Fate/Table Talk 偽史夢幻奇島ニライカナイ ~虚光のタウミエル~ 作:珈琲菓子
折角道中に罠を仕掛けてあったのに、あーもう滅茶苦茶だよ
「さあて、バーサーカーのお陰で向かうべき場所も判ったとなれば…ここからは拙速を尊ぶべきじゃな」
「だな、それじゃあ爺さん移動は任せたぜ」
ライダーの合図でトナカイは高度を落とし、ランサーはソリに飛び乗る
「―――まぁ一息すら必要無いわけじゃが」
秒も待たず、目的の場所へと辿り着いた
後方には鬱蒼と生い茂る山森、前方には謎の建造物
2階建ての建物
装飾から”洋館”と表現されるべきだろう
山の頂上にある館、バーサーカーの言っていた通りである
「此処がアイツの言ってた館か…」
「ふむ、間違い無さそうじゃな……どれ、早速お邪魔させていただこうかの…」
2騎が目標を認識した時
『―――疾いな、随分と』
深い森の中でもよく通るであろう、凛とした低い声が響く
「…それを識る事が出来るお前さんも、の」
『おかげで、仕掛けた罠が無駄になってしまった』
「おっかないのう…、そういうのは熊なり猪に向けて使うもんじゃろうて」
『獣の類であれば可愛いものだ…奴等は空を飛ばぬし、千里を一息に駆けることも無い』
意図的にやっているのか、声は木々で反響し、正確な位置を割り出すのは難しい
対して、相手は2騎の動きを逐一把握しているのだろう
「それだけが取り柄故にのう」
かっかっかと笑う
笑いつつも、手綱をしっかりと握る
必要とあらば全てを吹き飛ばしてでも終わらせる心算だ
『成る程、騎兵には斯様な移動の術を持つ者も居るか 己の識のみで図るには、どうも狭かったようだな』
自重するような言葉
向こうからしても、単純な力技による正面突破は予想外だっただろう
戦においての重要な要素は多数存在する
”地の利”、”兵の質”、”優れた指揮”
勝利という条件にはどれも欠かすことが出来ないものだ
そして、どれよりも、何よりも必要な要素
ソレが”足の速さ”
足が速ければ、有利な土地を先におさえることが出来る
足が速ければ、不利な状況下においても円滑に撤退を行える
移動は軍事における最大の武器である
現時点で敵は、自らにとって有利となる陣地を手に入れている
2騎からでは敵の姿を確認出来ず、逆に狙い放題の的である
もしこのまま成果を得られず、撤退を許してしまえば、その時点で情報アドバンテージを奪われてしまう
敵が狩人だとすれば、2騎は獲物
已然、不利な状況には変わりない
しかし、
「自信があるのだろうな…その速度があれば、敗けぬ、と」
2騎の頭上からハッキリと聞こえる声
その方向へ顔を向けると、樹の枝に立つ一人の男の姿
長身痩躯
2mに届くかと思わせる長身に甲冑を身に付けている
左の手には弓を持ち、背に槍を掛けている
中華風の甲冑は、男が武人である事の証明だ
草原でセイバーを打倒し、
森林でアサシンとキャスターの連携を破り、
海岸でバーサーカーと共に竜を屠り、
最後に現れた、サーヴァント・アーチャー
「―――確かに、相手取るは難しいが、かと言って不可能という訳では無い…」
そう言って樹の上から飛び降り、館の前に陣取るように立つ
元の体重に、更に甲冑の重量が上乗せされている筈が、男は軽やかに着地して見せた
そこから予想される身体能力の高さは間違いなく、驚異的
そして、何よりも―――
遠方からの狙撃を繰り返すだけで、手の内を得られるというのに、敢えて姿を晒した
