Fate/Table Talk 偽史夢幻奇島ニライカナイ ~虚光のタウミエル~ 作:珈琲菓子
システムは以下の通り
①敏捷で行動順決定
②自分の行動番で3色カードから1つ選択し1d6
・B→出目をダメージに追加
・A→出目分NP追加+与えたダメージをNP追加
・Q→出目まで命中判定を変動可、与えたダメージをNPに追加
③命中判定1d20
・クリティカルは1、ファンブルは20
④ダメージ判定(宝具はNP40以上で使用可、使用後は40差し引いて繰り越し)
・通常攻撃2d6
・全体宝具4d6(単体は5d6)
⑤戦闘解決まで繰り返し
・敵側は原作FGOと同じくチャージ制
・敵宝具に対抗してプレイヤー側も宝具を撃てる
(判定勝利で命中自動成功+ダメージボーナス、敗北側は行動キャンセル)
・被ダメージの半分をNPに加算
正直もっと調整を重ねるべきだった
こんなんじゃ参考になんないよ
広い草原
平坦な地形の、見渡す限りに草花が生い茂る光景
街から少し歩いたとはいえ、、文明的な景色とはかけ離れ過ぎている
「ある意味では見慣れた風景じゃのう」
「よくある自然の風景ってか?」
「少なくともさっきの建物群よりかは、の」
「あんな天を衝くような建物でも、儂らが出張れば一瞬で消えるからの」
「あぁ、違いねぇ」
潜んでいるであろう敵にブラフを聞かせる
相変わらず、不気味にも反応は無い
微かな流水のせせらぎが聞こえる河川
その行く先は遠目に確認できる広大な海だろう
別の方向に目を向けると、青々とした森林が広がっている
全てをひっくるめ、”自然”を縮図にしたかのような光景だ
しかし、
眼前に映し出される自然の中、その中にただ一つだけの不自然
丈の低い雑草
起伏の少ない大地に、”何者か”が存在している
その人物は少し離れた場所で仰向けで寝転がっていた
倒れているのか、単に寝ているだけなのか
生きているのか、それとも死んでいるのか
遠目では判断しにくい
近づいて見れば分かるのだろうが、明らかに何かありそうな雰囲気だ
「…あちらさんから来てくれるんなら大歓迎だがな俺は」
「ないじゃろうなァ アレはそういう類の勝ち筋じゃろうて
ランサーや、お前さん未知の相手と相対する時、誘いを除いて隙なんぞ晒すか?」
「いや無いな、俺は強い奴とは戦いたいが、そんな馬鹿な真似はしねぇさ」
≪察知判定≫
ライダー&ランサー
判定失敗
如何にも怪しげな人物に対し、試しにと周囲を探っては見たが、何も感じ取ることは出来なかった
「ふむ、ちいともわからんなぁ…」
「…勘でも鈍ったのかねぇこれは」
虎穴に入らざれば虎子を得ず
リスクを承知で虎穴に足を踏み入れる事を決意する
「爺さん、ちょっとばかし奴を小突くから戦闘の準備をしてくれ」
「うむ、では今度こそ出番じゃな」
空より鐘の音が響き、トナカイが現れ、騎乗した
「準備はいいか?」
「うむ」
「それじゃあ行くぜ、『イヴァル』!」
横たわる何者かに向かって槍を思いっきり投げる
ランサーの槍は吸い込まれるように人影に向かって走り抜ける
放物線が対象と結ばれる、その直前
「何ッ!?」
空を裂く音
細身の剣が複数本、上空から大地に突き刺さり、放たれた槍を食い止めた
「!」
ライダーは剣が放たれたであろう上方を見やり、
「ッ!? 『アスィヴァル』!!」
ランサーは回収の呪により、急ぎ槍を手元に戻した
「あァ…?」
仰向けに寝ていた人物、―――男が起き上がる
丈の長い着物
衿の先を腰に巻き付けた、俗に言う”深衣”と呼ばれる衣服を身に纏っている
後頭部に向かって撫で付けられた、少し黒髪の混じった白髪
加え、額には深いしわが刻まれていることから、老けた印象を受ける
「…如何な雑魚が掛かったかと思えば、2匹も釣れおったか…」
そう呟きながら、ゆったりと立ち上がる男
ゴキゴキと首を鳴らし、2騎をねめつける
「ほっほ、大物に釣りあげられたわい」
「釣られたのは一体どっちだろうなぁ…」
「んん? 貴様等は先程の…何だ結局来よったか…一度気配が遠ざかった故、逃げたかと思うたわ」
「ウンともスンとも何も引っかからなかったからのう
まぁ、お主はどうやら武技を誇る手合いでもバトルジャンキーでもなさげじゃからな、少々確認したいこともあったからの」
「…確認? ワシにだと? 何を?」
「お主、なにゆえこちらに呼ばれたかを理解しておるか?」
「知らぬ 特に興味も無い」
即答
ライダーの質問を一刀に斬り伏せる
「…そしてもう一つ。お主は令呪をもっておるのか?」
「…腕の妙な紋様の事か?」
「それじゃ」
「ほう…では貴様等も…」
「で、ここで一つ提案と行きたいんじゃが」
「…良かろう、申してみよ…」
「儂らをここで見なかった、そういう事にできんかの?
