Fate/Table Talk 偽史夢幻奇島ニライカナイ ~虚光のタウミエル~   作:珈琲菓子

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バーサーカー編決着
プレイヤーさんそっちのけで一人ずっと喋る”俺”君

仕様です(絶望)


12 Bad Apple!! 後

【”俺”】

スキル使用:『覚醒』EX   ≪CT5≫

…攻撃&防御↑(2d6/3T)+ガッツ付与(1回-3d6)

⇒攻撃&防御+5(3T)、ガッツHP+7

 

 

「『己が為の物語(グラヴィー・マル・デ・アモーレス)』!!」

 

 

 

ありったけの空気を吐き出し、叫ぶ

無意識に浮かんだ言葉を、思い切りぶちまけていた

 

聞いたことも無い、勿論、誰かに教わった訳でもない

しかし、その願いの形を、俺は最初から知っていた

 

だからこそ、俺は自身の宝具(キリフダ)を行使する

 

俺の世界

俺だけの世界

俺の思考は世界を凌駕する

俺の意志が、俺の世界を革命する

 

「やっと…、やっと理解った…俺を、―――俺自身を」

 

俺に許された役割

俺に与えられた力

 

「俺は…、―――サーヴァント・”バーサーカー”…」

 

連鎖的に過る記憶

 

始まりは、顕現した月の光差す館

大量の塩と、妙な魔法陣が、其処に在った

 

館の中には人も居らず、手掛かりらしい手掛かりすら無い

 

自分の中にある疑問の答えを探すべく、俺は各地を歩き回った

館を出て、山を降り、森へ、村へ、平原へ

次々と足を伸ばしたが、終ぞ答えを見つけ出すことは叶わなかった

 

唯一の発見と言えば、俺が最初に降り立った洋館に山ほど置いてあった”本の山”

何かしらの参考になるかと拝借したが、どうやら正解だったようだ

 

生前に熱中していた騎士道物語に勝るとも劣らない面白さ

この時代における我が聖書と言っても過言では無い

やはり本は、物語は良いモノだ

活字は人生に活力を与えてくれる

素晴らしきはライトノベル、感謝の言葉しかない

 

 

閑話休題

 

 

「随分…、キツイ目覚ましだった…そうでもなければ、目を醒ます事は出来なかっただろうが……」

 

ここまで追い詰められて漸く、だ

我ながら、随分お寝坊だぜ

 

「―――俺は、ようやく”俺”になれた」

 

頭の中の靄は消え、記憶がハッキリと蘇る

身体にチカラが満ち、痛みもとっくに消え失せた

 

「そして思い出したぞ、…”聖杯戦争”……己の願いを求め、殺し合う、イかれた祭りだ」

 

聖杯戦争

時代に名を刻んだ英霊7騎による、人知を超えた死闘

 

「…一体、どうしたんだコイツぁ…」

「令呪から大体察してはいたがのぅ…こやつも、本当に戦争の参加者というわけじゃ」

 

俺と、そして共に戦う2騎のサーヴァント

本来ならば、敵同士な訳だ

だが、俺を始末しなかったばかりか、あまつさえ共闘している始末

状況が状況だけに、妥当というべきなのか

 

「(…勿論、全員が全員、コイツ等みたいなのじゃあないだろう……中には恐ろしく、身勝手な事を願う奴もいるのかもしれない…)」

 

だからこそ

 

「こんな状況だ……誰が何をしたって、何が起こったって、不思議じゃあない」

 

右手の令呪、そしてマスターが居ない事

この状況が異常である事は、流石に俺でも理解できる

 

何一つ分からない状況から、一歩は前進することが出来たのだ

 

無力な”一般人”だった俺は、”英霊”となった

対等な、聖杯戦争の、役者の一人となった

 

「今の今まで、立ち止まっていた俺だが…、このまま大人しく、誰かの踏み台になるつもりは無い」

 

言い放つ

これは戦いだ

 

聖杯だかなんだか知らないが、そんな胡散臭いモノ信用できるか

よりによって、異質すぎるこの状況で

 

「例え、どんな結末が待っていようと、俺は、英雄として、この力を使う…!!」

 

マスターは居ない、令呪も何故かサーヴァントに宿っている

魔力供給は何処から来ている?

令呪は正常に機能するのか?

 

戦争に勝ち残ったとして、聖杯は出てくるのか?

願いが叶う保証なんて、本当にあるのか?