多くのアドバンテージを、男は自ら捨て去ったという事実
「ほう、其方こそ凄まじい自信じゃの…その弓さえあれば、こちらには敗けぬと?」
「あぁ、何せ弓と槍だけが取り柄でな 此れを用いた勝負で敗けたことなど、生涯に一度も無い」
不敵に笑う
真偽は兎も角、自信の表れである事は間違い無い
「挑発されておるぞランサー」
「へっ!! 何だかんだ言うがよぉ、俺がいたところにゃもっと強い奴はいたしなぁ、”アレ”の師匠とかな…」
顰め面で頭をボリボリと掻き毟る
あからさまな挑発を受けて黙っていられる性質では無い
「だから、今まで強い槍使いとは戦ってないからそんなこと言えんだろ、…なぁ?」
「ほう…、お前は己(オレ)よりも強き槍手か…?」
互いの間に熱が生じる
戦争の本質、問答無用の殺し合い
プライドとプライドのぶつかり合い
「(こやつは罠を張っていたと言っておった…つまりは、この館を拠点にしておると言う事…)」
館の内部を探るためには、目の前のアーチャーをどうにかしなければならない
理想的なのは、平和的に話し合いで解決できること
「(まぁ、無理じゃろうなぁ、この空気では…全く、若い奴等は血の気が多いのう…)」
勿論、1対1の戦いにはならない
戦士では無いライダーには、そういった矜持は存在しない
「(我々の本分を忘れるでないぞ、ランサーよ)」
当初の目的は、カルデアへの帰還
イレギュラーな聖杯戦争を制し、聖杯を確保する事
「この銀の槍よりも、猛き使い手であると、期待して良いのだな?」
「殺りあったわけでもないのに知るかよ…ただなぁ…弓兵なんぞの槍に負けるほど弱くはねぇぜ…」
瞬間、ランサーがアイコンタクトを送る
「(メインは俺がやる…爺さんは先に館に…)」
何も考えず、ただ挑発に乗ったわけではない
自分が引きつけている間に内部を探れ、と
しかし、
「では、チカラ比べといこうか…己と、お前”達”のな…」
「(チッ、簡単にはいかねぇか)」
「(…こやつ…!)」
弓兵の眼は誤魔化せない
意識の網が周囲を覆うのを感じる
逃げることも、不用意に動くことも許されない
「そちらにも事情があろうが、こちらも思う所が有る…
疾く、戦を終結させ、疾く、杯を破壊させてもらう…」
思考を遮るように、左手の弓を2騎に向ける
その右手には、いつの間にか矢が握られていた
「我こそは”花栄”、字は”小李広”……梁山泊が一の弓手なり!!」
男が名乗る
弱点を抱える英霊ならば、致命的になり得る行い
いとも容易く、やってのける
「へっ、馬鹿正直なのは嫌いじゃあねぇな…!! 2対1っつーのがアレだが、遠慮なくやらせてもらおうかねぇ」
「…うむ、油断できない相手みたいじゃしのう、かえって丁度良かったかもしれん」
拠点である山への侵入を許した時点で不利である事はアーチャーも理解している筈だ
態々姿を晒し、真名まで名乗ったその真意は兎も角、2騎の英霊を相手取る自信があるということに他ならない
「いざ、―――推して参る」
静かな呟きは、風に流されて尚、緊張感を齎す
虚ろなる島に、4度目の嵐が訪れようとしていた
≪1巡目≫
【槍】
命中判定:成功
ダメージ;10
「そんじゃあこっちから行くぜぇ!!」
槍を構えアーチャーへと狙いを定める
「(腕は如何程か、見せて貰おう…!)」
迎撃のため、足を踏み出そうとした瞬間、
「オラァ!!」
アーチャーの踏み出しのタイミングに合わせ、一瞬で肉薄
そのまま胴体めがけて槍を突き出した
「ッ!!」