お主はこの曖昧模糊な状況はどうだって良かろうが…何の意味も無く呼ばれて何の説明もなしに殺しあえ、ってのはどうかと思わんか?」
一縷の希望を託した提案
戦わずとも、状況を探る手段は存在する
「…」
「……」
「………」
長い無言
思案しているのか、その果てに男は無表情で片手を振る
すると、ランサーの槍を受け止めた剣の群れが一瞬で姿を消した
「(ああ、これは…)」
「…”セイバー”、剣士の意か…王たるワシが、一兵卒も同じとはな…」
「やはりの… その口調、民の声を聞く立場のソレじゃからな」
「聖杯とやらから知識は得ておる…
聖杯戦争が如何な物かも、そのためにワシが世に下ろされた事もな」
腕を組み、続ける
「下らぬ用のためワシを呼び出したのなら、すぐさま刻む心算であったが、そのような者は、探した所で何処にも居らんかったわ…」
「(やっぱコイツも俺達と同じか…)」
「ば大方、貴様等も同じであろう?
召喚者の不在に、腕の令呪といい、此の戦、奇なる事この上なし…」
「うむ、いわゆる、はぐれ状態じゃ」
傲岸に組んだままの腕に令呪を確認しながら考えるように目を閉じ、呟く
「ワシには願いなど無い…」
「死する前、宿敵というべき存在も討ち果たし、我が悲願は成就した…
願おうにも望みが無いのよ」
「既にやるべき事を終えた御仁じゃったか」
「そもそもの話、斯様な出来損ないの戦で、到底願いが叶うなどとは思えぬ…」
「思えぬが…」
静かに瞳を開く
瞬間
「―――鼠、壁忘るるとも、壁、鼠忘れず―――」
「っ」
「(そう簡単にはいかねぇよな…!)」
殺気
射抜くどころか、射殺す程の視線
「鼠風情がワシの周りをウロチョロ嗅ぎまわり、あわよくばこの首でも奪いに来たかァ…?」
空気が変わる
気温が一気に冷え込んだ気がした
「―――ワシを見た時、それ即ち手遅れよ」
「…ふむ、お主相手には無粋じゃったか のう、越王 勾践殿」
「…彼奴の真名かそれは?」
「あの物言いに、剣の数から…多分、じゃがの」
「爺さん…、伊達に歳を食っておる訳では無さそうだな…」
「お主の剣は未だに現存しておると聞くならばその剣、越王勾践剣と見たがいかに?」
「阿呆が…愚物如きに我が真価は尚早に過ぎるわ…」
そう呟くと
「―――『揜日』、『断水』、『転魄』、『懸剪』、『驚鯨』、『滅魂』、『却邪』、『真剛』…」
キィン、と金属同士が擦れ合う様な音と共に、セイバーを中心として、半径約10m程の領域を隔てるの薄壁が構築される
再び降り注ぐ8振りの剣
セイバーの周囲を取り囲むように突き刺さっている
一定の間隔を置いて存在するソレ等は、薄壁を含め、まるで結界のようだ
「ワシの剣は特別製でな…如何程吼えようが、檻に収めてしまえば獅子も鼠も同じよ…」
「…なるほど、便利じゃのう」
周囲を取り巻く障壁
出ようと思えば出れる程度の、障子紙の如く薄い壁
結界に近いもののようだが、何処か決定的に違っていた
加え、先程行く槍を阻んだ剣の群れ
計8本の剣は大地に突き刺さりながら”結界”を取り囲んでいた
剣が”結界”を作りだしているのか
八方に等間隔に配置されており、隙を感じさせない
この状況を作りだしたセイバーは、未だ腕組みを解かないまま、不敵に嗤う
「我が馬の歩みに耐えられるのならば、じゃがな」
「誰であれ、何であれ構わぬ…此度の開戦の号砲は、其処な小僧が挙げた物…報復の理由などソレで十分よ…」
長い深衣の裾を風にはためかせながら佇むその姿には、どこか気高さ、高貴さのような雰囲気を感じさせる
獅子と言うよりは狼、孤高の獣の様だ
「……尻尾踏んじまったか?」
自らの持つ槍を見ながらランサーが独り言ちる
「なに、儂もそれに同意したゆえな気にするでない」
「あぁ、逃げようと思えば出られるぞ…? もっとも、逃がしはせんがな…」
「さて、ならば戦端はもはや免れまい…、此度もラッパが鳴るのは避けられぬなぁ」
細身の剣
それぞれが違った細工と、特別な力を秘めているであろう8本の宝剣
1本1本から強力な魔力を感じる
全てが宝具、或いは宝具に相当する武器である事は確かだ
「ワシを打倒できぬならば、此処で朽ち果てるがよい…」
「それとも我の権能が戦を呼ぶのか、やれはて、難儀じゃのう」
「…タイマンじゃねぇのが気に食わねぇが、状況が状況だ、このままやらせて貰うぜ!!」
2騎の英霊と向かい合うも、微塵も臆さないセイバー
杭の如く地を穿つ8本の宝剣は、セイバーの意志と連動し、いつでも牙を剥くだろう
「―――阿呆共、鈍な牙ではワシに傷を与えることすら出来んと知れ…」
「やれ、戦に囚われた段階で既に我の権能の上よ…どちらが阿呆か、これで示して見せようかの」
≪戦闘開始≫
~行動順~
槍⇒騎⇒剣
≪1巡目≫
【槍】
カード選択:B(1)
命中判定:失敗
「そいじゃあ行くぜ!」
いち早く動いたのはランサーだった
