Fate/Table Talk 偽史夢幻奇島ニライカナイ ~虚光のタウミエル~   作:珈琲菓子

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2年に及ぶ戦い、遂に決着…!!



いやホント長ぇよマジで


17 短夜のトランスブルー 後

「―――ひ、ふ、み、よ、いつ、む、なな、や、ここの、たり、 布瑠部 由良由良止 布瑠部―――」

 

具現化した神剣を水平に構え、唄う

 

「―――古に、国若く、地若かりし時…譬へば浮かべる油の猶くして漂蕩へり…

 時に、国の中に物生れり、…状葦牙の抽け出でたるが如し…」

 

生命の誕生を、国の誕生を、創造を謳う

 

「筑紫日向の橘小戸…、阿波岐原に御禊祓い給いし時、生座る祓戸の大神等よ…

 諸々の枉事、罪穢れを拂ひ賜へ清め賜へと申す事の由を天津神、国津神、八百萬の神等共に聞食せと恐み恐み申す―――」

 

布都御霊剣の一閃

担い手を中心に円を描くようにゆらり、と走り抜けた

 

虚空を滑る刀身は何も傷付ける事は無い

或いは、目に見えないナニカを断ち切ったのだろうか

 

余波である太刀風がふわり、と神威を乗せ、サーヴァント達を包む

瞬間、祝福の神風が、負った傷や呪いを徐々に癒し始める

 

「むう? これは…」

「俺の、火傷が…」

 

「―――此く聞食しては 罪と言う罪は在らじ…」

 

 

伝承において、布都御霊剣に関する逸話は数多く存在する

 

曰く、建御雷神が葦原中国平定の際、まつろわぬ神々の粛清に用いた

曰く、国譲りの際、大国主命とその子達を降し、人の世の礎を築いた

曰く、神武天皇の軍から毒気を祓い、活力を与え、東征を勝利に導いた

 

加え、語られた祝いの唄

死者蘇生の神言である”布留の言”

そして、生命の象徴とされる”宇摩志阿斯訶備比古遅神”にまつわる一節

 

”神より授かった”生命の神言を、”自軍”であるランサーとライダーの2騎に適用させたのも、数ある逸話の内から再現したのだろう

 

其は神剣

対国宝具にして、対神宝具

国への災厄を斬り祓い、担い手に勝利の祝福を与える、神の一振り

 

「さぁ、此よりが真の全力だ!!、出し惜しみはせん!!

 遠からずこの身は朽ちるとも、その前に全てを終わらせる!!」

 

猛る布都姫

決着の為、自身の保有する全ての魔力を、宝具である神剣の制御に集中させている

 

「(予てよりの魔神柱の牽制…今の傷の修復に加え、儂等の強化も同時に行うか…願ってもないが、これでは―――)」

 

明らかに魔力の消費が供給のスピードを上回っている

 

当然だ

東国3社による神郡の形成に加え、神代の神器をも顕現させた

 

前者だけならば、魔神虫から横取りしている魔力で賄える

後者に関しては、使用した時点で完全にアウトだ

 

1つの電源に複数のコンセントを繋いだように、定格使用量に対して消費する魔力量が多過ぎる

 

以前は戦闘後に倒れるだけで済んだものの、現状のまま放っておけば、間違いなくキャスターというサーヴァントは魔力切れで消滅してしまうだろう

 

「(宝具の効果が切れる前に、アレをぶちのめせって事かよ…、上等じゃねぇか…!!)」

 

古代にて神との橋渡しだった斎宮

数多の歴史にて戦う人理の護り手

 

境遇は違えど、共通するのは、人の世の為に尽くす在り方

 

「聞けェい、蛮神よ!! 

