:珈琲菓子

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多分一番やべー話になります(ゲーム的に)


10 Bad Apple!! 前

”何処か”

出来損ないの聖杯戦争を観測する存在

 

一番先に呼び出されておきながら、どこまでも仲間外れの存在

人でも魔術師でもない、しかし、英霊と呼ばれる格を備えた男

 

聖杯戦争に召喚されるサーヴァントは原則として七騎

セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー

 

だがその男は七つのクラスのどれにも当てはまらない

 

剣や弓、槍といった武器を持たず、戦車や獣を駆る事無く、魔術や殺戮の技に長ける訳でもなく、内なる狂気に身を委ねる事も無い

 

ただ、ひたすらに起きた出来事を書き止める記録者

―――”Saver”

 

戦力外にして規格外

戦うチカラを一切持たない男に与えられた役割

 

今まさに、”何処か”で果たそうとしているのだが―――

 

「何―――、この意―――不明―――宝…は―――――…録―特権…が―――、視点…―――乗っ取…―――れ―――!」

 

これ以上ない程テンパりながら、記録者はその視点を失った

 

 

 

 

 

 

心地よい潮風が頬を撫で、走り抜ける

細やかな砂を乗せ、後方にそびえ立つ風車によって送り出されてゆく

 

傍らに建つ小さな祠は僅かに軋み、揺れる木々の影は、本のページに姿を現してはフェードアウトする

 

本を舞台に繰り広げられる影の反復横跳びを数える事を止めた頃

おもむろに顔を上げ、虚構から現実に目を向ける

 

頭上の蒼穹

眼前の蒼海

 

けれども、眩い陽光は満足に届かない

広大な自然、圧倒的スケールとは対照的に、俺の心には小さな憂いがあった

 

”どこにでも居そうな男”

俺が、俺自身を客観的に評価した結果だ

 

”どこにでも居る、という事はどこにも居ないのと同じじゃないか?”

という捻くれた考えは、この際置いておくとしよう

 

運動能力はそこそこ

背はそれ程高くない

頭もそれ程良い訳では無い

並外れた特技がある訳でもない

容姿が飛び切り整っている訳でもない

 

至って普通の存在であると言わざるを得ない

全世界の4分の1くらいは俺と似たようなので出来ているのではないだろうか

…まぁだからこそ、どこにでも居そうという結論なのだが

 

嘆息しつつ、読み終わったばかりの本を閉じた

そしてまた一冊、読破した成果を横に積み上げる

 

森と砂浜の境界に築かれた、小さな祠

薄暗い地面に、本の影が上書きされた

 

偶然通りがかった際、特別そうな場所に見えたので、何かしらの良い事が有るかと期待したが、結局は何も得られなかった

 

一体、どれくらいの時間こうしていただろうか

山のようになった本が時計の代わりだが、かなりの時間が過ぎた事が窺える

成る程、昨今の書物には時間を消し飛ばす不思議な力があるようだ

 

本の山に手を伸ばし、軽く表紙に触れる

多少気分は和いだが、同時に憂いの影が差す

 

表紙に触れた右手、その甲にある異様な紋様

鎖を思わせる形に、鈍く紅い光を宿している

 

これこそが憂鬱の種

いつの間にか浮かび上がっていた紅い紋様

 

タトゥーなどした覚えも無いし、そんな趣味だって勿論無い

いつ、どこで、こんな不気味なモノを手に入れたのか

或いは最初から有ったのか…?

疑い出せばキリがない

 

何故自分が此処に居るのか

自分は一体何者なのか

 

分からないし、思い出せない

記憶の闇は俺を解放してくれないようだ

 

暫く答えの無い疑問に思いを馳せていたが、視界に捉えた”何か”によって禅問答は打ち切られた

 

…人、か?

それも二人

 

コスプレみたいな珍妙な格好をした、おかしな連中が…

うわっ、空から突然降りてきやがった…!!

 

赤い服を着た爺さんと、鎧を見に纏った若い男

―――何だ、アイツ等は…?