 

爺さん達が何を望んで戦いに挑むのか、それは奴等にしか分からない

 

何にも代えがたいような、重苦しい願いかもしれない

度し難い程自分勝手な、腐りきった祈りかもしれない

 

他人が何を考え、何を成し遂げるか

そんな事、俺には知った事じゃない

 

俺がこれからするのは、”戦争(やつあたり)”

俺を痛めつけてくれた、竜に対する憂さ晴らしだ

 

これは”戦い”なんだ

俺と、目の前のデカブツ

俺個人と、セカイとの、―――戦争だ

 

「まずは、目の前のアイツをブッ倒す…!!」

「…うむ」

 

聖杯戦争

願いと願いのぶつかり合い

言ってみれば、死人達の殺し合い

 

「そしてこんな戦い、とっとと終わらせて、全員座に突っ返す!!」

「…うむ?」

 

俺もその死人の内の一人

死は生前に受け入れた

だから今、ここで高らかに宣言しよう

 

「色々世話になっておいて悪いとは思う…だけどな、死人は大人しく、死んでいるべきだ」

「…そこに関しては同意するわい、死人は眠っているべきじゃ」

 

「じゃがな」

一拍置き

 

「盛り上がってるところ悪いんじゃが…一つだけ聞くぞい」

「あぁ」

こんな時に、何を…?

 

「どこかの誰かの大層な理屈で、文字通り日常の何もかもを奪われた子供が一人いるとするぞい」

「…あぁ」

「その子は善良じゃ…少なくとも、そんな目に遭う謂れは一切ない、人付き合いの良い子供じゃ」

「…」

「そんな子がじゃ

 出来うる限りの必死を尽くして、あり得るはずだった日常の全てを投げ打ってそんな現状に抗っておるとして」

「…」

「そんな現状を打破する為に、死人が手を差し伸べることが出来るとして」

真っ直ぐに俺を見据え、

 

「お主は、…ソレを否定するかの?」

問いかけてくる

 

爺さんの意図は読めない

この状況で何を言っているのか、何を言いたいのか

 

「(答え次第じゃあ……って感じだな)」

別に偽る心算も無いが、誤魔化しなんて効かないだろう

 

ランサーは問答の邪魔をさせんと、竜を牽制してくれている

 

今俺がすべきは、―――正直な心情を告げる事

 

「もし」

爺さんの言葉が真実であるとして、

 

「もし、仮にだが…そんな最高にツイてない奴が居るとするなら…」

その無情な境遇にある者が、

 

「そのツイていない奴が、ソイツ自身で如何にも出来ないのならば、」

自らの運命を前に膝を屈しながらも決して諦めず、

 

「俺に助けを求めてくれるのならば、―――俺は、ソイツを助けよう」

「…そうかの」

安心したように息を吐く

 

既に舞台を降りた者が、今を生きる人々の邪魔をするべきじゃない

俺の好きなこのセカイを、俺の愛するセカイを

死人が汚す事は決して許されない

 

それでも、助けを求める者を助けることは

導いてやることは、決して悪い事では無い

 

「…爺さん達は、そんな奴を知っているのか?」

「うむ、じゃから今、無駄な争いをしている暇はないのじゃよ」

横目で竜を見つつ

 

「聖杯がどうとか正直どうでもええわい、儂の今1番の苦痛はの、そんな子の力になってやれんことじゃ」

 

サンタクロースは善き子の願いを叶え

希望を与える存在である

故に現状は苦痛でしかないのだ

 

「子の夢を守り、願いを叶え、明日への希望に繋げてこそのサンタクロースじゃからの」

 

「故に、儂らを座に送り返そうって言うならば…」

ソリの手綱を握りしめる

トナカイが嘶く

 

「決して、容赦はせんぞ」

言葉に凄みが篭る

 

「…詳しい事情は知らないが、お前達の事は少し理解できた」

爺さんの尋常じゃない様子から、本気である事は察した

ならば、先程の言葉も必然と、”そうなる”

 

「お前達に優先すべき事情があるならば、俺はその邪魔をしない

 このセカイに仇名す願いでは無いのならば、俺は否定する権利を持たない」

 

無言のまま笑うランサーも、志は同じなのだろう

必死に生きている奴の味方ならば、俺もまた、その味方だ

 

「そこでだ、提案がある」

「ふむ?」

「一緒にこの茶番(たたかい)を、終わらせよう」

 

「現状が苦痛なんだろう? だったら、一刻も早く打破すべきだ」

 

助けを求める者

救いを与える者

歯車が嚙み合わないのでは、セカイは回らない

 

「ソレで済むならば是非もなしじゃわい、儂とて好き好んで争いたいわけじゃないからのう」

「よし、決まりだな……先ずは、あのタフなデカブツから片付けようか」

 