小手調べとばかりに、セイバーに向かって槍を振りぬく
「―――『揜日(エンジツ)』…」
セイバーの呟きと共に、地に刺さっていた剣の一本が抜き放たれ、切っ先が天を向く
瞬間、ブレーカーが落ちたかのように、周囲の光が消滅した
「なっ!」
「!?」
眩く周囲を照らしていた陽の光は、一転して暗闇に変化する
光度の落差に追いつけない眼球から一瞬だけ視界が奪われた
「…言ったであろう? ワシの剣は特別だとな…」
言葉と共に、再び眩い陽光が辺りを照らす
虚を突かれたランサー
そのすぐ横には腕を組んだままのセイバーが悠然と立っていた
「うおッ!!」
攻撃をやめてセイバーから距離をとる
「(ふむ、正に檻というわけか…あらゆる方向でこちらを阻害することができるようじゃな)」
「クカカ…青いな、小僧よ…」
「…正面からやりあわない奴は面倒だな」
「戦いなんぞえてしてそういうものじゃろうてのう、特にこの御仁は、の」
セイバーが最初に放った剣は、確認できる限りで8本
暗闇を齎したのはその内の一本であり、恐らくは残りの宝剣にも秘められたチカラがあるのだろう
未だ、その全ては見えない
【騎】
カード選択:A(1)
命中判定:成功
ダメージ:4(NP+5)
「さぁて、なーにが来るかのう」
背負った袋に手を入れ、まさぐる
取りだしたのは、ぬいぐるみとおもちゃのロボット
「小手調べといこうか、のっ!」
プレゼントがセイバーに向かって飛んでいく
「…『懸剪(ケンセン)』、『真剛(シンゴウ)』…」
セイバーの号令が、2つの宝剣を動かす
宝剣は2本とも、ロボットの方には目もくれずに、一目散にぬいぐるみをズタズタに引き裂いた
「投げたの儂じゃけど酷いことするのう」
無傷のロボットは、ポコンと間抜けな音を立て、セイバーに命中した
「…下らん…」
腕組みを解かないまま、少し怒りを滲ませ、短く呟く
「儂は戦闘向きじゃないからのう、出来る事と言ったらこんなもんじゃし」
「児戯は稚児を相手にするべきモノだ、…此処は戦場、甘い道理など通用せぬわ…」
「そりゃ儂をここに呼び寄せたやつに言って欲しいのう」
【剣】
攻撃対象:騎
命中判定:成功
ダメージ:9
スキル使用:『越王八剣』
→”太陽”、”水”、”月”に類する相手の加護を無効化、生物・非生物、魔性特攻付与(1d6-3ターン)→特攻値1(3ターン)
「―――爺さん…、戦というモノを教えてやろう…『驚鯨(キョウゲイ)』!、『滅魂(メッコン)』!」
ライダーに向かって走る2本の宝剣
反応を越えた速度、セイバーの爪牙は容赦なく迫り来る
「おうっと!」
トナカイを繰るも、二振りを寸出のところで躱しきれない
致命的な斬られ方はなんとか避けるも、紅い服から違う赤が滲み出す
「…なんじゃい狙いは儂の方か」
「斬られたか…爺さん、大丈夫か?」
「ほっほ、なんのなんの、致命そうなのはなんとかズレてくれたからのう」
「クカカ…なぁに、撫ぜただけよ…王自ら手本を示したのだ、本腰を入れて来るが良い…」
「言われとるぞランサー」
「…爺さん達に言われちゃあ仕方がねぇな」
「我が宿敵も槍を扱っておってわ…、あの腰抜けを嫌でも思い出す…代替として、その首にて我が心内の暗雲を晴らしてくれよう…」
≪1巡目収支≫
【槍】HP69
NP0
【騎】HP67→58
NP0→10
【剣】HP70→66
チャージ1/4
特攻+1(あと2T)
≪2巡目≫
【槍】
カード選択:B(4)
スキル使用:『ルーン魔術』…必中(1T)+ダメージ+2d6(1T)⇒6
ダメージ:16
「…年寄りにそこまで言われたらどうしようもねぇよなぁ…、思いっきりブチかましてやるぜぇ!!」
槍を片手に持ち投擲の構えをとる
「喰らいやがれッ『イヴァル』!!」
見え見えのモーション
全力を込めて愛槍をセイバーに向けて投げつけた
「(投擲だと…? 先に我が剣で受け止めたのを忘れたか…?)」
セイバーが剣を操り、空中で固定する
出会い頭の時と同様、投擲された槍を受け止める心算だ
展開された宝剣の壁に、槍は吸い込まれるようにつき進み―――
「ガッ!?」
その勢いのまま宝剣ごと押し進み、セイバーに突き刺さった
「…チッ…妙な、術を使うようだな…小賢しい小僧よ…」
「…へっ、精々しっかり味わってくれよな…『アスィヴァル』」
槍を自分の手元に戻す
必中の理を受けた槍は、セイバーの肩口に大きな傷を与えた
血を吹き出しながらも、多少後ずさるのみで、尚も男は腕を組んだまま解かない
「…あァ、疼くぞ思い出す…呉の王槍、辛酸の味を…」
「そいつはご愁傷様だ、もっと味わわせてやってもいいぜ」
脳裏に何者かの姿を重ねているのか、その眼に暗い色を灯す
ランサーの一撃は、セイバーに火を着けたようだ
「諸に食らってもまだ余裕ありそうじゃのう」