 

「……うん?」

「……一般人か?」

 

向こうも俺に気付いたようだ

こっちに視線を向けてくる

 

例えようも無い、妙な感覚

俺の方も、意図せず彼らを凝視してしまう

 

いや、格好からして気になってしまうは当然なのだが、ソレを抜きにしたって変だろう

 

「…いや、どうやらそうでもなさそうじゃの」

爺さんは俺の右手の紋様を見ている

 

妙な感じだ

向こうは俺に興味を抱いている

 

どうする? 話を聞いてみるか?

こんな場所で、空から振ってくるような連中だ

得体の知れない奴等と関わって、どうなるかなんて分からないぞ?

 

…だが、コレはチャンスでもある

ただでさえ、記憶もなく、不安な状況だ

現状を把握するためにも、情報を得なければ何も始まらない

 

 

 

≪人物分析≫

【騎】

スキル使用:『善悪判断』…対象の属性を判別する

判定:成功…”混沌・善”

 

【”俺”】

スキル使用:『パラノイア』…被アクション時、相手にスキル『パラノイア』を付与

判定:成功…【騎】に『パラノイアE』付与

 

 

【槍】

挙動、肉体に関する観察

判定:成功…戦闘慣れしている様には見えない

 

【”俺”】

スキル使用:『パラノイア』…被アクション時、相手にスキル『パラノイア』を付与

判定:成功…【槍】に『パラノイアE』付与

 

 

 

「……いかんのう、儂らも戦い続きでいささか疑り深くなっておるな」

「まぁ、状況が状況だし仕方ねぇんじゃねぇの」

 

”戦い続き”

今、この爺さんは確かにそう言った

そして、もう一人の男も否定はしていない

 

「いきなり空から来るし、格好もまともじゃない……なぁ、お前達は、一体何なんだ…?」

「その説明をするのは構わないんじゃが…お前さんの事も、聞かせて貰うぞい」

 

頻りに辺りを見回し、何か警戒しているのか…?

同時に俺の右手を注視しながら、探りを入れてくる

 

 

 

【”俺”】

スキル使用:『パラノイア』…被アクション時、相手『パラノイア』のランクを上昇

判定:成功…【騎】の『パラノイア』E→D

 

 

 

「…まあ、ええか ざっくり言うとじゃな、儂らみたいな変なのが数人で命がけの殺し合いをしとるところでな」

 

一瞬、思考が停止した

 

「…殺し、合い……だと…?」

 

馬鹿を言え、悪い冗談だ

見るからに荒事向きな若い方は兎も角、目の前の爺さんが…?

 

しかし、よくよく見ると、二人とも服や鎧に傷がある

俄かには信じ難いが、あながち嘘じゃないのかもしれない

 

優しそうに見えて、実は…ってタイプか

……まさか俺も標的に…?

 

一気に膨らむ疑心

直視しないようにしていた現実

疑問を、口に出す

 

「…なぁ、…………お前達、その手のタトゥー活かしてるよな…ペアルックって奴か…?」

 

 

 

【”俺”】

スキル使用:『パラノイア』…被アクション時、相手『パラノイア』のランクを上昇

判定:成功…【騎】の『パラノイア』D→C

 

 

 

「お前さんにも付いとるじゃろ(まあ、見た感じ知識無いっぽいがの)」

 

殺し合いをしている奴等

共通する右手のタトゥー

 

そして、俺の憂いの元

右手に存在する、悪夢

 

「…ホント奇遇、だよな…俺にも、似たようなのがあるんだ…」

 

言った

触れてしまった

 

情報を得る為とは言え、暴力を司る存在に

俺と、奴等の、紅いタトゥーによるその関係性

 

仮に、殺し合いによって結ばれていた場合

その”理由”が適用されてしまえば…終わる

 

「いやあ、正直言って奇遇じゃあないはずじゃぞ? なんの意味もなく浮き出るもんじゃあ無いしのう」

「爺さん…アンタは、これが何か知ってるのか?」

 

 

 

【”俺”】

スキル使用:『パラノイア』…被アクション時、相手『パラノイア』のランクを上昇

判定:成功…【騎】の『パラノイア』C→B

 

 

 

「令呪… まあそうじゃのう… 儂らみたいなのに言う事利かす為のお守りのようなモノ…」

「それと、この戦争の参加資格みたいなもんか」

捕捉するように若い方が付け加える

 