方針は決まった

あとは実現させるだけだ

 

 

 

≪4巡目収支≫

【槍】HP69/69

   NP31

   スキル:『滴る黒水』(残りCT5)

       『ルーン魔術』(残りCT5)

・回避判定-4(2T)

 

【騎】HP67/67

   NP13

   スキル:『聖者の贈り物』…攻撃命中時NP+5(3T)(残りCT7)

・回避判定-4(2T)

 

【”俺”】HP7/20

    NP56

    スキル:『覚醒』…攻撃&防御+5(3T)

 

【竜】HP:-1(”特殊生存”状態)

   チャージ:3/5

・『特殊生存』…”主人公”以外の攻撃を受けない(永続)

 

 

 

≪5巡目≫

【槍】

命中判定:成功

ダメージ:14

 

 

「そっちの話はまとまったみてぇだな」

言いながら槍を構える

 

「そんじゃあ、とっととブッ倒すぜぇ!!」

迷い無く駆け出す

蹴り脚に舞い上がった草土が地に着く頃、肉薄

 

「ガアアアアアッッッ!!!」

「ウラァッ!」

 

ランサーを噛み砕こうと迫る咢

微塵も臆さず、それどころか笑みを浮かべながら、棒高跳びの要領で跳躍

竜の反撃を掠る程度にとどめ、躱しざまに背中を横一文字に薙ぎ払った

 

「ッッッ!!」

 

強固な鱗、分厚い皮膚を斬り裂き、血液が跳ねる

傷だらけの奴の体に、再び傷が刻まれた

 

「(…浅い…!)」

巨大(デカ)さに対して傷が小さすぎる

 

「…まだ足りねぇみたいだな」

槍を構えたまま竜に向き直る

 

強すぎる生命力を突き崩すには、強力な一手が、それこそ”とどめ”が必要となる

 

複数の英霊を以てしても、未だ倒しきれない

流石は幻想種と言った所か

 

「(だからこそ、…俺が、この手で…!!)」

 

過去に、現在(いま)に

決着を、付けなければ

 

 

【騎】

命中判定:失敗(ファンブル)

 

 

「…何か考えが有りそうじゃのう、お主」

「あぁ、秘策って程でもないけどな」

「であれば仲間として信用するわい、思いっきりブチかますがよいわ」

「おう…もし、しくじった時は…」

「儂等を信じて、背中を預けるとよい」

「へっ、分かったよ!!」

 

 

【”俺”】

スキル使用:『主人公』:EX  ≪CT5≫

 …自身の全ての判定ダイスを1d99に変更(1T)&”敵”特攻状態を付与 ダメージ2倍(1T)

宝具使用:『共に駆ける遠き栄光(ロシナンテ)』…自信に無敵貫通状態を付与&敵攻撃&防御↓(1d6-3T)

ダメージ:164

 

 

「(此処が正念場だ…)」

 

そのまま自己に語りかける

何をしたいか、何をするべきか

記憶を無くして彷徨っていた時とは違う、今はもう明瞭明白

 

「―――己の魂以外、己の物と成す事なかれ…現在(いま)の自分を愛さず、将来(みらい)の自分を愛せ…」

 

分かるか? 俺の見ている世界が…!

溢れんばかりの希望に満ち溢れた、いつまでも輝き続ける、この素晴らしきセカイを…!!

俺の見ているモノを、これからお前達にも魅せてやる

 

その為の宝具は既に、いや、最初から起動していた

 

「儘ならねぇ人生も、だからこそ楽しかったんだ…!!」

 

死んで初めて分かった事がある

産まれ堕ちようが、枯れ果てようが、寝ても覚めても結局は同じ

俺達は存在する限り、夢を見続ける

 

”事実こそ真実の敵”

夢想も逃避も、決して悪い事ばかりじゃない

 

限られた現実の中に見出す夢

ソレこそが、セカイに変革を齎す鍵

 

「この世に、幾ばくかの優雅さを…!!」

色褪せたセカイに、たった一つだけで良い

 

塗りたくらなくとも、ただ一つの点でいい

小さくとも、主張は要らず

極彩でなくても、綺麗じゃなくても

 

俺という”色”が有れば、ただそれだけで十分

認識という水は、簡単に染まる

 

戦いを、決着を

勝ち負けは問題では無い

これは必要な闘争だ

 

足は動く、手も動く

先程の痛めつけられた傷は無い、消えた、消した

痛みも無い、―――消した

恐れも無い、―――消した

 