 貴様が歴史を回帰させんと目論むのならば、相応の報いが訪れると知れ!!」

 

布津御霊の切っ先が魔神へと向けられ

解部の一族が裁きを告げる

 

「言向けは済んだ、貴様を待つは粛清と平定…

 現世は生者が為の国だ、常世の神は消え失せるがいい!!」

 

かつて、建御雷と経津主神が葦原中国を平定したように

かつて、カムヤマトイワレビコが東征を行ったように

かつて、秦河勝が邪教の神を打ち滅ばしたように

 

「蘇我でも無く、厩戸皇子でも無く、神でも仏でも無い…

 他ならぬ我々が、この国を、ひいては人の世を救うのだ!!」

 

天の加護、地の祝福、人の力

全てを束ねた輪は、あらゆる暴威を彼方へ退けるだろう

 

 

【騎】

宝具使用:『この良き日に幸福を(ホーリーナイト・ジングルベル)』

⇒敵全体に4d6攻撃&味方全体の攻撃↑2d6(2T)&HP回復3d6

ダメージ:57

 

≪決着≫

 

 

 

「(時間との勝負、か…)」

 

幾度となく繰り返された行為

トナカイが、ソリが、サンタクロースが消える

 

「(生憎、今日この日の儂にとって、時間は最大の味方じゃ…!!)」

 

クリスマスの夜、この一晩だけ許された奇跡

光速を超えて尚、質量や慣性といった、あらゆる法則に囚われない矛盾

 

それは偏に、”きっと、サンタさんならできる”という全世界の佳き子どもの祈りの結晶

 

消えたのは時間にして0.1秒にすらも満たない

たったそれだけ

それだけで良いのだ

 

「メリー、クリスマス…!」

 

刹那であろうとも、魔神の柱を折るには十分過ぎる時間

 

「―――防御障h―――き、展、…開……―――」

 

連続して流れる時間の合間に、おびただしい激突の嵐が叩きこまれる

当然、防御用の魔力障壁が間に合うはずも無く、展開されたのは衝撃が全て通り抜けた後だった

 

「―――……」

 

硬直

魔神の動きが完全に静止し、時が止まったかと錯覚する

 

「―――状、…態:破損…致命…、…修復…、不、可…」

 

後出しの障壁が崩壊してゆく

それだけでは無い

魔神を構成する腐肉も、潰された眼球も、存在自体がぶれ始めていた

 

既にランサーによって風穴を穿たれ、呪炎に灼かれた魔神虫

度重なる猛攻のを受け、膨大な魔力によって支えられた巨体が、今度こそ折れた

 

「(…これで立ち上がられたらどうしたもんかと思ったわい…)」

 

連撃に連撃を重ねた事で、トナカイの息は上がっていた

精密な操作が必要とされる以上、手綱を握るライダーにも、実の所、あまり余裕と呼べるものは無かった

 

「む、気が付けば…、既に決していたか」

「爺さん、やりやがったか…」

「これが、今の儂で出せる全力じゃ…、決めきれて良かったわい」

 

ランサーの呪炎槍が魔神虫の巨体を穿ち、悉く灼いた

キャスターの神剣が呪毒を祓い、万全の体制を作り上げた

 

そして聖なる夜、世界中の子供達の信仰が、此処に奇跡を齎した

 

「……術、…式証明、…不可……存在、限……界……」

 

最早、修復術式が起動することすら無く、活動が停止してゆく

聳えるような巨体が、天を突く魔神の柱が瓦解し始める

 

「さて…」

「色々気になる事はあるが、コイツが特異点の元凶って事でいいんだよな?」

「じゃろうな、聖杯は此奴が握っておったそうじゃし」

「うむ、常世神の中核に感じた一際大きなチカラ…、ともすれば杯とやらで間違い無かろう」

 

サーヴァント召喚の起点であり、マスターの代替としての魔力供給源

肝心のその聖杯は、未だ魔神柱の内部に取り込まれたままである

 

「だが、今見る限りチカラは霧散しつつある…、随分根深く取り込んだようだな」

「壊れかけってか…、んじゃあ回収は無理っぽいな」

「一応、当てにしておったんじゃがのう…」

カルデアへの帰還手段として視野に入れていただけに、目論見から外れ、肩を落とす

 

「残念だが、無理なモンは仕方がねぇ 精々俺達の戦果が届いてる事でも期待するか」

「うむ、カルデアでも特異点の反応は追っているじゃろうし、こうして解決したならば向こうも分かるじゃろう」

「魔神もブッ倒したんだ、魔術の王様の方にも多少は響くんじゃねぇか?」

「だと良いがのう…」

 

魔術王の先兵である、72柱の魔神

この特異点に現れた、魔神”ミシャンドラ”