「結構力込めたんだがな…あんま動じてねぇし、上に立つ人間ってのはこういうものなのかねぇ」
「セイバークラスは伊達じゃないって事なのかのう」
【騎】
カード選択:A(2)
命中判定:敗北(敵クリティカル)
再びライダーがプレゼントを取り出し、セイバーを目標に放とうとしたその瞬間、
「『転魄(テンパク)』、『却邪(キャクジャ)』、『断水(ダンスイ)』…」
間髪入れず放たれた宝剣により、手元から離れたプレゼントは秒も待たずに細切れと化した
「やっぱ儂って場違いな気がするんじゃが」
「貴様にも何かしらあるのであろう? 出し惜しんでいては、機を失うぞ…?」
「そうは言われてものう…」
「まだ足りぬ…敵意、悪意…、十全たる報復へ至るには程遠い…」
「お前さんに本格的に敵意を向けたらどうなるか分かったもんじゃないのでなぁ」
セイバーという男の本質を、ライダーは未だ図りかねていた
【剣】
攻撃対象:騎
命中判定:失敗
「『滅魂(メッコン)』、『却邪(キャクジャ)』、『真剛(シンゴウ)』…」
ライダーに向かって、今度は3本の宝剣が放たれる
先の言葉通りならば、ライダーを追い詰め、奥の手を引き出すつもりだろう
「そもからして儂はお前さんのような手合いと真っ向勝負できるほどの存在じゃあないからのう」
「ならば、この場で果て逝け」
風切り音が無数に響き、多角的に攻撃が襲い掛かる
「…ま、迫り来る嵐に比べれば、些か直情的である事じゃな?」
宝剣を全て紙一重で躱す
剣速にトナカイが慣れつつあるのだろう
「死ぬ事自体を恐れはせんが…生憎、世界中に儂の事待っとる子供達がおるでな…死ぬにゃあまだまだ早い早い」
「クカカッ…まだそこまで動けるとは…刻んだ傷が足らんようだな…」
戦場に渦巻く殺気は勢いを増し、セイバーの闘争心を更に昂らせる
「やれやれ、ここがいつ頃の年代かは知らぬが… 折角の機会なんじゃし楽しんだ方がいいぞ? 儂の同胞も適度に満喫しておるんじゃし」
「確かに満喫してたな」
竜をも下す聖人が2人程脳裏を過る
「聖者であろうが、兵士であろうが、所詮は本質を同じくする人間…、戦場においては皆等しく、相対すれば”敵”に過ぎん…」
「頑固じゃのう…こんなもんに呼ばれた以上致し方ない話じゃが、の」
「いつの時代も変わらぬ…悪意は有る、戦は有る…
どれほど安寧を貪ろうとも、世から無くなる事など有りはせぬ…」
「それを否定はせんよ
ロクでもない奴はおるし、人の積荷売っぱらおうとする奴もいるし、権力目当てに他人を蹴落とす奴もおる これはきっといつの時代でも変わりはせんのじゃろう」
飽くなき闘争を繰り返す世界
聖人ですらなくすことの出来ないソレは、きっと真理なのだろう
「が、それ以外に目を向けず、戦にしか焦点を合わせぬのは視野が狭くはありゃせんか?」
「其れがどうした? 今の我が眼には貴様等しか映らぬ…、ならば敵として処断するより他はあるまい」
会話をしているようでいて、まるで成立していない
実際の所、セイバーとは何一つ嚙み合っていないのだろう
人間性、行動指針、積み上げた経験、史実
その全てを理解できるとは到底思えない
底なしの敵意を、終わりなき闘争を求め続ける男に、言葉が届くことはあるのだろうか
≪2巡目収支≫
【槍】HP69
NP0
スキル:『ルーン魔術』CT残り6T
【騎】HP58
NP12
【剣】HP50
チャージ2/4
特攻+1(あと1T)
≪3巡目≫
【槍】
カード選択:A(2)
命中判定:成功
ダメージ:12
「(話通じねぇ奴にゃ、”コレ”が一番ってんだ!!)」
切っ先を真っ直ぐに構え、セイバーに向かって突撃
「ほう、馬鹿正直に特攻とはな……妙な術は使わんのか?」
「術に頼りっぱなしってのも詰まんねぇだろう!」
槍の柄の端を持ち、長くなったリーチで宝剣を薙ぎ払う
「むっ…」
セイバーが引き寄せようとした宝剣は、振るわれた槍によってあらぬ方向へ弾き飛ばされる
守りよりも迎撃を優先しようとした代償に、セイバーの防御はがら空きとなった
「オラァ!」
薙ぎ払った勢いを利用してその場で回転、槍による片手一本突きをセイバーに放つ
「―――ぐッ!?」
身を捩り、何とか避けようとしたセイバーを、突き出された槍は正確に捉えた
「いい感じに入ったみたいだな」
ニヤリと笑い、離脱する
脇腹に食い込んだ刃先は、勢いのまま抉りぬき、血を撒き散らしながらセイバーを2,3m転げ飛ばした
腕組みをしたままだけに、禄に受け身も取れずに草の上を転がり、やがて止まる
「…やりおるわ…」
「若いからって舐めてかかるからそうなったんだろよ」
「…あぁ、確かに侮っておったな…お陰で手痛い一撃を貰ってしまった…」
宝剣を器用に操り、体を起こす
言葉とは裏腹に、深い笑みを浮かべる
「…まぁ、こっからが本番ってとこかねぇ」
「ククク…さて、どれ程侮ればその真価を見せてくれるのであろうなァ?」