消えて無くなる物なら、最初からその程度のものだ

自分自身をコントロールする

無意識を、意識下に置く

 

「”俺”を思い知らせてやる…―――だから、”俺”を刻み付けろ」

 

「…………」

降り立つだけで、凄まじい重圧を齎す怪物

迎え撃つは、3騎の英霊

 

俺が英霊として覚醒し、戦況が変化したとは言え、脅威は脅威

 

その恐ろしさは、生前相手にしたあの時と、何一つ変わらない

騎士として、英雄として挑み、そして敗れたあの時と

 

俺の生を彩る物語の数々にあって、拭えない忌まわしき記憶

渾身の突撃も虚しく、地に転がされた屈辱を、俺は忘れはしない

 

今こそ、屈辱を晴らす時

過去を超え、未来を勝ち取るため、戦うんだ

忘れがたい仇敵を、打倒しなければばならない…!!

 

「グルルルルルルル…」

 

爛々と輝く双眸が俺を捉える

俺達と奴の距離は約20m、巨体にとっては何の苦も無いだろう

翼を失えど、瞬く間に接近してくるのは目に見えて分かる

 

生前は無残にも破れてしまったが、今度はそうはいかない

死して俺は”英霊”となった

 

人の身から人ならざる者へ

幻想が幻想に勝てない道理など無い

 

「―――其の名、失墜の意を背負いながらも、かつての栄誉は常に我と共に在り…!!」

 

イメージを形作る

生前の旅の折、既に老いていた我が友

英霊となった今においては、全盛期の姿で此処に顕現させることができる

 

「今再び、征くぞ!!、―――『共に駆ける遠き栄光(ロシナンテ)』!!」

 

淡い魔力の光と共に現れる

白銀の毛並、真っ直ぐな眼

若き日の姿が、在りし日の姿が、俺の傍に有る

 

”元駄馬”を意味する名

全盛期の姿で限界した今ならば、文字通りという奴だ

 

生前が駄馬であれば、全盛期で現界した今は名馬

俺にとっては最高の駿馬となり、天さえも駆けるだろう

 

「久しぶりだな、相棒…」

 

ロシナンテは現界の感覚に戸惑っているのか、頻りにあちこちを見ている

首元を軽く撫ぜ、安心させてやったあと、雄々しい背に飛び乗った

 

懐かしい感覚だ

目線の高さ、広がる景色、あの時と全く変わらない

慣らしがてら、地の感触を確かめるように、その場でピアッフェをする

 

その後、自信満々に鼻を鳴らして、俺の方をチラリと後ろ眼で見る

まるで、”いつでもイケるぞ”とでも言う風に

 

「よし、流石は俺の相棒だ」

そして、右手に武器を現す

 

形は、槍

綺麗な細工は無い

傍から見れば一般兵が使う様な、平凡な物だ

 

生前、旅に出る際、物置にあったのを引っ張り出してきただけの物

逸話も、伝説も、何も無い

正真正銘、ただの槍

 

それでも、俺が振るえば最強の矛になる

俺が信じれば、ソレは何よりも強い現実(チカラ)になる

 

「これで、あの時の再現は出来たか…」

 

こんな、出来損ないの聖杯戦争…

それでも、久しぶりに世界を見る事が出来て楽しいだろう、なぁ?

心の内で相棒に語りかける

 

現世を久しぶりに観れた事

その点だけは感謝している

コレは本当の事だ

 

セカイは相変わらず綺麗で、残酷だ

せっかく人々が組み立てた歴史を否定する奴と、肯定する奴…

 

皆が皆、好き勝手やっているんだ

俺だって好きにやるさ

 

今回も我儘に付き合わせちまうが、お前も満更じゃあないだろう、相棒?

さっきのピアッフェの足取りから、僅かに浮かれたような感情が読み取れた

やっぱり、久しぶりの大地は嬉しいよな

 

奴をブッ倒したら、もっと好きに走らせてやる

爺さん達も悪い奴等じゃないみたいだし、暫くは大丈夫だろう

 

急ぎの用事もあるみたいだ

何か大変な事情を抱えている風だが、どんなのだろうな?