対し、迫る槍を弓で受け流そうと試みるも、完全には躱しきれず血が宙に舞った
「(出だしはまずます、って所か…)」
槍を引き戻し、距離をとりながら呟く
「(矢を番えるまでの僅かな一瞬を狙われたか…中々に目聡い…)」
槍撃は甲冑を裂き、わき腹を軽く抉っていた
僅かに痛むとも、戦闘に支障は無い
「良き腕だ…だが、まだ真価を見せていまい」
「そりゃあ最初っから本気じゃあ詰まらねぇだろ?」
「違いないな しかし、”戦”においては、その油断が命取りとなる」
「あん?」
「”勝負事”と”戦”では天地の差がある 努々忘れるな、お前にはチカラが有るのだ…」
「…それはとりあえずは認められたってことか?」
「あぁ、認めよう、お前は強き者だ、…己より強いかは、此れより決める事だがな」
「なら、失望させねえように頑張らねえとな」
「ククク…”豹子頭”は兎も角、己は”金槍手”より数段手厳しいぞ…」
【弓】
攻撃対象:槍
命中判定:失敗(ファンブル)
「(さて…)」
弓に矢を番え、真っ直ぐにランサーに向ける
「来るかよ」
「(杞憂かどうか、…試すか)」
狙いはそのままに弦を引き絞り、手を離す
「…?」
しかし、矢は発射される事無く、ビィィィィンと、ただ弦の音だけが辺りに響いた
「…」
数秒の静寂
矢を撃とうとした者も、撃たれようとした者も、その様子を離れて見ていた者も
皆が無言だった
「…ウム、傷の痛みが予想以上に響いたようだ、許せ」
やがて、アーチャーが白々しく肩を竦め言い訳をする
「何言ってやがる…」
つい先程に油断するな、と宣言しておきながらの肩透かしに苛立つ
真っ向からのぶつかり合いかと思えば、この手応えの無さ
捉え処がまるで無く、その分行動の予測も難しい
「(侵入者は目の前の2騎のみ…環境の変化も無し、…陽動の類では無い、か)」
勿論、ただ失敗した訳では無い
”鳴弦”
アーチャーは弓弦の振動とその反響音により、周囲環境の把握を行っていた
そもそもの話
アーチャーが姿を晒した理由は、大きく分けて2つある
第一に、”機動力の差”
有利地点の優先的占拠、安全且つ円滑な撤退
兵法において”足の速さ”の重要性は言うまでもない
ライダーの宝具による移動を己の千里眼で捉えた瞬間、アーチャーはその場での迎撃を即決した
2対1で不利となる事を理解した上で、更には自分の姿を晒してまでだ
姿を隠しながら戦えよor逃げればいいじゃん
とか考える者もいるだろう
一理有る
上手く出来ればの話であるが
一気に山頂までショートカットされた以上、罠だらけの要塞は価値を失う
(戦力、機動力を削ぐ為のトラップがまず当たらない)
機動力で負けている以上、”逃走”も意味を失う
(休息や作戦を考える為の時間的アドバンテージが得られない)
仮に、上手い具合に隠れながらヒット&アウェイで戦えたとしよう
この場合における敵側の視点で考えると、
Q.姿を隠した敵をどうにかするには
A.炙り出す(文字通り)
ジャングルで一人の兵を仕留めるのに必要な弾丸はおよそ100万発
わざわざそんなに弾薬を用意せずとも、火種一つ有れば事足りる
木々を燃やして山を丸裸にするも良し
そんな中、ワザと抜け穴を用意してやって誘き出すも良し
見つけた所を、ひとっ飛び
周りは火の海、弓兵の武器である眼も煙で殺される
用意した罠を無力化された上での、逃げを許されない撤退戦に早変わり
敵の方針が読めない以上、アーチャーにとって最悪な展開をどうにか避けたかった
これが第二の理由である
