Fate/Table Talk 偽史夢幻奇島ニライカナイ ~虚光のタウミエル~   作:珈琲菓子

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軌道修正をしよう(提案)
前回まで大暴れしていた、例のアレのマテリアルはまた別の機会に




≪裏側⑤≫ ポラリス

「―――なんっ、」

 

「ッだあの意味不明な宝具は!?

 どうして、記録者特権を無視して私の視点を乗っ取る事ができる?!

 何故!、この!、領域において影響を受ける!?」

 

『…まぁ気持ちは分かるけどさ、落ち着きなよ…』

「…………」

 

心身の乱れ

他ならぬバーサーカーの宝具によって、観測が妨害されたのが原因だ

物語が主人公の視点で進むように、あの戦闘における視点は、彼の物だった

 

「(視点を失おうとも、観測が出来なかった訳では無い…)」

平等性が消失しただけで、肉眼での観測は可能だった

 

だが、座の本体の記録はどうなっているか、確認する術は今の所存在しない

綻びがあった場合、少なくとも”補填”は必要となる

 

この場の私が直接観ていたが故に、自身の記憶からバックアップすることは可能、…であればいいのだが…

 

原因がどうであれ、結果は結果

使命を全う出来ない不快感はそのままに、ただ時は過ぎてゆく

 

「……………ふぅ……」

『(おっ、どうにか飲み込んだか)』

 

このままにしておく訳にはいかない

救済措置を取らなければ、記録の不備を修正しなければ

 

「…納得は、していないがな…」

 

道が無い訳では無い

問題の解決には多少の障害が―――

 

『じゃあさ、宝具使えばいいんじゃない?、宝具』

「…何がじゃあ、だ……藪から棒に」

『だって、アンタ記録者ってぐらいだし? 世界記憶の俯瞰とか、そう言う系の宝具持ってんじゃないの?』

「…それは…」

『この廻廊だってそうじゃん、全部記録されてんでしょ? そっからバックアップとか出来んじゃね?』

「……」

 

違わない

 

勿論出来る

道が無い訳では無いのだ

 

『あとね、出来るんだったら 序でに、確認したい事もあってさ』

「何だ」

 

『Dr.ブライトの事もそうだけど、一番は島の事

 初戦の時もそうだったけど、何か、この島に違和感を感じるんだ』

「違和感だと?」

『うん、私の記憶だと、この島ってもっと小さかったような気がするんだよね

 あと、雰囲気的な…何か?』

「…儀式の前後で島に変化が起きた、と?」

『多分…、いや間違いない』

「…」

 

適当な事を言っている訳では無さそうだ

今まで見えなかった真剣さが見える

 

確かに、宝具を使用すれば、この島の真実を知ることは雑作も無い

しかし、

 

「宝具の使用は構わないが、…その結果、君の肉体がどうなるかは保証できない」

『…え、どういうことよ…』

 

「私の宝具の使用には超々密度の情報処理を伴う

 スキルと適正により、私のみならば問題は無いが、この肉体はあくまで君のソレだ」

『肉体…とりわけ、脳ミソに負担が掛かるって事?』

「仮定の話だ、飽く迄な」

『分の悪い賭けだね』

「…重篤なリスクを負って尚、宝具の起動を選択するか?」

『…』

 

「君の肉体だ、選択は君に任せよう」

 

 

 

…とは言ったものの、恐らく危惧しているような弊害は無いだろう

記録者の特権に例外は無い

 

彼女の起源と同様、記録者個人の魂に付いて回る物だからだ

こうして座から離れた状態であっても、肉体を違えた現在でも関係無い

スキルも宝具も、一切の劣化無く保持されている事で実証済みだ

 

唯一懸念すべきは、宝具使用の際に魔力が足りうるかどうかだったが、どうやら土地から直接供給ラインが繋がっているため、問題ないようだ

他のサーヴァントも、マスター不在で活動できているのは同じ理由からだろう

 

『…あのさぁ…』

「何だ」

『別に、気ぃ遣わなくていいんだよ?』

「…何の話だ?」

『あんまし舐めないでもらいたいんだけどさ、アンタが私の事分かるように、私もアンタの事、少しは分かるんだよ』

「…」

『私の体に影響が無いって予想していても、他の色んな可能性を考えてくれたでしょ?

 脳ミソ以外の負担とか、魔力の消費とかさ』

「…万が一、肉体の不備によって、業務遂行に支障が出る事を恐れたまでだ」

『まぁ何であれ、私の事を案じてくれたのは嬉しいよ…それで、業務に支障とやらは出そうなの?』

「100%の保障は無い、…精々80%だ」

『重畳

 じゃあやっちゃって、見せてよ宝具 モニター越しじゃ無くてさ、目の前で実際に見たいんだよ』

 

ホラホラと急かされる

姿は見えずとも、声音で理解できる

 

期待、されているのだろう

とは言え、勝手に期待されても困るのだが

 

煌びやかな剣も、豪奢な弓も、鮮やかな槍の腕も無く

魔術は使えず、戦場を駆らず、影に潜む事も、狂気に身を委ねる事も無い

 

所詮、その程度の存在

 