 

まぁ、乗り掛かった舟だ

抱えてる事情、俺に出来ることなら、少しは手伝ってやるよ

安心してくれ、嘘じゃあない

 

あぁ、本当だ

きっと力になって見せるさ

だから、先ずはやることやんなくちゃな

 

軽く首元をポン、と叩いたの合図に、この地に降り立った駿馬は、その一歩を踏み出した

 

「覚えてるか? あの時と同じ、…アイツが敵だ」

 

徐々に脚の動きは速まり、本格的に走り出す

竜を敵と認識し、一層スピードを上げる

 

走る、奔る、疾走る

仇敵目がけ、神速で駆け抜ける

 

大地を蹴り、舞い上がった土を、草を、果てには音すら置き去りにし、無限の加速を続ける

竜までの距離を一気に駆け、風を斬り裂きながら奴のテリトリーに侵入

 

「グオオオオォォォォォオオオオオオオオオオオッ!!」

 

奴も負けてはいない

爺さんの速度にも対応した反射能力で俺達を捕捉

即座に俺達を踏み潰そうと、前脚を振り上げる

 

そのぐらいは想定済みだ

指示を出さなくとも、回避は容易い

振り下ろされる、鉄槌を思わせる一撃

轟音と共に大地が震え、足跡が深く刻まれる

 

風圧が全身を叩くとも、速度は微塵も衰えない

 

「喰らいッ、やがれェェェェェエええ!!」

 

渾身の突撃

乗りに乗った速度はそのまま威力に変換され、仇敵にそのまま叩きこまれる

 

「―――ッ!!!」

 

轟音が響き、グラリ、と巨体が揺らぐ

 

如何に竜種と言えど、幻獣種にも等しいロシナンテの突撃を受けては無事では済まされない

宝具(きりふだ)と呼ぶに相応しい働き、俺の相棒の真の力だ

 

一撃を決めたのも束の間

大きくぶれた首が再び俺の方を向く

 

―――だろうな…!!

 

反撃する気か

良いだろう、待ってたぜ、ソレを!!

 

狙いは最初から、この時の為

こっちを向いてくれるのなら、丁度良い

 

最初から、狙いは頭

胴体をチクチクやるのも有りだが、結局はジリ貧

一撃で、潰すしかない

 

俺と奴の目が合う

ここまでの近距離で相対するのは初めてだ

 

ただならぬ威圧感、迫力

臆することなく、片方となった眼を睨み返す

 

ここが正念場の正念場

敗北の記憶を塗り替える為の、戦い

見事に勝って、乗り越えて見せる

 

馬上で思いっきり槍を振りかぶる

突っ込んで下さいとでも言わんばかりの、開口っぷり

その間抜けな面に、キツイ一撃をブチ込んで―――

 

「―――…あっ」

 

いや、違う

気付く

誘われた、コレは…罠か!?

 

奈落の口腔に灯る、光

徐々に、溢れんばかりの炎となって、今にも吐き出されようとしている

 

コイツ、さっきの一撃の時、既に―――!?

 

奴の眼は嗤っている

やられた

誘われた

このタイミング、回避は間に合わない…!!

 

まともに火炎を受けてしまえば、ただじゃあ済まない

焼かれ、灼かれ、骨肉の一切を蒸発させられるのだろう

 

本気で敵と認識され、本気で俺達を焼き殺そうとしている

歯牙にも掛けられなかったあの時とは訳が違う

 

ヤバい

 

マズいヤバいコレは

ヤバいマズい熱ヤバい熱い避け空中無理ヤバい喰らったら終わり死どうする死熱どうすれば炎口開いヤバい炎デカい死敗けまた――――

 

 

―――ふ、ざ、ッけんな!!

 

 

「ロっシ、ナンッテェェえッ!!!」

 

今にも放出されようとしている、炎熱の塊

解放寸前の煉獄の咢を、ロシナンテが前足で思いっきり蹴り上げる

 

アッパーカットの要領で叩きこまれた一撃

半開きだった巨大な口は、強制的に閉口を余儀なくされる

 

「ッ!?」

 

空中での不安定な攻撃だったが、打開策としては十分なようだ

中途半端に燻っていた炎は、上下の牙で分断され、軽い爆発を起こす

 

「うおッ、オオおおッ!?」

 

爆風の煽りでそのまま地面へと叩きつけられる

急な事態に受け身もまともに取れなかった

 

「ガっ、ぐぅ…」

 

マズい、直ぐに立てない

蓄積されたダメージが一気に響き、体が上手く言う事を聞かない

 

少し離れた所では、ロシナンテがうずくまっている

蹴りを入れたことによって、余計無理な体勢で落ちたのか、ダメージで言えば俺よりも酷いだろう

なかなか立ち上がれずもがいている

 

「っ、クソ、が…」

 

最強の矛は俺の手に無い

ロシナンテの傍に落ちているが、拾いに行っている暇は無いだろう

というより、数メートル歩くのも辛い程だ

 