どうせ逃げられないのならば、自ら姿を現す
中途半端に敵を追い詰めず、かといって自分が一方的に有利になり過ぎず、真っ向から叩く
即決
千里眼によって2騎の動向を確認した瞬間、アーチャーはすぐさま立案・実行してのけた
「(暫くは他への警戒を緩めても良かろう…)」
更には、目の前の英霊達が陽動である可能性も視野に入れた
鳴弦によって杞憂に終わったが
「いや、スマンな…最初から本気では面白味も無かろう、許せ」
お道化て見せるが、眼には怪しい輝きを湛えている
冷静にして、几帳面
時折、えげつない程の徹底ぶりを見せる
ソレこそが、花栄 小李広という男の性である
「…余裕じゃのう」
「然り、未だ此れからよ」
【騎】
命中判定:成功(敵ファンブル)
ダメージ:4
「(しかし、参ったのう…館に突入するつもりじゃったから、いささか地形が悪いわい)」
周囲は木々に囲まれ、遮蔽物が多い
ソリによる移動が単純な直線軌道であることを考えると、見通しの悪さはどうしても不利に繋がる
「そらそら、皆の衆行っといで」
抱える袋からジンジャーブレッドマンを複数対取り出し、アーチャーに向かって投げる
「(…さあてのう、どう対応するか
これで足止めして本命へ…否、相手はアーチャー…距離を置く方が危険か)」
「呪具の類か…!!」
迫るクッキー人形の群れ
対し、疑念を抱くアーチャー
「(仮に…、仮にだが、彼奴が”入雲竜”の如き”使い手”ならば、…アレは非常に危うい…)」
「(なんというかのう…人形が動くって概念に恐れを抱く手合いがそこそこおるのう今回)」
そこそこどころか使用した相手全員である
「(危ういのだろうが、此処は…!!)」
疑念を呑みほし、クッキー人形の群れをそのまま受け入れた
口の中目指して甲冑をよじ登るジンジャーブレッドマン
その光景は、戦いの場とは思えぬシュールさであった
「ヌオオオオッ!! 是、は…ッ!!」
甲冑の山脈を踏破し、遂に最初のクッキー人形がアーチャーの口内に侵入する
「―――美味いッ!?」
「そらぁ、クッキーじゃからな」
「美味い! 美味い! 美味い! ぐぉッ!! 美味い! 美味い!」
モリモリと平らげるアーチャー
傷口の上を登られた時は、流石に痛かったのか、其処だけはきちんと抗議していた
「…馳走になったな、感謝する」
向かいくる菓子の群れを全てたいらげ、素直に礼を述べる
「………ここでお点前様でした、ではって言ったら見逃してくれんかの」
「悪いが、戦では手を抜かん主義だ
情に絆される程度では、逆に礼に反する……己の志は変わらん、諦めてくれ」
「……ふうむ、致し方なしじゃのう」
諦めるようにため息を吐く
一回りの攻防を経て、弓兵は状況を分析する
「(毒を喰らわば…の心算でいたが、…よもや”薬”だったとはな…)」
かつての仲間を思い出す
仙人に師事し、規格外の道術を行使する、第4位の天間星
在りし日に見た、呪術の一端、ヒトガタの呪い
「(彼奴は道士に非ず、…呪い師の類でも無かろう…どう崩すかには、未だ推量が足らぬときた)」
力量を量るため、リスクを承知で攻撃を受けた
2騎の本領は未だ見せず、アーチャーに関しては言うまでもない
「(此方も、少しばかり”餌”を見せるか…)」
冷静で几帳面、そして大胆さ
ソレこそが花栄 小李広という男の性であった
≪1巡目収支≫
【槍】HP69/69
NP51
スキル:
【騎】HP67/67
NP13⇒14
スキル:
【弓】HP100⇒86
チャージ0⇒1
≪2巡目≫
【槍】