こちらの手の内を、見定めているのか
全力を引き出そうとしているようだ
【騎】
カード選択:A(3)
スキル使用:『聖者の贈り物』
⇒HP3d6回復+攻撃命中時にNP+1d6状態付与(3T)
⇒HP+9、攻撃ヒット時NP+3(3T)
命中判定:失敗
「本職は動きが違うのう…」
プレゼントの箱やらなんやらが、それはもう避けられるの前提でぶん投げられる
「………」
最早名すらも呼ばず、顎を軽く振るのみで宝剣を走らせる
投げられたプレゼントは、無残にも串刺しにされ、地面に打ち捨てられた
「……爺さん、もうちょっと頑張ろうぜ」
「カッカッカ 儂なんぞができるのはこれぐらいのもんじゃからのう」
「ふぅ…」
「本気を出せというのなら、本気なぞ出さんぞい? 儂の本領はこう言うのじゃ無いのでのう」
「…」
「ん? どうした? 儂を殺すんじゃろ? そんなに面倒臭いなら止めてしまってもいいんじゃよ? ん?」
情動を煽る
隙を出させるため道化を演じる
しかし、
「―――愚か…」
「む」
通じない
「目に映る限りは殺すのみ…吼えようと、喚こうと、乞うた所で何も変わらん
聖人であろうが、戦士であろうが、奴隷であろうが、…女子供であろうと、だ…」
会話も、意思の疎通も
同じ人間である筈のなのに、通じない
「怖いのう…その果てに待っているのは孤独の國じゃろう…、そこまで徹底的にやってどうする気じゃ?」
「我が真名を、生を知るならば、分かるであろう? ”敵”とは、完膚なきまでに叩き潰さねば、再び牙を剥くという事を…」
「じゃろうな で、お主の言う敵とはなんじゃ
目に映る全てか? …ソレはなんとも臆病な生き方じゃなあ」
その精神性に軽く畏怖を覚えながらも、挑発は止まらない
否、止める事が出来ない
「…全てをすり潰さねば安堵できんか?」
「あァ…、そうよ 確かに臆病であった、徹底に殺さねば平穏は無かった…」
目の前の男も同様、湧き上がる殺意が止まらないからだ
「―――かつて王座に在った時は、な…」
「では、なぜ今は剣を振るう? こうなっては玉座もへったくれも無いじゃろ」
「クカカカカ…それはなァ…己が内を理解したからよ…」
「…ほう?」
ペースを掴めない、主導権を握れない
その為の挑発が機能しない
寧ろ、逆になりつつある
「若き日のワシは呉の虜囚へと墜ちた…、永き屈辱を味わいながらもひたすらに牙を研ぎ、耐えた…
その果てに、殺した、我が国を侵した呉を喰った…!!」
怒りに歪んでいた顔が、すぐさま狂気的な笑みに変わる
「クカカカカカカカカカカカッ!!
壮観であったわ!! 周王朝の没落家共が、無様に絶え逝く様はなァ!!!
苦境を忍んだかいがあったというモノ…!」
「…成る程のう それはさぞや壮観だったじゃろうて…そして、悟った…と」
当初は、自国の敵を討つという目的だったのだろう
民を守るため、国を守るため、結果、通過点である男は復讐を成し遂げた
憎き相手を殺し、自身の本懐を果たした
果たしてしまった
ただ、味わった屈辱を晴らすという己自身の本懐を、成し遂げてしまった
「あァ、足りぬタリヌ足りヌぞ…この程度ではまだ足りぬ…苦き肝の味が、屈辱の味が足りん…」
「…復讐は冷めてからが甘美なご馳走である…さぞや美味だったんじゃろう、それっきり虜ときたか」
「貴様等を平らげれば、果たして如何な味となるであろうなァ…?」
同じ人間とは思えない程、歪んだ表情
セイバーという男の本質が垣間見えるようだ
だが、
「断言しよう、大して美味でも無い上に直ぐに餓えて仕舞いじゃ」
臆せず見返す
呑まれれば終わり
戦闘能力以前に、心で負ければその時点でアウトだ
【剣】
攻撃対象:騎
命中判定:失敗
「よく喋る餌よなァ…すぐさま喰ろうて終いにしてやろう」
3度、宝剣を放つ
しかし、その動きには、先程までの統率が見られない
ライダーに向かって乱れるように飛ぶ剣の群れ
勢いも、精細さもまるで感じられなかった
「ホッホ、どうしたんじゃ? キレが無いぞい?」
またしても見切ったような紙一重の回避に掠めることすらない
「…チッ、当たらぬか…」
「目に見えて弱っておるようじゃ 大丈夫かの?」
腕を組んだまま、余裕そうに見えるセイバー
気丈に振舞ってはいるが、手ひどい傷を与えられているのも事実
その実、余り余裕はないのかもしれない
≪3巡目収支≫
【槍】HP69
NP14
スキル:『ルーン魔術』残りCT5
【騎】HP67
NP15
スキル:『聖者の贈り物』残りCT6
【剣】HP38
チャージ3/4
スキル:越王八剣効果終了
≪4巡目≫
【槍】
カード選択:A(5)
命中判定:失敗
「剣振るう元気もねぇなら寝てろ、永遠になぁ!!」
素早くセイバーに向かって槍を突き刺す
夥しい量の血を流し、虚ろな目で突き出される槍を眺めるセイバー