視界がグラグラと揺れる

頭どころか、全身を強打した影響だ

軋む体に力を入れ、何とか膝を立て、顔を上げる

 

「………」

 

奴が地に堕ちた俺達を嘲笑うように、見下ろしている

爬虫類によく似た眼球に、悦の感情が見て取れる

そのくせ油断は一切無く、既に第二波を放とうと、業火を溢れんばかりにため込んでいる

 

やけに時間の流れが遅く感じる

俺も奴も、水の中に居るかのようにスロウリィだ

 

肋骨が何本か逝っているようだ、呼吸が満足に出来ない

あれだけ熱かった体から血が抜け、どんどん冷えてゆく

益々、水中にいると錯覚してしまう

 

奴は焔を湛えたまま、長い首を仰け反らせた

冷えた体を温めるにしては、少々度が過ぎている

 

「(ま、だ…終わってねぇ…)」

 

停滞する時間の中、揺れる視界と、妙にクリアな頭

昇った血が抜けて冷静になっているのかもしれない

 

しかし、このままでは死ぬ

数秒もしない内に、骨まで焼かれて、この世界から消失するだろう

 

敗けて死ねばゴミになる

世界の真理

 

相手が竜であれ、人間であれ、サーヴァントだって結局は同じだ

 

「まだ、敗けてねぇ…!!」

 

その時、

聞こえた鋭い風切り音

反射的に音の方向へ手を伸ばす

 

何かが掌に収まる

硬い、棒のような何か

その正体は…

 

俺の、槍…?

 

覚えのある感触

幾度となく握りしめた、獲物の感覚

…何故?

 

一瞬、横目に見えた相棒の姿

力を振り絞って挙げられた脚

 

―――あぁ、そうか

 

ありがとう 

済まないな、いつも

 

納得と同時に放たれる、煉獄の焔

熱と光が揺れる視界を遮る中、奴の表情を拝むことは出来ないが、何となく分かる

勝った、殺した、…そんな顔をしているな

 

確実に訪れるであろう、死

そう、何もしなければ、俺は死ぬ

いや、俺だけじゃあない

 

力を振り絞ってくれた相棒も、恐らくやられる

竜種と戦うってのはそういう事だ

 

伝承、逸話なんかにおいて、どれをとっても竜は強大な敵だ

かのジークフリート、ベオウルフなどを筆頭に、歴戦の勇者であろうとも、戦いは困窮を極める程だ

 

だが、彼らは勝利した

 

片や、竜の血を鎧にし

片や、竜を拳で制した

生前、そんな勇者に憧れ、俺は旅に出たのだ

 

遍歴の旅、世直しの旅

愛するドゥルシネーアを世に示す旅

そんな中、俺は”奴”に出会った

 

荒れ狂う風、回り続ける風車

丁度、今と同じような姿で、”奴”は其処に居た

 

付き人は無謀だと、俺を止めた

俺は構わず相棒と共に、奴に挑んだ

 

結果は、惨敗

成す術もなく、地に倒れた

 

奴は俺を殺さなかった

まるで、とどめを刺すのも煩わしいと言う風に

 

敗けたのだ

死にはしなかったが、何処か、別のナニカが死んだ

ゴミにはならなかったが、何かを失ってしまった気がした

 

だから、思ったんだ

―――あぁ、これは、”あの時”の焼き直しなのだ、と

 

やり直せ、と

取り戻せ、と

”奴”に勝てた時、初めて俺の誇れる俺になれるんだ

 

勝つ

いや、勝たなければならない

 

邪悪を打倒し、ハッピーエンドを迎える

主人公とはそういうものだから

 

 

―――巨大な焔の塊が打ち出される

 

 

死後の今でも、後悔は悪夢となり続く

ならばまだ、俺の物語は続いている

 

 

―――死への距離が焼かれてゆく

 

 

ドン・キホーテ・デ・ラマンチャ(おれ)の旅は、まだ終わっちゃいない!!!―――

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオらあああああああッ!!!!!!」

 

肺の空気を全て吐き尽くし、全力を全身に込める

あらゆる間接は軋み、至る箇所の筋肉はブチブチと音を立てながら、悪夢へ幕を引くための槍を、焔の壁にぶつける

 

放たれた一撃は、面の攻撃に対し、小さな穴を穿つ

極小の点は、状況を切り開く突破口となる

 

獲物(おれたち)を逃さない為、広範囲に仕掛けられた焔

その分密度は薄く、一点に集中させた一撃ならば通る

 

計算してやった事では無い

ただ、思いっきりブン投げただけの悪あがき

 

