Fate/Table Talk 偽史夢幻奇島ニライカナイ ~虚光のタウミエル~   作:珈琲菓子

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ブライト博士とプレイヤー側の結末

短めなので抱き合わせ
見せ場はもう終わったし、多少はね


18 Last Day Never Knouws

≪SCP財団職員 ジャック・ブライトの結末≫

 

 

「…終わったようだな」

 

戦火から遠ざけるための村人達の先導は終わっていた

合間に遠巻きから英霊共の戦う姿を眺めていたが、結局は再び戦場に戻ってきてしまった

 

「英霊も、魔神の柱も、…築き上げた物ごと全てが消え失せたか…」

 

激闘が繰り広げられたであろう、荒れ果てた地

目に映る光景に浮かんだ感想は、

 

「(さしずめ……バベルの塔といった所か…)」

 

最終目標だった聖杯を取り込み、天に届くと思わせる程に増長した魔神の柱

世界終焉を止めるという、偉業を成そうとした結果が、この有様だ

 

届く筈の無い物に、手を伸ばしたから失敗したのか?

人の手に余る奇跡に縋ろうとした事への報いだったのか?

 

だが、不相応ではあっても、不純では無い筈だ

終焉を拒むのは生物として当然の欲求であり、後ろめたい事など何一つ存在しない

仮に、現状が罰だとしたら、我々はどれ程の業を抱えているのか

 

「(…無意味だな…)」

禅問答に終止符を打つ

 

「…全てが…徒労に終わったな…」

少なからず落胆の色を滲ませた呟きは、風の吹く音に紛れ、消えた

 

落胆

…そう、落胆だ

 

予備の肉体を失った事についてではない

無駄となった投資についてでもない

 

 

ただ、今回の件が”何一つ成果の無い失敗”だったことだ

 

 

世界終焉を回避するための策として、万能の願望器を欲した

その願望器を顕現させるための儀式を執り行う手段があった

 

アーデルハイトは、謂わば”設計図”だった

当然ながら、”設計図”だけでは如何にもならない

 

材料も、人も、金も、場所も、奴にはどれも足りなかった

其処に我々、財団が手を差し伸べた

 

利害関係の一致として、不足する全てを支援提供する代わりに、成果をこちらに引き渡す

提案された期間は、およそ一年

早ければ早い程良いだろう、と奴は笑って言った

 

終焉までの猶予があまり無い事は、双方予想していた

何時、何処で、何が原因で世界が終焉を迎えるかは分からない

 

分からないからこそ、あらゆる手段を先んじて、少しでも多く講じておくことが重要となる

 

現状、終焉に対する最大の切り札となるであろうオブジェクトは修復中だ

あの様子では向こう2、3年は掛かるだろう

修復が完了しない内に終焉が訪れてしまえば、今度こそ我々の敗北だ

 

「制御可能なオブジェクトなど、夢のまた夢だったか…」

 

人類に対し、脅威となる性質を持つscp、

それに対抗するための秘匿オブジェクトクラス・”Thaumiel”

 

抑制手段であり、解決手段

相性による関係で危険を無効化できる物もあれば、単純に物理的手段で危険を排除する物も存在する

切り札と言えど、結局はKeterと同じ、要収容オブジェクトだ

取扱いに細心の注意が必要となるのは変わらない

 

その点、取扱いが容易な願望器という物があるなど、美味すぎる話だった

先の見えない暗闇に、漸く現れたかに思えた、微かな光

 

「(伝説の願望器とやらも、結局は幻に過ぎなかった…)」

 

差し込んだ光は虚光で、欲し求めた物は虚構に終わった

 

事故とは言え国を一つ滅ぼし、住まう人々を根絶やしにし、それでも尚、得られた成果は無かった

 

「(だが、まだだ…)」

 

握りしめた掌に爪が食い込む

まだ、止まる訳にはいかない

 

取り返しがつかないのなら、背負って生きていくしかない

無かった事になど出来ないのだから、抱えていくしかない

 

「まだ、終わってなどいない…」

 

私は、私の罪を清算するまでは、死ぬわけにはいかない

そして、不死の首飾りは、私が死ぬことを絶対に許さない

 

この体になった時から、既に覚悟は出来ている

こんな所で立ち止まってなどいられない

 

やるべき事、成すべき事

今一度、自分を再確認する

 

白衣の内から衛星電話を取り出し、財団本部の番号を入力する

1コールで担当者がすぐさま対応に出た

 

「ジャック・ブライトだ…」

 

「…あぁ、SCP-1945-JPについてだ…詳細は帰還してから報告する」

 

「コンドラキに繋いでくれ…私がしくじったと聞けば、あの性悪は飛び着いて来るだろう」

 

了解の返事と共に、保留音が流れる

 

「(また、禁止事項が増えてしまうな…)」

 

まずは、得た情報の報告からか…こればかりは他の者には出来ない

 

最大の証人であり、容疑者であるアーデルハイトは一族ごと行方不明

当事者は既に全員死亡

今回の騒動の背景を知る者は、今や私一人

 