先の攻防をなぞる様に、再び槍が突き立てられ―—―
「『揜日(エンジツ)』、『断水(ダンスイ)』…」
―――ることは無かった
切っ先が届く僅か数㎝程手前、宝剣によって全ての勢いを受け止められた
「クッ!」
チカラを込めるも押し切れず、刃の格子から獲物を引き抜いた
精細を欠いた攻撃の直後に、正確な防御
薄気味悪いモノを感じ、直ぐに後方へ跳び距離をとる
「甘いな小僧……そこまでワシが弱っているように見えたかァ?」
「…手負いの獣のほうが手ごわいのはわかってんだけどなぁ」
血を流しつつも、口を歪め嗤うセイバー
弱っているように見えるのは演技なのか、本気なのか
いずれにせよ、中途半端に追い詰めるのは危険
捨て身で何をしてくるか分からない
「(…多分、アレも宝具なんだろうが…)」
手足のように動く8本の宝剣
真価を見せるには尚早と言っていた事から、まだ奥の手が控えているのだろう
「気味が悪ぃな…」
正に、手負いの獣
人間を相手にしている気がしなかった
【騎】
カード選択:Q(2)
命中判定:失敗
「さぁてさて、行っといで皆の衆」
懐から5cm程の人形を取り出しばら撒く
クッキー人形、”ジンジャーブレッドマン”だ
地面にたどり着いたそれらは、なかなかの速度でセイバーに四方八方から飛びかかろうとする
「むッ!?」
今まで攻防からは予想できない光景に驚愕するセイバー
顔を顰めながら、8振りの全て宝剣を操る
「―――刻め…!」
自身を取り囲んだ人形のような菓子を洩れなく切り刻んだ
「済まぬな皆の衆…」
微塵に刻まれ、粉状になったジンジャーブレッドマンが宙に舞う
「…何だ、今のは?…、呪具…?、いや魔の類か?…」
「いいや、こやつ等は菓子の人形…無病息災の祈りの為に産み出された者達じゃ」
「…あの珍妙な人形が息災の祈り、だと…?」
「それを粉微塵とは、…殺生じゃのう」
【剣】
カード選択:槍
命中判定:失敗
「チッ」
必要以上に焦りを感じた事に憤るセイバー
攻撃対象をランサーへ切り替え、宝剣を放つ
「おっと」
槍で回転させ、迫る宝剣達を軽々と弾く
速度はかなりのものだったが、対処できないスピードでは無い
襲いかかる牙を、ランサーは苦も無く撥ね退けた
「おいおい、そんなもんなのか?」
「…やはり先刻は呪具の類であったか…」
「仮にも聖人の祈りが込められたもんを呪具呼ばわりとは失礼じゃな」
苦々しく歪む表情
調子の悪さには、傷の影響もあるのだろうが、どうやら本気で呪いの道具と信じているようだ
≪4巡目収支≫
【槍】HP69
NP19
スキル:『ルーン魔術』残りCT4
【騎】HP67
NP15
スキル:『聖者の贈り物』残りCT5
【剣】HP38
チャージ4/4
≪5巡目≫
【槍】
カード選択:B(3)
命中判定:失敗
「(調子悪ぃなら、今の内だろ…!)」
踏み込む足に力を込め、一息にセイバーの元へ近づく
「オっ、ラァアアアアアアアッ!!」
一呼吸で様々な角度から乱れ突きを繰り出す
「威勢だけは良いな、小僧ッ!!」
手数ならば負けていない
餓狼の牙は8本あるのだ
金属同士がぶつかり合うこと、20合
幾度も火花が舞い、耳を劈くような音が響く中、骨肉を傷つける音は終ぞ混ざる事は無かった
「―――クソッ!!」
「良く動く肉だ…」
一瞬に込めた多角的攻撃、その全てを防がれた
苛立ちは舌打ちとなり、無意識の内に口腔から飛び出る
「(落ち着け、奴のペースには乗るな、呑まれれば思うつぼだ…!)」
これ以上近づくことは出来ない、仕方なく距離を取る
セイバーも無理に追ってくることは無かった
【騎】
カード選択:Q(1)
命中判定:成功(敵ファンブル)
ダメージ10
「ほうれ、もう一度じゃ皆の衆!!」
再びジンジャーブレッドマンが四方八方からセイバーに嗾ける
「またしてもかっ、悍ましき人形めがッ!!」
防御に使用していた宝剣で迎撃を試みるも、何体かは漏らしてしまう
接近された時点でミス
宝剣が自身に近すぎるため、クッキー人形を殲滅しきるには”距離が足りない”のだ
「ぐ、うッ…!! 触れるでないわッ!!!」
ブレッドマン達の襲撃を受けるセイバー
下手に剣を操れば自身を傷つけかねないだけに、自分の力で何とかするしかない
「オオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
「全く、ジタバタするない…そやつ等は完全に無害なただのクッキーなんじゃから」
「ガアアアアアッ!!!」
組んでいた腕を解き、両の手で纏わりつくクッキー人形の群れを粉砕
顔面によじ登ってきた者を片っ端から握り潰した
「…食いもん相手にここまでジタバタするやつ初めて見たわい」
「(…正直、身体をよじ登ってくる奴等を食いたくはねぇけどな)」
「ハァっ、ハァ…」
挑発を意に介さず、槍による攻撃を受けても殆ど響くことの無かったセイバーが息を切らしている