「…有り得ないとは思うが、肉体に少しでも負荷が生じた時点で、宝具の使用は中止する」

『もう死んでるようなもんだ 今更、負荷だの何だの気にしないさ』

「…加えて、あまり期待しても無駄だぞ? そもそも”観る”だけの地味な宝具だ」

『いいねぇいいねぇ、その根っからの観客根性… 私と一緒じゃん、相性抜群だ』

「…あまり一緒にしないで欲しいのだが…」

 

『飽き飽きしてたけど、傍観って割と良かったよ 当事者じゃねーし、外野だから気楽だ』

「…言っておくが、私と君は似ているが、違う

 ”観る”事は共通すれど、全てを記録し、歴史として編纂する…これは自ら選択した役割だ」

『…ふーん、まぁアレでしょ? 似て非なるって奴…この際どうでもいいけどさ』

「…ただ、…一つ」

『あん?』

「一つだけ、君だけが期待しても良い事柄が有る」

『……ほぅ?』

 

 

「”此処”が特等席であるという事だ」

 

 

「地上では、決して味わうことなどできない……記録者の視点とは、天上を越え、更に上にある」

『…へぇ、素敵じゃん』

 

癪だが

…本当に癪だが、認めよう

 

確かに、彼女と私は似た者同士

”観測”という一点において、我々はどこまでも同類なのだ

 

宝具の使用の際に感じる高揚感

神の如き視点より齎される万能感

観客席からひたすら演者を眺める、ただそれだけで満たされる

 

私はソレを肯定し、星と契約して記録者となった

彼女はソレを否定し、自らの起源脱却を目論んだ

 

舞台への介入を求めるか、関せず全てを見届けるか

異なる点など、そのぐらいだ

 

「―――記録者権限―――」

 

右の手に出現させるのは、”鍵”

私が現世に居ようとも、座にある私の本体は絶間なく記録を続け、星の書庫へ記録を蓄え続けている

全てを知りたいならば、星の書庫から引き出すのが一番だ

 

星の書庫へ繋がる”星霜書回廊”ならば、アクセスは可能

しかし、全ての情報を得る為には、あらゆる制約を取り払う必要がある

 

「宝具起動、”法”による制約の限定解除を申請…」

 

その為の”鍵”

何も無い空間に鍵を差し込み、回す

 

「…承認受諾…」

 

ロック解除、セーフティ一時バイパス、インターロック機能一時凍結

サーバーへのアクセス権取得を申請

…………―――承認

 

星の書庫へアクセス

記録を手繰り寄せる

 

「…領域固定、限定複写…」

 

―――”人類史”の書庫から、此の地平線に”意識と呼ばれるモノ”を接続…

 

星の全ての情報を洗っている暇は無い

この島に起きた出来事のみを辿る

 

記憶の劣化、記録の消失

”時”を始めとした、この世に存在する、あらゆる法の檻

 

全ての制約を超えて、ありとあらゆる記憶を書き降ろす

是が万象の司書たる記録者・トゥキディデスの宝具

 

「―――自動書記による記録を開始…」

 

どれ程嫌おうと、自らの生き方という物は、中々変える事は出来ない

 

生前、彼女と同様、私は自らの起源に苦悩していた

 

祖国の敗北に終わったペロポネソス戦争

運命に、”記録”の起源に抗うため、将として、兵と共に戦うことを選んだ

 

だが結果はどうだ

 

私が指揮を執った戦いは、無残にも敗走という歴史に埋もれ、

逆に、淡々と戦争の結果のみを記録した書物は、後世に”戦史”として残った

 

あの戦を経て、私は思い知った

いや、漸く自らの衝動を受け入れることが出来たのだ

 

舞台を踊る役者でも、役者を操る脚本家でもない

神の視点から全てを俯瞰し、事実のみを編纂し、永遠に保存する観客

 

観て、記録を遺す

ただ、ソレが何よりも面白い

完璧な記録を作り上げるのが何よりも楽しい

 

平等不偏

誰か個人の視点ではない

誰の都合にも左右されず、神の如き遥か高みより、全てを暴き観る

 

細かいスタンスは違えど、この快楽は同類である彼女にも理解できるだろう

何者も及ばない、如何なる隠蔽も、偽りも通さない、ただ一つの真実

 

歴史とは、過去から現在へ至る変遷

歴史とは、事象の流れそのもの

樹木の根の如く、水流の如く、其は幾重にも分岐する

 

因果律の法則によって呪縛された、絶間なく連なる事象素子

水が高きより流れるように、あらゆる繁栄と衰退が其処に在る

 

灼け落ちる天、その知られざる世の死を

崩れ落ちる地、その語らざる戦禍の詩を

零れ落ちる人、その偽らざる争いの史を

 

世に偏在する、あらゆる”流れ”を書き止め、暴き出す

剪定された”枝”であろうと、此処に復元して見せよう

 

「不偏の法下、惑わぬ星に在りて、歴史の紐を今、法解(ほど)く…

 ―――『不可逆史の檻にて斯く示せ、時の羅針(プラネテス・アリースィア・カタグラフィ)』…」

 

騒動の中心となる島の何処かで、星の記憶を廻る宝具が起動された頃、別の場所では更なる戦いが行われようとしていた

 




~今明かされる衝撃の真実ゥ~
2017年5月に始めたこのセッション、まだ終わっていない(2019年1月現在)

社畜の休暇が交差する時、物語は始まる
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