「ふぅ…」

傍らの木に寄りかかりながら、後始末に思いを馳せ、溜め息をついた

 

「…」

未だ止まない保留音を聞きながら、ふと目を移す

 

再び見た景色には、何も無い

先程まで目に映っていた物も、今はもう映らない

 

空想の果てを象徴する、醜悪なバベルは完全に崩れ去り、跡形も無くなっている

微かな虚光でしかなかった切り札が、完全に世界から失われた事を思い知る

 

「…」

 

感慨に耽る暇もなく、電話の向こうから慌ただしい声が響いた

「―――!!!!―――!!!」

「…コンドラキか? あぁ、そうだ、…貴様の喜びそうな話だ…―――」

 

我々の抱いた無限の空想は、夢幻に終わった

奴の欲した新たな歴史は、築く前に崩壊した

 

全てが孵り、全てが還る場所

常世の国、根の国、そしてニライカナイ

この島に集う、ありとあらゆる生と死の歴史

 

革新の翼、アーデルハイト・フリューゲリンク

貴様の愚行も、いずれは人の世の礎となる

 

我々が終焉に打ち勝つその日まで、空の彼方で見ているがいい

財団が、人間が、いずれ来たる終焉へ打ち克つ様を

 

 

 

 

 

 

≪プレイヤーの再登壇≫

 

 

―――召喚サークルに光が灯る

シールダーの少女は、先輩と慕う主の傍らに立ち、共に英霊召喚の行く末を見守る

 

召喚陣が胎動し、徐々に魔力反応が増大してゆく

やがて、室内の軽い揺れと共に、光の中から複数の人影が現れる

 

「―――先輩…!」

 

驚愕と歓喜の入り混じった表情で、マシュ・キリエライトは主の袖を引く

当のマスターも、同じような表情を浮かべていた

 

それもその筈

彼らにとっては、見覚えのある姿だったから

 

予期しない特異点への強制召喚により失われた、カルデアの精鋭2名

同日に確認された亜種特異点の消滅後、遂に帰還することなく、物理的な繋がりは断たれてしまった

 

特異点で何が起きていたのか、彼らはどうなったのか

サーヴァントが消失し、レイシフトシステムにも不安が見られる状況で特異点へ直行する訳にもいかず、原因は以前不明なまま、時は過ぎた

 

それが、今

いつか別れた2人の英霊は、再びカルデアに現れた

 

元々、居た時間は長くは無かったが、軽く懐かしさを覚える

感慨に耽る暇を与えず、マスターは笑みを浮かべ、2騎に向かって歩を進める

 

ゆっくりと手を差し出し、こう言った

 

「―――おかえり」

 

「…おう、久々だな」

「懐かしいと言えば懐かしいわい…」

 

あの日に取ったマスターの手を、再び握り返した

 

 

「…えと、あの…感動的な再会の中、申し訳ないのですが…」

 

シールダーの少女がおずおずと話しかけてくる

 

「そちらの、方々は…?」

 

光の中から現れた、”複数の”人影

帰還できた歓喜の感情に紛れる中、背後から複数の気配を感じる

恐る恐る振り返ってみると

 

 

「…倶に天を戴こうとは…待ち侘びたぞ、小僧共…」

殺気を隠そうともしない者

 

「む、久しい顔が…まさか再び相見えようとはな…」

無邪気に再会を喜ぶ者

 

「…今度こそまともな職場……ではないなコレは…」

額に手を当て、顔を顰める者

 

「…この気配は燕青…か?…にしては何処か妙な…、いや間違えようも無い…」

他の事に気を取られている者

 

「何だ、此処は…? 俺はあの時トラックに撥ねられ、死んだ筈…」

意味不明な者

 

連鎖的に召喚された、5名の英霊

というか、いつか見た面々だった

 

「えっと、その…歓迎します!! ようこそ、人理保障機関カルデアへ!」

 

流石に、ここまでの事態は想定していなかっただろう

驚愕と共に、歓迎の言葉を掛かる

 

斯くして、大きな戦力と共に、大きな問題を抱えた者がカルデアに訪れた

様々な騒動が有ったのは言うまでもないが、尊い犠牲の元に沈静化させることは出来たようだ

 

紆余曲折を経て、再び物語は動き出す

人理修復に立会うことは叶わなかったが、時を越え、また同じ舞台に立つ事が出来た

果たせなかった使命の続き、とまではいかないが、共に戦うことは出来る

 

歴史の裏方の存在である英霊達が、人理を救った彼らの力となれる

新たに紡がれる、人間の物語の行く末を、すぐ傍で見届けられる

 

知られざる夢幻の島での戦いは、無意味なものでは無かった

偽物の歴史と化した、あの世界での出来事は、巡り巡って実を結んだ

 

多くの人々が、あの島で死に絶えた

だが、此処から、より多くの人々を救う

 

偽の物語は終わりを告げ、真の歴史は此処から始まってゆく

 

 




これにて物語は終了

後は、残っているマテリアルぶちまけて終わり、閉廷
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