視界は変わらずユラユラと揺れている

それでも、見える

旅の終点にして始点、悪夢の終わりが

 

突き抜けた槍が切り開いた、焔の裂け目

僅かな隙間から、奴の姿が確認できる

 

「―――ッ!!!!!」

 

網膜に映った映像

奴の頸に深々と突き刺さった槍

驚愕を隠せない、その表情が

 

一瞬だったが、確かに見た

悪夢を越えた瞬間を、生死を超えて続く因縁を断ち切った瞬間を

 

「ハハッ―――ざまぁ、…みろ…」

 

水風船が破裂するように、穴の開いた火炎から焔が噴き出す

晴れやかな心情は、轟音と共に訪れた爆風に飲み込まれた

 

避ける術の無い俺は、そのまま吹き飛ばされ、

ボロ雑巾の如く地面を転がり続ける

 

「うッ…ぐぁ…」

ようやく止まった時には、体中が酷い有様になっていた

空中から叩きつけられた時点でかなりのダメージがあったが、流石にキツイな、コレは…

 

「…、ぃてぇ…」

 

呆然と呟く

周囲から何か聞こえる気がするが、良く分からない

目の前が暗くなって、音も、光もだんだんと消えていくようだ

 

ただ漠然と、理解した

”俺”の物語は、ここで一段落したのだ、と

 

後は、託そう

アイツ等に、一時とはいえ、共に戦った者達に

 

「…とんだ、邪魔が入っちまったが、戦いは…、まだ続く、だろう…」

 

届いているかは分からない、だが、伝えなければならない

記憶を失い、この地を彷徨っていた俺が見たことを

戦い続ける者達に、残さなければ

 

「――山だ」

 

「山へ、行け…そこの館に、…始まりはきっと、其処だ…」

 

意識が、飛びそうだ

耐えろ、まだ…

 

「…誰も、居なかったが…”居た痕跡”はあった…」

 

「気が付いたら、そこに居た…暗い、館に召喚陣があって…いつの間にか俺は…」

 

現世に降ろされた俺は、大量の塩に埋もれた召喚陣の上に立ち尽くしていた

 

「記憶を無くし、何も分からず、ただひたすら各地を歩いた…が」

 

「その時、サーヴァントはどこにも居なかった……恐らく、俺は最初の方、…に召喚されたんだろう…」

 

山の頂にある館

 

河を下り、草原を歩き、森をゆき、人の村を経て、この海岸に辿り着いた

召喚された時からずっと感じていた

いや、今もまだ続く、この感覚は―――

 

「ただ…常に誰かに見られているような…”視線”を、感じた…」

 

「人では無い…何かが、きっと俺達を、この戦争を…監視している…」

 

「気を、付けろ…別の意志で、裏で誰か存在している…」

 

ソイツは、未だ”見ている”だけだ

特にアクションを起こすわけでも無く、見に徹している

 

状況を探っているのか、何か目的があるのか

動けないのか、動かないのか

俺には結局分からない

 

「システムが、おかしくなってるのは周知の事実、だが…おかしくした奴は、…確実に存在する…!」

 

視線の正体がソイツかどうかも分からない

しかし、無関係では無いだろう

 

「まだ、…生き残っている、サーヴァントは居るだろう…当然…必要以上に警戒している筈だ…」

 

きっと、戦闘は避けられない

英霊になった連中は、物分かりのいい奴を探す方が難しい

 

「辛い…戦いになるだろう…一筋縄じゃいかない相手ばかりだろう…」

 

それでも、

 

「それでも、…きっと、…きっと、大丈夫だ…」

 

漠然としか言えないが、俺は確信を持っているんだ

何故なら―――

 

「―――お前達は、…きっと正しいから」

 

正義は、必ず勝つんだ

真実へ向かうならば、其処に敗北は有り得ない

 

「誰かを…何かを…救う…その行動を…俺は、とても尊いものだと感じる…」

 

「世界の誰もが否定しようと、俺だけはお前達を肯定しよう…」

 

正義とは、主人公に許された特権

物語を征く主人公に与えられた、最強の武器

そして、何より

 

「主人公は、―――絶対敗けねぇ…!!」

 

これ以上ないぐらいの、絶対不変の真理

とは言っても、大体が俺の持論だ

 

面食らっているか、これは?