スキル使用:『ルーン魔術』…自身に必中状態付与+攻撃↑2d6(1T)
ダメージ:21
「菓子のついで、にコイツも喰らいなぁ!」
ランサーは槍を片手に持ち大きく振りかぶり
そして、
「イヴァル!!」
アーチャーに向けて全力の投擲
「(ただのまっすぐな投擲…? ―――否!! コレはッ?!)」
迫る槍に不穏なものを感じ、回避行動に移ろうと体を逸らすアーチャー
しかし、体を曲げた方向に槍の切っ先もまた向かう
「(―――やはり追尾!! 避けられん…!! いた仕方無しッ!!)」
回避の無駄を悟ったアーチャーは、体を逸らす勢いを利用し、そのまま右足を軸にして回転
同時に槍が着弾する
「ぬうおおぉオオオオオオオッ!!」
回転したことで槍が突き刺さる事はなかったが、慣性力でアーチャーに喰らいつく
中華風の甲冑はガリガリと削れ、その下にある肉をも裂いた
「ぐ、ぉオオッ!!」
加工旋盤の如く甲冑もろとも人体を削るも、勢いを殺された槍は、そのままアーチャーの手に収まった
一瞬の判断で、必中の呪いによる致命傷を避けた
必ず当たるとは、裏を返せば当たった時点で終わりなのだ
「…ク、随分と骨が折れる…」
貫通は避けられたものの、それでも傷の面積は大きい
「(耐えやがったか…)…アスィヴァル」
回収の咒を唱えると、槍はまるで意思があるかのようにひとりでに動き出し、ランサーの元まで戻ってくる
鹵獲した武器を取り返されたアーチャーは、
「…妖術でも用いたか…? 槍が己を追って来たように見えたが」
「まぁな、ちょっとした手品みたいなもんだ」
「槍兵ながら術も修めるか…面倒な手合いの多いことだ」
僅かに息を荒げながら、敵の脅威を再確認した
【弓】
攻撃対象:騎
スキル使用:『千里眼』…命中補正+1d6(3T)⇒命中+4(3T)
『弓矢作成』…チャージ+1、HP+2d6⇒チャージ+1、HP+6
命中判定:成功
ダメージ:6
【槍】
スキル使用:『啜る黒水』…対象のチャージを確率で減少、対象に毒状態(3ダメ)を付与(3T)
⇒チャージ減失敗、毒付与
「まだまだおかわりもあるぜぇ…!」
今度は槍でなく黒い液体の入った瓶を取り出すと、アーチャーに向けて投げつけた
「(隠し玉か…!)」
確認するや否や、判断は早かった
一瞬で弓を霊体化、間を置かずに武器を換装
槍の”抜き打ち”を行う
「オオオォォッ!!」
迫る毒瓶を槍の一撃で粉砕する
しかし、
「無駄だっ!!」
「っ!!」
「(この臭気…!、毒! …クッ、少し吸い込んでしまったか…)」
鋭い槍の一撃は毒液を霧状に変えてしまった
通常であれば、プラスになる技能だが、今の状況ではマイナスとなってしまう
「(やってくれるとは思ったが…それでも、被害を最小に留めやがったか…)」
ランサーの内で、アーチャーの強気な発言が尾を引いていた
相対する距離の関係で、毒瓶の迎撃には弓よりも槍を用いると予測していた
得体の知れない投擲物を槍で弾き、結果毒が撒き散らされるのは目に見えていた
「(こいつぁ益々、2対1ってのが惜しいわな…)」
毒と認識した瞬間、抜き放った槍をそのまま回転させ、風圧によって撒かれた毒霧を弾き飛ばした
毒液を即座に揮発させる槍撃
被害を最小限に抑える判断処置
「多芸だな、…実に厄介だ」
「アンタもな…言うだけの事はあるみてぇだ」
「応とも…我が銀槍、落胆はさせんぞ」
”銀槍手”
―――生前の花栄 小李広に与えられた、優れた槍手としての称号