今までの攻防で、彼が最も焦りを見せた瞬間であった
【槍】
スキル使用
『啜る黒水(ダイルクー)』: ≪CT7≫
…対象のチャージを確率で減少、対象に毒状態(3ダメ)を付与(3T)
⇒判定成功 剣チャージ4→3&毒付与
【剣】
対抗スキル使用
『猜疑心』:A ≪CT6≫
…敵単体にスキル封印状態付与(1T)+自身に精神異常耐性を付与(2⃣d6-3T)
⇒判定失敗
「…たまには搦め手もやるか」
おもむろに懐からガラス製の小瓶を取りだす
中にはあからさまに有害そうな、ドス黒いドロドロした液体が入っていた
「うわっ、なんじゃいそれ…」
「見てればわかるぜッ!」
そのまま小瓶をセイバーに向かって投げつける
「………『断、水(ダンスイ)』……」
繰る宝剣の一本は、小瓶をを捉え、その中身ごと綺麗に切断した
すると、、
「ッ…!? これ、は…!!」
「やると思ったぜ… 迎撃するよなぁ?、当然」
槍、プレゼント、クッキー人形
せいばに向かって放たれた物は、宝剣の洗礼を受けている
条件反射、もしくは自動防御に近いのだろう
迎撃される事によって発揮される”爆弾”を仕掛けたというわけだ
「この期に及び、毒とは…小癪な…」
「(…おいおい、結構強い毒だぞ?…ソレ)」
あまり効いていなさそうな様子のセイバーのことを驚愕して見ている
槍による傷
クッキー人形による襲撃
そして、獣とドルイド僧の血液による毒液
全てを受けて尚、セイバーは膝を突くことは無い
「(何だこの耐久力は…、明らかに普通じゃねぇぞ…)」
【剣】
攻撃対象:騎
命中判定:成功
「…この、程度の苦境ならばッ、既に踏破したァ!!!」
「タフじゃなあ…」
血の泡を飛ばしながら、再度吼える
8本の牙が向かう先は、ライダーだった
「その流れで対象儂ィ!?」
「(なんか地雷でも踏んだんじゃねぇのか…?)」
何の脈絡もない攻撃に、ライダーの対応が少し遅れた
「ええい、なんのどっこい…あ痛ァ!」
急な回避運動により致命打を何とか避けはするが、宝剣は容赦なくライダーの身体を切り裂いていく
「…む、爺さんに当たりよったか…」
まともに対象を認識出来ないまま攻撃を放ったようだ
毒の影響か、傷の深さか
今回に限ってはだが、セイバーのプラスに働いたと言える
「…痛たた…、…どうやら弱ってきてはいるようじゃの」
「長引くのは避けてぇな…」
≪5巡目収支≫
【槍】HP69
NP19
スキル:『ルーン魔術』残りCT3
『啜る黒水』残りCT6
【騎】HP61
NP31
スキル:『聖者の贈り物』残りCT4 効果終了
【剣】HP25
チャージ4/4
毒状態(あと2T)
精神異常耐性(あと2T)
≪6巡目≫
【槍】
カード選択:B(1)
命中判定:失敗
「振りじゃねぇだろうな、オイ!!」
飛び上がって上段から槍を思いっきり振り下ろす
ただの力押しとも言えるが、弱っているならば押し切れる筈と判断しての行動だ
「…受け止めよ…」
宝剣を全て動員し組み上げ、盾とする
ギチギチと攻防が繰り広げるも、セイバーの守りを砕くには至らない
「チッ!」
反動を利用し、距離をとって様子を確認する
「(…効いてんだか効いてねぇんだか分かんねぇな、本当に…)」
呆れたようにセイバーを見ながら思う
対象を認識できない程に感覚が鈍っているかと思えば、今のように正確に防御して見せる
見る限りでは、その一連の行動に狡猾な裏は感じない
「………」
先程までとは打って変わり、不気味に沈黙している
単純に張り合うだけの元気が無いのか、それとも別の理由があるのか
「さて… これはどうなるやら…」
身構える
理解できない敵が一番怖い
対処法が明確でないからだ
「(修羅場は何度も潜ってきた筈なんだがな…)」
目の前の獣は、ランサーの理解の範疇を超えていた
人間の、戦士の道理が、己の知る常識が覆されてゆく事に、冷や汗と共にただ戦慄する
その延長線にある感情が”恐怖”である事を、若きランサーは知る由も無い
【騎】
カード選択:A(2)
命中判定:成功
ダメージ:11
「(んー、黙りこくったのが不気味じゃなあ…)」
袋からおもちゃやらプレゼントの箱やらをポイポイとセイバーに向かって投げる
槍による傷、クッキー人形の群れ
決して軽くは無いダメージに完全に動きを止めたセイバー
回避行動をとる様子もなく、ただ肩で息をし、立っている
「(避け、…ないじゃと…)」
ライダーのプレゼントは、何の抵抗も無くセイバーの体中へ命中した
直接的な威力は無くとも、ランサーに穿たれた傷痕には響くだろう
深衣を染める赤が、更に濃さを増した
「………これは、何か来ると見た方がいいんじゃろうなあ…」
冷や汗たらりと流す
感じる殺気の膨張
手負いの獣を中途半端に追い詰めてしまったがための、報い
「………」