「じゃったんじゃが…どうも、今回は色々歪んでいるようでの

 本来マスターに浮き出るはずのソレが、どういうわけかサーヴァントに浮き出てきおってな」

 

 

 

【”俺”】

スキル使用:『パラノイア』…被アクション時、相手『パラノイア』のランクを上昇

判定:成功…【騎】の『パラノイア』B→A

 

【”俺”】

スキル使用:『パラノイア』…被アクション時、相手『パラノイア』のランクを上昇

判定:成功…【槍】の『パラノイア』E→D

 

 

 

「戦争…か…」

 

戦争、マスター、サーヴァント…

ここまで来ると笑えてくる

 

突飛すぎて現実を受け入れられない

さっきまで読んでいた本の方が、まだマシなくらいだろう

 

「俺も、その参加者、って事かよ…」

 

 

 

【”俺”】

スキル使用:『パラノイア』…被アクション時、相手『パラノイア』のランクを上昇

判定:成功…【騎】の『パラノイア』A→A+(最大値)

 

 

 

「そう言う事になるのう…おまけに令呪が出てる以上、戦闘する側で呼ばれておる」

「勘弁してくれ…大体俺は、その戦争の事はおろか、自分の事さえ良く分からないんだ…」

「間が悪かったのう まあ、それに…」

爺さんは一旦言葉を切り、再び周囲を見回す

 

「儂らはさておき、他の者が見逃すとは思えんがの」

「”他の奴”、か…まぁ、戦争ってぐらいだもんな、居るんだよな、…他にも沢山…」

 

命を奪う奴が、命を奪うことができる奴が

俺を、…狙ってくる

 

目の前のコイツ等は、直ぐに俺をどうこうする気は無いようだが…

 

戦いを終えてきた後で消耗してるからなのか

それとも、殺す対象に優劣でもあるのか

 

「うむ、まだ残っておるのう…まあ正直言ってこの現状だと一番厄介な手合いやもしれぬなあ」

「…知ってるのか? 他の参加者の事…」

「下手すりゃ、もう狙われているかもしれねぇな…、アーチャーだって残ってる」

「拓けた場所にいるのは正直まずいのう」

「とりあえず移動でもするか?」

「じゃなあ」

 

 

 

【”俺”】

スキル使用:『パラノイア』…被アクション時、相手『パラノイア』のランクを上昇

判定:成功…【槍】の『パラノイア』D→C

 

 

 

「というわけで儂らは移動するがの、お主はどうする?」

 

…どうする…?

正直、道は無い、八方ふさがりだ

 

一人でこそこそ隠れるか?

顔も割れてる上に、爺さんたちは空を飛べる

いずれは見つかり、今でなくとも、成す術もなく殺されるだろう

 

じゃあ爺さん達に着いていくか?

ソレこそ”針の筵”…無茶な話だ

 

戦争、殺し合い

未だ実感は無く、状況も掴めない

 

これから先、―――俺はどうするべきか

 

「俺は―――」

答えを、選択しようとした

その時、

 

「ッ?!」

 

突如、太陽を遮って現れる巨大な影

何かが、上空から俺達を見下ろしていた

 

「…ほー、こりゃまた立派なモンが出てきたのう」

 

穏やかな風景に、突如として現れた異物

何故?、いつの間に?

疑問は尽きる事無く湧くが、それでは何の解決にもなりはしない

 

”竜”

お伽噺に出てくるような、暴威の化身が現れた

 

完全に俺達を捕捉したのか、竜は上空で動きを止める

徐々に高度を下げ、やがて巨体が降り立つ

 

大地が揺れ、風圧が顔面を叩く

驚異的な存在感と威圧感

 

長い首を傾け、鋭い双眸が俺達を捉える

その眼には明らかな敵意が浮かんでいた

 

数秒もしない内に、その暴威を振りまくだろう

まともに抗う術の無い俺は、間違いなく…死ぬ!!

 

嫌だ、そんなのは嫌だ

冗談じゃない、こんな所で死んでたまるか!!

どうして俺が、何故、こんな目に合わなきゃいけない!?