その男は、ランサーとして召喚されてもおかしくない存在だった
”神箭”と謳われた弓術のアウトレンジ
”銀槍手”と称された槍術のインファイト
遥か高み、至高の武芸、生涯の無敗
その身その物が、宝具とも呼ぶに値する
「(此方も手を抜ける程、余裕では無い…そろそろ、此方も真なる手を見せねばなるまい…)」
槍を霊体化、代わりに弓を持つ
「より確実に、堅実なる”射”を刻む…」
アーチャーは2騎に悟られぬよう、2つのスキルを同時に使用した
1つは”千里眼”
その機能は、”動体視力の向上”、及び”遠方の敵の補足”
「(狙いは…儂か!)」
暗闇であろうと敵の居場所を捕捉する鷹の目で、ライダーを捉える
「(弓の強度及び、弦の延性を強化…飛距離は不要、…速度を上げる…!!)」
そしてもう一つのスキル
―――”弓矢作成”
ペルシャの大英雄も保有するスキル
彼においては、神より”弓矢を作る技術を授かった”ことに由来するが、花栄に至っては事情が異なる
「―――疾ッッッ!!」
腕の揺らめきも一瞬
一息に放たれた6本の矢が、様々な方向からライダーを襲う
「ぬぅッ!」
中空における回避とは立体的なものである
単純な直線軌道攻撃であれば、どの方向から来ても避けやすい
それ故にライダーは上空で待機していた
「(此奴… 巧い!)」
ライダーのクラスは機動力に長ける
クリスマスという、己の力が最大限に発揮できる今、大抵の攻撃は後手に回っていても避けられる自信はある
対し、アーチャーの矢は機動力を殺す軌道
即ち、避けられる事を織り込み済みとして放たれた物だった
「(置くように打つ…やれやれ、嫌な手合いじゃわい)」
一の矢を避ければその左の矢が顳顬を穿つ軌道で迫り、かといって下方に避ければ脳を抜く
弓の英霊ともなれば、一矢の軌道など自在に操れて当然
瞬間六射にそれだけの技を込めるその腕前は、生前無敗を冠するだけはある
「(ままよ!)」
ソリを駆る
機先を制されはしたがライダーも英霊、今日この日に最速を謳う者
正面より迫る壱の矢を潜り、左より迫る弐の矢をギリギリ掠めるように抜ける
参と肆の矢をバレルロールで回避、真下からの弐の矢を縦に落下するように擦れ違う
正面から迫る伍の矢を上に抜け…
「むぅ…!」
最後の一矢が後ろからライダーの肩を薄く裂く
掠めた程度な筈なのに、殴られたかのような衝撃が走り抜けた
「…恐ろしい腕前じゃな…アーチャー…」
「―――”六面六方六矢”…疾風の騎兵であろうと、楽には逃れ得まいと思ったが…一本しか当たらんとは、魂消た」
「かくも自在に矢が飛ばすお主の業前にこそ魂消るわい…」
「(調整不足、…弓材を改めるか)」
全力で殺しに掛かった矢を躱されたという現実を冷静に分析しつつ、水面下で武器を”創り直す”
弓矢は古来より、狩りや戦争、神事に至るまでの幅広い用途で用いられてきた
一口に弓矢と言っても、その幅広い用途によって様々な種類が存在する
アーチャーが使用しているのは、”複合弓(コンポジット・ボウ)”
日本の和弓とは違い、単一の素材ではなく、複数の素材を張り合わせた特殊な弓である
和弓は巨大さと威力が特徴であり、
速度×重量が破壊エネルギーとなるので、単純に強力、威力については折紙付きである
そして、この複合弓が特化しているのは、”対人戦闘の合理性”である
小型にして軽量、丈夫で威力もある
訓練すれば老若男女誰でも扱える
現代における自動拳銃に近い
出来るだけ手間をかけず、出来るだけ費用を掛けず、出来るだけ負担を抑える