有するチカラの強大さと、不吉さが理由でレメゲトンからその名を抹消された、番外位の魔神

 

「(…儂の知る限りでは、実在自体が驚きな訳じゃが…)」

 

その実態は、高度な情報社会が生み出した架空の魔神である

20世紀に騙られた逸話は捏造でしか無く、紀元前の伝説に刻まれる事も無い

 

「(最初に言っておった、役割を与え給え…とはどういう意味か…)」

「―――……」

 

身体の端から黒い塵となり消えてゆく中で、黙したまま偽りの魔神は何も語ることは無い

仮に問うた所で、疑問に対して素直に答えるとも到底思えないが

 

「(…此処は”そういう”特異点だった、という事かの…)」

 

詳細は気になるにしても、一旦見切りを付ける

やるべき事を、言っておくべき事を優先しなければならない

 

「お前の行いを、今更問うまでもあるまい」

反応を示さない魔神に語りかける

 

「次のクリスマスに同じ事をしなくても済む事を…儂は、信じるぞ」

伝わっているかは分からない

理解しているかも分からない

それでも、届いている事を期待し、警告を突きつけた

 

「(律儀だな…、聖人としての性ってか…?)」

 

 

”黒いサンタ”という伝承が存在する

 

通常、サンタクロースはクリスマスの日に活動する

その際、”良い子”には一年の褒美としてプレゼントを与える

しかし、”悪い子”には動物の血液や臓物を浴びせ、何処かへ連れ去ってしまうのだという

 

血に塗れた装束は、やがて酸素に触れ変色する

それが”黒いサンタ”と呼ばれる所以

 

クリスマスという裁定の日に、子供達の善悪を問う

悪い事をすれば、黒いサンタクロースが攫いに来るぞ、と

良い事をしていれば、ご褒美にプレゼントをくれるぞ、と

この伝承の本質は、悪事への抑止にある

 

「戒めのつもりか」

「だろうよ、…後は牽制の意味もあんのかもな」

消えゆく魔神を指差す

 

「(…コイツ等に脅しが効くとは思えねぇけどな…)」

人間や動物ならば、見せしめは効果的だ

ただし、それが魔神にも適用されるかは分からない

 

「酷い目に遭いたくねぇなら大人しくしとけ、って言いたいんだろ」

「逆も有ろう」

「逆?」

「何か恐れるあまり、無謀であろうとも、不遜であろうとも手を伸ばす…」

「儂等もそのパターンじゃな、…滅びは怖い、故に為さねばならぬ事を成す…」

「ぶらいと殿も世を救おうという気は有った…その為、我等英霊の力を利用することを考えた」

「そういや、あのねーちゃん…いや、中身的にはオッサンか? んな事言ってたな」

 

財団が忌避する、”世界終焉のシナリオ”

対抗策として考え出したのが、イレギュラーが跋扈する聖杯戦争だった

 

「其の気概を悪とは言わん…、他の者がどう思うかは知らぬが、少なくとも我自身は構わぬ」

 

内輪で築いた陣営同士の出来レース

報復による闘争が出来れば良いセイバーは兎も角、誇り高い武人であるアーチャーは激怒していた

 

「だが、結果は結果…、まほろばの大地は無惨と相成った…」

「…じゃの」

「…我は考えずにはいられぬのだ…現状を罰とするならば、ぶらいと殿の気概すらも罪となるのか…」

「否、志そのものは立派であった…じゃが、罪は結果に付いてくる物じゃ…」

「…走り抜けねば闇の先は見えぬ、と?…」

「ままならぬものじゃよ、いつだって…」

 

正しいと信じた行動が正しい結果を齎すとは限らない

理想と現実は表裏一体、且つ隣り合わせだ

 

「(仮に、世を救うという選択が、その為の闘争が罪であるならば、…下る罰とは如何程なのか…

  幾ら考えた所で答えはあるまい…無謀であろうとも、手を伸ばすしかないとは…)」

 

 

 

罪と罰

正しき解答の存在しない問答が一つの区切りを迎えた頃、

 

「さて…、これは力を消費し過ぎた…、という訳でも無いようだな…」

 