ゆらりと首を動かし、自らの傷を一瞥する
苦悶の声も上げず、また倒れ伏す事も無い
静かな反応が、やはり不気味だった
「………」
再びゆらりと顔を動かし、ランサーとライダーを見据える
「………と…は……」
「…何じゃって…?」
擦れた声が段々と明確になる
虚ろな眼に狂気が宿る
「―――王座とは…頂けるモノであり、奪うモノ…古来よりその法は変わらず、…大祖たる夏王朝ですらも例外ではなかった…」
誰に向かうともなく、ブツブツと呟く
血を吐きながらも、その舌は止まらない
「奪いし物は奪われ、斯くして世は廻る…我が越は呉を奪い、後に楚へと奪われた…」
「―――確かに、”俺”は我欲へと堕ちた…国の衰退を招いたのだろう」
「…然れど、俺が呉の虜囚となっていた間、越の民は楚や斉の侵略をも撥ね退けた…」
「王が居らずとも、国は高く在る…偉大なりし五帝が系譜として、この俺が越を研ぎ澄まし、この俺が鍛えたのだ…」
王を失おうとも、国は健在
事実、越国は彼の王から8代先、楚の侵略までのおよそ150年以上に渡り、その栄華を保った
幾度の攻防を経て尚、セイバーは立ち続ける
恐れず、揺るがず、気高く其処に在り続ける
”王”
血に塗れ、傷を負いながらも、
その意志は決して、あらゆる困難に屈することは無い
「あァ、そうだ…鍛えよう、耐えよう、…殺そう…」
「子を縊らば親が、親を屠らば子が…親しき者が、契りを交わせし者が、いずれ我が首を獲りに来よう…」
その剣を揮ったのは、王としての責を果たすためだったのだろう
―――姿勢、方向性が絶望的に捻じ曲がってしまうまでは
「是こそ、我が戦…王たるワシの在るべき場所…!!」
―――かつて、その人生を復讐に捧げた男が居た
中華最古とされる夏王朝・五帝を源流に持つ、凡人ならざる宿命を背負った男だ
男の背負った国は”越”
春秋戦国期の中国、その五覇にも数えられる事のある大国だった
父の死後、即位して間も無く、宿敵である”呉”からの襲撃を受けるが、これを見事に撃退
時の呉王を討つなどの功績を挙げ、華々しい王道を歩んでゆく
かのように思われた
この時の戦いが、男の運命を大きく変える事となる
王を喪った”呉”は、新たに嫡子を王として立てた
後に男の生涯の敵となる、名を”夫差”といった
夫差も大人しくしている訳ではなく、先代の遺言に従い、着々と国力を蓄え始めた
この事態を重く見た男は、呉の殲滅を決意
部下の反対を押し切り、夫差の待つ呉に攻め入った
結果は、男の、”越”の敗北
男は捕えられ、夫差の前に引きずり出された
絶望的な状況の中、男がとった行動は
―――命乞いだった
地に額を擦りつけ、みっともなく、恥も外聞も捨て媚び諂い
ただ、命を得る為の選択をした
耐え難い屈辱
抗い難い恥辱
一国を背負った男はひたすらに感情を飲み込み、抑えながら命乞いをした
行動は功を奏し、辛うじて命を繋ぎとめる事が出来た
だが、その果てに待っていたのは、夫差の召使いも同然の身分
自国である越には戻れず、敵国である呉での労働を強いられたのだ
臓腑が煮えたぎる程の怒り
呉への、夫差への消えることの無い溢れんばかりの殺意殺意殺意
男は嘗める
自室に吊るした、獣の苦い肝
毎晩毎晩、来る日も来る日も、苦汁を自ら味わった
この屈辱を、この殺意を、終生忘れるべからず、と
胸に硬く、そう誓った
―――男の名は”勾践”
後に因縁の相手である夫差、そして呉を滅ぼした、春秋戦国の大国・越の”報復王”
「この傷、この痛み、この屈辱、久方ぶりよ、堪らぬわ…なぁ夫差よ」
報復者たる王の目に何が映っているかは当人にしか分からない
そして、
「―――万死」
短く呟かれた言葉に込められた、溢れんばかりの殺意
常人ならば、相対しただけで”死”を実感させられる程だろう
遠い眼にかつての何かを重ねている
2騎を見ているようでいて、決して見てはいない
飢えに飢えた獣の双眸
孤狼の如き男は、今や餓狼へと変貌して見せた
「…此処に会稽の恥を雪ぐ」
セイバー・勾践の言葉に呼応するかのように、全ての宝剣が動きを止める
時間が止まったと錯覚する程、統率のとれた動作
8本の宝剣は空間に縫い付けられたかのように静止している
渦巻く魔力と殺意は明確な危険の予兆だ
対し、
「(…憐れ、じゃな)」
思う
ただ一度の復讐を遂げてしまった事によって、男は燃え尽きてしまった
燃え尽きてしまったというのに、再び燃え盛ろうと必死で火種を追い求めている
それはなんとも
「我儘な話じゃな…
さあて… 出さんと言ってしまったが、ここは流石に本気が入り用かのう…」
ライダーはもまた、宝具の解放を決断する
初戦は中華が産んだアヴェンジャー(セイバー)
外見的なイメージは嘘喰いの百龍さん
1話分に収まらなかったので前後編で処理
次は剣と騎による宝具対抗勝負から
それにしてもこのサンタはよく煽るなぁ