扱いやすく、丈夫且つ、何より、”どれだけ効率よく人を殺せるか”
時代は合理性を求め、武器が産まれ、創り出された
複合弓は改良を重ね、個人の手により絶えず進化し続けた
まさしく弓は、旧戦場における銃
ただし、その威力は拳銃など比では無い
”複合弓”
――――コンポジット・ボウ
単一の素材で造るスタンダードな弓とは違い、繋ぎの木材や、果ては動物の皮といった素材までを継ぎ合せて作る弓
その独特な製法から、完全に同じ物など存在しない、謂わばオーダーメイド
弓兵においては自らの技量に合わせ、弓を自作することも珍しくは無い
複数の素材から成る柔軟性、剛性、速射性、飛距離、威力
どれをとっても申し分ない物であり、銃が広まりを見せた15世紀からでも戦場で重宝されたのも窺える
何よりの注目すべき点は、”改良が可能である事”
用途に合わせ進化し、強力な武器へ研ぎ澄まされてゆく
アーチャーが作りだした弓は、アーチャーにしか使えず、実力相応に高められた宝具の域に達している
故に、彼が保有するは”弓矢作成”のスキル
彼の弓に銘は無く、逸話も無い
だが、同時に実力のみで幾多の戦場を、無敗で駆け抜けた来た証明でもある
彼の時代・宋より遡り、春秋戦国
時代を象徴する弓の双璧
秦の大将軍、―――”李広”
楚の大将軍、―――”養由基”
2人を由来とした字、そして称号
彼こそが、花栄 小李広
大将軍の名を背負うのは、自らの腕への絶大な自信を誇る証だろう
【騎】
命中判定:成功
ダメージ:10
「(さて、どうしたものか…… ありゃあ、真剣になった目だわい)」
相手に合わせて武器を調整するのであれば、長期的な戦いはドンドン不利になってゆく
「(一度ああなってしまえば、もう止まらんぞああいう手合いは……止むなし、じゃな)」
ライダーのソリが一瞬消え、元の位置に戻る
続き、叩きつけるような音と突風がアーチャーの全身を、次いで周囲の木々を撃ち抜いた
「―――ッ! ヌ、ウ、オ、オ、オオオオオぉッ!!!!?」
段重ねの衝撃に、鍛え抜かれた肉体が跳ねる
「(是か…! 是が機動力の正体…ッ!! やはり疾い…!! 追える…見える、が、…肉体が追いつかんッ!!)」
スキル”千里眼”によってアーチャーの動体視力は大幅に強化されている
それ故、ライダーの神速をギリギリ捉えることは出来た
それでも、知覚から反応まではどうしてもタイムラグが生じる
認識してから行動するまでの僅かな間に、攻撃が訪れる
”捉える”ことが出来ても、”捕える”事が出来ないのだ
「(だが、いずれその尾を攫む…仕掛けさえ…理解れば良い…今暫しの辛抱よ…)」
喰らった攻撃の勢いに任せ転がり、衝撃を流しつつ、立つ
闘志は消えず、未だ其処に在った
「大人しく折れて欲しいんじゃがな…」
「…何度も言うがな、己の意は変わらぬ……杯は破壊する、その為には集う英霊全てを破る…!」
既に己の内で決めたことだ、と
決して揺るがぬ正道である、と
「是は、己の矜持が為の戦…我等を愚弄せし輩に、北斗星主が下す罰である」
「…やれやれ(つける薬なし、じゃな)」
≪2巡目収支≫
【槍】HP69/69
NP51
スキル:ルーン魔術(残りCT6)
啜る黒水 (残りCT7)
【騎】HP67/61
NP32
スキル:
【弓】HP58
チャージ1⇒2
毒状態(3ダメ/3T)
スキル:千里眼 ≪残りCT6≫ 命中補正+4(3T)
弓矢作成≪残りCT7≫
サイコロ運ってどうしようもないよね(ファンブル2連)