魔神ミシャンドラがその巨体を9割程消失させたタイミングで、場に集う全てのサーヴァントに訪れる変化

 

足元から光の粒子が漂い、消滅を開始している

魔神柱が核として取り込んだ聖杯ごと破壊したため、現世とのリンクが途切れ始めているのだろう

 

「時間切れ、かの」

「これで、一件落着、…なのか?」

 

今回の召喚はレイシフトによる物では無い

 

通常、カルデアでの召喚を経て契約を結び、特異点においてもカルデアの観測による存在証明を行う事で初めて、時代の行き来を可能としている

 

しかし、現状はカルデアから観測されること無く、強制的に特異点へ召喚された

マスターとの契約は解除されていないものの、ここまで物理的に距離が開くとなれば、どこかしらに無理は生じたとしてもおかしくは無い

 

つまり、再びカルデアに戻れる確証は、無い

 

仮に戻る事が出来たとしても、時の流れが異なる以上、状況によっては”間に合わない”かもしれない

 

誰にも知られる事無く、時代の崩壊を食い止めた、孤独な英霊達

帰りを待ってくれる者達と、共に戦うことすら出来なかった人理の護り手

 

それでも、悲嘆に暮れる事はなかった

何故なら、成すべき事は成したのだから

 

魔神柱を相手に勝利を収め、一つの特異点を解決して見せた

かつてカルデアが成し遂げた事と、同じことをやってのけたのだ

 

事の規模など関係なく、マスターの有無なども関係なく

人類の歴史を守るため、成した行動に何の違いもありはしない

 

「我等を留める楔が消えたか…現世での役目も是で終わり、だな…」

 

満足気に呟くキャスター

取り分け魔力の消費が激しい彼女は、その分消滅へのカウントも早い

 

「名残りも惜しくなるな…とは言え、長々と御託を述べるのも、発つ後を汚してしまおう…」

「世話になったのう」

「さっきの戦いでは助かったぜ」

「礼を言いたいのは此方もだ、我だけではどうしようもなく、皆が居たからこその現在(いま)だからな!」

 

肩口まで消えかかる中で、超然と別れの言葉を言い放つ

 

 

「いずれまた、神の導きあらば…汝等の行く末に、八百万の祝福の有らんことを!!」

 

 

言の葉が舞い、神の国の斎宮は消滅した

発した本人は消えど、言葉は確かに届き、事実として残る

 

”言葉”とは、発声を以て、真の力を宿す

力を持った真実は、いずれ現実となる

 

其を、神の国においては”言霊”と呼ぶ

他ならぬ、彼女自身がかつて言った事である

 

思いを受け取った2騎の身体も消滅してゆく中

想起される、戦いの軌跡

 

聖杯戦争を自ら創り出そうとした一族

財団なる組織、世界終焉のシナリオ

2騎の知る世界では架空の存在である筈の魔神が、魔神柱となって現れた事

一癖も二癖もあるサーヴァント達との出会い、戦い、そして別れ

 

人理が続いてゆく限り、望む望まざるに関わらず、再び出会う機会はあるだろう

英霊の座が存在する限り、可能性は0では無い

 

そう、低いとはいえ、決して0ではないのだ

 

カルデアの面々も、キャスターも

一度分かたれたと言えど、二度と会えないとは限らない

 

「儂等も、往くとしようか…」

「そうだな…、まぁ、成るように成ると信じて、今暫くマグ・メルにて待とうかねぇ…」

 

例え、この戦いの全てが偽物の歴史となったとしても、

例え、共にこの島で歩んだ奇跡が、ただの夢幻に過ぎないとしても、

彼らが存在する以上、他ならない真実なのだ

 

ならば、再びカルデアに帰還出来た暁には、その全てを語ろう

 

歴史を巡る戦いの軌跡

国が生まれ、国が還った島

そこで行われた、知られざる真実の物語を

 

思考と共に、現世と座の間で繋がれたリンクは途切れ、

光の粒子は風に舞い、何処へともなく消えていった

 

 

 

 

亜種特異点 偽史夢幻奇島ニライカナイ

人理修復 完了

 

 

 




メインシナリオはこれで終わり
後はエピローグを3つ程やって完全終了



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