周囲の状況は殆ど分からないが、気配で大体察することができる

それもそうか、いきなり根拠のない自信満々の自説を説かれたんだ

 

「大量の塩、山の館、視線、監視………どのみち、他のアテはないからのう」

「次の目的地が決まったのは悪くねぇな」

 

「心配するな…俺も、力に成る…」

 

嘘じゃない

俺が過去を乗り越えた意味も、きっとある筈だ

 

ただ、今は、少し休ませてくれ…

ちょっとばかし、…疲れちまった…

 

「安心して進め……お前達は、お前達の…地平線、を―――」

 

まだ見ぬ、仲間と共に

どこまでも進んで行け―――

 

そこで彼の意識は途絶えた

深く、深く、底へと墜ち、”彼”の物語は停止する

 

 

 

 

「情報感謝するぞい、…立派な活躍だったわい」

「まさか、締めを譲る羽目になるたぁ思いもしなかったぜ」

 

暴威を振りまいていた竜の脅威は既に無く、残されたのは、動かぬバーサーカーと、カルデアのサーヴァント2騎のみ

 

サーヴァント・バーサーカー

真名、アロンソ・キハーノ

通称、ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ

 

『憂い顔の騎士』(自称)、『獅子の騎士』(自称)の異名を持つ(自称)、世界に名立たる不朽の名作喜劇、『ドン・キホーテ』の主人公

 

騎士道物語の読み過ぎにより、現実と虚構の区別を失った男、アロンソ・キハーノ

彼は自分を偉大な騎士と思い込み、世の不正を正すべく、遍歴の旅へ出た

 

従者(という設定の農夫)と名馬(という設定のロバ)を付き従え、

各地で勘違いから成るトラブルを次々と巻き起こす長編コメディ

 

作家、ミゲル・デ・セルバンテスの描いたその物語は、当時”沈まぬ太陽”として最盛期を誇ったスペインにあって、多くの人物に多大な影響を齎した

 

老いて尚、夢とロマンを追い続ける姿勢

旧体制に対する皮肉、脱却に関するメタファー

受け取る側によって、解釈のメッセージは多岐に渡る

 

題材として狂気を取り扱ってはいたが、その本質は喜劇的な物語である

 

主人公であるドン・キホーテの破天荒さ、理不尽さ

結果、周囲は彼に振り回され、被害を被る場合が殆どだが、ドン・キホーテ自身も痛い目を見る事が多い

 

恐らく最も有名であろう、風車を竜だと思い込んで突進するシーンがその代表だろう

存在しない世界を創り出し、自身を物語の主人公に投影する

生前は騎士道物語に熱中していたようだが、召喚の際、何か別の物に影響された可能性が高い

 

浜辺の祠でバーサーカーが読んでいた本の山

2騎は知る由も無かったが、その全てが”ライトノベル”と呼ばれる、日本の文学作品であった

 

だが、これらは文明から離れた環境の中で、簡単に入手できるような物では無い

 

彼が意識を失う前に発した言葉

『山へ、行け…そこの館に、答えは有る…』

 

『気が付いたら、俺はあそこに居た…暗い、館に召喚陣があって…いつの間にか俺は…』

 

サーヴァントが持ち主とは考えにくい、ならば人間しか有り得ない

人が居ない館であろうと、少なくとも、”ライトノベル”の持ち主が存在することはハッキリしている

 

山にあるという館

ドン・キホーテが召喚されたらしき場所

 

マスターか、少なくとも魔術に関する知識を持つ者である事は間違いない

聖杯戦争の裏を探るヒントになりうる

 

狂気の人物として描かれながらも

手掛かりを出してくれたあたり、世界に名立たる喜劇の主人公というべきか

 

聖書の次に発行されている上に、史上最高の文学作品の堂々一位を飾った作品

知名度ならば、世界規模の男

直接的な攻撃こそ向けられることはなかったが、素の状態でもある意味恐ろしい存在ではあった

 

『主人公は、―――決して敗けない』

 

『心配するな…俺も、力に成る…』

 

『安心して進め……お前達は、お前達の…地平線、を―――』

 

世界に名を刻んだ主人公の言葉を反芻する

根拠も説得力も、全くない物ではあったが、何故か自然と勇気が湧いてくる

 

海風が祠を抜け、微かな音を生む

竜などもう存在しない

”主人公”が勇敢に立ち向かい、見事に打倒したからだ

 

誇大妄想狂の似非騎士が、恐怖を踏破して見せたのだ

生前の虚飾の敗北を、死後の今になって真実の勝利に変えて見せたのだ

 

斯くして、彼らは再び歩き出すだろう

彼らが信じる道を、主人公のように、強い足取りで

 

 

 




流石にやり過ぎた
キャラクター思いついた時はイケると思ったんだよ
プレイヤーさんも呆れとったわ

でも、楽しかっただろ?(エンタメ糞親父)
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