 

「いやあ立派なモンじゃのう。タラスクだかいうドラゴンみたいじゃわい」

「…オイ、もしかして、アレが”アーチャー”って奴か? ヤバそうだし、完全に殺す気でいるぞ!?」

「アレは違うじゃろうなあ…いやあ、殺す気なのは当然、目についた邪魔者をどかしにきたんじゃろ」

「丁度よく飯でも見つけたと思ってるかもな…」

「…ふうむ、しかしここは大体現代じゃって話だったからのう 何かしらの宝具で出てきたのか、それとも怪しい研究でもしてたのか…」

 

何で、そんなに余裕そうなんだ!?

ピンチだろ!? 命の危機だろ!?

恐怖ってモノを知らないのか!?

 

「冷静じゃなさそうじゃから言っておくがの、儂等は竜ぐらいなら戦う機会が嫌って程あったからのう…ワイバーンの群れに突っ込んだりしょっちゅうじゃったわい」

「まあ、群れでもなく一体だけなら全然問題ないな」

 

「何を、言っているんだ…お前ら…」

 

竜ぐらい?

ワイバーンの群れ?

一体だけなら問題無い?

 

何だソレは?

理解が追いつかない

俺の知らない現実を知っているコイツ等は、一体何なんだ?

 

「怯え竦む気持ちは分からんでもないがの…それで事態が解決した試しは無いのでなあ

 どうにもならぬ事態が襲いかかってきたのならば、どうにか凌ぐしか無いわけじゃし…」

 

怯えている 竦んでいる 

…確かにそうだ、これ以上無い程分かりやすい命の危機なんだ

 

「幸いにして儂らにはその力があるからのう …さあて、オルレアン以来の大物退治といこうかの」

「あぁ、このぐらいのデカブツなら手応えは十分だろうな」

 

白紙の記憶に、混沌とした状況

不安と恐怖は、確かに胸の内に渦巻いている

 

如何にもならない事態が、現在(いま)であるとするならば、

どうにか凌ぐしかないのも、また現在(いま)

そうだ、重要なのは、…今この瞬間

「…あぁ、やってやるさ …これでも、俺だって”戦争”の参加者だ…」

 

ふざけるなよ

―――突然敷かれた理不尽に対する憤りもある

 

「じゃからお前さんは儂の後ろで………うん?…戦うつもりなのかの?」

「とても戦えるような感じはしねぇけどな」

「…逃げたって、”他の奴”に殺される……何もしなくとも、ただ此処で死ぬだけだ…!」

 

コスプレ爺さん達が何者だろうが知らない

相手が竜だろうが関係ない

―――抗ってやる!!

 

「正直言って、お前さん守りながら戦うことになるかなあと思ってたんじゃが」

「俺だって男なんだよ…守られるだけのお荷物なんて真っ平御免だ…」

「意気込みは結構なんじゃがな…、実際お前さん戦えるのかの?」

「…正直、分からねぇさ…今だって怖いし、膝もガクガクしてる…だけどな…」

 

死ぬのは怖い

痛いのは嫌だ

肉体への負荷と恐怖は自己保存を叫んでいる

 

「上手く言い表せないが…此処で逃げたら、俺はただ死んでしまうより、…何か、もっと別のどこかが”死ぬ”気がするんだ」

「そう言うなら止めはしまい…が、一時の蛮勇で死ぬのは阿保のする事じゃからの」

 

「…危なくなったら、命を優先せいよ」

「…随分と優しいじゃな…まぁ、俺だって死ぬのは嫌だ、程々に頑張るとするよ」

「善し、じゃあ竜退治と洒落込むかのう」

「庇うとかは期待すんなよ、俺ぁそこまで器用じゃねぇからな」

 

…”竜退治”、か

平凡な俺が、まるで、どこかの英雄のようだ

 

そう思った時、ホンの少しだけ、恐怖に勇気が勝った

そんな気がした

 

 




暫く”俺”君の一人称視点で進みます
文体がラノベっぽいとか思ってくれたら幸い

”俺”君に対しアクションを行う際には、彼のパッシブスキルである『パラノイア』の判定が発生
この判定に失敗すると、初回のみスキル『パラノイア』を付与されます(以降は判定失敗の度にランクを上昇)

≪パラノイアについて≫
※”俺”の問いに対する回答も判定の対象
※ランクの高さに応じて戦闘時に有利となる補正を付与
※このスキルには感染源への共感性を高める効果が有ります


何だこのウイルスは、たまげたなぁ
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